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【RX高岡】 2021.10.10 Granfondo World Championship in Istocno Sarajevo 2位

UCIグランフォンドとは

UCI(世界自転車競技連盟)が管轄するレースはいくつかあるが、その中でプロ選手は出場出来ず、アマチュアというくくりの中で世界チャンピオンを決めるのが当大会のUCIのグランフォンド。
グランフォンド(以下GF)というのは競技名ではなく概念的な気がする。なぜならGF世界選手権の中に競技としてRR(ロードレース)、ITT(個人タイムトライアル)、チームリレー、などがあるから。

チームRoppongi Expressを立ち上げた2017年にAlbi(フランス)で初参加して2位、2019年はPoznan(ポーランド)で3位。今年で3回目の挑戦。
私がこのレースが好きで、何度も挑戦して、絶対にいつかは勝ちたいと思う理由は、UCI公認のカテゴリーで、このレースで勝てば正真正銘の世界チャンピオンを名乗れるから。そしてその名誉としてレインボーストライプを自チームのジャージに入れることが出来る。いつかは叶えたい夢。

コース

コースは長い峠を3回登ってから更にゴールへ登り続けてゴール地点は1590mというかなりの山岳コース。

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ただし、悪天候により周回数が3から2に減らされたので距離は96kmに短縮。
①スタート〜30kmほど市内・郊外の平坦路を走る
②Lukavicaからトータル20km以上登り
③一気にLukavicaまで700m以上下る
④再度同じ峠を登るが、最高地点前に左折して一度3km強下ってからゴールまで7km弱の登り
というプロフィール。距離は短いが2400mほど登るコースに不足はない。

天候

今回は天候が一番のポイントになった。レース日の1週間前までは最高気温24℃とか。良い感じだったのだが、その頃から週間予報見ると週末には10℃近くまで気温が下がっている。そして水曜あたりから毎日雨予報。まぁ予報は変わることもあるだろうと楽観視というか変わることに期待をしていたが、、、
変わってはいったが、悪い方へ。
現地到着以降常に雨。気温は毎日下がる。しまいには、最高気温は一桁。フィニッシュ地点では0℃くらいで雪予報。
天気予報サイト見ると、例年では18℃くらい。昨年は23℃。今年は7℃、とかそれくらい珍しい天候で一気に冬になった感じ。
日曜レースだけど木曜にはUCIはExtremeなWeather Conditionによりレース距離短縮を決定。
気温一桁で雨確実、という予報でいつもならテンション激下がりどころか、低体温でパフォーマンス発揮できないので出走も諦めるレベル。しかしこれは長年挑戦し続ける大事なレースだし安くない旅費と1週間の旅行+2週間の自主隔離期間という犠牲を払ってまで挑戦したいと思って来たレース。

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レース当日、6時に起きて宿から見た外の風景。宿はフィニッシュ地点から徒歩3分くらい。

ここでは詳細は割愛(ブログに書こうかと)するが、出来る限りの準備と覚悟をもってレースに臨んだ。

ライバル

正直海外のアマチュア選手の細かい事はわからないが、念の為前日に調べていたら一人強い選手発見。
Mr. Igor Kopse。スロベニアの45−49歳カテゴリーに出る選手で、過去UCIのアマチュアカテゴリーで6回世界チャンピオンになっている。そしてアワーレコードは50.59km!8月の同コースでのプレ大会でも元プロのJonny Hoogerlandから大きく遅れずにゴールしている。
私の出る40−44歳とは違うカテゴリーだがスタート時間は一緒で同じレースを走ることになる。間違いなく圧倒的に強いので彼がレースを引っ張る展開になるだろうから、しっかりその動きに乗れるようにしようと。
作戦はそれだけ。

レース

10:05に40−44と45−49の2カテゴリーが同時スタート。計100名ほど。
気温は8℃ほどで雨。8℃だと気温上がったなぁという感覚になっていた。

先ほどのコースプロファイルの順番で。

① 最初の平坦路30km
スタートは最後尾からのんびり。山岳に入る前にいいポジションにいれば良くて、最初から焦る必要ない、と思いスタート。ローリング区間はなく、スタート直後から先頭はすごい勢いで一列棒状。そう言えばこれってロードレースじゃなくてグランフォンド(足切り時間が非常に緩く、完走するのも意義がある)なので、トップについていってレースするのが目的じゃない人もけっこういる?と考えるとスタート直後にレースが終わってしまう可能性もあると思い、慌ててダッシュして前へ急ぐ。
スタート後2kmちょいで左折して細い10%・800mほどの登り区間に入るのでその前までに集団前方に上がらねば。ということでいきなりエンジン全開。無事前が見えるところで登りに入り、そのまま集団の中で登りをこなす。おっと、Garminに入れておいたGPSルートと違う道へ、、、まぁ海外だからそれくらいでは動じない。無事にはじめの丘をクリアして登った分を下る。このレース全般的に、登りは細く路面悪かったりするが、下りはきれいで道幅も広い。それゆえ下りはスピード出る。
まだスタートから5kmもいかないところで目の前で2人が絡んで一人落車。かなりのスピードで派手に落車してた。海外のレースに来てスタート直後で、、、南無。

少し市街地を通ってからは郊外へ向かう広い道路を走る。路面と進行方向に細心の注意を払いながら集団内で平和に過ごす。途中一度対向車が来た。まぁ海外レースなので。
事前試走しているのでどういうコーナーがあってどこの路面が悪いなどは全部わかっている。大事なレースではコレ絶対必要。
30kmほどで登り口になるのだが、やはりそこに近づくにつれ少しずつ速度が上がっていき、先に名前上げたIgorは集団前方に位置するようになった。やはり強い人は位置取りもうまい。
ロータリー曲がって登りに入るところではしっかり先頭で入ってから速度上げて後ろの集団を縦に伸ばすなど、上手い。私ももう10番手には上がって登りに備える。

ところで、序盤に水を飲もうと手を伸ばしたらボトルが一つ吹っ飛んでなくなっていた。まぁ寒くて喉が渇くことないから大勢に影響ないけど。

② 1回目の登り
10kmは登りが続くのでアタックに注意というよりは常に前方に位置して速度変化に対して柔軟に対応出来るようにする。登りがキツくなるところでは同じリズムで走っていても集団の前に出るので、調子は良いようだ。勝負の時まで慎重に走る。
最初はスロベニアの選手が先頭でペースを作る。すぐ2番手にIgorがつく。私もその後ろをピッタリとマーク。まだまだ限界まではいかずに良い感じで走れている。
登りがキツくなるあたりからスウェーデンの選手が前に出てペースを作る。いかにもヒルクライマーという感じで、けっこう速い一定ペースで牽き続ける。たぶん先頭交代して体力温存するよりも自分のペースで走り続けるのが得意なタイプなんだろう。Igorはピッタリと2番手についている。私もそこについて、先頭固定・その後ろにIgorと高岡、というほぼ先頭3人固定で登り続ける。
私がちょうど良いと思うくらいのペースで登り続けてくれるので、これで集団の人数は減っていくだろうなと期待しながら、集中して走る。
先頭牽くスウェーデンの選手は強いけど、千切られなければ、アタック合戦とか速度の緩急が出る勝負では負けないだろうなと。明らかに(私と同じく)そのペースを利用して後半の勝負に備えているIgorがやはり一番強いのは明らか。

10kmほど登ると一度勾配が緩くなり、平坦気味なワインディングに入る。道は引き続き悪い。グラベルに近い。

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これは試走時に撮った写真だが、路面は穴だらけ、雨で石や泥が流れてくる、でかなりの悪路。

そんな悪路のワインディグで大きなミス。なんてことないワインディングで路面のギャップにより両手がハンドルから離れて落ちてしまい、身体が自転車の前方に投げ出されてもはや落車は避けられないか、という体勢になってしまう。膝がフレームにぶつかって、肘がかろうじてハンドルに乗って持ちこたえて転ぶのを免れた。左手はハンドルから落ちた際に前輪にぶつけた気がする。
ワインディングで前の路面が見えていなかったのと、寒さにより手でハンドル保つ力が抜けていて、すっぽ抜けてしまったんだろう。
とにかく絶対に落車かと思われた体勢から持ち直す。集団皆に一旦抜かれるが、体勢立て直してすぐにダッシュして追いつく。ここで15人は居なかったか。

その後はほぼカーブはないけど非常に路面の悪い下りが1−2km。雨で路面ウェットで霧で視界が非常に悪いという悪条件なので私は下りは少し間空けて走る。登り返しですぐに追いつくくらいの距離で走る。
1kmくらい登り返して幹線道路に出る分岐。オフィシャルの動画見たら、一人逃げていて、その後ろに11名の集団。そこに福田さんがサポートで待っていてくれたけど、寒さで水飲みたいでもないので何も受け取らず。また脱いだウィンドブレーカーを渡すということも考えていたが、10km以上登ってもウィンドブレーカー脱ごうと思わないほどの気候なので、何も受け取らず何も渡さず。

分岐を右折して幹線道路に出てからまた2kmほど登る。逃げていた一人はそこで吸収。道幅広いけど8%程度のけっこうな登り。しかしグラベルぽい峠を超えた集団は一息という感じで誰も仕掛けず、この登り区間はかなり落ち着いたペースで越えて長い下りへ。

③ 長いハイスピードダウンヒル
道幅広くてコーナーも緩い。そして標高も1300mくらいから一気に下るので空気薄くて非常にハイスピード。
今日の大きなポイントはこれが雲の中で視界が極めて悪かったこと。視界は30mほどしかない。3人前の選手が雲の中に消えていく感じ。5人前は見えないくらい。そこを70km/hオーバーで突っ込んでいく。先のコーナーの雰囲気を見てGarminの地図表示をチラ見してコーナーの大きさを確認して突っ込んでいく。まだ私は何度も車で通ってコースが頭に入っているから良かったけど、コーナー途中でペダルから足を外す選手が何人か居た。
ここで落車は絶対に避けなければいけないけど、一方でここで勝負から脱落したくもないので、ついていく。3人前までしか見えないので、どこが先頭かわからないけど、前が遅いと思ったら抜いていき、見えている選手から離れないように下る。
唯一ハードブレーキングが必要なヘアピンで試走していなかった選手だろうか、一人ブレーキが間に合わずに盛大にスリップして滑っていった。
それを見ながらヘアピンをこなして前を急ぐ。その後にハイスピードの複合コーナーから登り返しがあるので、その複合コーナーをいかに速く突っ込むかで登り返しの速度が大きく変わるので、ヘアピン抜けてからダッシュして勢いよく複合コーナーに突っ込む。そこらへんで霧が薄くなり前を確認。Igor+2人くらいが登り返しでダッシュしているのが見える。そこが先頭っぽい。下りの勢いを活かして離そうとしているのをすぐに感じたのでダッシュしてブリッジ。後ろは離れている。そのまま先頭交代してハイペースを維持していく。スタート後に通った下りを経て2周めの山岳へ向かう頃には7−8名の集団になっていた。
完全な山岳コースで登りで勝負が決まるとばっかり思っていたが、登りで人数減った集団は下りでもセレクションにかけられて人数が絞られていた。

④ 再び峠を登るが山頂付近から下らずにさらにゴール地点まで登る
7-8名の集団だが、数人は5分前出走のカテゴリーから落ちてきたもの。同スタートは45−49のIgorと40−44の3名のみ。このままいけば表彰台か。という最低限は確保できたけど、そこが目標ではないのでまだまだこれからと気を引き締める。3人の勝負だけど、1人は単独で逃げていた選手なので、おそらく後半勝負では勝てるだろう。
早くもカテゴリーでのライバルが居なくなったIgorさんがこのまま行けば優勝だから俺が牽くよ、と言って集団牽引を始めた。緩斜面をけっこう速いペースで牽くのできついけど、いつもよりは若干余裕あるから調子が良いのだろう。勾配がキツくなると相対的に優位になり前に出ることが多い。

看板がたくさんある大きな左コーナーを曲がってから登りが急になってくる。そこで私が自然と前に出るので、アタックではないけどあえて抑えはせずに自分のペースで牽いていく。山道だけど先頭を牽くのはIgorか私が多い。そのうちに前半に逃げていた選手が遅れていった。予想通り。これでチェコとの一騎打ちになる。
チェコの選手の方が軽いギアでかなり頑張って回して付いてきている感じ。ここからのペースアップは厳しそうな感じがする。
Igorも急勾配だとそんなに速く感じないので、急坂では五分五分か。

途中路面も悪くほぼグラベルで急勾配が続くあたりでIgorがアタック気味でペースを上げる。私は一定を保って様子を見た。チェコも動けず見送る。
ここが勝負のポイントだった。ジャンプして追いつく選択肢はあった。どうしようか?と考えたくらいだから、間違いなく追いつく距離だった。チェコがどうかと言うと、50/50くらいかなと予想。かなりキツそうだけど、意外と一発のパンチ力はあるかもしれない。
チェコが反応しなければ、前2 vs 後1になるので圧倒的に優位。しかも前2人はカテゴリー違うので最後まで牽制せずに一緒に行ける。ただ、チェコもついてきたら、まぁお互い脚を使ったのでそこからの勝負だろう。本当は、そういう脚の削りあいみたいな走りをしなければいけなかった。

Igorが行って、それを見送ったらどうなるか。たぶん。後に追いつかれることはないだろうから、2人でのレインボージャージ争い。今登りで優位に感じているので、あと10km以上登りを走った後のゴール前の急坂では確実に比較優位は大きくなっているはず。
なので焦らずに、じっくりと2人での勝負をするのが良いだろう、と判断した。これが間違い。

10kmほど続いた登りが終わり、若干のフラット区間に入るとIgorの元気が良くなる。協調して走る。前を追うでも後から逃げるでもなく、完全に2人の勝負。
途中で前から降ってきた違うカテゴリーの選手が1人合流して走る(合法)。
チェコは一回ローテ飛ばし、脚を溜める。ちょうど私が前にいる時に寒さと勾配変化から脚(ふくらはぎ)が硬直してしまい少しペースダウン。まぁ脚が攣るとか攣りそうになるのは珍しいことではないけど、ちょっと程度は重い方。たぶん後から脚攣ってるなぁってバレてたと思う。

補給所過ぎて一旦グラベルな下り区間に入る。この下りに入るところでチェコがペースアップして下っていく。明らかに下りを狙ったアタック。1周目の下りで、私があまり速くないのが分かっての動きだったと思う。
勾配もコーナーも急ではないがとにかく路面が悪い下り。そして引き続き霧の中で視界が悪い。悪路なので後にピッタリ付くと路面が見えずに怖いので、少し車間空けて走るが、確実に踏んで引き離しにかかっている走り。それでもウェットで路面悪く視界がないという状況なので、ここで焦らずに登りで必ず追いつくと思い落ち着いて走っていた。
下り終わって登り返すところで3秒ほどの差だったと思う。ここから路面きれいで下り基調な幹線道路に出るまで1kmほど登る。そこで追いつけば良い。と思っていたけど、登り返してからむしろ差が広がる。下りでちょっと差をつけようというよりもかなり本気のアタックで勝負かけてたみたい。コレはマズイ。幹線道路に出る直前の最後の急坂区間で追いつかねば、と思い詰めるが追いつかなかった。
まだこの時は勝負がついたとは全然思っていなかったけど、結果的にここで勝負アリだった。

1周目は右折した分岐点を左折してからはきれいな路面の緩やかな下り。
分岐点では確実に3秒以内の差まで詰め寄っていたけど、ここはスプリントのつもりでとにかく幹線道路に出るまでにキャッチする走りをしなければならなかった。
道幅広くて路面きれいでウェットな下り基調が4km近く続くんだが、そこであっという間に見えなくなってしまった。下りなのでスピードが出るのだが、ウェットである程度のコーナーがあるので、それを攻めきれずにスピードの乗せられない私を尻目にあっという間に加速してコーナーに消えていった。
その区間が終わって右折してから7km弱頂上までのヒルクライム。おそらく30秒近くのタイム差がついてしまっていた。直線的で極めて勾配が一定のヒルクライムで、はるか遠くに背中が見える。

もう目と鼻の先の3秒差まで詰め寄っていたのに、下りを攻めきれない区間でここまで大きな差がついてしまった。それでも焦らず自分のペースで淡々と登り続けるしかないので、諦めずに小さな背中を見て、少しでも詰められるようにプッシュし続ける。しかし前方の背中は小さくなるばかり。
6.7kmで400mくらいを登る最後のヒルクライムをしながら、負けを認める。また勝てなかったなぁと思いながらゴールまで。下りで離されたとはいえ平地でも差が広がり、最後のヒルクライムでも差は広がったので、完全に力不足で負けた。

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フィニッシュ100mほど前の、優勝したチェコのGondaさん。なんと、この気候で生脚。

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完全武装でスタートして、一度も何も脱がずにゴールまできた私。けどそのおかげでこの気候(0℃近い)で雨の中でも凍えずに走り続ける事が出来た。

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急勾配の頂上フィニッシュだから、ゴールスプリントとかすごい勢いで入ってくるのは想定していない。フィニッシュラインからこの距離で自転車を降りる事を求められる。

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ゴール後

優勝してレインボージャージを着るという目標達成はまたお預けになったけど、この悪天候の中トラブルなく無事に走り切れたこと、3回目の表彰台確保というリザルトを残せたことには満足するしかない。

フィニッシュ地点はホテル前で、そのホテルの入り口でホットワインが振る舞われる。

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表彰式までホテルの中で待つ。自転車ジャージ着用がルールで、Japanジャージはレース用しかないので、着用のままで2時間くらい待ったかな?けどホットクリームを塗りたくったので寒さはまったくない。

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この表彰式に日の丸が出るのは嬉しい。しかし優勝して君が代が流れたら100倍嬉しいだろうな。
いつの日にか

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安堵感というか、満足感に満ちたレース後。
この遠征も楽しかったし、ここまで準備してレースに向けて集中してきて本当に良かった。

来年はイタリア。また挑戦するぞ。
どうもありがとうございました。引き続き応援よろしくお願いします。

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