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Introduction

クロニクルを作ろうと思ってから、個人で作業してるとなかなか進まないので、ずいぶんな時間が経ちました。そうこうするうちにみんな年取っていきますからね…今回はCharさんの69歳特集でひさしぶりに登場した通称FUCK YOUムスタングの話です。

Char Mook(1996)

20周年の年にリリースされたこの本は、破壊力抜群というか、それまでまとまった資料集がなかったために、大きなインパクトがありました。ただ、時代を反映していたというか、こういう本の黎明期だったんですよね。業界的にもまだカスタムショップストラトがグッピー腹の頃だから、基本的に詰めが甘い。「詳細不明」みたいな記述がたくさんあって。アンケートハガキに「せっかく取材できる立場なんだからもっとちゃんと突っ込んでほしい」みたいなことを書いた記憶があります(笑)。その後もう一回似たようなムック本が出たけど、トータルで見ると、こっちの方が優れている。記事的には2004年のプレイヤーのコレクション公開のものがいちばんちゃんとしていた気がしますけど、あそこから先に進みませんでしたからね。残念でした。

その後記事書かせてもらったJapan Vintageの特集は可能な限り裏を取りながら進めたんだけど、業界的に辞めちゃった人には取材できないとかね、やっぱり難しいところがいろいろありました。仁義的に表に出せないこととかね、そういうのもあって。つまりはそれこそが長いキャリアを証明するわけですけどね。メディアの中の人も実際には書きたくても書けない事情が出てきちゃうんだなと。

僕が書いた記事そのものは、ご本人のものではなく、ご本人の「モデル」を俯瞰したものですから、本人が使っていたものがどういう経緯で出来上がり発展していったのかと市販モデルにどうやってたどり着いたのかを客観的な史実と行き来しながら書いたので、半分Charさんの話だけど、半分は違う。ご本人にはもともと話も行っていなかったと思うし、そのコメントを聞いてみたかったですね。業界のみなさん、事情を乗り越えて本気で聞いとかないと永久に謎になりますよ。ファンクラブでもいいけど。いつでも手伝いますよ^ ^

史実はリアルタイムで本人にくっついていない限り新しい情報があとからあとから出てきます。それってなかなかメディア上では追加できないんですよね。だからこそご本人の言葉の意味が大きい。結局マニアの視点とメディアの視点は必ずしも合わない。それが自分がほんの少しその世界を垣間見て学んだことでした。

Fender Mustang #9 “FUCK YOU”

このクロニクルの最初のソロ期1に登場するムスタング。判明している限りで9番目に出てくる個体です。

上の20周年本の時点でピカピカのコンディションだった67年製と「(ミニアルバムMustangの頃に)トレードされた」ということで、長らくCharさんのもとを離れていましたが、今回2024年6月に行われた『Char’s 69th Year Exhibition POP UP』イベントに合わせ、30年ぶりにご本人のところへ。イベントの目玉的に?展示されている様子が会場を訪れたみなさんのSNSにも多数アップされておりました。

photo by Mr.Shinmura

今月のギターマガジン誌(2024年8月号)で、このムスタングに関する記事が掲載されています。

3歩進んで2歩下がる…

水前寺さん的なフレーズですが、今回の記事のタイトルはこの英語版^ ^。上の写真でも、ギターマガジンの記事でも明記されていますが「1966年製」。うーむ。

photo by Mr.Shinmura

冒頭のムック本でいちばん衝撃的だったのはこの個体が「1967年製?」と語られたことでした。それまで誰もがこの個体は、というかCharのムスタングと言えば1966年製、みたいに言っていたので、てっきりそうだと思い込んでいた。ところがこの個体のシリアルが179867だったこと、アームユニットがパテントNo.を持つものだったこと、オフセットコンターボディのデカールがないことなど、割と67年寄りの特徴を持っていたんですよね。トレードされた186203は67年で、個人的に思うのは67年途中までってヘッドの厚みがちょっと違う。これが68年に寄っていくと薄いヘッドになるんです。この厚みは…現物見れれば早いんだけど(笑)、ふつうの人には無理です…でしたからね。ロックギター教室のあれ

とか、ミニアルバムSmokyの裏ジャケ

とかで年代のさらに特徴の似た個体を探していくんです。どこ見てるんだってくらいの病気です(笑)。

ムック本で「1966年末から1967年」と推定されていたのが、今回改めて1966に戻ったことで、「3歩進んで2歩下がる」。なんで??なんか決め手があったのかな?…まあご本人にとっては年代はどうでもいいでしょうから、たいした問題ではないんですけどね。マニアにとっておおごとってだけ。記事、面白かったですよね。「5、6弦が弱い」ってひさしぶりに言ってて(笑)、Charさんにとってはそこが相変わらずこのギターの大事なポイントなんですよね^ ^。説明にあるストリングガイドのくだりはギターマガジンでも言及されていますが、時期的には(フェルから)ESP(に行った人)にやってもらったのでは?トレード時に黒だったスイッチが白に戻っているところとかはスルーされております^ ^。まあマニアじゃないと気づきませんよね。またそれをCharさんに言ったところで流されるだろうし(笑)。管理されていたK氏が大切にメンテされていたことが窺えます。あれのこととかあそこのこととかいつか教えてください(爆笑)。

ついつい記事を真剣に読み込んでしまって、え?Smokyを生んだ個体とは違うんじゃない?とか思うけど、「そこはどうでもいいじゃん」的に行くのかこだわるのかは難しいですよね。若手に向けてならそっちの記述の方がわかりやすいワケだから。僕らがすでにギターマガジンのターゲットではないという証明かもしれません。それこそスルーしてくれよってね^ ^。

Special thanks: Mr. Shinmura

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