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お菓子屋さんで長く、楽しく働くために必要なこと

2004年にジャムの店「ロミ・ユニ コンフィチュール」を鎌倉にオープンして、今年で18年目に入りました。

鎌倉にはもう1軒、冬季営業のショコラの店(年内は休業)とお菓子教室を兼ねたアトリエがあります。焼き菓子とジャムの店として東京の学芸大学に開いた「メゾン ロミ・ユニ」はまもなく14年。Web Shopもコロナ禍を境に実店舗に迫る勢いで存在感を増してきています。

4人でスタートした店は、パートさんも含めて現在60人以上、スタッフも10年勤務を超える人が増えてきました。20~30代で店に入ってきた人たちは30~40代へ。ロミ・ユニでは、結婚や子育てなどでライフステージが変わった人も働き続けられるよう週休2日、8時間労働、残業なしをルールに、それぞれの現場チームに、働き方を組み立ててもらっています。

お菓子やジャムは食べる人の気持ちを楽しくさせるものです。それを作る現場の人も同じ気持ちであってほしい、といつも思っています。この仕事を選ぶ人は幼いころからお菓子づくりが大好きで、自分もそうだったように、誰かを喜ばせる仕事をしたくて入ってくる人が多い業種だと思います。しかし、採用面接をしていると、「お菓子屋さんの仕事は好きで、作り続けたいけれど、生活がつらい」と感じている方がすごくたくさんいることに気づきます。

楽しいと思える仕事は世の中にそう多くはありません。でもお菓子作りは、間違いなく楽しい仕事の一つです。なのに、途中で続けられなくなる人がこんなにたくさんいることがとても残念でなりません。苦しみの原因になっているのは働き方、もっと具体的にしぼれば「残業」です。お菓子屋さんの世界でも働き方を見直す動きが増えてきましたが、店に入りたいとやってくるスタッフを見ていると、まだまだ状況が改善されているとは言えません。

残業のない働き方を前提に仕事を組み立てていくと、スタッフが健やかで前向きになるな、と感じます。そして、限られた時間内で効率よくお菓子を作ったり、販売の方法を考えてくれたりするスタッフも増えてきます。やみくもに長時間働いて商品をたくさん作るのではなく、自分たちのインプットの時間をきっちりと持ちながら、長い目で店を一緒に育ててくれる。年々、なくてはならないパートナーに成長してくれているのを感じます。

好きでスタートしたお菓子の仕事だからこそ、そのお菓子を好きな気持ちが失われないような働き方で、健やかなワークライフバランスを考えることは、生き方を考えることにもつながります。経営者の立場から、わたしはここ数年で、スタッフが定年退職したときのことも考えるようになりました。いま30代のスタッフが70歳まで続けられるような場所をつくるには、どういう働き方がいいのか……。5年先、10年先はそうでもありませんが、20年先を想像すると、今の通りには働けなくなることがかなり切実になってきます。じゃあ、定年で「さようなら」なのか。人生100年時代、みんな困るんじゃないか。

奈良でおばあちゃんたちの団子屋さんに遭遇したことがあります。団子を丸める人、それを箱に詰める人、接客する人……そのままロミ・ユニの現場のセクションに重なりました。お菓子が好きで働き続けてきたのなら、定年後もそれぞれの得意な分野で楽しく働き続けられる場所を作れないか。お金はたくさん稼げなくても、やりがいがある仕事を続けていける環境がほしい。早期退職して移ってもいい。人生のワークバランスを考えて、そちらを選択するスタッフがいるかもしれません。定年後にそんな再就職先が待っているとわかっていたら、安心して今の仕事に集中できる環境も整えられそうです。

チームで働く場合も、働き方を個々がデザインすることは必要な習慣です。そのためには、前向きに発想したくなる職場環境をつくっていくことが大事です。その一歩が残業ゼロ。これからロミ・ユニのスタッフがどんな働き方をしているのか、15年以上のベテランから入ったばかりのスタッフまで、それぞれ違う立場からお話をしていきます。店のホームページもあるのですが、「働き方」という裏舞台の話なので、飛び地的にnoteの場をお借りしたいと思います。お菓子屋さんで働くことが苦しくならないために必要なことを、これから共有していきたいと思います。

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