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[マードックからの最後の手紙] マンドリンオケに2021年版をオススメする2つの理由

マンドリンオーケストラの指揮者をしている相原です。
樽屋雅徳作曲「マードックからの最後の手紙」は、豪華客船タイタニック号のマードック航海士と沈没事故をモチーフとした、吹奏楽の超人気曲です。2022年の吹奏楽コンクールだけでも100回以上演奏されたという記録があり、最近はマンドリン・オーケストラでも編曲版の演奏機会が増えてきました。
そんなマードックですが、原編成の吹奏楽でも、複数の版があることをご存知でしょうか?今回は、マンドリンオケでマードックを検討している皆さんに、2021年版をオススメしてみたいと思います!


通常版と2021年版

マードックには、作曲者自身による4つの版があります。そのうち、マンドリンオーケストラに編曲されているのは通常版と2021年版の2つで、どちらも遠藤秀安先生による編曲があります。
まずは、吹奏楽による演奏動画を載せておきます。
Wikipedia出版社のフォスターミュージックのサイトにも版ごとの違いが解説されていますが、少しわかりにくいので、以下で解説していきます。ちなみに、Wikipediaの「曲の構成」は通常版のものです。)

  • 通常版

  • 2021年版

マンドリンオケには2021年版がオススメ!

理由1:冒頭のポルカが楽しい!

2つの版を聴き比べてみましょう。まず最初の1分40秒を過ぎたあたりで、2021年版には、通常版になかった軽快なポルカが登場します。
これは、ジェームズ・キャメロン監督が1997年に公開した映画「タイタニック」でも使われたJohn Ryan's polkaという曲です。

上記の動画でも、3回目の繰り返しでマンドリンらしい音がソロを担当しており、劇中に登場する楽団にも、よくよく見るとマンドリンが・・・

上記の動画をスクリーンショットしたもの。主人公たちの左後ろにマンドリンが!

「マードックからの最後の手紙」は、タイタニック号の事故当日の責任者であったW. M. マードック一等航海士をモチーフとしています。通常版でも作曲者は、「曲はその手紙に綴られていたであろう風景や彼の思いをアイリッシュ調のメロディーで描いていきます。」と解説していました。よりタイタニック号と曲のつながりを強調するためか、2021年版では映画「タイタニック」で使われているこの曲をあえて引用したものと思われます。

この部分は2021年版のマンドリンオケ編曲でも、とても軽快な楽しい部分になっています。

せっかくマンドリンオケでマードックをやるのなら、映画でもマンドリンが登場したこのポルカを演奏してみたくないですか??

理由2: より激しく、描写的になった中間部

2つ目の通常版と2021年版の大きな違いは、中間部のシップスベルが鳴った後、多くの解説で「タイタニックが氷山と衝突して混乱する」とされている部分にあります。
マンドリン編曲で違いを聴き比べてみましょう。通常版では3分50秒付近から4分30秒付近までです。

実は、私が「マードックからの最後の手紙」を初めて聞いたのは、マンドリンによる通常版でした。「まぁタイタニックというからには、沈没のシーンがあるんだろう」くらいの知識しかなかった私は、恥ずかしながら、このタムタムを中心に打楽器が大活躍する部分を「楽しい!」と感じてしまい・・・そのままアイリッシュな速弾き部分へ突入、フォルテッシモの強打の後の祈りのようなフレーズで「あれ・・・?もう沈没してたんだ・・・!」と気づく有様(笑)。予習って大事ですね。

2021年版では、3分30秒付近から5分付近までに該当します。

2021年版では、打楽器を中心としたリズミカルな部分は、不協和音や波を強調するような形に大幅に改訂されました。さらに、まるで氷山がタイタニックの船体を擦って穴を開ける様子を再現するかのように、「ギーッ」という音が鳴るラチェットという打楽器も追加され、私のような早とちりさんが誤解しないような配慮までされています(笑)。2021年版の方が、より事故を描写するような形になっているといえるでしょう。
個人的には、打楽器が活躍する編曲になっている通常版の中間部より、2021年版のほうが打楽器の出現頻度が抑えられており、マンドリンとのバランスが取りやすいのではないかと思います。

楽器編成について

「でも、打楽器ないと演奏できないんでしょう?」->「いいえ、打楽器なしでも演奏できます!」

2021年版で、「打楽器のみ」になる部分は1箇所だけ、動画の5分17秒付近です。

2021年版を編曲していただく際、編曲者の遠藤秀安先生にお願いして、打楽器が入らない練習でも違和感がないようにマンドリン属とギターによるボディノックを楽譜に記載していただきました。打楽器が入った方が迫力は出ますが、打楽器なしでも演奏は可能です!
なお、通常版は多くの団体で打楽器4人で演奏してますが、2021年版は打楽器3人で演奏可能です。

「マンドローネがないと演奏できませんか?」->「マンドローネは省略可能です!」

2021年版を演奏した私たちブレーメン音楽団には、マンドローネメンバーがいるので、2021年版の編曲にはコントラバスとマンドローネが異なる動きになる箇所が少しだけあります。
しかしながら、一般的にはマンドローネが存在しないマンドリンオケの方が多く、そのようなオケではマンドローネはコントラバスで代奏されます。マンドローネのコントラバスによる代奏は、多くの団体で日常的に行われており、マンドローネは省略しても全く問題ありません。

「フルートがないと演奏できませんか?」->「多分大丈夫です。遠藤秀安先生にお問い合わせください。」

2021年版の編曲でフルートのみになる部分はごくわずかで、ほとんどがマンドリンで代奏可能です。編曲者の遠藤秀安先生にお問い合わせいただければ、マンドリンで代奏可能なパート譜になるよう対応いただけると思います。
(なお、上記の動画では、フルートとピッコロを持ち替えて演奏している部分がありますが、フルートのみで演奏可能です。また、フルートパートにはdiv.がないため、1名のみで演奏できます。)

おわりに: 楽譜はどうやって入手すればいい?

まずは編曲者の遠藤秀安先生にお問い合わせください。
「マードックからの最後の手紙」は、通常版も2021年版も、「レンタル譜」というシステムになっています。吹奏楽団は、出版権と著作権を管理しているフォスターミュージックと1年間の楽譜レンタル契約を交わし、レンタル期間のみ演奏が許可され、期間終了後には楽譜を返却します。

マンドリン編曲版を演奏する際は、フォスターミュージックに編曲許諾申請を出し、許諾と同時にレンタル契約を結び、レンタル期間中のみマンドリン編曲版の演奏が許可されるような流れになります。
遠藤秀安先生に「マードックからの最後の手紙」の編曲版を演奏したい旨をお知らせすると、手続き方法もご連絡いただけると思います。

ぜひぜひ、マードックは2021年版でお楽しみください!

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