戯曲【CLOCK】

昔書いた戯曲をここに残します。

これは、僕がまだ26歳のころ、遠い昔、まだ山に神様がいて、妖怪がいて、人間がいた頃を思って書いたもの。

愛は普遍だということを書いたもの。


CLOCK

むかーしむかし、陰と陽がまだ一つだった頃、人と妖怪は共存していました。

僕たちが生まれるずーっと昔から森にいて、たくさんの人間を見てきて、時には脅かして、時には助けて、時には助けられて、そうやって山や川を守ってきたのです。

妖怪には神通力があり、ぼくたちには理解のできないことばかり。

山や川、そして夜に、大地に。

確かに彼らはいたのです。

ぼくがみんなといっしょにかけぬけた、きおく。

日が暮れるまで遊んで、笑いあったぼくのきおく。

登場人物

・小太郎/ウクイ          

・あづき(座敷童)         

・アベノセイメイ(陰陽師)              

・シグレノカミ           

・ツチクレノカミ          

・スイレン              

・ヤシャ丸              

・アサツキ丸            

・ヨルキリ丸(式神)             

・ユウグモ丸            

・こたろう             

・無明坊主             

            

・キオク(時順)          

・ツイオク(時逆)         

・おんじ(ぬらりひょん)          

・しずく(雪女)           

・屁太郎(河童)            

・ごん太(一角入道)        

・ぶん太(三つ目入道)       

・たゆら(猫又)           

・シカメ(あまのじゃく)      

・はやて(鎌鼬)           

・九尾(狐)             

・ウシオニ(半人半妖)      

・ミズチ (蛇)           

表現者(妖怪、兵士、式神、従者)


『オープニング』

  音楽カットアウト。照明暗くなり映像が入る。

幕が開き背景では四季が廻る。

タイトルコール『CLOCK』

続いて鳴り響く太鼓の音。

背景には散っていく桜。川。山。

奥から鬨の声が上がる。

背景が少しずつ割れていく。その中にシグレノカミ。ツチクレノカミ。

四方八方から兵士が出てくる。

ツチクレ レディースエンドジェントルメン!お集まりいただいた皆様あり がとうさん。

シグレ  これより始まるのはこの国が始まって以来の大きな戦さ。それもただの戦さじゃあねえ。

ツチクレ 我らが敵は、妖怪!どうぞお気をつけてください!

シグレ  最後の行進じゃ!さあ、進め!

全員   おお!

ツチクレ これより我らは、天下に台頭する!その手を伸ばし、掴み取れ!

歌「ああ、我が望みのため ああ、人の富のため

今力を奮い 今 兵となり

ああ、君が見た夢を ああ、それは幻

世界に轟かせん 我らが希望を・・・ 」

シグレ  その手を伸ばし、掴み取れ! 

ツチクレ バケモノ共はどこにひそんでるかわからん!耳すませ!目をこらせ!気を引き締めろ!ケツ引き締めろ!

シグレ  今のいるー!?

ツチクレ 戦場に咲く一輪のギャグでした。

シグレ  うわあお!

ツチクレ てことで緊張すんな。てきとーにやれ。   

全員   おお!!

スイレン駆け込む。

スイレン お待ちください

ツチクレ スイレン殿!  

スイレン この争いを、やめてください。お願いします。

シグレ  危ないって、わしが守るから!

スイレン あなたたちの汚い心が、終わらない争いを生んでいるのが分からないの?

シグレ  え・・・。

突如散っていく桜が氷に変わる。

客席入口よりしずく。はやて。たゆら。

ツチクレ きたぞきたぞ!化け物!気持ちわるい!どこにいるんだ?

はやて  化けもんだなんて光栄ですこと。あたしらからしたら、あんたらの方がよっぽど気持ち悪いわよ。

たゆら  ねえねえねえねえ!化け物だって!

しずく  たゆら、あんたはうちで寝てなさいって。

たゆら  いやだよーん。一人はさびしいよーん。あ、ネズミ。

はやて  まあ緊張ほぐしてくれていいんじゃん?

  舞台後方より、ミズチ、ウシオニ。群衆を蹴散らす。

シグレ  うおお!どこだ?

ミズチ  どけ!

ウシオニ 邪魔だ!人間ども!

ツチクレ どこにいるんだ妖怪ども! 

  舞台上手より、安倍晴明。

  雪が雷に変る。

セイメイ オンアビラウンケンソワカ。

ウシオニ うおおおおおお!!

ミズチ  なんだ!?動かねえ!

セイメイ あんたたちはどいてな。

シグレ  おお!セイメイ!見える!妖怪が見えるぞ!

スイレン お願い、戦いを・・・!

ミズチ  陰陽師!!

人間   おおおお!

  雷が炎に変る。

  炎の中に九尾の目と尻尾。

  

人間5  九尾だ!九尾が出たぞ!

セイメイ 恐れるな!

九尾   そんなに望むなら、歴史を終わらせてやる。

舞台後方より鬨の声。妖怪たちが現れる。

   

   歌「避けられぬ争いと 胸に刻みつけても

   愛したものへ向ける 刃はただ脆く・・・

 

   さあ、その手を伸ばして さあ、その手を離して

   ただ平穏のため ただ安息のため

   ああ、思いを伝えて ああ、意志を受け継いで

あなたが背負う物が我らの道しるべ 」

   

ごん太  さあ、気合いれていくんだどおめら!

ぶん太  負けんなよ!

ミズチ  これが最後の戦いだ!今が、戦う時だ!我らのために!  

妖怪   おおおお!

ヤシャ  この戦いで終わりだ!行くぞ!未来のために!!

人間   おおお!

セイメイ この俺が妖術は使わせぬ。蹴散らせ!

  しずくが妖怪たちの群れから出る。

シカメ  しずく、待てって!

しずく  小太郎は!?

ごん太  いまさらそだこと言ってらんねだ!やるしかねえんだ!

屁太郎  待てって!小太郎だけは死なせねえって言っただろ?

しずく  小太郎がいない!

無明   待て。小太郎、来る。まだ、待つ。

ぶん太  もう関係ねえ、行くぞ!

シカメ  待てっつってんだろこのくそ妖怪!死ぬんじゃねぞ。

屁太郎  ぎゃはは。おめさも立派なくそ妖怪だな。

シカメ  ああ!?

  妖怪、走っていく。

キオク  行っちゃったな、

ツイオク ああ、もう戻れねえとこまで来ちまったんだなあ。

 時が一瞬緩み、そして合戦。

妖怪の優勢。

太鼓の音。

蹴散らされた兵士が戻ってきて隊列を整える。

 兵士たちの列が割れると小太郎。

ヤシャ  どけどけい!

アサツキ 恐れ、おののけ妖怪ども!

ユウグモ 天下無双のお出ましだ。

全員   その名ぞ、小太郎!

  人の柱が開くとそこに大将、小太郎。

屁太郎  小太郎だ!

小太郎  今こそ。

しずく  待って、小太郎!

小太郎  恐れるな!われらの天下を!おおおおおおお!

  妖怪を散らしていく小太郎。

小太郎  我が名ぞ、小太郎!

ミズチ  おれは悲しいぜ。

小太郎  何を言う、妖怪。

ウシオニ 何やってんだミズチ!そいつは・・・!

ヤシャ  てめえの相手はおれだ!

  ウシオニ対夜叉丸、夜切丸 ミズチ対小太郎 

屁太郎  おらたちがやったことは間違いだったのか。なあ、小太郎。

無明   間違い、ではない。これ、運命。

ごん太  だから今更悔やんでも遅いって、言ったでねか!

ブン太  ごん太ぁ!

  アサツキが切りつける。

ごん太  これが現実だ!

  アサツキ対ごん太、ブン太

おんじ  そんなことしてねえでよお。仲良くしてよお。酒でも酌み交わしたらええじゃろが。    

人間10 もらったあ!

  いくら剣を振ろうがおんじに当たらない。

おんじ  こんなに酒はうまいのに。こんなに空気はうまいのによお。

人間11 こいつ・・・!ぬらりひょんだ!

おんじ  なんで仲良くできんのかなあ。

ウシオニ 人間!

  ウシオニ、入ってきて人間を蹴散らす。

おんじ  なんでかなあ。悲しいよなあ。

  泣き始めるおんじの元に妖怪が集まる。

おんじ  悲しいよなあ。

  スクラッチ。

時がゆっくり動く。

キオク  戻れないんだなあ。

  一人走り出す小太郎。

ツイオク いくら追っかけても、戻ることはできないんだ。 

しずく  あの頃に戻れたらいいなって、ずーっと思ってた。

たゆら  日が暮れるまで笑いあって、楽しかったあの頃。

はやて  一緒に駆けた、あの頃。

  妖怪の中からあづき。

あづき  むかーしむかし、陰と陽がまだ一つだった頃に、人と妖怪は共存していました。

  

何かが割れる音。崩れていく空気。

小太郎  何かが割れる音がした。

  すこしずつ人間たちがいなくなる。

小太郎  これは、僕の物語。僕の記憶のかけら。ぼくの・・・・

  また何かが割れる音。まるで巻き戻ったみたいに人間たち戻ってくる。

  小太郎、妖怪を斬りまくる。

 

小太郎  進め!

無明   お前等、逃げろ。

  夜切丸駆け込み無明、ごん太、ブン太斬る。

無明   お前も、おれと・・・。

ヨルキリ ・・・・。

ごん太  ・・・小太郎、がんばれよ。

ブン太  だからわかってねえって。

シカメ  ごん太!ブン太!

小太郎  進め!恐れるな!

たゆら  危ないよシカメ!

シカメ  ばか。泣いてんじゃねえか。男なら黙って進めって言ったろ。

小太郎  おおおおお!進めえ!

あづき  僕たちが生まれるずーっと昔から森にいて、たくさんの人間を見てきて、時には脅かして、時には助けて、時には助けられて、そうやって山や川を守ってきたのです。

しずく  おんじも泣いてるの?

はやて  悲しいの?

屁太郎  覚悟決めるっぺ。

おんじ  うん。悲しいなあ。

 ミズチ、ヤシャ丸に切られる。

ヤシャ  打ち取ったり!

ウシオニ てめえ!

 ウシオニ、後ろからヨルキリに切られる。

ウシオニ 卑怯なんだよ、こら。

あづき  山や川、そして夜に、大地に。

確かに彼らはいたのです。

ツチクレ 妖怪をこの世から消してしまう。

シグレ  そんな政策をとった我々って、天才?

ツチクレ そしてその先にあるのは我らが未来。

シグレ  天才? 

おんじ  さびしいなあ。

小太郎  ううっ。なんでなんだ!涙が止まらないんだよ。斬れば斬るほど悲しくなる。

はやて  泣かないで。ずっと一緒だよ。

たゆら  一緒だ!ずっと!

  小太郎、たゆら、はやてを斬る。

小太郎  うわあん。

しずく  あんたまた泣いてんの?

あづき   ぼくがみんなといっしょにかけぬけた、きおく。

小太郎  うう・・・。

しずく  立派になったね。お父さんそっくり。・・・・泣くな。しゃんとしな!

  小太郎、しずくを斬る。

小太郎  悲しい、悲しいよお。

屁太郎  しゃんとしろって!さあ!進め!

小太郎  あああああ!

  小太郎、屁太郎を斬る。

屁太郎  痛い!でも大丈夫だから!

小太郎  うううう・・・・。

屁太郎  泣くな。進め・・・

小太郎  進め!

セイメイ 九尾封印!

九尾   進め小太郎。俺たちは、ここに居る。

あづき   日が暮れるまで遊んで、笑いあったぼくのきおく。

  泣きまくる小太郎。

  小太郎の周りに人が集まり隊列を作る。

セイメイ 進め!

人間   おお!!

小太郎  進め!剣をふれ!

  再び何かが割れる音。

  飛び出し走り始める幼き日の小太郎。真っ暗な中を一人走っている。

あづき  これは、思い出のかけら。

小太郎  進め!

  小太郎、おんじの元へ。

ツチクレ 小太郎!打ち取れ!

  小太郎、剣を構える。

  二人の間にキオク。小太郎、キオクを斬る。

おんじ  悲しいなあ。

  何かが割れる音。小太郎、走っている自分に気付く。

小太郎  何かが割れる音がした。これは・・・僕の・・・!

キオク  これは、あんたの。夜と大地を駆けたお前の記憶。

小太郎  これは、僕の・・・・

  キオク、小太郎に触れる。キオクいなくなる。

騒がしくなる戦場。

小太郎  夜を、大地をかけぬけたきおく・・・。

  スクラッチ。ツイオクいなくなる。

  こたろうは駆け抜けていく。

泣きじゃくる小太郎。進めなくなる足。

おんじ  何を悲しむんだ?

小太郎  だってよ、だってよお。

おんじ  大丈夫じゃ。わしらは、ずっといるからな。

小太郎  あの頃に戻れたらいいなって、思ってたよ。

おんじ  大丈夫じゃ。

  山、川、森。おんじいなくなり小太郎が一人になる。

小太郎  あの頃に・・・・。

あづき   戻れたらって、思ってた。むかーしむかし、陰と陽がまだ一つだった頃に、人と妖怪は手と手をつなぎ、共存していました。

        でもいつからか人間は自分たちと違う、妖怪に恐れを抱き、憎みそして、妖怪も人間を憎み、そおやって繋いだ手は離れてれてしまったのです。あの頃に戻れたらいいなって、ずっとおもっていたよ。ぼくがみんなといっしょにかけぬけた、きおく。日が暮れるまで遊んで、笑いあったぼくのきおく。

チェイス。景色が少しずつ、ゆっくりと巻き戻っていく。そこには確かに妖怪の姿。



シーン1

『はじまり』

  一人ぼっちになった小太郎。そこへキオクとツイオク。

キオク  一人かい?

小太郎  うわ!誰?

ツイオク だからあたしが一人かって聞いてんだよ。

小太郎  うわ!一人だよ。

キオク  どうして一人なのさ?

小太郎  分からない。俺がみんなを斬ったからだ。

キオク  みんなって?

ツイオク バケモノたちの事か?

小太郎  ああ。で、お前らは?

キオク  ・・・そうだよなあー!

ツイオク わかんねえよなあー!あんたが分かんなかったら誰もわかんねえよなあー。

小太郎  ごめんなさい。

キオク  あたしは記憶を覗くことができるバケモノ。

ツイオク んであたしがその記憶を旅することができるバケモノ。

小太郎  うわ!

キオク  あんたの記憶はぜんぶ知ってる。あんなことやこんなことまでも。

小太郎  恥ずかしい!

キオク  まあ、細かいことは気にするなって。 

小太郎  ああ。なんでおれは悲しかったんだろう。

ツイオク 戻りたいんだろう?

小太郎  え?

キオク  言ってたじゃねえか。あの頃に戻りたいって。

ツイオク 過去を遡るのには何かを失う覚悟と、先へ進む覚悟が必要だ。

小太郎  え・・・。

キオク  何が見たい?

ツイオク 記憶を旅すれば見えてくる。

小太郎  おれの、記憶。

キオク  夜と大地を駆けたお前の記憶。

ツイオク バケモノと共に駆けていたあの頃。そら、さっそくやってきた。

  こたろうと妖怪たちが入ってくる。

屁太郎  まてー!

たゆら  まてー!

こたろう あうー。がうー。

はやて  ちょっと、待てってば。

小太郎  あうー。

しずく  もう、やんちゃすぎる。

相撲をとるこたろうと屁太郎。

こたろう あうー!

たゆら  ガンバレ!

屁太郎  まだまだあ!ぽいっ。 

こたろう ああー。

屁太郎  おめさもまだまだだなあ。

はやて  手加減しなよ。大人げない。

シカメ  まじ軽蔑。

屁太郎  すいません。

こたろう うわーん。

たゆら  小太郎泣いちゃった。

しずく  また泣いてんの?よしよし。

こたろう わーい。

屁太郎  ごめんな、小太郎。

  流れる時間。

小太郎  これが、おれ?

キオク  あんた。

小太郎  いや喋れてねえし!

ツイオク だってなんか喋れてなかったよ。

小太郎  おれはさ、妖怪なの?

キオク  人間だろ?

小太郎  ちょっと待ってよ。じゃあなんで俺は妖怪と一緒に?

キオク  いいじゃんか楽しそうなんだから。

ツイオク 全てに理由をつけたがるのさ。泣き虫だからなあ!

小太郎  うるせえ! 

ツイオク もっかい聞くぜ。何かを失う覚悟と先へ進む覚悟はあるか?

小太郎  ・・・覚悟は、あるよ。

ツイオク じゃあ、行くか。

小太郎  どこに。

キオク  お前の過去さ。

ツイオク お前の生まれた頃から辿って、またここに戻る。その時何を思うかはお前の自由。

キオク  一つだけ言っておくが、いちど戻った過去はもう進むだけってことだ。その過去に何を思うかもお前の自由。

小太郎  後悔しないよ。おれは、知りたいんだ。なんでおれがひとりぼっちだったか。

ツイオク 見せようか見せようか。あんたの生まれた時代を見せようか。

キオク  16の年月を遡り、記憶のかけらをみせようか。

ツイオク あたしらは時を旅するバケモノさ。

  ツイオク、スクラッチ。また巻き戻っていく。

  16年前。夜。逃げてくる従者2、3。戦おうとする兵士10、11、12。

従者2  助けてー。

従者3  逃げて!

兵士10 どこだ!?どこにいる!?

兵士11 お前ら早く逃げるんだ!

従者2  ひいいい。

  ミズチ、ウシオニ、九尾現れる。

従者2   助けて!

兵士10  バケモノが!

  兵士10、11、ミズチウシオニに殺される。

  ヤシャ、アサツキ、ヨルキリ、ユウグモ、セイメイ現れる。

  九尾の尻尾が封印される戦い。雷と炎に包まれる。

スクラッチ。

  夜。森。妖怪たちと、ウクイ。相撲をとるウクイとごん太。ごん太負ける。

シカメ  はいそれまでー!

ぶん太  ウクイの勝ち!ごん太の10連敗。賭けは俺の勝ちだな。

たゆら  負けた―。

屁太郎  なんべんやってもウクイには勝てねえよ。

ごん太  もう一回だー。もう一回。

ウクイ  はいはいまた今度な。

おんじ  祝い酒じゃな。

シカメ  あんたいつも祝い酒だろ。

ぶん太  さあ、んじゃあ今日もウクイの挑戦いっとくか?

ごん太  おお、うちの相撲大将、屁太郎様の、入場だあー!

屁太郎  うぃいいー!

ぶん太  二人の対戦成績はこれまで屁太郎の98勝2敗!もうすぐ100勝達成だ。

     ウクイ、またしても河童の怪力の前に地を舐めることになるのか。それを阻止することができるのか。実況はワタクシ、三つ目入道のぶん太です。どうですか、解説の一角入道、ごん太さん。

ごん太  見ものだす。

ぶん太  本日はゲストにかまいたちのはやてさん、猫又のたゆらさんを呼んでおります。どうですか、はやてさん、たゆらさん。     

ん。

たゆら  煮物です。

はやて  着物です。

ぶん太  ぷはー。げらげら。これはさっそく一本取られました!

ウクイ  なあ、みんな聞いてくれ。

屁太郎  なんだ?やる前から言い訳するのか?

ウクイ  いや、今日はもうおしまい。

ぶん太  おおっとこれは予想外の展開だ。どう思います、解説のごん太さん。

ごん太  これはなにかありますね。

はやて  いやだれでもわかるわこの状況。

ぶん太  たゆらさん。

たゆら  煮物です。

はやて  もうおわってるそのくだり。

しずく  どうしたの改まって。

ウクイ  明日、子供が生まれるんだ。

屁太郎  そいつは。

ごん太  めでたいな!

しずく  ・・・・そっか。

シカメ  なんだ。しずくが泣きそうだぞ!

しずく  ちょっと、やめてよシカメ!

たゆら  あれ、なんでなんで?ねえ、なんでなんで?

シカメ  うっせお前!そこら辺は女なら察しろバカ!

たゆら  にゃあ。

シカメ  にゃあじゃねえよ。

ハヤテ  はいはい喧嘩しない。

シカメ  はやて。だってよだってよこいつがよ!

たゆら  まあまあ。

シカメ  おめーの話だよ!

屁太郎  まあよ、ウクイは人間なんだから、おめさとは結婚できねえんだって。な、しずく。

ごん太  そうだど。おめえは雪女なんだから、ウクイが一緒に暮らせるわけないんだど。

ぶん太  うんうん。

屁太郎  そうだな。もし結婚してよ、一緒に住んでよ、おめえが料理なんてしてみろって。どうせ冷え切った飯しか作れねえんだから。デザートじゃねえんだからよ。ただいまー。お帰り。今日のごはん何―?うーん今日はねー、肉じゃが氷とトン汁氷、それから冷やし中華でしょ、あとは、デザートに冷たい杏仁豆腐氷よ。おうおうそれは冷たいラインナップだねえうまそうだ。どれどれかチーン。ってこれ全部凍ってるやないかーい!・・・・ってなるのが目に見えてるんだから。

ウクイ  おい屁太郎。

しずく  ・・・・うっさいのよこのくそ河童!あんたみたいにきゅうりばっか食ってるくそ河童に言われたくないのよ。だいたい冷やし中華は凍って無かったじゃない!そしてなんで最後の二品中華なのよ!

屁太郎  うわ!ごめんまじでごめん!さっき屁こいた!

しずく  謝るとこそこじゃねえ!凍らせてやろうか!?

  みんな止めに入る。子供がじゃれてるみたいに。

ウクイ  おんじ、みんな。ありがとう。

屁太郎  誰も何もしてねえだろうが。

シカメ  むしろお前が原因で喧嘩してっかんね。

たゆら  おならじゃないの?原因。

ハヤテ  とらえどころ純粋!

しずく  ・・・・・。

おんじ  めでたいことじゃねえ。祝い酒じゃ。

しずく  だからいつでも祝い酒に・・・

ウクイ  俺の子は、お前らみたいに育てようと思う。

屁太郎  妖怪にしたいってことか?

ハヤテ  馬鹿になるよ。

シカメ  それはこいつらだけだろ。

ウクイ  お前らみたいに、元気に、のびのびと育ってくれることを祈るよ。 

おんじ  そうかい。

シカメ  お前はほんとに・・・!

屁太郎  変なやつだなあ。

ウクイ  そうか?

ごん太  この国納める主なのに、俺たちと仲良くしてよ。

ぶん太  挙句に子供を俺たちみたいに育てたいときた。

シカメ  お前みたいな人間は初めてだぜ。

たゆら  こんなに仲良くなれたのはウクイだけなのだ!

ごん太  ふつうおめえ人間つったら妖怪はまず見えねえし、見えたとしてもびっくりするもんだぞ。

ウクイ  生まれつき目がいいからかな?おれは主だなんて今でも思って無い、この大地の主はお前らだからな。

たゆら  てことはあたしら最強説?

はやて  はいはいそういうこと。

ウクイ  俺達が生まれるずうっと前からここにいて、森を、川を、大地を守ってくれてたんだ。この国だってお前らのもんさ。

しずく  ウクイ。何度も言うけど、悪い妖怪だっているんだよ。

シカメ  人間だって食っちまうんだから、お前も気をつけろよ。

屁太郎  ようし!んだらばもしおめえになんかあったらおめえの子は俺たちがそっだてっかんな!

ウクイ  おう、頼んだぞ!

屁太郎  任せとけ。な、しずく。

しずく    ・・・うん。

ぶんた  おいおいそんな約束しても大丈夫なのか?

屁太郎  大丈夫大丈夫!おらに任せとけってばよう。

しずく  あんたが一番心配だわ。

屁太郎  なにおう?

シカメ  ああ、一番下等な妖怪だからな。

屁太郎  おいこら!おれは水の神様やぞ。

ウクイ  んじゃ、今日はこの報告がしたかった。

おんじ  なんじゃ、酒のまんのか?ういっ?ういっ?

ハヤテ  めっちゃ酔っぱらってんじゃん。  

おんじ  kだcきんvbbzづcmszんbxv?

しずく  あーあーおんじいつのまにこんなに飲んだのよ?

シカメ  また酔っ払いやがった!

ハヤテ  さけくさっ!

おんじ  ぱんつみずいろ。

シカメ  何言ってんだこのじじい。

ウクイ  んじゃ、またな。ガキが一人で歩けるようになるまではここには来ないつもりだ。

屁太郎  そうか。そりゃまたずいぶん先だな。

たゆら  さびしくなるね。

ぶん太  きっとおれらにとってはすぐだよ。

ウクイ  屁太郎。また勝負だな。

屁太郎  早く100勝させろ。

しずく  じゃあね、ウクイ。

おんじ  あれ、もう閉店?

ウクイ  今度はガキ連れてくる。そんじゃ、またな。みんな。

屁太郎  気つけてな。

  ウクイ、走り去る。

しずく  ・・・あたしたちみたいに育ってほしいって、あいつらしいね。

屁太郎  うん。

たゆら  子供も一緒に遊べるといいね。

シカメ  ばか。人間の子供は大きくなって遊べるようになるまで時間がかかるんだよ。

たゆら  そうなんだ!

おんじ  づあぎうbdjさ?

ごん太  おんじがもうだめだー!

しずく  飲みすぎなのよ。

おんじ  ごめんちゃいな。

 

  笑いあう妖怪たち。

  太鼓の音。葉が落ちて雲がかかり妖怪たちはいなくなる。


・・・・・・続く

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