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はじめに

商標登録出願について、日々なんらかの業務を行っている。

ご依頼を受けて、願書をドラフトすることもあれば、特許庁からの通知を受領して応答方針を検討することもある。登録査定を受領して登録料を納付すれば権利が成立することをご報告できる日は喜ばしい。

逆にご依頼を受けて、先行商標を調査してみると解釈によっては衝突してしまう商標が既に出願されていることがある。このような状況でどのように助言すべきか、いつも悩む。安易な助言は、先行商標と類似するおそれがあるから、登録出来る可能性は50%で、登録出来なかった場合に使用を継続すると商標権侵害となるリスクがあると伝えること。

このような助言は、間違っている訳ではない。しかし、助言の相手がスタートアップであるとすれば、的を射ない助言である。スタートアップとは、急速に成長することを企図した企業のことであり、極論をすれば、創業期であれば、確かなことは起業家の熱意ぐらいでリスクに囲まれていてリスクしかないと言ってもいい。そのような依頼者に対して「リスクがあります」という助言は意味をなさない可能性が高い。

スタートアップに対する助言の難しさの一つとして、既にプロダクトのネーミングが決まっていることが挙げられる。リスクのある先行商標が存在するのであれば別のネーミングを選択すべきと考えるのが大手企業の新規事業における商標実務であるのに対し、既に使用を開始していてメディアへの露出もして認知が広まり始めている商標をいくらかのリスクがあるという程度で別の商標に変えるという判断にはならない。

このことに配慮をせずに「登録可能性50%」といった助言をすることには謙抑的でありたい。登録可能性が50%であるのであれば、どのような手を打つことでそれを75%、さらには90%に上がられるのかを示していきたい。いかようにもならないのであれば、解決不能であるから適切なタイミングで商標を変更すべきとはっきりと伝えていきたい。こうした姿勢で、スタートアップの実態に即した教科書となり得る解説をしたい。

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