見出し画像

流動的思考

 聴覚野だけが覚醒していて時計の針の音がうるさい。壊れた置き時計は午前二時。実際の時間は不明。並んだ日本人形のうち手前のやつの簪の一つが震えている。極小の蜃気楼。水晶時計。調和振動子。
 障子を完全に締めた瞬間に寝ている場所から一番遠いところになにか大きな影がみえる。大きな頭をした巨大な胎児のような影。その影が障子を伝って部屋の角を跨いで丁度私の寝る布団の足のあたりに来る
 いつもは何故か意識せずとも少し開けていた障子。不完全な安定感、動的均衡。静止した独楽は必ず倒れる。
 眼に見えない音の世界で硝子の割れる予感、その予感が現実を呼び起こしてたち現れる。鼓膜を破るような音、赤。色彩と音楽の混交。
 乱雑な思考の流動。架空の事実。不完全であるが故の独立感、粘液質の壁。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?