30年ぶりに釣りをしてみようと思う (5)

2020/06/20 9:30PM-2:30AM ほぼ満潮〜下げ8分
ミッドタウンの釣具屋がコロナのせいで閉まっている話は以前書いたけれど、Googleマップでfishing tackleと検索すると、わりと近所の熱帯魚店がいつも引っかかる。どうせサカナつながりのエラーだろうと思っていたんだけれど、あらためて店内写真をスクロールしていったところ、どうも熱帯魚店の一部が釣具コーナーになっているようなのだった。マジかよ。というわけでスキップで出かける。

その店Pacific Aquarium & Plantは行ってみると看板に「太平洋水族館」と書かれていて、つまり中華系の人がやっているお店なんだとわかる。COVID−19による入店制限が敷かれていて、店の中に入れる客は2、3組のみ。外で順番待ちの待機列が2人。並びながら内部を覗き込むと、レジ周りにだけ、確かに釣具が置いてある。灯台下暗すぎた。

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店員は50代なかばのおじさんと、20代前半の若者。親子かな。あと白人女性がひとり。ピアで釣りしてる人を見かけて、やってみたくなったんだけど……と言うと「何釣りたいの?」と若者。何が釣れるの? と聞き返すと、ストライプドバス、イール(鰻)、シャッド(日本でいうサッパかコノシロみたいなの)、まれにブルーフィッシュとのこと。ストライパーかなー。と言うと、さすがローカル店、すかさずピアのみなさんが使ってるのとまったく同じブッコミ仕掛けを提案してきた。

エサ釣りじゃなくて、ルアーやってみたいんだ、と言ったものの、ルアーが通じない。陳列されたルアーを指差して、「こういう……バイブレーションとかどう?」と聞くけど、今度はバイブレーションが和製英語で通じない。あれはリップレスクランクベイトというカテゴリだと教えてくれた。そして「OK、みんなミノーで釣りたがる。見た目がラブリーだしかっこいいから。でも無理ね。すごい難しい。エサなら釣れるよ」。世界どこでも釣具屋の言うことは一緒だなーと思う。

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じゃあイミテーションで釣るとしたら? 食い下がってみるとなかなか盛り上がるレコメンドが返ってきた。「まずソフトベイト。組み合わせるのはジグヘッドでもいいけど、僕が使うのはバックテイルジグ。これでデカいストライパーもフルーク(ヒラメ)も釣ってきた」。といって出てきたのは、ラバージグのラバーの代わりに動物の毛が付けられた、日本では見かけないタイプのジグヘッドだった。

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じゃあそれ買う。あとソフトベイトも買う。他には?「あとはダイヤモンドジグ。これは安くてよく釣れる」。聞いたことないルアーばっか出てくるの最高だな。そうして出てきたのは、メッキされた細長いオモリに超ロングシャンクのシングルフック、フックにはラテックスのチューブが被せられた、だいぶ原始的なフィーリングのルアーだ。というかこれ、ほぼオモックじゃん。面白い。そして安い。

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じゃあこれも買う。あとは?「巻いて動かしたいなら、スプーン。ミノーよりスプーンのほうが釣れる」。マジで? じゃあスプーンも買う。「スプーンは遠投しないとダメだよ。遠投するには重くないと」。俺の竿、1ozまでって書いてあるんだけど。「じゃあ、はいコレ」。めちゃくちゃ無骨なシルバーのスプーンが出てきた。なんだか50年前みたいなラインナップになっちゃったけど、お会計。

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これでルアーの目処は付いた。いよいよ本番じゃ。夕暮れを待って、きのう目処をつけたウィリアムズバーグブリッジの橋脚まで歩く…つもりだったけど、目の前でバスが来たので乗ってみる。誰もいないので竿が邪魔になることもなく、めちゃくちゃラクできちゃったなー。麻薬的。終点で降りる。降りた瞬間、花火の爆音。あーこれは……。橋下の遊歩道はワイワイ(注:陰キャサーファーが、ギャル連れBBQありの楽しげなサーファーグループのことを指す、心の捻ね曲がった隠語)で埋め尽くされていた。5グループくらい、50人以上いる。

 とりあえず空いた場所を探しにテクテク歩いてると、ワイワイのなかに釣りしながら飲んだくれてる人が3、4人いて、ひとりが声をかけてくれた。「ベイト持ってるか? もう帰るからあげるよ」とアジの刺身みたいのを見せてくる。あーごめん、artificialでやろうと思ってるんだ。「イミテーション? 釣れねーぞ。エサでやれエサで!」みんな同じこと言うなー笑。

時間は9時すぎ、タイドグラフを見るとちょうど上げ潮いっぱいくらいなんだけど、タイムラグがあるみたいで、まだ川はゴウゴウと逆流している。流れと障害物があるとき、障害物の下流側に流れの陰みたいなところができて、そこに魚がいる、というのがセオリーなので、教科書どおり、橋脚の陰を狙ってスプーンを投げた。まずは表層のほうからリトリーブだ、と思うのだが、それどころではない。すぐに流されて、狙ったところからどんどん遠ざかっていってしまう。

あれだ、ストラクチャーぎりぎりを狙えってやつだな。何なら橋脚に当ててポチャンって落としたらいいんじゃないの?→みごと橋脚に命中、そのままボルトかなんかに引っかかりました。さようならスプーン、8ドル49セント。その後ダイヤモンドジグに変えてボトムをズル引き→10投もせずに根がかり。さようなら3ドル50セント。おいおい1時間も経ってないのに1300円弱が溶けていったぞ。FXかな?

ならば、とバックテイルジグ+Gulpの5 inchグラブでいろいろ探るも、アタリひとつなく、ピア35に向けて移動しながら投げては引いてみる。こういうのランガンっていうんじゃないだろうか。何も起きないけど。そして目的の桟橋でやってみるけど、1ozのジグヘッドなのに着底すらしないの、流れが強すぎて。そして釣り人が誰もいない。もう12時を回ってるからかな。流れが強すぎて釣りにならないってみんな思ってるせいかもしれない。2時すぎに根気が切れて引き上げる。マジ釣り1日目は何ひとつサカナの気配もなく終わった。





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