原発死②

 あれこれと私自身が問題を抱えていますので、「原発死」の続きが書けませんでした。ところで日本原電といえば、昨日の報道においては、敦賀原発の真下に活断層があることから、東京新聞によれば『日本原子力発電(原電)が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県敦賀市)を巡り、原子力規制委員会の審査チームは26日の会合で、原子炉建屋直下に活断層が通る可能性があるとして、原発の新規制基準に適合しないと判断した。規制委が今後、正式に不適合と決定する見通しで、再稼働は認められない。不適合となれば国内の原発で初となる。日本の規制で商用炉が再稼働できなければ史上初のケースで廃炉の可能性も出てきた。』と報道しています。

 さて、「原発死」の続きですが、北陸電力が、まだ、原子力発電に本格的に足を踏み入れていない頃で原発開発の安全性を高めるためにと松本直治氏の子息であった勝信氏は日本原電の東海第二や敦賀原発に出向させられたのです。

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(つづき)
 そんな思いがした。総司令部といえば戦争中にその指導者が集まっていたものだが、原子力発電所の建設が今日の国策というなら、かつての総司令部、あるいは大本営といっても間違いはあるまい。
 原発の中心であり、最大の推進機関である。莫迦でかいはずである。あらためて玄関口の横を見ると、金文字で「日本原子力発電会社」と浮き出た看板が目に入った。ーやっぱり此処に間違いない。
 私はゆっくりとした足取りでビルの中に入ってゆくと、受付嬢に訊いた。
 「原発は何階でしょうか」
 三階を全部占めていると彼女は答えた。エレベーターに乗り、箱を降りると、すぐ目の前にここにも受付があった。名刺を渡して、総務部長に会いたいと言った。
 「お約束がございますか)
 「いや別に」
 受付嬢は、少しうろんな表情を見せたが、電話の受話器をとって、名刺を見ながら何か喋っていた。私は離れて待った。
「その廊下を真っすぐ十メートルほど行きますと、左手に三百十五号の札がかかっています。そこが総務部です。」名刺を返しながら、受付嬢が目で教えてくれた。私は廊下を歩いた。その三百十五号のドアをノックすると同時に、私は中に入った。室内は広く、三十人くらいの職員が働いていた。私は近くの女の子に名刺を渡し、総務部長に会いたいと、また繰り返した。女の子は窓際に大きな机を据えて煙草をくわえている年配の男の傍に行った。男はひょいと私を見たが、少し難しい顔になった。知っているなと私は思った。女の子が引き返してくると、私を第二応接室へ案内した。十五分ほど待たされて、入ってきたのを見ると、先刻、窓際にデンと構えていた男だった。総務課長の中野と名乗った。部長は来客中で、代わって対するという。卓を挟んで向かい合った。「千葉から来られたんでしょう。ご子息には困られましたね。いかがですか。再入院されたそうですが、気にかけております。まだ、お見舞いにも参っておりませんがー」
 中野課長は名刺をいじくりながら固くなって言った。
「どうも。再発となると、ちょっと見込みがないかも知れません。」
「しかし、まだお若いし、元気でしたから充分手当すれば回復するんじゃないかと…」
いや、若いから進行が速いといいます。ガンですからな。時に原発ではこれまでこうした患者はあったんじゃないですか
「いえ、いえ、そういうことは決してありませんよ」
課長はあわてて否定した。ドアを開けて若い社員が来ると、課長の横に座った。
 「しかしね、放射線を浴びるとガンになるといいますね。うちの息子は放射線を浴びているんですよ
 私は切り込んだつもりだった。
「放射線ですか」
とにかくある量を浴びた。許容基準を下回っているというが、大体、許容量の基準はいい加減なものじゃないですか
 「いやいや、その点は国際的に決められたものです。それに、これまで十数年間に、そうした例はありません
 「しかし、放射線漏れがあると考えられるからこそ、職場では測定器を作業衣につけているわけでしょう。どこの職場に今どれだけ放射線を浴びているかを測定する機器をバッチ代わりにつけているのがありますか。危険だからでしょう。アメリカでは実際に多くのガン患者が出ていますね。ご存知でしょう。だから会社側としても気がかりで、千葉大へ発ガンの原因をひそかに訊きに行ったんでしょう。医師は何とも判断できないと答えている。そこで、あなた方は職場と無関係との解釈をするし、逆に私の方は原因を被曝ととる。これはやむを得ないことでしょう。役員か部長は居られないのですか。」
 相手は沈黙したままだった。
 「あなた方は、これまで例はないという。ほんとうですか。もし、そうだとすると、安全性に疑問をもつ学者はみんな嘘をついてることになり、社会不安をもたらす不埒な科学者ということになりますよ。責任者に会わせてほしい」
 「いや、そう仰るが、現在の原子力はクリーン・エネルギーです。どうもわが国では原子爆弾以来のアレルギーのため、いささか誇張されてるようです。」
 「では、これまで若いガン患者が出たことがないと言い切れますか。
 「いや、東大医学部の権威あるグループの定期健診はたえずやっておりますし、若い人でガンになっても、それは職場とは全く無関係と言ったまでです。」
 「いつもよく、原発では事故を起こし、放射線漏れがあるじゃないですか」
 「確かに故障はあります。しかし、これは事故ではなく故障です。逆の見方をしますと、ちょっとした故障でも安全のため運転が自然に停止、点検できる仕掛けです。
 「むかしから盗人にも三分の理というが、あなたは事故でなく故障だという。まあいいでしょう。故障で結構、その故障で放射線が吹き出れば、従業員はたまりませんな。
 これは私の皮肉であった。何がクリーン・エネルギーかと思った
 「原発の一号機の原子炉格納容器内のダストモニター、ガスモニターの両メーターが異常上昇して、放射線を含んだ蒸気が漏れた。参議院特別委員会で通産省が、”欠陥原発”と認めたじゃないですか
 これは新聞から得た知識である。一応、調べていたのを中野課長にぶつけた。
 「原発から排出される空気や水は、装置によって放射線除去の処理をしています。東海村の実績では、年間1ミリレム以下です。いいですか、これは自然界から受けている放射線の百分の一に過ぎないので、、まわりの人に被害を与える影響は全くないのです。医療用レントゲン検査などは、その百倍から千倍の放射線を受けるので、その方がよほど危険と言えます。
 企業側を代表して言えば、課長の意見になるのであろう。自然界の放射線まで、企業のせいにされるのは心外というのである。あくまで私とは対立する。平行線のまま、私は話しを切り上げることにした。
 「私はあくまで追求しますよ。」
 捨てゼリフに聞こえたかも知れなかった。
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(今回はここまで)
*長文お読みいただきありがとうございます。松本氏と原電の中野課長とのやりとりを、どのように思われましたか?原電の課長クラスがこの程度の知識しか持ち合わせていないという事に私は呆れました。つまり、この程度の放射線知識でみなさんが騙されるのです。自然界の放射線と人工での放射線は違うということでもあります。コメントもお待ちしています。長文失礼しました。
 










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