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【RX 高岡】 2023.10.08 UCI Gravel World Championship M45-49 11位

コース概要

163km。エリートは168kmで、違いはスタート後に湖畔をぐるっと廻るか否か。2008年のCX世界選手権の会場ということで、そのオマージュ的なスタートセレモニーか。

クライムマークは全部で9。
そのうち最初のPieve di Soligoまでの間には1つだけ。
北東側(右上)のループに4つ。2回めのフィニッシュを通過してから35kmほどは平坦が続き、最後の25kmに山岳ポイントが4つギュッと濃縮されている。

登りも激しければ下りも激しい。平地も楽に流せる区間はほとんどない。
過酷なコース。

目標・作戦

昨年は6位だった。今年ははるかにアップダウンが激しいので、適性としては自分向きなはず。しかしメンバー見ても誰がどのくらい強いのか分からないから、順位予想は難しい。昨年以上のリザルトは出したいと思っていた。

登りは調子良く走れていたので自信があった。
逆にテクニカル区間では自信がない。
まずは転んで怪我しないを最優先にしつつ、なるべくテクニカル区間で遅れを最小限に抑えて登りで勝負する。
急勾配で細くて路面悪い登り区間では必ず前で登り始めて、詰まって足をつかないようにする。

レース展開

スタート

昨年は参加人数が少なかったので40-44と45-49が同時スタートになった。
今年は各カテゴリーで120名ほどいるので別スタート。
50歳以上は少し短いコースになるので、自分の45-49カテゴリーは最終スタート。

ウェイティングボックス最後尾からの風景

19-34、34-39、40-44、45-49と続くが、1分差なので、前カテゴリーから落ちてきた選手をどんどん抜いていく感じになるだろう。

早い時間から並ぶのは好きじゃないのでいつもどおりのんびりして最後尾からスタート。

道中長いので、スタートの位置ごときであたふたしない。

Pieve di Soligoまで(最初のフィニッシュ地点通過)

スタートから20kmは平坦。最初の数kmは舗装路でその後に未舗装に入っていく。10km地点でドロップオフの後に大きな玉砂利区間があって、何も知らずに突っ込めば高い確率で前輪を取られてコケる。
試走してわかっていたので、その区間までに前に出て、、、と思っていたがまだ序盤で皆元気なので同じこと考えており前には行けない。
転ばないようによく注意して、なんとか最初の難関をクリア。

ところでその前後もドライなハードパックで高速で進むんだが、かなり石が大きい砂利道の中をロードレース並のスピードで突き進む。
砂埃で舞って前走者の後輪しか見えない中、同じラインをトレースして信じてついていくしかない。これはかなりの恐怖だ。
Unboundでも同じような経験をしたが、UCIグラベルの方が速度がより速くて砂埃による視界不良で、しかもその区間が延々と続くという、かなり難易度高いレース。そして飛び交う石ころの大きさが今回のレースのほうが大きかった。
ハイスピードで進む集団の脇に、前カテゴリーでパンクして修理している人がかなり多かった。

とりあえず路面選んだり石を避けたりすることはほぼ不可能なので、パンクは運の要素がほとんどか。あと空気圧はあまり低圧だとリム打ちを容易にしてしまう。
レースを走っていて、空気圧を決める際に、試走して路面状況を考慮するのは当然だけど、レーススピードで走ってみるということも重要だなと思った。まったく練習ライドとは違うレーススピードでガレガレの道を走っていると、これじゃ最適空気圧の前提が全然違いすぎるよなと思った。

そんな視界が自分の目の前しか見えないハイスピードオフロードライドを20kmくらい続けた後に、一つめの山岳ポイント。
ここはすごく急でもないし路面が難しいわけではない。
昨年のレースでも同じだったが、最初のカオスで先頭から遅れるだろうと思っていたので、この登りから一気に前に行こうと思っていた。

案の定、登りに入るとどんどんと選手を抜かしてポジションを上げる。一体自分は何位を走っていたんだ?というくらい延々と選手を抜く。
やはり調子良いと感じていた通り、基本的に登りではどんどんと順位を上げていける。
当然抜いて順位を上げれば上げるほど抜かす選手たちも速くなるので、頂上付近で適当な小集団を形成。
見たところ、1分前スタートの40-44カテゴリーの遅れた選手がメインで、45-49の選手は3人くらい。ローテーション回す、ってほどでもないけど先頭集団に追いつきたいという意志を見せてペース落とさないで走る。遅れた40-44の選手よりも追いついてきた45-49の選手のほうが元気で前に追いつきたいインセンティブは強い。

イギリスの小柄なピドコックを彷彿とさせる選手が元気よく走っていて、明らかに先頭まで追いつきたい意志を見せているので、その選手を逃さないようにして自分もペースアップに加わる。
登りでは選手を絞りペースを上げて、ダートの下りではうまい人達にペースを作ってもらいそこから遅れないように走る。
舗装路に出たら地脚勝負で、そこでは優位な方なのでペースアップに加担する。

計3回通過するフィニッシュ地点のPieve di Soligoの街に向かう下り基調を飛ばしていると前方に大きな集団が見えた。そこが45-49のメイン集団だろうという期待のもとに、さらにペースアップして合体を図る。

第1ループ 43〜93km

20秒くらいの差になって、こちらの集団のペースがふっと落ちたので一気に前に出てブリッジを試みる。街中のややカオスな補給ポイントを抜けて、数kmの追走の後に大集団に合流。案の定そこには45-49の選手が大勢居る。
集団の雰囲気が前を追って走る感じじゃないので、おそらくここが先頭グループだろうと思い聞いてみるが、たまたま聞いた選手はこの前に更に選手がいるか把握していなかった。
ただ強そうな選手がたくさん、余裕を持って走っていたのでおそらく先頭集団だろうと感じていた。

地図上右上を時計回りに回る約50kmのループには難所が数多く組み込まれている。とにかく激坂の登りが多い。登りで路面が悪く細い道も多い。
湖畔の平坦も道が細くカーブが続きシクロクロスのようなコース。
下りもハイスピードなガレ場もあり、とにかく難所ばかり。集中してミスしないように走らないといけない。

最初の長めの登りで集団の先頭に出て自分のペースで登る。
登りはペースをカチ上げる人は居ない。というかその前に自分のペースで登りを走った方が順位を下げなくて良い。
ロードレースと違って、下りや平坦で自分が前に出たいと思った時にいけるわけではないので、なるべく番手を下げないで走りたい。

最初の長い登りを先頭付近で走り、なかなかの調子良さを感じる。
登り最後のほうで、前に40-44で1分前にスタートしているたぶちんが見えた。

下ってしばしワイン畑の平地を走ってから湖畔の細いシクロクロスのようなルートに出る前でたぶちんをキャッチ。登りで、かなりペース速かったので、前に何人いる?と聞きたかったけど聞けなかった。後で聞いたら、やっぱりこの時に45-49の先頭を走っていたと。
湖畔のダートの細いワインディングで明らかにコーナーが速い3人が先行したけど無理して着いていかなかった。数秒差が開くが、後ろから抜いてきて集団に乗って10番手くらいでなんとか遅れないように走る。
この湖畔を抜けるとすぐに勝負どころの細い路面の悪い激坂に入る。
入り口から10%超で道は非常に悪くて細くて、足着いたら再乗車は不可能。一人で走っていたら足つくことはないけど、前後に他の選手がいると何が起こるかわからないから、ここはなるべく先頭付近で入って自分のペースで突っ走りたい。
4分6W/kg弱というかなりの難所。作戦通りに一気に前に出てプッシュして登りきった。

そして70秒ほど下ってすぐにまた登りに入る。
ここは3分ほど。最初の1分くらいはこっちの方が路面が悪くて急勾配で、直前の登りよりも難しい。
この2連続の激坂で失敗したら確実に遅れを取って、それをその後で挽回するのは難しいので、一気に勝負をかけるべく先頭で突っ込んでクリアできた。

ところでデータ見ると、この区間5分間で170bpm。ピーク1分間では177bpmと、心房細動での異常値以外ではほぼ見ることがないような数値。
この海外遠征に向けて調整したのがうまくいき、かなり限界まで追い込めたというは事実だと思う。

この区間は事前から勝負どころだと思って気合入れていったのだが、どうも追い込みすぎて自分にしては珍しくオールアウトして回復しなくなってしまっていた気がする。

Garmin Connectで見るスタミナ分析

Garminのデータで見ると2時間ちょいで完全に売り切れている。

その後も急勾配の登りはいくつか続く。
そのつなぎ区間の下りで先頭は10人ちょい。
なぜかわからないが、次の登りまでのつなぎ区間で遅れがちで、戦意喪失してた。激坂で追い込みすぎたのか。

次の登りは見通しの良い道幅広い砂利の登り。道幅広いけど路面が悪いので実際に乗車して走れるのは道路脇のワイン畑との境界の芝生が生えているあたり。その1台分しかないラインを皆で走る。途中ハンドリングミスってラインから外れてしまい足をつく選手もいた。そうするとしばらく勾配が緩くなるまで再乗車できない。

その登りに入る前に、あーこのレースで勝負は無理だな、と思い登りで先頭から離れるのを追うでもなく見送った。
そこの下りがかなり荒れた路面で危ないので、そこも無理せず差を詰めようとはせずに安全にクリア。

そこから有名な激坂「ポッジオ」へ。ここは非常にきれいな舗装路で道幅もじゅうぶんあり走りやすいけど、勾配がキツイ。登坂は1kmくらい。
そこの登り口で前にいる10人ちょいの先頭集団は見えるけど、とても追いつける力はない。というかそんな力あるのなら遅れたりしない。
体力を使い果たした状態でこの激坂をクリアするというだけしか考えられない。
実際ヘロヘロになりながらも、ものすごい沿道の応援を楽しみながら登る。ここはコース中でも有数の観戦スポットなのだ。

ポッジオをクリアしたあとも気を抜けない下りと登りがまだある。
目標とした上位の夢は破れ、前に10人以上はいるという状況でモチベーション高く走り続けるのは難しいけど、将来につなげる為にこのコースでフィニッシュするまで最善を尽くさないといけない。わざわざイタリアまでこのレースのために来たのだから、できる限りの事はやろうと自分に鞭打って走る。

試走時に一度足をついた鬼門のダート登りはうまくいけたと思ったら、チェーン落ち。フロントダブルの功罪。

幸いすぐ乗車出来て激坂をクリアしたら再びフィニッシュ地点まで下り貴重。このあたりはだいぶ手を抜いて走っていた。
しかし舗装路をしばし走りフィニッシュ地点を抜けてからのグラベル35kmくらいはほぼフラット。なのでここは集団に乗っていかないと単独ではかなり遅れを取ってしまう。
舗装路出てただ踏むだけのイージーな区間はペース上げて速そうな人たちの集団にジョイン。各Ageカテゴリーが入り混じっている感じの集団。
序盤からずっと一緒のところを走っていた英国のピドコック似の選手もまた一緒。

第2ループ前半 93〜138km

フィニッシュ地点過ぎると補給所があるんだけど、ほぼサポートスタッフの補給でオフィシャルの補給はいるのか?というくらい見つからない。
最後の方にペットボトルを持っているのがたぶんそうだったと思う。
一応受け取って少し飲んで捨てる。

補給所で自分の目の前を安全確認しないで横切る女性がいて、自分の目の前の選手がぶつかってい自分もそこで足止め食ったが、大事には至らず。

コースの左半分の大きなループの前半はほとんど登りがない。9割方未舗装路で、畑の中を曲がりくねりながら走る。石畳ではないがパリルーベのような感じ。未舗装なので後ろに居ても踏んでないといけない。そして普通のコーナーも油断するとタイヤが滑ってコケる。
この区間は若いカテゴリーのアメリカ人が積極的に速いペースを作っていて、集団はそれを利用して高速で進む。10名も居ない集団だけど、その後ろの方で離れないように必死でついていく感じ。
砂利のコーナーで少し離れると立ち上がりで無駄に脚を使い消耗していくので、走りながら少しずつ無駄を減らすように心がける。
シクロクロスでコースを試走して速く走れるようになるみたいに、この45km区間を延々と畑の中を走り回っているうちに、後半は集団から遅れることなくスムーズに走れるようになっていた。

この区間では人数を減らす事なく、後ろから追い付かれるでも前に追いつくでも誰がアタックするでもなく、グラベル集団高速走行の練習会みたいな感じだった。

第2ループ後半 138〜164km(フィニッシュ)

しばらく走った平坦区間を終えると一つ丘を超える。
登坂区間としては2kmくらいあるけど、後半の700mが壁のような登り。
自分はローギアが33x33Tのギア比1.0で、それは参加者の中で大きい方だと思うので、激坂は必然的に踏んでいく。クルクルは回せない。
それが自分の一番得意な走り方でもある。
自分が走っているポジションは優勝争いから脱落したグループなので、飛び切り強い選手はいないので、終盤に入ったこのあたりになるとだいぶ登りでだれてくるようだ。
短い登りだけど、単独になった。この先はひたすらアップダウンが続く難しい道で、集団走行のメリットとかほとんどないので、とりあえず自分のペースで行ってみる。

登りが急なら下りもかなりの急勾配。
それをクリアしてしばし平坦に出たら今度は川渡りセクション。
川は2回渡るが、その間は砂利が深くて、かなり難しい。エリート選手も前日試走で反復練習しているほど。
川渡りセクションを前にして英国選手が追いついてきた。
今自分が何位を走っているかわからないけど、同じカテゴリーのゼッケン見たらやはり負けたくないので意識する。

川渡りは自分のイメージしているラインがあったので先頭で入ってうまく乗車でこなすことをできた。
英国選手は少し手間取ったようで、そこで少し差がついた。
その後また登りが始まるので、徐々に差を広げて、結局それ以降自分の視界に入ることはなかった。

あとフィニッシュまで25kmで大きな登りは2つ。
基本的に登りは勾配がかなり急、で抜かれることはなく、抜かす一方。
速い人がいたら下りではペースメーカーにしてハイペースを保つ。

中盤に先頭集団から遅れた時は完全に気持ちも切れてしまっていたが、その後変化に富んだ多彩なコースを走っているうちにまたリズムが掴めて前を目指して走れるようになった。

フィニッシュまで10kmを切ったところ、COLLAGUの登りに来た時は感無量。しかし、ここが最後で一番の難所。登りもキツければ下りもキツイ。

距離で見るとたいしたことないが、勾配がキツくなるところから7分くらい登る。

上の看板を過ぎたあとしばしダートの緩斜面が続くが、その後日本の林道でもよく見る丸い凸凹のある舗装路から一気に勾配がキツくなり、1kmほど続く。ここは舗装なのでダンシングで登る。同じゼッケンカラーの45−49の大柄なスウェーデンの選手をここでパス!同カテゴリーの選手を抜かしたのは久しぶりだ。ここで一つ順位を上げたから、フィニッシュまで守りたいところ。
舗装激坂から続いて鋭角ターンで折り返しつつ激坂ダート区間に入る。ここが難所で、路面は滑りやすく一度足をついたら再乗車は不可能。細いので前の人が失敗しても横をすり抜けるのは難しいだろう。
更に頂上付近が一番勾配キツく23%。自分のローギア1.0でも練習では問題なく(ギリギリ)登れる旨は確認していたが、レースではだいぶ勝手が違った。5時間以上ハードなコースで体力を使い果たした後での最後のダート激坂は自分の力でクリア出来たか、自信はない。ただこの最後の難所にやはり応援してる観戦者はたくさんいて、止まりそうにあえいでいるお尻を押してくれたのでなんとか足を着かずにクリアできた。
(尻を押しながら『軽っ!』って言われた)

ルールで禁止されているとかズルをしたと言われれば否定することは出来ないが、こちら(欧州)の土壌ではそれも含めてレースという感じがする。その大らかなレースカルチャーや観戦スタイルに助けられた。
きっと後ろの大きなスウェーデン人も尻を押されたことだろう。

最難関の急坂をクリアした直後にコース中最も難しい下り。勾配もあり路面は大きくえぐられており石も大きく、とにかく転ばずに乗車してクリアするのが課題の下り。登りで抜かして順位上げても下りのワンミスで再逆転されてしまう。
ドロッパーポストが欲しいと思うくらいの激しい下りを慎重に下る。練習では4回走って初回除いては転ばずにクリアできたところだったが、肝心のレースで最後に深い砂利に前輪を取られて転んでしまった。幸いスピードは全然出してなかったので身体も機材も問題なく、すぐ乗車して走り出せた。
後ろから追っ手が迫ってくることもない。

そこから最後の小さい登りを経て豪快なダウンヒル。細い道なんだがブレーキレバーから指を離すと一瞬にして60km/h→70km/hになるフルーフォール。

山から出る下りの最後の石段

山から出る最後は神社の石段のような大きな段差。リム打ちしないように注意してクリアしてようやく舗装路に出てあと3km。エリート優勝のモホリッチが砂に滑って落車したのがこのあたり。

その後2kmほど細い裏路地みたいなコースを走る。

こんな道をレースで走る

慎重にかつ全力でフィニッシュを目指す。
ラスト1kmほどで幹線道路に出て広い道路でフィニッシュへ。
最後のコーナーまでしっかりとエアロポジションで踏み続け、見通しの良い直線で後ろとまだ相応に差があることを確認して、最後の右コーナーを曲がってフィニッシュへ。
下りながら直角コーナーで少し下ってゆるく曲がりながら登り返してすぐがフィニッシュライン。もしスプリントするなら下りスプリントになるから、集団スプリントはほぼ想定していないレイアウトに思える。

自分がフィニッシュした1秒後にすごい勢いでスプリントした集団が入ってきていた。
後ろと十分な距離があるのを確認して流してフィニッシュしたが集団スプリントは予想以上のスピードで危ないところだった。

S-WORKS ROUBAIX 

リザルト

11位。世界トップとの差は大きい。

出典:https://granfondodailynews.com/historical-uci-gran-fondo-world-championship-results-archive/

過去の大会の中で一番優勝者との差を感じた大会だった。
この年齢カテゴリーで分けてアマチュアの世界チャンピオンを決めるというUCIの作った流れは年々人気を博して競争が激しくなってきている気がする。
そうなると世界チャンピオンを目指すという夢はどんどん厳しくなっていくわけだが、夢を諦めずに続けていけばきっと良いことがあるだろう。と信じて追い続けようと思う。

写真:Trycle 田渕さん

おしまい


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