見出し画像

「安心院ロックフェスタ」Live Report (Revised)

Introduction

4回行われた「チャリティーin安心院」の中で最大の規模となった第3回目。新たに「安心院ロックフェスタ」という名を掲げたこの年、スタッフのひとりとしてイベントに参加させてもらいました。

Rehearsal

2001年11月11日。朝9時、現地集合。地元のスタッフのみなさんとお会いして作業開始。機材の搬入、パンフレットの準備、楽器の搬入…徐々にステージの準備が出来上がっていきます。ツアーケースに入った機材の外側に書かれてある「JC」だの「JCM-800」だの「The TWIN」だのいう文字に一人だけ興奮している(笑)。

お昼をすぎて1時ごろからミュージシャンたちが会場入りしてきました。ジョニーさんを先頭に、Ichiro氏がギターとともに登場。彼が最初だと思っていたんですが、「ギター運びます!」って預かって楽屋まで行ったら、あれ?いつのまにか鮫島さんが。その後、宿泊先からバスでメンバーが到着。楽屋でジョニーさんたちに挨拶したあと、もうひとり、今回どうしてもお会いしたかった方、金子マリさんに御挨拶。マリさんは早速ギブソンのアコギを取り出してチューニングを始め、聴きおぼえのある、あの曲のイントロのリフを刻む。と、ステージのほうではギターの音が。

ステージではリハーサル前のサウンドチェックがスタートしていました。本番さながらのサウンドチェック。当たり前だけど超シビア。Charさんの音とはまたひと味違う太さを持ったIchiro氏のGRUの音。マニアとしては去年のステージにも使用されたIchiro氏のアコギをチェック。この日初めてJagardという名前を知りました(Jagard JD-40P)。GRUは江戸屋Rock Fes.のころから使っていたバーガンディミストのストラト(61年仕様…本人談)。そしてアンプはThe TWIN。エフェクターにはHotcakeがありました。アンプのセッティングは見る余裕がなかった!

ジョニー氏のドラム、ムッシュのスタインバーガーwith JC-120、永本氏のベース、そして松浦氏登場。ケースから出てきたのは…白のテレキャス!メイプル指板!(あとで鮫島氏に聞いたらGRU製とのこと)マーシャルにプラグインして出てきた音をいじることしばし。おお!あの音!まだ何も演奏聴いてないのにサウンドチェックで打ちのめされてる(笑)。ギターの音はおふたりともほんといい音で感動しました。やっぱIchiro氏はカッティング、松浦氏はスライドになるとくぎ付け状態になっちゃいますね。で、鮫島氏のベース。今回は永本氏と鮫島氏がトレースエリオットのベースアンプを共有されていたんですが、おふたりのセッティングの違いがとても興味深かったです。客席に降りた松浦氏とペアでチェックしていく様子が印象的でした。

そしてこの日13時に大分入りしたばかりのミッキー氏のキーボードチェック、最後にマリさんが登場して、ここから逆リハスタート。

15時を回る頃からお客さんたちからの連絡が入り始めたので表へ。一番乗りの人は12時半には安心院入りしていました。夕方になり、遠いところの人から順に(?)会場前に集まり始める。日がさしているときは暑いくらいだったのに、さすが山間部の盆地。寒くなってきた。

17時半、開場。そして18時35分過ぎ―いよいよスタートです。

昨年と同じく、まずは安心院町長の挨拶。ギャグは去年と一緒(笑)。町長氏は最後まで2列目スピーカーのまん前で爆音にもめげず(笑)観戦されておりました。拍手(笑)。

On Stage Acoustic Side

まずはジョニー氏が登場。「ただいま!去年よりメンバーが増えてますんで、たぶん2時間コースのコンサートになると思うんで、最後までゆっくりして行ってください。じゃ、まずは紹介します。ichiro!」

ichiro

ひとくさりフレーズを弾いて始まったのはジミヘンのナンバー。
「ANGEL」
「幾千万の星と風の唄」―去年も思ったけどほんとichiro氏はいい声ですね。

Ichiro with Johnny

ジョニー氏が登場して、「うまいっしょ?それじゃ僕も一発歌います。親父の歌です。」
「LOVE CHILD」。―去年も聴けたこの曲、今年はさらに沁みるものでした。

「えー、それじゃ少しづつメンバーが増えていきますんで。On Bass、HOUND DOGからきました、鮫島ちゃん!もう一人ギターです。元TWIST、松ちゃん!…松ちゃんこんな髪の毛長かったのに坊主にしちゃってさ…(笑)もうあれ取るとム○ョがえりみたいなんだ…」鮫島氏と松浦氏が登場。「今日は出たり入ったりいっぱい人が来るんで、見逃さないように。」

Acoustic SOB

「ONLY FOR LOVE」―SOBのメンバーそろって演奏されたのはPINK CLOUDのナンバー。ふたりだけで演奏された去年とはまた違った味わい。松浦氏はステージに座り込んでスライドでソロ。

「それじゃ僕の大先輩を紹介します。ムッシュかまやつひろし。ムッシュ!」

Monsieur Kamayatsu

ムッシュはマリさんのアコギを抱えて登場。ここは予定外のボーナスだったようですね。「堺正章です(笑)」―ジャズコードのイントロに続いて。

「あの時君は若かった」
「我がよき友よ」―2曲とも客は大喜びで手拍子。ヒット曲の威力を思い知る瞬間、同時に年齢層がわかる瞬間(笑)ムッシュはけっこう激しいというかパーカッシブな弾き方でした。

Mari Kaneko

「それでは本日の紅一点の方をご紹介したいと思います。盛大な拍手でお迎えください。金子マリさん!」

「…さっき近くにみかんを買いにいったんですけれども、そのバス停…なんて言うんでしたっけ、安心院町役場前?そこにはたくさん子どもたちの絵が飾ってあって…うちのほうではトンと見かけなくなった風景で嬉しかったんですけれど…私は最愛の父も母もこの9年間に亡くしました。母が大好きだった曲で「イルカたちのように」聴いてください。」

「イルカたちのように」

「10年位前になるでしょうか、南アフリカの…ネルソンマンデラさんという方がいらしてその時に作った曲を。風に立つという歌、でもほんとはジョニーのために作った曲です。自分が動かなければ絶対幸せにはなれないのよという歌です。聴いてください…」

「風に立つ」―大拍手。あとで聞いたんですけど、このアコギは「清志郎から永久に借りている」というギブソンLG。めちゃめちゃいい音でした。トップのエッジにインレイみたいなのが入っていたので「なんか加工したんですか?」って聞いたら「あれ、卵のシールなのよ」って。ヨード卵光かなんかのシールだそうで「絶対はがすな」と言われていたらしい(笑)。

「どうもありがとう。じゃSOBのメンバーを紹介します。」SOBの面々が登場。いよいよElectric Setへ。

On Stage Electric Side


Mari with SOB

「COME TO MAMA」。―バンドを従えてのヴォーカルはやはりパワフル。松浦氏のスライドが炸裂。

SONS OF BLUES

「Sookie Sookie」―ステッペンウルフ!ichiro氏のヴォーカル。ソロの応酬。頭の後ろ弾き!
「MIDNIGHT RIDER」―イントロのコーラスから、松浦氏のリードヴォーカルへ。あとで鮫島氏と話したときにも言われてましたけど、このバンドは歌える人ばかりなのでカッコいいんですよね。鮫島氏のベースソロに続いて…
「WHY CAN'T I」―エンディングとともにギターのふたりが同時に6弦をDに落として…
「PARADISE」―PINK CLOUDでもよくやっていたソロアルバムからのナンバー。ギター2本だとLOVECHILDのときとも違いますね。もっと重くて厚くてカッコいい。そしてドラムソロへ。途中でブレイク―「めがねがじゃまだ!」(笑)。さらにソロ。そして―「ミッキー吉野on Piano。」

Mickie Yoshino with SONS OF BLUES

「マーシー・マーシー・マーシー」―それぞれがソロを取って。今回ミッキー氏はハモンドではなくコルグのキーボードでしたが、出てくる音はまぎれもなくミッキー吉野サウンド。あのグリッサンド!!「去年に続いて2度目なんですけど、なんか親戚のうちに来たような感じで…暖かく迎えていただいてありがとうございます。じゃあ普段はめったに歌わないんですけど…ジョニーのリクエストで1曲…青い影。」

「青い影」―間奏では松浦&Ichiroのギターソロが絡み合う。この歌がゴールデンカップス時代から愛されていた歌だとは知りませんでした。

「それじゃもっかい紹介します。ムッシュかまやつ!on bass、チューちゃん!鮫ちゃんあとでね。」べースが永本氏にチェンジ。

Johnny, Mickie, Nagamoto, Ichiro, and Monsieur

「WALKIN THE DOG」―ロック鳴缶でもやってましたね。スタインバーガーを手にしたムッシュ、ノリノリ(笑)。
「NO NO BOY」―イントロのリフではこの曲とわかりませんでした。スタインバーガーのアームでカッコいいフェイドアウト。
「HEY HEY BOY」―歌いだすなり「ズボンが下がってきちゃった」(笑)。スライドが絡む。
「バン・バン・バン」―個人的には一番好きな曲なんですが、いきなりセカンドラインのリズムでこれもびっくり。4曲ノンストップの演奏。間奏ではミッキー氏のソロからIchiro氏のスライドソロへ。

「Thank you, ムッシュ!…えー、もうお一方いらっしゃいます。ジョー!」

Johnny, Mickie, Nagamoto, Ichiro, and Joe

ジョー氏、今回の主催者、「安心院倶楽部」のスタッフジャンパーを羽織って登場。「こんばんは!…去年にひき続きまして今年も安心院で…今回3回目になるの?ジョニー?今年もやって来ました。今年は、戦争もはじまったり、テロがあったりと世の中がちょっと殺伐としてますんで、こういうときこそやっぱり音楽ではないかな、と思いますが…1曲目、Moocha Koocha!」

「Moocha Koocha」―やはりCharファンとしてはギターがどんな風に味付けされているのかに興味がありましたが,非常にオリジナルに忠実なワウのカッティングに切れ味鋭いソロ。

「…それじゃもう1曲。これは俺がはじめて子どもをもったときに出来た曲で、父から子どもへという感じで、Lullaby Of You」

「Lullaby of You」

「…これも懐かしい曲です。つい先日、松田優作さんの13回忌の法要に行ってきたんですけど、いろんな人たちが集まって懐かしい話をしたり、僕もこの曲を歌うときにはいつも、やっぱり空から彼が聴いててくれるんじゃないかという気持ちになってます。人間の証明。」

「人間の証明」―よく伸びる高音。ジョーさんの歌は聴けば聴くほど沁みますね。

「レゲエの曲をやります。今は亡きBob MarleyのNo Woman No Cry。」

「No Woman No Cry」―ichiro氏のストラトの音が最高。

「ジョニーもようやく体がもどりまして。これからじゃんじゃん活躍してもらわないと困ります。じゃもう1曲。みんなで楽しくやりたいと思います。だれでも知っている曲、Stand By Me!」

「Stand By Me」―去年に続き、今回もジョー氏が客席へ…一人ふたりと歌わせて最後に「町長!町長どこ?」2列目にいた町長氏とデュエット。

ジョニー氏がもう一度みんなをステージに呼んで。ジョー氏がMC。「それじゃもう1曲、みんなで楽しくアンコールやりたいと思います。ブーンブーン!」

「Boom Boom」―ジョニー氏に始まり、ムッシュへ。ヴォーカルを交互に、そしてマリさんとジョー氏がコーラスをキメる。カッコいい!

そしてジョー氏が「最後の曲になります。この曲は僕が4年位前にアフガニスタンに行った時に難民キャンプとかいろんなとこ行きました。その時に感じたことをもとに作った曲です。」

「A HAPPY DAYS」―荘厳なミッキー氏の鍵盤から力強いリズムへ。リズムとコーラスのみのシンプルなラヴソング。

「Thank you!どうもありがとう!また来年!」

Closing

町教育長氏が挨拶。「演奏してくれたメンバーに拍手」「安心院倶楽部とスタッフに拍手」「そして来てくれたみなさんに拍手」でこの、「ロックフェスティバル」が終了しました。


今こうやって読み返してみても、奇跡的というか、そういう感じがします。大分でこのメンバーでの演奏が見れたのは本当に奇跡だったと思う。時間が過ぎるのを忘れてしまうほどのもりだくさんなステージ。大座敷で70年代の田舎的な宴会になった打ち上げ。何も知らなかった自分。

「大分を、安心院を日本のロックのルーツにするんだ。テキサス、メンフィスみたいに。」―ジョニーさんの純粋な言葉の重みが今になってわかるという感じです。

何かが動くというのは簡単なことではない。大人の世界には「思惑」が付きまとう。それを「残念ながら」、というか「それでもそれを呑み込んででも」、と思うかがイベントが実現するかどうかの境目だと思います。それはあの日から20年経ったから言えること。客として見ているだけのほうが、知らないほうが200%楽。純粋に「音楽」だけを楽しめる。実際にそう言って離れていった人もいます。それでいいと思う。

結局僕は「やる側」になるほうを選んできました。やる側には作るだけでなく、抱えるものがある。知らなかったことを知ることになるし、よかったことも悪かったこともあります。だからこそ、音楽の凄さとか有難みを思い知ることができたと思います。

やっぱりこのイベントには感謝したい。ほんの一瞬、大分で見れた奇跡でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?