見出し画像

ネーミングの際に知っておきたい商標の類型

商標とは文字、図形等(以下「文字等」)とその用途の組み合わせによって、自他の商品又は役務を識別するもので、需要者又は取引者に対する識別力の強さによって五類型に分けられます。米国では、この違いを識別力の強度分布と考えて「Trademark Spectrum」と呼んでいます。これらの類型を知っておくことはネーミングを行う際の指針となります。

Generic

最も識別力の弱い商標はその商標が用いられる商品又は役務の一般名称で「一般的(generic)」であると言われます。商品「りんご」に文字「アップル」が一例です。このようなgenericな文字は自他商品役務を識別するという商標としての機能を果たすことができないものとして、商標登録をすることができません。

ライフサイクルの短い商品などの場合には、長期的に自社商標としての価値が積み上がっていくものではないので、あえてgenericで他社商標の侵害が問題とならない商標を採択することも選択肢です。

Descriptive

二番目に識別力の弱い商標はその商標が用いられる商品又は役務の内容、品質等を単に表すもので「記述的(descriptive)」であると言われます。商品「牛乳」に文字「おいしい牛乳」が一例です。このようなdescriptiveな文字も自他商品役務を識別するという商標としての機能を十分に果たすことができないものとして、商標登録をすることができません。しかしながら、実際に使用がなされた結果として需要者又は取引者がそれを商品又は役務の出所を識別するものと認識可能となっていることを立証できれば、商標登録が可能となります。

ある文字がdescriptiveであるか否かはそれが用いられる商品又は役務との関係で定まるため、ある用途については登録可能で、ある用途については使用実績を積み上げてから改めて登録を試みるといった対応を取ることがあります。

Suggestive

中程度の識別力を有する商標はその商標が用いられる商品又は役務の内容、品質等を直接的には需要者又は取引者に認識させないもので「示唆的(suggestive)」であると言われます。suggestiveな商標は商標登録をすることができます。造語ではない一般的な単語を複数結合した結合商標は多くの場合、この類型か記述的商標の類型に属し、その境界線ははっきりとせず、特許庁に対する商標登録においても審査において問題となりやすい点です。「〇〇AI」「スマート〇〇」などが例として挙げられます。

また、「freee」「ラクスル」のようにサービスの品質等を表す単語の表記を一般的で記述的なものから変えることによって示唆的な商標としている好例もあります。

Arbitrary

さらに強い識別力を有する商標はその商標が用いられる商品又は役務の内容、品質等と関連性の弱い文字を用いるもので「恣意的(arbitrary)」であると言われています。例として、商品「コンピュータ」に文字「Apple」、役務「古物の評価」に文字「CASH」などです。

こうした商標は、需要者又は取引者にポジティブなイメージを与える短い単語で強い注意を惹くことができるため、既に登録されていることが多いものですが、登録可能な単語を採択することができれば有力な選択肢となります。一方で、用いられる商品又は役務との関連性が弱い文字を用いるため、需要者又は取引者においては、自分の求めている商品又は役務であるのかが即座には理解することができませんのでアップルが当初「Apple Computers」であったように一般的又は記述的な単語を加えて商品又は役務の内容等を伝えやすくする手法は定石です。

Fanciful

最も強い識別力を有するとされるのは造語の商標で「空想的(fanciful)」であると言われています。日本語では「造語的」であるという表現がより適切でしょう。「Google」などの完全な造語がその一例です。「sansan」「FiNC」なども同様です。

fancifulな商標はそれ自体では需要者又は取引者に商品又は役務の内容等をなにも伝えることができないため、認知を獲得していくまでのプロモーションコストがかかる傾向にありますが、先行商標が障害となって自社商標の登録ができない状況は発生しにくいことから、安心して長期的に価値を高めていくことができます。また、造語であることから、自社のミッションなどを織り込んでストーリー性をもたせることもしやすくなります。

参考 CNET Japan 成功するプロダクト名とは--未上場有力スタートアップの実例から学ぶネーミング


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?