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商標の類否判断-文字等-

商標は文字、図形等(以下「文字等」)とその用途との組み合わせによって、自他の商品又は役務を識別するもので、たとえば、同一又は類似の文字等が他人によって出願されている場合には、登録することができません。ここで、文字等、用途が「類似」するとはいかなる意味かが問題となります。まず、文字等の類似とはなにかを解説します。

商標法上、文字等が「類似」するか否かは、同一又は類似の用途に使用された場合に、その出所につき誤認混同を生じるおそれがあるか否かによって判断するとされており、より具体的には、使用される文字等の外観(appearance)、観念(image)、称呼(sound)等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して判断するとされています。

類否判断は、商標の登録場面と登録された商標の権利行使の場面のいずれにおいても問題となりますが、判断主体によって、外観観念称呼のいずれが重視されるかが異なります。

判断主体について、権利行使においては、裁判所の判断から始まるのに対し、商標登録においては、特許庁の二段階の審査審理を経てから裁判所の審理になります。商標出願をするとまず特許庁で審査官一名によって審査が行われ、その結果として「査定」がなされます。その査定の内容に不服がある場合、すなわち登録を認めないという拒絶査定の内容に不服がある場合には拒絶査定不服審判を請求することにより、審判官三名による審理に進み、その結果として「審決」がなされます。審決の内容に対しても不服がある場合には審決取消訴訟を提起し、知的財産高等裁判所の裁判官三名により審理に移り、その結果として「判決」となります。

特許庁における審査は、行政機関として公平かつ効率的に判断をする必要から、審査基準というマニュアルに沿って画一的に行われ、我が国においては、称呼が類似すれば、ひとまず類似すると判断される傾向にあります。審判における審理に進むと、マニュアルの範囲ではあるものの、個別の事案に応じたより慎重な判断がなされ、称呼以外の外観観念も考慮されやすくなる傾向にあります。また、称呼が同一ではなく類似か否かが問われている場合には、その類似性についてもより慎重な判断がなされます。そして、訴訟に進めば、マニュアルに囚われず、個別の事案に応じた妥当な解決が図られます。

登録場面を考えれば、称呼が類似し得る先行商標が存在しないことの確認が登録の負担を重くしないために大切です。他方で、重要なブランドネームであれば、称呼が類似しそうな先行商標があったとしても、主張を尽くすことで、称呼非類似となったり、称呼類似ではあるが外観観念を含めた総合判断で非類似となる余地があります。権利行使の場面であれば、原告被告ともに容易に引き下がることは少なく、称呼が類似しそうということのみに留まらず、個別の事情を考慮した類否判断の攻防となります。

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