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【MLB】Prince Fielderの殿堂入りについて考える(完成版)

どうも、フィリーズ担当のペンです。
今回はフィリーズと関係ないちょっとした読み物を書いてみました。
よろしければお読みください。
それでは、noteスタートです。

序文〜Prince Fielderのキャリアまとめ

今年殿堂入りノミネート1年目を迎えたPrince Fielder。
父は阪神でも活躍しメジャーリーグでもシーズン50HRに2年連続HR王、3年連続打点王に輝いた巨漢スラッガーのCecil Fielder。
息子のPrinceも父と同様巨漢スラッガーとして活躍。
2002年にブリュワーズからドラフト1位で指名(マネーボールでA's陣営から体格について酷評されたエピソードも有名ですね)されると順調に成長し2005年にメジャーデビュー。
2007年にはシーズン50HRを記録しHR王を獲得。メジャーリーグ史上初めての親子でシーズン50HRを達成しました。
以降もメジャーリーグを代表するスラッガーとして活躍、フルシーズン1年目となった2006年から2013年までは162試合フル出場4回を記録するなどほぼ試合を休まないタフさも見せていました。
そんなPrinceの順調なキャリアに暗雲が漂いはじめたのはレンジャーズにトレード移籍した2014年のこと。(そこレンジャーズにトレードされる前から奥さんとAvisail Garciaが不倫して家庭は暗雲ばかりだったとか言わない)
5月中盤に椎間板ヘルニアを発症しキャリア初の長期間の離脱を経験。たった42試合の出場でシーズンを終えます。
2015年には復帰しオールスター選出やカムバック賞受賞など復活を印象付けましたが、2016年に再度椎間板ヘルニアを再発。手術など治療を試みたもののドクターストップにより32歳の若さで突然その輝かしいキャリアを終えることになりました。
首にコルセットをつけての引退記者会見を覚えている方も多いと思います。
12シーズンでキャリア通算319HR、オールスター6回選出、HR王と打点王を1度ずつ獲得は十分素晴らしい成績だと言えます。

Prince Fielderの殿堂入りの可能性

全盛期の途中での無念の引退であったとはいえ、私を含むメジャーリーグファンのほとんどの方々はPrinceが殿堂入りするとは考えていないでしょう。
むしろ、1年目でセレクションからも消えてしまうと考えているのではないでしょうか。
しかし、ある時私は以下のように思ったのです。

「Kirby Puckettが殿堂入りするのなら、Prince Fielderも殿堂入りできるのではないだろうか」

Kirby Puckettは80年代中盤から90年代中盤までツインズ一筋で活躍したスター選手です。
1996年に緑内障の影響で右目を失明しキャリアの途中36歳で引退。引退前年の1995年も打率.314 23HR OPS.894と主力として大活躍していました。
Princeと同様に12シーズンと短いキャリアに終わりましたがPuckettは殿堂入りノミネート1年目の2001年にストレートで殿堂入りを果たしています。
同じように怪我・病気による形で若くして引退した2人なのにどうしてこの2人の評価にはここまで差があるのでしょうか。

PrinceとPuckettの比較の前に

PrinceとPuckettの他にも短いキャリアながら殿堂入りを果たしている選手は少なからずいます。
2人を比較する前に短いキャリアながら殿堂入りを成し遂げた選手を2名紹介し、なぜ彼らが殿堂入りできたのか簡単にまとめてみたいと思います。

・Sandy Koufaxの場合

メジャーリーグ史上でも屈指の左投手であるSandy Koufaxは短いキャリアで殿堂入りを達成した代表的な選手としても知られています。
30歳でキャリアを終えたKoufaxはそのキャリアの最後の6シーズンでとんでもない成績を記録します。

Sandy Koufax 1961-1966年獲得タイトルまとめ

 ・MVP 1回(1963年)
 ※1965-66年はどちらの年もMVP投票2位
 ・サイ・ヤング賞 3回(1963, 65-66年)
 ※この時期はメジャーリーグ全体で1名選出
 ・最多勝 3回(1963, 65-66年)
 ・最優秀防御率 5回(1962-66年)
 ・最多奪三振 4回(1961, 63, 65-66年)
 ・オールスター選出 6回(1961-66年)

今の時代で簡単に言ってしまえばメッツのJacob deGromが数シーズンの間故障者リストに入らずに投げまくったというのがキャリア晩年のKoufaxとなるでしょうか。
しかし、あまりにも無理をして投げ過ぎたため左肘が限界を迎えてしまい「野球を辞めた後も続く長い人生を健康な身体で送りたい」というコメントを残しキャリアの絶頂期にユニフォームを脱いだのです。
そして、6年後の1972年Koufaxは史上最年少36歳の若さで殿堂入りを果たします。
上のまとめでも分かる通り、通算165勝しかしていないKoufaxが殿堂入りできたのは「最大瞬間風速の成績がメジャーリーグ史上屈指のレベルで飛び抜けていた」からと言えます。(最大瞬間風速とは言っても約5年ほどの期間はありますが)

・Hank Greenbergの場合

Koufaxの打者版と言ってもいいのがユダヤ系で最初のスター選手と言われるHank Greenbergです。
Greenbergは通算13シーズン(実際にフルシーズン過ごしたのは9シーズンのみ)で1,628安打、331HRの記録でキャリアを終えていますが見事に殿堂入りを果たしています。
Greenbergのキャリアが短くなった理由は第二次世界大戦にあります。Greenbergはメジャーリーガーとして初めて徴兵に参加した選手であり、1941年5月から約4シーズン半の間メジャーリーグから離れています。
第二次世界大戦に参加したメジャーリーガーは他にもTed WilliamsJoe DiMaggioといったGreenbergと同じく殿堂入りをしている大選手たちがいますが、彼らは1942年のオフに兵役についておりメジャーリーグでプレー出来なかったのは1943-45年の3年間だったことを考えるとGreenbergが他の選手たちよりも1シーズン以上長く兵役に就いていたことが分かります。
実際に上記のWilliamsやDiMaggioと通算成績を比較するとGreenbergの積算系のスタッツが2人より劣っているかが分かります。

  • Hank Greenberg 13シーズン 1,394試合 .313 1,628安打 331HR OPS 1.017

  • Joe DiMaggio 13シーズン 1,736試合 .325 2,214安打 361HR OPS .977

  • Ted Williams 19シーズン 2,292試合 .344 2,654安打 521HR OPS 1.116

19シーズンを過ごし500HRも記録したWilliamsはともかくDiMaggioでさえ13シーズンで2,214安打とその他の殿堂入り選手と比べると積算の数字が弱いのが分かるかと思いますが、GreenbergはそのDiMaggioと比べても試合数で300試合以上、安打数で600安打近く劣っています。
しかし、Greenbergはルーキーシーズンである1934年と引退年となった1947年以外のフルシーズン7年間でシーズンMVPを2回、HR王と打点王を4度ずつ獲得。その期間のOPSは必ずメジャーリーグ全体で5位以内を記録とカーディナルス時代のAlbert Pujolsのような破壊力と安定感を併せ持った成績を残しています。その全盛期中の安定したハイパフォーマンスのお陰でノミネートから9年はかかりましたが1956年に殿堂に選出されたのです。

本題に戻って〜Kirby Puckettのキャリアを振り返る

先ほど触れたKoufaxやGreenbergからも分かる通り短いキャリアで殿堂入りをした選手は 短期間ながらも「圧倒的に質の高い成績」を残していたことが分かります。(繰り返しになりますが短期間とは言っても最低でも5年以上の単位の話です。Tim Lincecumのように2年連続でサイ・ヤング賞を受賞しても選手としてのピークが圧倒的に短ければ殿堂入りすることはできません。)
それでは、今回私がPrinceの比較対象として思い浮かべたPuckettのキャリアはどのような成績だったのでしょうか。
確認してみましょう。

Kirby Puckett 通算成績・タイトルまとめ
 ■ 成績
 通算12シーズン(1984-95年)
 1,783試合 .318 2,304安打 207HR 134盗塁 450四球 965三振 OPS .837
 ■ タイトル他
  ・首位打者 1回(1989年)
  ・打点王 1回(1994年)
  ・最多安打 4回(1987-89, 92年)
  ・オールスター 10回選出(1986-95年 ※10年連続)
  ・ゴールドグラブ 6回選出(1986-89, 91-92年)
  ・シルバースラッガー 5回選出(1986-89, 92年)
  ・打率3割以上 8回(1986-89, 91-92, 94-95年)
  ・200安打以上 5回(1986-89, 92年)
  ・ワールドチャンピオン 2回(1987, 91年)

『なんかもう守備力の時点でPrinceと比べる必要なくないか?いや、この頃はまだ守備指標とかないし…』
…独り言は置いておきまして、Puckettの成績を見ているととある選手と似ている感じがしてきます。

Kirby Puckettの特徴
・高打率(同じ時代にWade Boggsとかいう打率と出塁率のお化けがいたので首位打者は1度のみしか獲得できていませんが)
・四球が少なく安打が多いスタイル
・ゴールドグラブ常連の外野守備

こう書くと分かりやすいですね。
Puckettはイチローと似たタイプの選手に見えます。
「イチローから盗塁を引いてHRを多くしたらPuckett」
と言ってもおかしくないかもしれません。

もしイチローのメジャーリーグでのキャリアが12年で終わったとしたらどうでしょうか?
まずイチローの2012年までの成績を確認して、Puckettと比較してみましょう。

Ichiro Suzuki 2001-2012 成績・タイトルまとめ
 ■ 成績
 1,911試合 .322 2,606安打 104HR 452盗塁 518四球 813三振
 ■ タイトル他
  ・MVP 1回(2001年)
  ・首位打者 2回(2001, 04年)
  ・盗塁王 1回(2001年)
  ・最多安打 7回(2001, 04, 06-10年)
  ・オールスター 10回選出(2001-10年 ※10年連続)
  ・ゴールドグラブ 10回選出(2001-10年 ※10年連続)
  ・シルバースラッガー 3回選出(2001, 07, 09年)
  ・打率3割以上 10回(2001-10年 ※10年連続)
  ・200安打以上 10回(2001-10年 ※10年連続)

上で書いた「イチローから盗塁を引いてHRを多くしたらPuckett」という表現はかなり的を射ているように感じます。
イチローと比較出来るほどの万能な外野手でオールスターの常連でもあった人気選手が12年間大きな怪我なく活躍し、そして突然の病で引退を余儀なくされた。
こう考えるとPuckettはKoufaxやGreenbergほどのインパクトのある成績は残してはいないですが殿堂入りして当然の選手だったと言えるのではないでしょうか。(さらに80年代はメジャーリーグ全体の打撃成績が低調な時期であったことを加味するともっと評価していいかもしれません。)

PrinceとPuckettを比較しよう

上のキャリアの振り返りで改めてPuckettが殿堂入りに相応しい選手であったことが分かりました。
ここでついにPuckettとPrinceの比較になります。(なんかさっき心の声が漏れていた気はしますが…)
もし両者を比べた結果、PrinceもPuckettに劣らない選手であると言えるのであれば、Princeも殿堂に入るべき選手として再考する必要があると言えるでしょう。
改めてPuckettとPrinceの打撃成績をザックリ確認してみましょう。

※ MLBアプリより画像を引用
※ MLBアプリより画像を引用

打率ではPuckettが優っているものの、その他の部分ではスラッガーであったPrinceの方が打撃成績は優れているように見えます。
しかし、PuckettとPrinceでは決定的な違いがあります。 

1.5ツールプレイヤーのPuckettと打撃オンリーのPrince

先ほどの振り返りでも分かる通りPuckettはゴールドグラブを6度も受賞するほどの外野守備の名手としても知られていました。
メジャーリーグのファンの方なら過去のハイライト映像でPuckettがホームランキャッチをする名シーンを一度は見ているかと思います。
一方、Princeは体格を見ても分かる通りお世辞にも守備がいい選手とは言えませんでした。
つまり、Princeが殿堂入りするにはPuckettのような守備も含めて評価されてる選手と比べてよりハイレベルな打撃成績を残している必要があると考えられます。

2.フルシーズン出場の年数の違い

PrinceとPuckettのもう1つの違いはフルシーズン出場の年数の違いです。
両名ともメジャーリーグで12シーズンプレーしていますが、フルシーズン出場と考えると話が変わります。
Puckettはデビューの1984年から現役最後の年となった1995年まで12年間大きな離脱を経験せずにプレーをし続けすべての年で規定打席に到達しています。
一方、Princeはデビューイヤーの2005年は39試合のみの出場、そして最初に椎間板ヘルニアを発症した2014年は42試合のみ、引退年となった2016年は89試合のみと実質フルシーズン出場したのは9シーズンしかないのです。
そのため、PrinceはPuckettと比べてもメジャーリーグでの実績が少ないと言えます。
つまり、Princeが殿堂入りするためには、守備力に雲泥の差がありさらに出場試合数も多いPuckettよりも圧倒的に上回る打撃成績を残していなければならないのです。

真に比較すべき対象はHank Greenberg

Puckettとの比較ではやはりPrinceの殿堂入りは難しいと言わざるを得ません。
しかし、改めて話を戻って考えてみましょう。
そう、Hank Greenbergはメジャーリーグでのフルシーズンの出場はたったの9シーズンのみで殿堂入りしています。
つまり、PrinceがGreenberg並みの打撃成績を安定して残していたならばPrinceにも殿堂入りの資格があると考えられるのではないでしょうか。
というわけで、ここでは先ほどGreenbergの紹介で触れた「Greenbergはルーキーシーズンである1934年と引退年となった1947年以外のフルシーズン7年間、必ずOPSでメジャーリーグ全体で5位以内を記録」という実績を参考にPrinceがこの項目をもし達成しているのであれば殿堂入りの資格ありと判断してみたいと思います。

Prince Fielder 年度別 OPSランキング

2006   .830 65位
2007 1.013   6位
2008   .879 29位
2009 1.014   3位
2010   .871 22位
2011   .981   5位
2012   .940   7位
2013   .819 39位
2015   .841 29位

うん、無いですね。
以上です。
2008年, 2010年, 2013年の成績が他の年並みのレベルであればAlbert PujolsMiguel Cabrera辺りと比較される同世代のスラッガーとして殿堂入りのチャンスが少しはあったかもしれませんがこう改めて確認してみるとやはりPrinceは残念ですが殿堂入りは無理だろうと言わざるを得ないですね。

まとめ

「病気でキャリアの途中で引退したKirby Puckettが殿堂入りできたのなら、同様にPrince Fielderも殿堂入りできるのではないだろうか」というちょっとした疑問をスタートに元々分かっていた結論をすべてひっくり返してあらためて議論を展開し、そして改めて同じ結論が導き出されました。
その結論を導くためにいろいろと調べて今回のnote書いてみましたが皆様いかがでしたでしょうか。
私は疲れました。
以上です。

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