見出し画像

女池充「白衣いんらん日記」

上野オークラで、女池充「白衣いんらん日記」 脚本は小林政広。

父親(野上正義)に暴行されたトラウマ持つ看護婦(吉岡まり子)は、患者の録音技師(寺十吾)にときめくが、現実は不倫相手(河名麻衣)を殺害した医師(本多菊次朗)に泣きつかれ死体遺棄幇助からの肉体関係にハマる泥沼。彼女は入水自殺?見せかけてどんでん返しがハッピーに鮮やかにキマる傑作。

サスペンスタッチで暗い雰囲気の画面。ヒロインのまり子に隠された重大なトラウマ。良く練り込まれた脚本。オフビートで最後まで進行する物語にブレはないが「なぜヒロインはそんなに可哀想な目に遭うの?」観客が思うこと自体が演出のツボなのだ。

ヒロインのまり子は脚をびっこ引いている。その理由は父親のガミさんにパンチラ見られて欲情されてレイプされそうになって逃げて階段から落ちて重傷を負った最悪の思い出。だから男なんてこりごり。そう思い続けていた彼女のコペルニクス的転回。

女池監督の演出はもう少しメリハリを付けられないものだったか、と思わせつつも、この位に静かに映画が流れて行くからこその終盤の( ゚Д゚)とするようなケレンミが技として抜群に効いている。技巧派の作品だから映画を通して全体が面白いのとは違う。

寺十吾の演じる音響技師、自らは効果と語る狂言回しのような配役が本作のキモである。まり子が「私を抱いて。こんな気持ちになるの初めてなの」と言わせるだけの説得力が彼にはある。街で音を拾い川に落ち入院してまり子を知り合った果報者の男。

音響技師はまり子を音入れの現場に招待し、作ってもらったサンドイッチに感激のキスをする。その日からすっかり恋をしてしまったまり子。でも彼はオクテなんだよなあ。音楽をかけて部屋でステップを踏むまり子を窓の下から見上げるだけで満足なのだ。

女を蹂躙する最凶ヒールとして暗躍する本多菊次朗はまり子が勤める病院の医師で既婚者だが女と見ればヤル好き者で、本来ならまり子が最も唾棄すべき人物像なんだよね。でも成り行きから殺人を犯した本多を助けそのままセフレ関係になっちゃう悪循環。

父親に犯されたトラウマを抱えるまり子がオクテで純真な録音技師の寺と、ヤリチンで女と見れば見境の無い医師の本多と、二人の男との関係が同時並行で紡がれ「あの時。もしもこうなっていたら?」私は本多じゃなく寺とくっついていたのかも知れない。でも成就して、これは現実?それとも夢?

この作品のエスプリが効いてる所は、所詮は映画の中で紡がれるのは作り話であり、女優はそれを演じているだけだ。でも最初に作り話を進行させることであたかもそれが現実のように思え、最後に映画の現場を持って来ればそれは夢だったことになる。

録音技師の寺と看護婦のまり子の恋愛譚は実はどこから現実でどこまで夢かの境界線ははっきりしない。曖昧にしてこその味わいがある。そもそも街で音を拾っている寺を偶然見かけた場面から夢は始まっているのかもしれないし、現実の出会いなのかも。

この作品が提示する唯一絶対の信実はヒロインの吉岡まり子はピンク映画女優であるということ。この絶対真の前には全てがひれ伏す。寺がホンを書いてまり子を出演させたとして、そのホンに書かれた内容のどこまでがフィクションかは預かり知らぬ所だ。

河名麻衣が演じる死体役が絶品。本多に「俺の子を孕め、そしてお前を捨てる」悪魔のような台詞と共にガンガン犯され壁に頭を打ち付け絶命した可哀想な麻衣。トランクに詰めた死体はまり子が海水浴した海の背後の山林に穴を掘って埋められるのだ。

本多がチャラい女の身体目当てのスケベ医師なのに対し、婚約者がいてまり子とヤル好機に全然ヤル気がありませんな松原正隆もいい味出してる。まり子にとって男は狼ばかりじゃない。松原に放って置かれた彼女は海辺で一人、寂しそうに佇むのである。

そんなまり子のキャラ設定のキモはまだヴァージン。父親のガミさんにレイプ未遂に遭ったショックでその後は男を遠ざけ、本多が人気のない海辺で襲って来た時も金蹴りして難を逃れた彼女。とっておきのヴァージンは愛する録音技師のために取ってある。

槇原めぐみがびっくりするほどの濡れ場要員でwまり子の看護婦としての先輩だがヤリマンで男女4人職場の海水浴でヤリチンの本多とインスタントなカーセックスでアンアン悶え、これが節操のある松原と男嫌いヴァージンのまり子との絶妙な対比となる。

冒頭、一人寂しくアパートに帰ってナマ着替えするまり子は脚をびっこ引いたいわくありげな看護婦。隣室でOLの麻衣が同じ職場の本多医師とガンガンFUCK。「愛してると言って!」ねだられても「先にイっちゃうぞ」セックスしか眼中にない鬼畜な本多。

麻衣の喘ぎ声に嫌悪感を抱いて多摩川にかかる二子橋に出たまり子はマイクで音を拾って川に落っこちそうな寺を見かけた。そして翌日、足を骨折して重傷患者の寺と対面。優しく脚を擦ってあげると寺の激痛は消え「私は魔法使いなの」冗談を言った。

麻衣は寺と話してるとこれまで嫌悪していたオスの臭いを感じず、退院して職場のスタジオに招待され行ってみれば音入れの真っ最中。差し入れのサンドイッチを無言で食べていたが、別れ際に「感謝の気持ちは別れる時に言うものだ」優しくキスをした。

まり子は先輩のめぐみに誘われ医師の本多&松原と同僚4人で海水浴して水着でキャイキャイはしゃぐが本多の狙いはただ一つ、看護婦とヤルことだけで(笑)夜になるとめぐみと車中でワッセワッセ、でも松原はまり子に手出しをしない彼は婚約者がいた。

松原はまり子にびっこを引いてる脚の秘密を尋ねる。まり子にとって悪夢のような記憶は部屋でパンチラを父親のガミさんに見られレイプされかかり階段から転げ落ちて大怪我を負ったが2週間も放置して悪化。松原とまり子の間に重苦しい空気が流れた。

まり子が真っ暗な海辺で一人黄昏ているとめぐみとヤリ終えた本多が近づいて来て「どうしたの」押し倒されレイプされそうになって思い出すあの日の苦い記憶。まり子は本多の金玉を蹴り上げもんどり打つ本多に「ごめんなさい」謝り続けるまり子。

本多は麻衣との浮気が妻にバレて「どうして告げ口した」麻衣をなじりそのまま押し倒してFUCK。それでもアンアン悶える麻衣を気に入らず「お前を孕ませて捨ててやる!」頭を壁にガンガン打ち付け麻衣は絶命。気が動転した本多は部屋を飛び出した。

その頃、隣室のまり子はすっかり私の王子様になった録音技師の寺のことを思い出している。楽しそうにダンスを踊り、窓から路上を見ると寺がニッコリ笑っていた。「まさかもう一度会えるなんて!」まり子はこのチャンス逃してはならじと玄関に出た。

ここに血相を変えた本多が「どうしよう!」まり子に泣きつき抱き着いた。彼は愛人の麻衣を殺害してしまった。「長いドライブになりそうね」まり子は本多たちと海水浴に行った海岸の山林に遺体を埋めることを提案。「お前って案外怖い女なんだな」

本多が麻衣と痴情のもつれになったのは元を正せば妻と離婚して宿無しで居候を決め込もうとしたら麻衣に彼氏がいたこと。だからまり子の部屋に転がり込むことになって愛なんてないのにまり子は毎晩のように本多に抱かれた。寺のことを想いながら。

ある日病院に、もう会うことなんてないだろうと思ってた寺が来ていた。まり子に「検査には必ず来いって言うから来たのにいないじゃないかよ」言われたまり子「ごめんなさい。もうダメなの」気が付けば脱兎の如く逃げて、もう寺とは終わったと思った。

本多はすっかり図々しくなり、まり子をワンワンスタイルに知るとバックから激しく犯しながら「こっちも処女をいただいたからアナルの処女ももらうぞ。痛いけどな」グサッとアナルを犯し、怒髪天に達したまり子は包丁で本多の胸をグサッと刺した。

まり子は何度も夢を見る。あの日、窓から路上に見えた寺の姿を追いかけて夢中で外に出たら寺に追いつくことが出来て「今度、音響だけじゃなくて脚本も書くんだ。現場に来てみないか」( ゚Д゚)と気が付くと一人寂しく寝ている私がいたたまれなった。

この世の終わり。バイクを走らせたまり子は海辺で全裸になると海に向かって歩き始めプリケツが悩ましいけど正直興奮できない(笑)スッと海の中に沈んで、ロケ中の撮影部隊は大騒ぎ。慌てて寺が海中に飛び込むと、まり子はヌッと顔を出し抱き着いた。

まり子は「疲れたよ、もうピンク映画なんて出ない」言いながら寺の肩に腕を回して熱烈キスの嵐。そんな二人のプレイバック。まり子は寺にバージンを捧げ、口説かれた「ピンク映画に出てみないか?」「OK」二人は用心深く、海辺を肩を並べて歩いた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?