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夢日記録♯029 魔法使い、傘をわすれる

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d.
主人公:中学生くらいの年齢。魔法使いの弟子。
カメラワーク:不明。視覚より体感がつよいイメージ。

・シーン1
この世界には魔法が存在している。
現実でいうところの科学と似たような利用のされかたをしている。科学を理解していないひとが電気製品を利用できるように、宝具と呼ばれる道具に魔法が紐づけられていて、魔法を理解していない人にも現象を発生させることができるようだ。魔法の継続力はそれぞれで、古い宝具はやがてへたってしまう。魔法がきれた宝具は子供の遊び道具になるほど、街には宝具があふれかえっている。街には何件か宝具屋があり、魔法使いたちの倉庫には子供たちが忍び込む姿も見慣れたものだった。

主人公の師匠もまた魔法使いだが、街で認識されているような宝具屋を営んでいない、それどころか宝具にたよらない生活を行っていた。主人公は幼いころからいまの師匠に育てられ、世間一般の魔法についてはあまり詳しくなかった。そして、師匠が魔法を使う姿もほとんど見たことがなかった。

・シーン2
その日は傘を持っていなかった。師匠と外出先で用を済ませたところで雨がぱらぱらと降り出して、「参ったなあ」とつぶやいた。近くにはめぼしい店もなく、空模様はこれから良くなるか悪くなるかの判断のつけがたい表情をしている。後者の可能性があるなら、師匠の裾を濡らしてでも、今のうちに街へ向かうべきかもしれない。
そう思っているところに、通りがかった子供が古い宝具を渡してくれた。礼を告げてありがたく受け取る。
ラップの芯のような木製の筒の両端に、留め具のはずれた扇子のようなものがついている。彼は扇子の骨を指で支えて小さな傘をつくり、師匠の上にかざした。魔法の残滓がふわりとひろがり、二人がすっぽり覆われる程度の安全地帯が生まれる。
「助かりましたね。急ぎましょう」
曇天に照らされた灰色がかった街並みを二人で歩いて帰る。

・シーン3
歩いているうちに、近所の魔法使いの家を通りがかる。そういえば、さっき宝具を貸してくれたのはここに入り浸っているうちの一人だったか。宝具に刻まれた印を確認して、師匠と一緒に立ち寄る。
「もし、ご主人。この宝具、お宅のものでしょうか」
玄関から声をかけると、気難しい顔が姿を見せた。
「お借りしています。晴れた頃に、お返ししますので」
「構わん。既に力を失ったガラクタだ」
その魔法使いは宝具造りを専門としている職人のようだった。つまりは、宝具を使わない主人公たちを客とみなしていないということ。この街では気難しいと有名な男だった。
「用がないならさっさと帰るんだな。今はまだいいが、すぐにひどくなる」
「雨がですか。お気遣いありがとうございます」
「ふん、軒先に居座られても邪魔なだけだ」
「では、また」
石畳を濡らす雨水を、二人分の雨よけを携えて、二人はふたたび帰路へとついた。魔力、残っているのにね、などとささやきながら。画像1

師匠は中華衣装のような、ゆったりとした服を着ている。簪のような帯留めと、帯の模様だけが金色に輝いていて、そのほかは全身が真っ白に感じられた。背は140cm程度だろうか、主人公より小柄だ。宝具はひとつも持ち歩いていない。「日常で頼るには過ぎた力ですよ」なんてうそぶくが、今時魔法の込められていない道具の方が珍しい。
「でもたまにはいいですね、この服を濡らさずに帰ることができました」
「傘さえ忘れなければよかったのですよ」
「だからたまにはですって」

というあたりで起床。

*
・師匠は「かたちのない魔法」と呼ばれるものを使っており、宝具を必要としないために「いつ使ったかわからない」のだと思う。
・宝具は道具にさだめられた魔法出力しか出さないが、かたちのない魔法は制御が難しく、干渉しあわないように生活から遠ざけていたようだった。

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