【RX 高岡】 2024.06.01 Unbound Gravel 200mile M45-49 優勝 / Overall 10位
概要
米国最大=世界最大のグラベルレース
カンザス州Emporiaを発着し北部を走る326km、ほぼ全部グラベル
アマチュアクラスは一斉スタートで、表彰は年代別で
2022・2023年に続き3年連続の出場
天候:晴れ、気温26℃前後、風速〜3m/s
パンクゼロ、落車2回、メカトラ2回
リザルト:年代別優勝、総合10位
自己評価:★★★☆☆(3/5 自分の限界を知った)
コース
一番下のEmporiaの街を出発して反時計回り。
大きな石が転がっている区間が多い。ドロの心配はないだろう。
という事前情報を得ていた。
レース
序盤
今回はリザルトを狙っていたので前列に並んだ。
初出場の2022年は序盤でシフターが壊れるトラブルで遅れる。
2023年は序盤の泥区間で大きく遅れる。
いずれも集団先頭付近にいたけど、序盤で遅れてしまった。
今年は先頭付近から絶対に遅れないように走ると決めていた。
スタート3kmくらいでグラベルに入っていくのでそれまでに集団の前に上る(というか前方スタートなのでそこをキープ)。
作戦どおりに前方で走ることができ、常に20−30番手から順位を落とさないように走る。
こんなにマイルドだったかな?と思うほど余裕を持って走れた。
トラブル1
スタートして50分経たないくらいの下りで前の3人が絡んで落車。すぐ後ろの自分はそこに突っ込む。40km/h弱のスピードだった。
横たわる自転車に突っ込んで右膝を打ってバイクが絡んでいた。
すぐに起き上がりバイクを持ち上げ、曲がった左ブレーキレバーを直して曲がったハンドルをまっすぐにして、走り出す。
データで見ると止まっている時間は約50秒だった。
はるか先に見える集団を追いかけて走る。ここから300kmくらいあるのに単独で走るわけにはいかない。まだ序盤だから追いつくはず。
9.5分NP 290Wくらいの追走で追いついたっぽい。まだまだ集団がデカいので集団には追いつくけど、中切れがどんどん発生して人数が減っていくので、後ろにいたらまた無駄足を使う羽目になるから、追いついてからもどんどん抜いて集団先頭まで上がる。
なんとか無事に集団先頭の本来いるべきポジションまで戻れた。
ところで落車から走り出した際に強打して曲がった左レバーの変速スイッチが効かなくなってしまった。またかよ、、、
しかしDHバー先端にワイヤレスBlipsをつけているので、一応そちらで変速はできる。なのでシフトダウンだけは手を伸ばしてDHバー先端で行った。
これはかなりめんどくさい。2年前と同じだ。
あと、この落車により左クリートが曲がってしまい、いつもと違う角度(大きなヒールイン)でペダリングをすることになってしまった。
トラブル2
次、1時間50分過ぎに下りでなぜかチェーン落ち。変速したとか大きなギャップがあったとかではないのに。XPLRのFシングルでチェーン落ちは初めてかも。普段とは違う事が起きるのがレースだ。
ストップ時間は12秒だったけど、下り途中で減速して止まって、走り出しの加速とか考えたら20秒以上のロス。
再び不便な変速状態での追走が始まる。これは3分ほどの追走で追いついた。
トラブル3
途中かなりガレた下りが幾度となく出てくるのだが、その下りの途中でボトルが1本落ちてしまった。950mlと750mlのダブルで行ったのだが、まだ口をつけていない750の方が吹っ飛んだ。
3.5時間ほどの第一チェックポイントまで950ml一本で行く羽目になった。これはけっこう深刻。
トラブル4
3回目のストップは2時間51分。右に鋭角に曲がって登りだす箇所で路面も悪いところ。集団の速度が落ちて密集していて、登り口で曲がりながらDHバー先端のボタンで変速する。十分にシフトダウンできなかったので密集して隣の選手とぶつかった時にバランスを取ることが出来ず、落車。この時手をついて左手のひらを打ってしまった。
速度はほぼゼロだったのでダメージはそこそこで、また再乗車して集団を追う。10分くらいの追走でまた集団の前に戻れた。
トラブル5
まだまだトラブルは続く。
3時間18分。下ってからの登り返しでワイヤレスBlipsのシフトダウンまで効かなくなった。下りでトップギアに入ったまま動かない。登り返しで漕ぎきれずに止まる。集登り坂の途中で自転車を降りて団の全員に抜かれていくと、思わずあの有名なセリフが口から出てしまうのはご容赦いただきたい。
これは登り終わるまで再乗車できないし、どうしたものかと思いボタンを
色々押していたら、突如復旧した。
これで1分近くのロス。
しかしまた気合の復帰。326kmと長いレースなのでアタックや突発的なペースアップはなく淡々と進むので脚を使えばなんとかまだ追いつける。元気なうちは。
114km地点の第一チェックポイントには3h34mで到着。
大集団、と思っていたけど、ここで30名未満になっていたのかな?
中盤
データ見るとCP滞在時間は1分。Crew for HIREを申し込んでドロップバッグを預けておいたので、ゼッケンナンバー見て自分のバッグを持ってきてくれる。その袋から必要なものを取り出して背中に詰め込んで、950mlのボトルに水をフルに入れてもらい、すぐにリスタート。
それでも前の選手は見えない。
幸い補給所のあとがしばらく登り基調が続くので、自分のペースで前を追う。
どのくらいで追いついたかわからないが、データ見ると10分ほどの追走で追いついたっぽい。
その時で集団は10名ちょい。女子エリートで落ちてきた選手も入っていた。
けっこう大きいと思っていた集団も補給所でバラけたみたい。
ガチ勢はたぶんサポートがいて10−20秒で出ていったか、ハイドレーションバッグを持っていて補給無しで行ったか。
そうじゃない勢はそこでストップしてレースの前線から離れた。
自分はその間で、ギリギリ先頭に追いつけた。
そのくらいの人数になると走りやすい。
変速復旧
ところでグッドニュースは、走りながら左変速ボタンがどうにかならないか色々試していた。押してもカチッというクリック感がないので、電気的な故障よりもスイッチの裏側に土が詰まっているとかな気がする。
それを押し出すように強くスイッチを押し込んだりしていたらクリック感が復活してレバー側のシフトダウンスイッチも使えるようになった!
ブラケットから両側の変速ができるという当たり前の事がどんだけ嬉しいか。
これでグラベルのアップダウンも頻繁な変速でうまくこなせるようになった。
ところで、レースのレベル的に、エリート(プロ)女子よりノンエリートの男子の方が少し速い。オーストラリアでもそうだったし、今回も優勝タイムで20分くらいの差がある。
そしてエリート女子で落ちてきた選手が我々のノンエリート男子の先頭集団に入るものだから、特急列車に乗ってぐんぐんスピード上げて、前のエリート女子選手に追いついていく。
これはレースのフォーマット上仕方ないことだけど、女子のレース展開はそれを前提として考える必要があるなと感じた。
Break Away
登りは非常に調子良く、登りは常にアドバンテージを感じて、前に出られた。
Little Egyptという看板が見えた。
だいたい名前がつく箇所は勝負どころとなる難易度の高い坂だ。
フランドル地方の坂のように、距離はすごく短いが確実に脚力さが出るごまかしの効かない坂。
その前に二回ほど坂で抜け出してしばらく泳がされてまた集団に戻るというのをやっていた。登りなら勝負できる。
Little Egyptで2人がペース上げたのでついていったら頂上越えて3人になった。2人がしっかりと平地で踏めるので、3人でローテしたら後ろとはまぁまぁの差がついた。これは3人で行っちゃうのかな?と半信半疑で先頭交代をしていく。162kmとかだったのでちょうどレースの半分だ。
優勝したMike Bartonと2位のTaylor Dawson。
Taylorと話して年齢確認したら30歳代だから自分とは被らない。
MikeとTaylorが話したらしく、Mikeから「3人共違うAgeカテゴリーだから協力して行けるね」と言われた。しかしまさか50歳とは思わなかった。
Taylorは自分と同じくらいに小柄でDHバーつけている。登りが速い。自分も同じくらい登れているけど、平地&下りはTaylorの方が速い。
Mikeは80kgくらいある?という巨体でDHバーなし。平地&下りが速い。登りは自分に分があると感じた。グラベルなのに、ほぼ全ての登りをダンシングで登るという、色々おかしい。スプリントで1100W出して優勝していた。
3人で快調に飛ばして走る。このペースだと差は少しずつ広がっていくだろうと感じるほど良いペース。
しかしまだ160kmあるのかよと思うと絶望感しかない。
160−240kmまで一緒に走ってレースをリードしたのだが、200kmくらいで異変を感じる。気温は30℃近くに上がり、補給所で満タンにした950mlのボトルはなくなった。そして深刻なガス欠を感じ始める。ガス欠に対してはエネルギーを補給するしかない。スピードジェルを補給して数分すると力が戻ってまた踏めるようになる。しかしそれも有効時間がある。踏み続ける為にはエネルギーを摂り続けないといけないとわかってはいるけど、そんなにガンガンと食べ続けられない。自分の身体能力(胃腸の能力)の限界だ。
自分が落としがちなので先頭交代した時にペース上がって、その後ろにつくのにもがかないといけない。それで消耗して、悪循環だ。
最高に強い2人と一緒に走れて大きなアドバンテージを得られたけど、最後までいけないことは認識していた。
とにかく第二CPまで頑張ろう。そこからフィニッシュまで86kmあるので、その貯金で逃げ切れるとは思えないけど、少しでも長くアドバンテージを活かしたい。
ギリギリ走り続けられるだけのスピードジェルを補給しながらなんとか第二CPにたどり着いた。7時間33分。
終盤
水を補給してもらう。その場で300mlくらい飲んでまたその分を補充してもらう。あとキンキンに冷えたミニコーラも飲み干した。
補給食は、、、第一CPで取って背中に入れたものも大半は消費できていない。
まだトップチューブバッグにもたくさん入っている。
バナナ2本を取って背中に入れて、再スタート。
滞在時間1.5分だけどもう2人は先に出ている。ここから一人旅。
不整脈
完全な脱水症状を感じていた。冷えたコーラを飲み干して、走り出してすぐに異常に気付く。ゆるゆると自分のペースで走り出したのに心拍は170オーバーを記録している。不整脈(心房細動)が発症している。暑さ・脱水があるので心拍計の異常ではないのは明らか。
30分くらい高く推移してそのうちに正常値に戻ったけど、その後もフィニッシュまで何度か異常心拍を繰り返していた。
上のマップの通り、終盤は下り基調なんだが、風向きが悪いのと力が残っていないのでまったくスピードに乗らない。
自分が走っているペースと残り距離を考えると、逃げで作ったタイム差で逃げ切るのはムリだとわかる。
途中で3−6位の4名+エリート女子数名の集団に追いつかれた。
なんとかそれに飛びつきしばらく頑張ってついていく。
やっぱり単独走と集団ではまるで速度が違う。
きついのでツキイチするが25分前にスタートして吸収された女子エリートはあまり先頭交代に加わらないので、その後ろにくっつく。
しかしこちらは完全にガス欠でそこから千切れるのも時間の問題。
ほどなくなにもないところで千切れる。
常にエネルギーが足りていないのを感じていたので、するべきことはエネルギー補給。頭ではわかっているけど、ジェルを流し込み続けるという作業ができなくて、ハンガーノックになる直前にスピードジェルを摂取。ほどなく復活、というサイクルを何度も繰り返す。
スピードジェルを補給するとすぐ、たぶん5分以内とか、に力が出るようになるのがはっきりと分かる。低血糖との戦いだったと思う。
美しい湖のほとりを通ってから最後の長くてキツイ坂。284km地点。
とても計算された素晴らしいレイアウト。その坂を登ればあとは下り基調と平坦でフィニッシュまで。
坂の頂上にウォーターオアシスがあった。止まって空になったボトルに水を入れてもらい、がぶ飲み。
なんとなく向かい風っぽくて、下り基調にも関わらず進まない。現地入りしてから試走で気持ちよく走っていた時の方が確実に速い。
グラベルはホント進まない。
篠さんが「ペダリングしていれば必ず前に進んでいく」というようなことが頭に浮かぶ。とにかく漕ぎ続ければフィニッシュに近づいていく。ただただ我慢の時間。
なんでもない真っ平らで直線の未舗装路で後ろから4人組が抜いていった。平地なのでそれに飛び乗ればフィニッシュまで行けるかも、と思ったが時既に遅し。数秒経ってしまった時に4人トレインは既に追いつかないくらい前に行ってしまっていた。
結果的に、そこからのラスト25kmほどで8分くらい差がついてしまっているので、そこに乗れなかったのは失敗だった。
その後、全身にシビレを感じていよいよヤバい感じ。
GarminのLive Trackingに付随する機能で、サイコンでメッセージを見られるのでなんとなく状況はわかっていた。自分が40歳代ではトップであり後ろとはかなりのタイム差があること。総合順位は徐々に落として、一桁順位でフィニッシュできるか微妙なラインなこと。
しかしこれ以上ペースダウンしたら、エイジカテゴリーでの優勝も怪しいというくらいに身体は枯渇状態だった。
300kmに最後のウォーターオアシスがあったので、そこで止まった。1−2分ロスしても、最後までしっかりと走り通さなければ今までの苦労が水泡に帰す。クーラーボックスに入っていたミニコーラを飲み干して、水を全身にかけて、残り約26km。
最後のパートを試走していて本当に良かった。この後フィニッシュまでどういう道がわかっているだけでも心強い。
ボロボロだけど、Unbound Gravel 200mileで年代別優勝というのは誇れる結果だ。せめてそれだけはなんとしてでも持ち帰りたい。
何も考えずに漕ぎ続ければ少しずつフィニッシュに近付く。
200マイル(320km)を越えてあと3kmも切ったくらい。もうすぐ大学に入るという手前で2人に抜かれた。ゼッケンカラー見たら1人は200マイルだ。
先程の失敗があるので、それに最後の力を振り絞って飛び乗る。
年齢を確認したら30歳代だった。違うエイジカテゴリーだから表彰の順位に関係ないね、と話して暗に競争は無意味だねと匂わせつつ、最後の大学構内の登りでペースアップして千切っておいた。
そう、私はセコいのだ。
結果的に総合10位だったのだが、トップ10に入るのと11位ではだいぶ印象が違うから、力を出し切っておいて良かった。
ボロボロになりながらも、なんとか年代別優勝は確保してフィニッシュできた。
リザルト
中間地点から抜け出した2人がそのままフィニッシュまで。優勝者は50歳。最後スプリントで1100W出ていた。世界には強いやつらたくさんいるもんだ。
M45-49では優勝できました。
おしまい
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