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商号の使用と商標

サービス名、商品名などは商標登録しておくべきとして、社名についてはどうでしょうか。

登記上は、同一の所在場所に同一の商号が登記されていなければ自由な名称で登記が可能ですが(商業登記法27条)、このことは社名の使用について商標法上の制約が存在しないことを意味しません。社名であっても、他人の先行商標と衝突する場合には自由に使用をすることができません。

他人の先行商標が登録されていても「需要者が何人かの業務にかかる商品又は役務であることを認識できる態様により使用されていない」場合には(商標法26条1項6号)、自他の商品役務を識別するものである商標としての機能を果たしていないとして、自由な使用が許容されています。

具体的には、社名の使用が自己の名称又はその著名な略称を普通に用いられる方法で表示するものである場合には(同項1号)、自由な使用が許容されますが、略称については著名性が求められる点に注意が必要です。一例として「株式会社△△△△」は「自己の名称」に該当しますが「△△△△」の部分のみについては「自己の名称」には該当せず、「略称」として著名性が必要になります。

たとえば、請求書の右上に住所及び電話番号とともに「株式会社△△△△」と表示した場合、単に商号を表示するのみであって、特定の商品役務との関係において出所識別機能を果たすものではなく、「△△△△」について先行商標が登録されていても商標法上の問題は生じないと考えられます。

しかしながら、「△△△△」と表示した場合には略称となり、著名性がないとすれば、商標法上の問題が生じる余地があります。また、ウェブサイトの左上などに社名の略称「△△△△」が表示される場合が多く、やはり商標法上の問題が生じる余地があります。

商号については商標の問題を気にしなくていい場合があるということは正しいのですが、一定の要件を満たさなければ他社商標の侵害となるため、正確な理解が求められます。

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