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佐野和宏「ジェラシー」

ラピュタ阿佐ヶ谷で、佐野和宏「ジェラシー」 (成人映画公開題「若妻 しとやかな卑猥」)

脚本家を目指す青年(佐野和宏)は最愛の恋人(岸加奈子)と別れた。そして5年後、彼女は親子ほど歳の離れた不能の男(吉沢健)の妻になっていた。8mmビデオで美しい回想シーン多用にセンチメンタルな劇伴、岸加奈子を超絶に可愛く撮ったロマンチック過ぎる恋愛譚の大傑作。

佐野和宏は監督・脚本・主演の三役を一人でこなす。この作品は、佐野本人の極私的エロスの色彩が濃い映画で、主人公の設定は「映画が大好きで、テレビの脚本は書いて受賞もしたが、本当は映画のホンを書きたくて仕方がない、でもその機会が無い」どんずまりの男の話である。

私もたいがいロマンチストだが、佐野和宏のロマンチストぶりは半端なものではなく、8mmビデオに対する異常なまでに熱い思い入れは、もはや暑苦しくさえあるのだがw観ていて以外とスッと消化できてしまうのは岸加奈子、彼女の清楚だけどエロくてアイドル性が際立つ魅力のなせる業!

佐野が別れた後も5年間、ずっと想い続けるイイ女、それが岸加奈子。彼女の造型は、ひたすら外見の可愛らしさと妖艶さにこだわったアイドルなのだが、内面は佐野を「テレビ局に飼いならされた豚」と罵るプッツン女優(←この表現、懐かしいよな、おいw)でしかない。

佐野を上回る存在感を見せつけるのが、加奈子と三十歳の歳の差結婚をする吉澤健。若松映画で見せたような若くてギラギラした彼は、すっかり老成し、加奈子を大好きだが抱けないインポの夫を好演する。加奈子を巡る、佐野と吉澤の三角関係、これが本作のテーマである。

モチーフは佐野が5年前、恋人時代に加奈子を撮影した8mmビデオ。ビデオカメラとフィルム映写機、それにスクリーンさえあれば、過ぎ去った美しい昔の思い出は永遠に映像に記録される。そして、美しい映像は「愛と憎しみは紙一重」の一線を超えさせる凶器にもなる。

不能の吉澤が加奈子の幸せを願うが余り、佐野を自宅に呼び、2階のベッドルームで待ち構えていた加奈子が、5年ぶりに再会した佐野に思いっきり抱き着く。そのままの勢いで熱いFUCKシーンに雪崩れ込む、どうしようもなくロマンチックな場面には思わず号泣すること必至!

佐野は、脚本家として「愛と憎しみは紙一重」の話をずっと描きたかった。吉澤にリクエストされ映し出した「加奈子」というタイトルの8mmビデオは、若き日の加奈子が砂浜で、遊園地でははしゃぐ姿がたくさん詰まっていて、吉澤に強烈な嫉妬を生じさせ、同時に佐野には昔の加奈子を回想させる。

吉澤が嫉妬心から加奈子に対して凶行に及び、胸を刺されて死んだ彼女の身体を抱きかかえた佐野とのツーショット。ベッドルームなのに、なぜか二人の背後には撮ったはずの無い、砂浜や遊園地の風景映像が収められていて、あたかもその中に現時点の加奈子と佐野がいるような、物凄く美しい映像。

吉澤は自宅プールの水を抜きせっせと清掃、佐野も手伝う。映画が終わりエンドロールも回った後、全裸でプールを泳ぐ加奈子の全裸を水中カメラで撮った、これも超絶的にロマンチックな映像が流れる。吉澤にとっても、佐野にとっても、私にとっても加奈子はマーメイド。

この作品、大傑作に違いないのだが、ジャンル映画としては佐野和宏と岸加奈子の濃厚なFUCKシーンが長回しで延々と展開される「佐野監督、これ、役得じゃね?」なシーンを除くと、冒頭の一ノ瀬まみを佐野和宏のカラミ(挿入まで行かずw)しかなく、良くこの企画で通ったよなあw

冒頭、伊藤清美と小林節彦(どっちも友情出演)が取っ組み合いの喧嘩をしていて、それを岸加奈子が窓から見つめている。彼女は5年前、自分も恋人だった佐野と取っ組み合いの喧嘩をした挙句、別れた、いや、捨てられた悲しい思い出を回想してしまい、涙に暮れる。

加奈子の夫は、親子ほども年上の初老の男・吉澤健。彼はインポで加奈子をプラトニックに愛するが、若い彼女の火照った身体を慰めてやることはできない。そのため、若い男・荒木太郎を呼び、妻の加奈子を抱かせる。でも、加奈子は佐野との思い出に浸るたび、若い男を拒む。

荒木太郎は吉澤邸に呼ばれ、加奈子を抱いてくれと頼まれたのに、「やっぱりいいやw」と追い返される、考えただけでも凄く惨めな役回りで「ああ、荒木太郎、可哀想だなw」と思って観ていると、クライマックスの導入部、文字通りの破壊神となって再降臨、影の主役となる。

佐野はテレビの脚本は仕事と割り切り、趣味で実際には制作されるアテもない映画のホンを書き続ける。彼は自宅の台所で、テレビドラマの役を貰いたい女優の卵(一の瀬まみ、巨乳が美味しそうw)を背後から抱く。でも、佐野も加奈子のことが忘れられず、挿入を求めるまみを部屋から追い出すw

モデルを続ける加奈子も脚本家を続ける佐野も、5年前に別れた後もお互いに忘れることができず、ずっと恋焦がれる、びっくりするような大人の純愛譚。焼けぼっくい火を着けてしまうのが、吉澤の想い、皮肉にも「妻の加奈子の肉体を満足されるためには佐野に抱いて貰うのが一番」というお節介。

佐野は吉澤宅に招待され、吉澤に「妻の加奈子は2階にいるから」とベッドルームに案内される(笑)やばい、やばい、これは来たぞ、来ましたよ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!佐野が2階の寝室のドアを開けた途端、シーツに包まった全裸の加奈子が抱き着いた!

佐野にとって5年ぶりに再会した、まだ忘れたくても忘れられない大好きだった加奈子は、なんと全裸(*´з`)しかも自分に抱き着いてセックスを欲しがっているという、もう堪らん雰囲気!佐野も服を全部脱ぐと、二人は抱き合って濃厚FUCKを開始。正常位のみで延々と愛し合う、官能的な場面。

佐野と加奈子の5年ぶり再会からの濃厚FUCKを、ロマンチックな劇伴と美しい撮影が盛り上げる。もうこれ、佐野さんは役得以外の何物でもない(笑)時計の針が止まったかと思えるくらいに、この美しく切なくセンチメンタルなベッドシーンには、感情を激しく揺さぶられる。

佐野と加奈子は、お互いに夢にまでみた再会FUCKを堪能。佐野は加奈子の中に射精して部屋を出た。豪邸の「水のないプール」(←これ、重要な種蒔きです)を黙々と清掃している、豪邸の主・吉澤の姿があった。

佐野は「私も手伝いましょうか」と申し出て、一緒にプールを清掃した。佐野にとって忌まわしい過去、それは彼がテレビドラマの脚本家として売り出し始めた頃。

彼は天狗になって女優たちに手を付け女遊び、夢だった映画の脚本を完成させることなどすっかり忘れ、同棲していたモデルで恋人の加奈子に「テレビ局に飼われている豚」と罵られた。

佐野は加奈子の暴言に思わずビンタ。半狂乱で泣き崩れる加奈子は、家を出て行った。その後、加奈子から電話があったが、佐野は「もう終わりにしよう」辛くて悲しい5年前の別れを、佐野はずっと引きずって来た。

でも、佐野は運命的に加奈子と再会してしまったのだ。吉澤は、佐野が映画を撮っていることを知っていた「あのう、昔の加奈子の映像ってあるんでしょうか。見せてもらいたんですが」

佐野は気軽に「ああ、いいですよ」と自宅に取りに帰った。その頃、モデルの加奈子は和服の宣伝ポスターの撮影のため、外出中であった。加奈子がカメラに向かってポーズを取っていると、遠くの物陰に怪しげな男がいる。

荒木太郎だ!彼は手にナイフを持っていた。吉澤家で加奈子に受けた屈辱、忘れまじ。彼は恨みを込めてナイフを手に加奈子に襲い掛かった!でもすんでの所で身体を逸れ、腕の負傷で済んだ。

吉澤は、佐野が撮ったビデオを、加奈子と三人で観るつもりだった。でも、加奈子は腕に負傷中。2階のベッドルームで休ませた。佐野はフィルム映写機を持ち込み、スクリーン代わりに白いシーツを壁に取り付けると「加奈子」というタイトルの一本の8mmビデオを映写した。

ビデオの中の5年前の加奈子は、砂浜で、遊園地で、屈託のない笑顔で笑っていた。それを見た吉澤は「こんな笑顔、俺の前ではしたことがないのに」と嫉妬を感じ始めた。8mmの中の加奈子は、ひたすらに美しかった。

佐野は加奈子のキュートな姿を映像に焼き付けていた。佐野は、5年前に撮影した加奈子のジェットコースターで、コーヒーカップで、回転木馬で、満面の笑みを浮かべる姿のあまりの可憐さに、ボーと見とれていた。

そして気が付くと、スクリーン代わりに付けたシーツが外れている。それを直していると、吉澤の姿が目に入った。吉澤は、ズボンをビチャビチャに濡らし「ベルトがどうしても締まらねえ」と呟きながらプルプル震えていた。

佐野は異変を感じ、加奈子が寝ているはずの2階の寝室に駆け上がった。加奈子は吉澤にナイフで胸を刺され、息絶えていた。吉澤の嫉妬が、加奈子を殺させたのだ。佐野は加奈子を抱きしめた。

2階のベッドルームの壁をスクリーンに、遊園地の光景、砂浜の光景が映るその前で、佐野と加奈子は5年前の様に、恋人に戻った。加奈子は既に息を引き取っていた。佐野は風景だけがカラカラ回り続ける8mmビデオの前で加奈子を抱きしめた。

5年前の加奈子の美しさ、可憐さを8mmビデオに焼き付けた映像、それは佐野にとって「愛」だったが、吉澤にとって「憎しみ」だった。愛と憎しみは紙一重。加奈子の永遠の美しい時間を共有できない吉澤の嫉妬の怒りは、佐野に対してではなく、加奈子に対してであった。

佐野も吉澤もいなくなった後の、1階リビング。8mm映写機が回り続ける。砂浜で少女のように遊ぶ加奈子の姿が、どんどん小さくなっていく。彼女は日傘をさしていたが、捨てた。そして海に向かってどんどん歩き始め、やがて8mmビデオは終わり、加奈子は消えた。

美しい余韻が残る中、エンディングテロップが回った後、吉澤邸のプールは水が張ってある。その中を、スイスイと優雅に全裸で泳ぐ加奈子。アソコが映りそうでドキドキする(←こらこらw)マーメイドように美しく妖艶、永遠に目に焼き付けておきたい様な加奈子の裸身。

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