RONTAISHAN

「ちびっ子たちは水の共鳴体、ずっとずっとむかし、人間が忘れてしまった"チッタ…

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「ちびっ子たちは水の共鳴体、ずっとずっとむかし、人間が忘れてしまった"チッタ"を持っていて…」 子供たちの物語を書きました。いきなりですが、魔法ってある?  そういえば!

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Never Garden 【三芒星編】01

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 ゴミ山に暮らすマーク、サリーそしてニーロは、人身売買業者から身を護り、悪徳警官たちに追われ、シルバーライトに乗り込む。海原に浮かぶ孤島に案内された彼らは、世界中の子供たちと不思議な経験をする。 ・ドリーム シェアリング(変性意識での多種族とのコミュニケーション) ・イメージ シェアリング(脳の振動を共鳴させることで、イメージを共有するコミュニケーション) それ以外にも島の共鳴技術を子供たちは自分たちで考え、自由に遊んでいた。その秘

    • Never Garden 【三芒星編】もくじ

      第一話「 シルエット 」  01 シルエット  02 獣  03 ビート  04 直感 第二話「 シルバーライト 」  05 シルバーライト  06 洞  07 コアケース  08 虹のショー 第三話「 体共鳴 」  09 花の好きな曲  10 芝の学校  11 丘の笑い声  12 天井オーケストラ  13 体共鳴  14 ドルフィン ドリーム シェアリング 第四話「 自分力 」  15 君という存在  16 サプライズ  17 自分力  18 マーク商法  19 ツリードー

      • Never Garden 【三芒星編】48

        48 虹彩発光 「これ…」  ダビィのチッタも謎なら、ダビィのくれる小石も、謎の石。何かの意味や機能があるのか?あるはずと思いたいのだが、見るからにごくありふれた灰色な石。  ダビィは10歳、人見知りでおとなしい。目を合わさないで、近寄って人を感じるタイプ。ちびっ子たちは、エマをリーダーにニーロ、ダビィ、アルたまにアイナも混じってよく遊ぶ。気に入った人には、小石の贈り物をする。島に来て、マークははじめてダビィから小石をもらった。 「ダビィ。ありがとう。これ・・は?」

        • Never Garden 【三芒星編】47

          47 開園  1メートルほどの風車の前に立ち、ミニビレッジを見下ろすとまるで巨人になった気分だ。十字を左にひねったようなカーブの水路とあぜ道。花の丘は花壇、ミニ芝の休憩場。芝生にテラスカフェから白テーブルとイスをエマが運んでいる。今日は、よく晴れて空はつきぬけるように青い。テーブルにルーとアヤが鮮やかなケーキを置いた。もうすぐ、開園祝賀会がはじまる。 「えー皆様、本日はまことにお日柄もよく・・・。エッヘン、ごっほん」  アイナはふざけて、壇上でスピーチしている。壇上とは、

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        Never Garden 【三芒星編】01

          Never Garden 【三芒星編】46

          46 生きる理由  今日はあいにくの大雨で、作業は中止。たまの休みだ。こんなときのマークの居場所は決まって、ジョーコレクション。 「ところで、ところでマーク」  エマが、くるくると体を回しながらマークに近づいてきた。マークは、持っていた分厚い本を盾に身構えた。エマのスキンシップはけっこう痛い。このパターンはお初だったが、結局体当たりをするのがお決まりの挨拶だった。男子だから大丈夫と言わんばかりに渾身の身投げをしてくる。レスリングを知らないと言い切る割には、いろいろな技を

          Never Garden 【三芒星編】46

          Never Garden 【三芒星編】45

          45 復活の塔  廃品を組みなおし機能を持たせるマークのチッタ、そこまで真似することはなかなか出来なかったが、そんなマークの工夫に触発されたごみ山の子供たちは、マークの交換方法を“マーク商法”と呼び、知恵を絞るようになった。  試行錯誤の末、うまい具合に有価物を選別する方法を考え出すと、金属くずの不純物混入が極めて少ないとの噂が、ビニール村で廃品交換をしたいと業者を呼び寄せた。業者が増え、競って欲しがるようになると当然買取価格は釣り上がった。ただの鉄くずに“マークのビニー

          Never Garden 【三芒星編】45

          Never Garden 【三芒星編】44

          44 ジョーコレクション  子どもたちの奇想天外な直観、それは「蜃気楼の本」から子供たちにもたらされた至宝である。  その本は、もちろん「ジョーコレクション」にある。  本棚には鉄で出来たレリーフの看板があり、模様やシンボルマークが本のカテゴリーを伝えている。夕闇の訪れと共に、アイアンの草花や果実の実に仕込まれたクリスタルが輝きを増し、螺旋のイルミネーションが本の巨木を駆け上がる。  星々の庇護のもと、闇にのまれる孤島に凛と構える叡智の城、  ー“ジョーコレクション

          Never Garden 【三芒星編】44

          Never Garden 【三芒星編】43

          43 イメージシェアリング  流れる雲が紺碧の記憶を忘却の彼方へ葬り、純白の水平線に淡い頬紅ほおべにをさす。少し肌寒い風を受けマークは芝生に腰を下ろした。もうすぐ光りが裂けめを穿うがち、天は海に、海は天にお互いの光を受け渡す。  横たわり目をつむり、辺りに意識をひろげる。  草木の露が大地の英気で島をみたそうとする沈黙。  風を感じ、風の匂いを嗅ぐ。  瞼まぶた越しに届く色。  マークは思い出す。  夢にみた“八の字の軌道”。  糸をイメージして、あやとりを始

          Never Garden 【三芒星編】43

          Never Garden 【三芒星編】42

          42 王女の雪  リビングドームの壁の一部は石を組んだアーチ状の壁があり、マントルピースにはめ込まれたクッキングストーブが寒い朝を温める。アイアン装飾の洒落た鋳造扉を開ければ中にはレンガづくりの石窯があり、一回で10人分のパンを焼き上げる。  ダイニングテーブルとストーブの間は、流し台のついたカウンターで間仕切りされ、その区間は、ルーとアヤの縄張り、兼女子の聖域である。  この日は朝から薪がパチパチと音を立て、石釜を温めていた。やがて立ち込める匂いは、昼ご飯の鐘の代わり

          Never Garden 【三芒星編】42

          Never Garden 【三芒星編】41

          41 ね。魔法でしょ  アヤの塩はこの島の川が注がれる海辺の透明な水を使う。来る日も来る日も、サリーとアヤは炎天下の塩田で海水を濃し、蒸し暑いむろで火を焚きしめ、日々の湿度で攪拌頻度を変えながら焦げ付くことなく煮詰める。途方もない根気のいる作業を繰り返し、ようやくほんの一握りの結晶が手のひらにすくえる。  この単調に思える作業でもっとも大事なことは、思念だとアヤは繰り返しつぶやく。 「魔法の薬をつくる、おバカな魔法使いみたいよね」  首を突き出してアヤは、より目を回し

          Never Garden 【三芒星編】41

          Never Garden 【三芒星編】40

          40 根底の意  かすむ視界がはっきりすると、パイプ煙の向こうにみんなの心配そうな顔がみえる。ニーロがマークの布団に顔を埋めた。ニーロのやわらい髪をやさしく撫でた。メリルは泣きたいのをぐっとこらえて作り笑いをしている。 「み・んな、・・・ごめ・ん」  かすれ声だったが、その場に安堵感がひろがった。  “いい匂い・・・”  無言のメリルはマークの口にスープを運ぶ。 「おいしい…」  もう一度すくって一度自分の口で冷まし、スプーンを差し出すメリルの手を制す。もう胃が

          Never Garden 【三芒星編】40

          Never Garden 【三芒星編】39

          39 夢だけど夢でない  いつのまにか、マークは夢をみていた。  学校の芝生に一人で横たわっている。  頭上に、捻じれたロープのような紐が漂っている。  集中できないのか、紐はぼやけて、空の雲が透けて見える。  雲の形が変わっていくのをぼんやり眺めながら、マークはその紐で”あやとり”をはじめた。  一本の紐を使った遊び“あやとり”は、両手の指に紐をひっかけて、いろいろな形をつくって楽しむ。紐は振動を表し、両手は振動の両端である。音楽でいえば、根音と呼ばれる音階の一

          Never Garden 【三芒星編】39

          Never Garden 【三芒星編】38

          38 救難救助隊  どしゃ降りの雨は灰を含んで、ウィル、ザック、アイナの顔を真っ黒に覆った。  連れ立って夕食に向かう道中、強烈な風圧で木の葉のように舞い上がった彼らを、水田の湿った柔らかい地面が受け止めた。泥から顔をあげたウィルが始めに見たものは、立ち昇る巨大な暗雲の化け物だった。  詰まる胸を叩き、呼吸を体に思い出させる。  ああ、がぁ…  あの怪物の足元に、…マーク‼  うう、息が出来ない、、、、、くそ。体がひきつる。  「まぁーーク!」  渾身の叫びを

          Never Garden 【三芒星編】38

          Never Garden 【三芒星編】37

          37 死の淵 ああ。結晶塔が燃えている…。  早く・・・。火を消して・・・。    ウィル!アイナ、ザック。  みんなを、、、。  塔が・・・崩れる。  ダメだ!絶対に!  これが倒れたら、終わってしまう。  何もかも、今までと変わらない。  火炎の風圧がマークを吹き飛ばす。  ふらふらと起き上がり、近づく。  頭上にそびえる塔の頂がもげ落ち、叩きつけられた地面がうねり、彼の体を軽々と突き離した。  また、立ち上がる。  プールの・・・水を。はやく

          Never Garden 【三芒星編】37

          Never Garden 【三芒星編】36

          36 虹の日 「お誕生日、おめでとう!」  メリルが扉を開けるなり、いきなり元気いっぱいに飛び込んできた。 「みて、みて! あれよー」   メリルの指の先、窓枠に収まらない虹のしっぽがみえる。 「この虹、ニーロにあ~げる」  はじけそうなメリルの笑み。ニーロは首をかしげて、メリルを不思議そうにみた。  ニーロは生まれた日も、本名さえわからない。ニーロと母親はビニール袋をつなげただけの天蓋の下、床もなく地べたで眠る生活を送っていた。母親が亡くなって、すぐにニーロは

          Never Garden 【三芒星編】36

          Never Garden 【三芒星編】35

          35 手遅れ  体が動かない…。マークはその場で片膝をついた。担いでいた材料袋が肩に食い込む。ずしりと膝まできしむ重さに耐えて、体が震える。荷に押しつぶされるように崩れた。  額を床に打ち付けて、ハッとなる。しまった…ダイヤルを間違えている。材料も違うじゃないか。何を…。  おこした顔に、結晶塔から漏れる赤い光線が焼き付く。  閃光が子供たちの視界を奪うと、ズンとテーブルが浮いた。分厚い木と金属の重量は1トン近くある。  工房が…。窓の外の光景をみた、メリルは両手で

          Never Garden 【三芒星編】35