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丁寧だがわかりにくい・つまらない 岸田さんの「発信力」



最近のニュース番組では「もしトラ」という言葉をよく聞く。大統領選に出馬するバイデン大統領、トランプ前大統領による先般の討論会を見ると、「もしトラ」というより「ほぼトラ」が現実味を帯びてきた。

ネットの政治関連番組を見たら、こうした流れを受け、「岸田さんはトランプさんときちんとコミュニケーションしていけるのか?」というテーマで専門家が話し合っていた。

結論は「難しいんじゃないの」で一致。トランプさんはビジネス経験が長い。ビジネスでは、まず結論を先に述べる端的なやりとりが求められる。一方、岸田さんは話が長い。丁寧なのだが、妙にわかりにくい。

丁寧だが話が長い

岸田さんの国会での答弁を聞いていると、質問者の質問内容を冒頭で繰り返し、「ーーというお尋ねでございますが…」としたうえで、答弁に入る。これは、なくてもいい。時間の無駄だ。

また、ある程度話した後で「ーーと認識しております」「ーーと承知しております」となる。まどろっこしい。「あれ聞いてて、イライラするよね」という人もいるそうだ。

その岸田さん、2月発売の月刊誌「中央公論」のインタビューで政権運営の改善点について、「まだまだ足りない部分も多いかもしれないが、『発信する力』を大切にしていく」と述べていた。

1月に始まった長丁場の通常国会は6月下旬に終わったが、その後のインタビューでも、下記のような発言をした。

7月5日発売の月刊誌「Voice」のインタビューで、自身の強みと自負する「聞く力」に加え、「決めたものをしっかりと国民に『伝える力』が求められている」と述べ、発信力を高めていく考えを示した。

年頭の目標に届いていないことをご自身が認識しているようだ。

岸田さんの意気込みは評価したいし、応援もしたいが、道は険しいかもしれない。

作文もわかりにくい

岸田総理が母校・開成高校の同窓会誌に自身の思い出を寄稿したのだが、これが実に岸田さんらしい。

以下、「現代ビジネス」の記事を引用する。

《私は、1973年に、開成高校に入学し、76年に卒業しました。あれから、50年近い時間が過ぎようとしていることを思うと、正に“光陰矢の如し”であり、月日の過ぎ去る早さに驚きを禁じえません。

50年といえば、紅顔の青年が、白頭の翁となるのに十分な時間ではありますが、不思議と、人生の最も多感な時期である高校時代の記憶というものは、色あせることがないようです。》

冒頭からいささか抽象的な記述が続き、なかなか思い出話にはつながらない。

次に岸田さんは運動会について触れている。

《開成の運動会は、素晴らしい青春の一コマというだけでなく、多くの人とつながる力や、リーダーシップ、異なる個性がぶつかり合うことで新たな価値を生む力といった、人生にとって、とても大切なことを学ぶ貴重な場でもありました。

ぜひ、この伝統を、これから入学される未来の後輩たちのためにも残していって欲しいと思います。》

運動会の件はこうしめくくられる。あまりにも抽象的で、いったいどんな高校生だったのか、岸田氏が何を感じたかをイメージすることは難しい。

役人の話法

話も文章も、具体的な事実が盛り込まれていると、聴衆、読み手はイメージしやすい。岸田さんの話し方は丁寧なのだが、言質をとらせないよう注意をしているかのようだ。これでは発信力も伝える力も高まらない。

しかし、こうした話法で評価される業界もある。役人の世界だ。「公務員の議会答弁言いかえフレーズ」という本には、そうしたノウハウがたくさん紹介されている。

公務員は議会に出席して、答弁する機会が多々ある。ヘマすると首長に迷惑がかかる。印象を悪くしないためには、後ろ向きな答えも前向きに聞こえるよう工夫することが重要だ。

言い換え例を見てみよう…
財政課に予算を切られました → 総合的に判断して見送りました
本市での実現は無理です → 他市の動向を注視してまいります
質問の意味がわかりません → 〇〇についてのお尋ねかと思いますが

実施するつもりがまったくないことを提案された際は、「やるつもりはありません」などと言ってはいけない。下記のように言い換える。

「それも考え方の1つと認識しております」

どことなく岸田さんの話し方と似ている。まあ、答弁は役人が作っているのだから仕方ないが、本当に発信力を強化したいなら、一読したうえで、自分なりに言い換えるべきだ。しかし、岸田さんの場合、身内に財務官僚が多いそうだから、自然と役人独特の表現が染みついてしまったのかもしれない。

大臣の中には、質問者を一切見ず、役人が書いたメモを棒読みするだけのヒトもいる。こういう人が次期総理候補というから驚きだ。

政治家の演説をAIで採点

政治家は言葉が武器だ。上手な人の演説というのは、聞いてて楽しい。うまくなるには練習と経験が必要だ。

AIで採点というとカラオケばかりを思い浮かべてしまうが、政治家の演説を採点するシステムが登場した。かつてだと先輩議員の演説を聞いたり、アドバイスを受けたりして学んできたが、これを使えば、こっそり練習することができる。短期間での上達が期待できそうだ。

伝え方の研修事業を展開するカエカは、話す力を診断し数値化するサービスを始めた。演説の内容を人工知能(AI)で分析、専門家の評価を加味して、演説のよいところや課題を診断する。マイクの有無、話しをする時刻など細かな状況の設定も可能という。

最近はYouTubeにチャンネルをもつ人も多いので、その方面の需要もありそうだ。

岸田さんもこっそり試してみてはどうだろうか?



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