本田達男「女高生飼育」

ラピュタ阿佐ヶ谷で、本田達男「女高生飼育」　脚本は関本郁夫。

変態中年男（江角英明）がテニス部活帰りの女子高生（朝倉葉子）を誘拐して拉致監禁。彼女から身体の自由を奪い奉仕させて、愛情たっぷり注ぎ込む江角に葉子の恋心が芽生える危ない展開は、刑事の張り込みですき焼き食べてる所タイーホ！どこまでもストックホルム症候群な実録犯罪ドラマ。

1965年に豊島区池袋で実際に起きた女子高生誘拐飼育事件をほぼ事実に忠実になぞった、当時のポルノ映画だからこそ映像化することが出来た徹底的にエロいウィークエンダー映画版は、女子高生を誘拐飼育する側の視点で描かれており、かなりキモくて背筋がゾワゾワする犯罪心理学の世界。

ストックホルム症候群の語源となった銀行強盗人質立てこもり事件が起きたのは1973年のこと。本作はそのたった２年後に公開されているのでストックホルム症候群は明確に意識してると思いつつ、元ネタとなった事件は1965年なんだよね。もっと以前より日本にストックホルム症候群はあった。

凶悪事件を淡々と描き出す作風はポルノ映画としてはかなり異質で、例えば神代辰巳とか長谷部安春とか藤田敏八とか、シリアスな物語の中にもケレンミたっぷりの遊びがあってホッとさせる。東映ポルノなら石井輝男や鈴木則文もそう。だけど本作は異常に徹底的なダークカラーで、まるで若松プロのよう。

でもね、若松プロの一連の実録犯罪映画って足立正生のホンによるものだから、犯罪者の動機づけのその先にある政治的な何かまで暴き出してるから重厚感があるのよね。対して本作は江角は単なる変態オヤジでしか無くて、どうにも締まりがないオチに繋がってしまうのは致し方ない。

本作には登場しないが、モデルとなった「女子高生誘拐飼育事件」は別名「女子高生籠の鳥事件」とも呼ばれ、犯人が犯行に及ぶ直前にウィリアム・ワイラー監督「コレクター」を映画館で観て、男が別荘の地下室に美しい女学生を監禁するという内容に感化された旨を日記に綴っていた史実があるのよね。

本作が東映ポルノでも異色に見えるのは、系統としてロマンポルノで言えば小沼勝「箱の中の女 処女いけにえ」のように「ギニーピッグ」ほどの残酷スプラッター描写こそ出て来ないが、ポルノと言うよりも猟奇ホラー映画マニアに訴えるような作風であり、観ていてヤバい奴だよ、これ！な感じｗ

本作の実質的な主役である、狂気の拉致監禁男を演じる江角英明は、ロマンポルノ幾多の名作に主演した名優で、一面識もない女子高生に対する極悪非道飼育がそれなりに理にかなったものに見えて来る私も、ストックホルム症候群に罹ってしまったのだろうか。麻薬のように中毒性があるよw

対して本作のヒロインで江角とともに出ずっぱりの、これが映画初主演とされる朝倉葉子は八城夏子似の美貌にリアルな女子高生っぽいフレッシュさはあるものの、劇中で端から誘拐されて監禁されてるうちに性犯罪者の江角に愛情が芽生えてしまうっていうのかなりハードルの高い演技力が要求されると思うの。

でもね、棒読みと棒演技が過ぎてリアルにどっかから誘拐されて来た可哀想な女子高生に見えて来てしまう葉子は、江角に対する憎しみが愛情に変わるデリケートな感情表現が全くできてなくて、江角にとって都合のいい女でしかない。これがポルノ映画の限界と言ってしまえばそれまでだが。

中年で実は妻子持ちなのに自らを夜学の英語教師とウソを付きテニススコートのピチピチ女子高生の葉子を物色して拉致監禁する変態中年江角のたった一つの救い所は、葉子が処女で痛がって出血してフェラに切り替えたこと位なんだが(笑)葉子を着せ替え人形みたいに愛でるんだよね。

手錠をかけられ監禁した葉子が留守中に失禁したら、江角は優しく身体を拭いてあげるし、新しい服もプレゼントしてくれるし、でも「逃げたら殺す」は言い忘れない。そんな鬼畜江角を前に、段々諦念の境地に入ってセーラー服もテニスラケットも火をくべて燃やしてしまう葉子の心変わりが怖ええ！

映画の始まりはとっても不気味。病的な江角がタイプライターで「俺は孤独な男。だから桃を探さねばならぬ。それは白く熟れた甘い桃だ」とか訳ワカメな独白をして、直後にテニスコートを躍動するピチピチ女子高生の葉子のドアップで対照的な二人が運命の出会いは放課後のこと。

昭和42年9月25日、ザンザン降りの雨の晩、ラケットを抱えた夏服セーラー服の葉子が帰宅途中に、謎の中年江角に金属靴ベラを突きつけられ脅され公衆電話ボックスに連れ込まれ、住所と名前を確認した後に自宅に連行されて軟禁。風にピューと飛んでいく葉子のさしていた赤い傘が哀しい。

江角は声を出したら殺すと葉子にセーラー服を脱ぐように命じ、ブラまで取った所で押し倒してガムテープで目と口を塞いで両手に手錠をかけてコトに挑もうとするが抵抗されて上手く行かず、肩をナイフで斬りつけて脅して股間に顔を強引に持ってきてフェラでイカさせる鬼畜野郎。

9月26日、江角はいつものように鳥かごの小鳥に餌をやり、葉子と朝マンを試みるが股間から出血していてびっくり！生理だったのだ。江角は着替えと食料を買い出しに行き、身体のいましめを解いてやると「逃げ出そうとしなければ何もしないよ」無言の食事中にコンコンとノック音。

電気代の集金人の登場に「助けて！」言おうとした葉子は声がかすれてしまい「この野郎！」葉子のセーラー服を二度と着られないようにズタズタに破く江角は目が逝っちゃってる（笑）で、激高のままに葉子に馬乗りにグイグイ首を絞め始め、これ、葉子死んじゃった？惨い仕打ち。

9月27日、一命を取り留めた葉子の身体にロープを施し手錠をかけて部屋に残し大家さんと談笑する江角。夜間高校の英語教師している独身の江角にイイ人を世話しようとする大家さん（笑）でもね、その頃ベッドの上に全裸緊縛で転がされた葉子は、尿意に身体が震えて江角の帰宅に間一髪間に合わずジョジョジョーとおもらし。

江角は酷いことをしてしまったと葉子に謝り全身を舌で愛撫し始め、もう訳ワカメでトランス状態の葉子にキスする江角はホンモノの鬼畜。この辺りからね、葉子の江角に対する態度に変化が出てくるの。江角はお前の名前も住所も知ってると脅して来るから、逃げられっこないと観念するの。

9月29日、江角は葉子に新しい服を買ってあげ、葉子も嬉しそう。葉子は「絶対に逃げないから、手錠とロープはやめて」信用して身体を自由にした江角、スーパーに買い物に行った帰り、悪い予感がして部屋に駆け付けると葉子がいねえ！狼狽したが、彼女は髪の毛を洗面器のお湯で洗ってた。

江角は葉子が愛おしくなって身体を拭いてやりながら「メンスは終わったんだな」股間をガン見してるうちに興奮して押し倒してついに一発！必死で抵抗する葉子、むなしくレイプされ股間からは処女の証の血がにじんだ。江角は「君は俺の宝だ、一生手放さない」ギュッと抱きしめた。

葉子は江角に抱きしめられながらテニスラケットを見つけ友達と談笑していた頃の楽しかった部活の日々を思い返す。ああ、もうこんな日は戻らないんだ。寂しい気持ちでセーラー服を、テニスラケットをくべた火の中に捨てて燃やしてしまう葉子は、江角に完全に洗脳されたロボット。

10月3日、江角は葉子を連れて汽車で温泉旅行に出かける。宿帳に江角は自分と自分の実の娘の名前を書いた。これから葉子は自分の娘になるのだ。でもね、変態江角は大浴場で娘のはずの葉子のハダカに興奮してバックから荒々しく犯す「こんな所じゃイヤ！」叫びながらもアンアン喘いでる葉子。

江角は葉子に自分のことをパパと呼ばせる。で、布団の中で江角と添い寝しながら葉子はパパは自分のことを何でも知ってるのに私はパパのこと何も知らないのズルい！と思った。江角は自らを夜学の英語教師と言うがホントは違う。ＳＭショーに外国人を誘うポン引きだった。

ストリップ嬢２人によるサドとマゾの本格鞭打ちレズショーをしばし堪能の後は、江角は怪しげなバイトで貯めた金で買った毛皮のコートをポンと葉子にプレゼント。帰宅してから家財道具を取り揃え、それまで唯一の話し相手だった籠の鳥も人に譲り、すっかり新婚夫婦のように手を繋いで歩く江角と葉子。

昭和43年2月3日、葉子がテレビを付けると人間蒸発シリーズを放映中で、父親が蒸発した奥さんと二人の子供が「お父さん、帰って来て」涙ぐんでいた。ここでアップになる長女の名前がΣ(ﾟдﾟlll)ｶﾞｰﾝ！江角の娘の名前と同じではないか！父親の写真も江角じゃん！ショックを受けた葉子は仰天の一言「シラけちゃうなあ」

江角が( ﾟДﾟ)ハッと気が付くと、ベッドの上で手錠とロープで拘束されていて、目の前にナイフを持った葉子が立っていた。形勢逆転！と思ったら「パパ、帰っちゃイヤ！」ですってｗ江角は3年前に横須賀米軍基地に出勤途中に失踪した妻子持ちの尋ね人であった。江角と葉子はヒシと抱き合い、ナイフは床に落ちた。

江角は葉子に泣きながら「君のことをどうしても手放したくなかったんだ！」愛を叫ぶと感極まった葉子は「私を抱いて！」初めての和姦。全裸の葉子に正常位で乗っかって腰を振る江角。二人はラブラブ恋人同士のように求め合い葉子は「パパが逃げてもどこまでも追いかける」宣言！

4月13日、スーパーで買い物中の主婦が江角の姿を見かけて慌てて交番に通報。刑事が江角の妻を連れてアパートを包囲。思わず「あなた！」大声を出して制止される妻。葉子と仲睦まじくすき焼きをつついていた江角、乗り込んで来た刑事に現行犯逮捕され驚愕のストップモーション。

江角はともかく、刑事に乗り込まれて呆然とする葉子の表情が印象的。江角は裁判で懲役6年を言い渡され、無事に実家に戻ったはずの葉子は母親に愚痴る「私、楽しかったのよ。なんで、そっとしておいてくれなかったのよ」そして6年後、葉子は結婚し子供を授かり、親子3人で幸せに暮らしている。当然、江角とは別の男と。