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どうやって相場を提示するか/076

相場とはあってないようなものである。

先日、ライターや編集者の知人と飲んでいた。そのとき単価の話になり、僕が「インタビュー記事なら〇〇万円で受けています」と言った。
そのときに面白かったのが、Aさんは「え! 安い!」と言って、Bさんは「え? そんなにもらっているの?」と真逆のリアクションだったこと。

同じ業界に身を置いていたとしても、取り組んでいる仕事のレイヤーや、クライアントの属性によって単価は大きく変わる。

「安い」とリアクションしたAさんは、ライターというよりBtoBのマーケター寄りの仕事をしている。企業が抱えている課題をヒアリングして、集客から成約までの施策全般を練る。その過程で記事を作ることもある、という感じ。

「そんなにもらっているの?」とリアクションしたBさんは、出版社を渡り歩いてきたベテランの編集者さん。恐らく、ありとあらゆるメディアを担当してきたので、僕が言った金額よりも単価の低いメディアが多かったのだろう。

このように、同じ業界にいる人間でさえ相場が異なるため、我々フリーランスは「見積もりを提出してほしい」と言われると、実は結構困る。

僕が運営するコミュニティ『Webライターラボ』でも「新規の案件を受注した。見積もりを提示してくれと言われているが、いくらで提示していいかわからない」という悩みは多い。

そのとき僕は「自分が満足する単価を提示してみては?」ということが多い。この提示方法は、一見するとクライアントの意向を無視しているように見えるかもしれないが、実は違う。

提示した金額がクライアントの想定を超えていれば発注されないだけの話。逆に「そのくらいならいっか」と思ってもらえれば、発注してくれるだろう。
つまり、「自分が満足する金額」を提示したところで、クライアントが金銭的に損害を被ることはないのだ。

いちばん避けたいのは、なんとなく安く提示して疲弊すること。「もっと高く提示すればよかった」という思いがあると、どうしてもモチベーションに響く。それは記事の質にも反映する。これがいちばんクライアントに迷惑がかかるため、やってはいけないのだ。

「プロならいくらでもやり切れよ」という声もよくわかるが、現実はそうもいかない。極端な話だが、記事単価1億円と100円の依頼を、同じモチベーションで取り組めるだろうか? NOと答える人が大半だろう。
それほど報酬というのはモチベーションを左右する。これが現実。だから、とにかく迷ったら「自分が満足する単価」でいいと思う。

もし「元々このメディアで書きたかった」「この人と仕事をしたかった」「このジャンルの記事を書きたかった」、あるいは「大きな実績になる」など、自分にメリットが大きい案件なら、単価が低くても満足する。故に、提示する金額は自分が思っている相場より安くてもいいと思う。

大事なのは金額の多寡ではなく、「その金額で満足するかどうか」ということ。この考えはフリーランスとして生き抜く上で結構重要かなと思う。

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