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今岡信治「アナザーマン」

シネロマン池袋で、今岡信治「アナザーマン」(成人映画公開題「濡れる美人妻 ハメられた女」 脚本は上井勉。

焼身自殺を図ったホームレス(松原正隆)の目の前でガス中毒自殺した男(松原正隆、二役)の顔は瓜二つ。事故で頭を打ち入院するが男の妻(沢木まゆみ)の献身的な介護とセックスで快方に向かい、男の遺体が発見され空に手のひらをかざし生きていることを実感した。いまおかワールドの原型はトリッキーに内省的エロスの良作。

とにかく、ヒロイン沢木まゆみの充実!これに尽きます。うつ病が原因で別居した夫の頭を打ってからの豹変ぶりに心がなびいていく繊細な女心の演技と、なんといってもボリューミーなハダカですよ!体位も正常位から騎乗位、対面座位とバリエーション豊かでエロい!

昨今のミニシアターでヘビロテ、で市民権を持った感のあるいまおかワールドも、若き日の今岡信治名義だと不発、というよりピンク映画のフォーマットをきちんと守って沢木まゆみの濡れ場が6回もあるんですよ!プラス、ナマ着替えも煽情的でサービス精神がイイ!

実質的な主演である、自殺願望のうつ病患者が頭を打ったら別人に変身しちゃいました!的な難しいキャラを演じ上げるのは松原正隆。松井秀喜にクリソツだけどナイーブな役柄が見事にハマり、国映作品ではすっかりお馴染みの顔だけど本作はジャストフィットしてる。

でもね、演出に致命的な欠陥があって傑作認定できない。一つは松原正隆が二役を演じてるのだが肝心のまゆみの夫だった自殺した男の素性を全く描かなすぎ。途中でホームレス仲間に声かけられるシーンだけで主人公の方の松原と識別しろっていくらなんでもハードル高すぎw

もう一つは、これがホントに致命的なんだけど、まゆみは自殺してしまった夫の松原と錯誤してホームレスの方の松原を愛し始めるんだけど、錯誤してる感が全く伝わって来ないのは悪い意味でいまおかワールドだね(笑)あまりに飄々と普段事にしてるのはイクナイ!

熱心なピンク映画ファンはこんな瑕疵の多い作品でも国映のチャレンジングな作品だからと当時は高い点数つけたと思う。今日、いまおか監督が成功にあるのは取り敢えず本数撮ってトライ&エラー繰り返して観客にアジャストして一端の商業映画作家になったと思うのね。

夫の松原と別居中の妻のまゆみの、なりすましをきっかけに夫婦関係の美しい修復の過程を描いたほぼ二人芝居の映画で、他に主な登場人物と言えばソープ嬢を演じる、というより本物のソープ嬢にしか見えない真崎優が松井秀喜を相手にマットプレイからベッドで四十八手のエロ見所は前半にw

まあね、ザックリ言えば焼身自殺する寸前だったホームレスの松原が、炎の余りの熱さに逃げ出して目撃したガス中毒自殺を図る車中の男は、松原とクリソツであった。松原は思い立ってソープで優を抱き、その帰りにチャリと衝突して昏倒、頭を打ったことで生きる意志を持つのよね。

一応、いまおかワールドっぽいと言えば言えるのが、死者も生きてる人も同じ世界の中に登場させる。生死の境目を曖昧にする試みが見て取れるんだけど、見た目が瓜二つで片方は死んでいて、その男にする気もないのになりすますことでもう一人が生きる勇気を持つって話だから、ちょっと違うのよね。

画作りが2001年の作品だけど非常にVシネテイストしていて、時代としては先端だったんだろうなあ。日常の何気ないことをドラマにするにはフィルムよりデジタルの方が合ってる気がする。まゆみと松原の何気ない夫婦関係の一頁を切り取ったようなシャシンなのだ。

冒頭で松原が夜空に向かって手のひらをかざす意味と、ラストで松原が青空に向かって手のひらをかざす意味が鮮やかに対比される、劇中のエピソードにもシンメトリック構造が見られる良く出来た構成で、いまおか監督っぽくフワフワしてない、かっちりした感じだ。

ラストで松原が手のひらをかざして生きている幸福を実感すると、同時に流れる印象的な主題歌が何も紹介されないのはなぜ?ずっとずっと渇いたしんみりした感じで進行する物語がエンディングの主題歌とともに感動の涙を誘うんだよね。劇的な終わり方に拍手!

主人公でホームレスの松原はうつ病で、夜の公園で全身に灯油をぶっかけ火を着けて焼身自殺しようとするが火が無い(笑)焚火をしていた仲間に「火を貸してください」いざ着火すると猛烈な炎の勢いに逃げ出すヘタレな松原は、路上に停めた一台の車の異様さに気が付いた。

車中にガス管引き込んで中毒自殺しようとしてんじゃん!慌てて窓を開けて男を助け出す松原は男の顔をみてびっくり。俺じゃん!そのまま遺体をトランクにしまって、なんだか生きる勇気が湧いて歌舞伎町のソープを訪れ嬢の優にマット洗いの後FUCKしてすっきり。

見送る時、嬢が「あなた、私の元カレと似てるわ」と言うんだよね。その時は気にせず別れたけど、夜道でチャリにぶつけられ昏倒し血を流して病院に運び込まれ、男と別居中だった妻のまゆみが心配して駆け付けた。まゆみは一人寝の寂しさが頂点の時の出来事だったのよね。

2~3日は様子見ると家に連れ帰り、口紅を引いてバッチリ化粧してパンスト脱いでナマ着替えでショッキングレッドのTバック履いてノリノリのまゆみは、でんぐり返しで夜這いして来たなりすまし松原に久しぶりに抱かれ、やっぱりセックスっていいわあ(*´ω`)正常位で貫かれ女の歓びを思い出した。

まゆみはバイト先の弁当屋にセフレがいるんだけど、急にまゆみが鼻歌まじりにニコニコし始め、かと思えば職場でFUCKを仕掛けると激しく拒絶され「いい加減にしろ!」弄ばれた男の心中の発露は鉢植えを頭の上に乗っけてアピールするいまおかワールドにワロタw

でもね、松原は自分とクリソツ男のガス中毒自殺死体が気になって仕方ないんだ。まゆみの家をこっそり出て確かめに行って、男が指に嵌めていた結婚指輪が自分の指に嵌めてみるとサイズがピッタリで「こいつ、俺なの?」混乱し始める。俺って誰なんだろう?

まゆみは帰宅したら松原がいなくてΣ(゚д゚lll)ガーン、ショックを受けるけど遅めの帰宅でホッとしてハンバーグ焼いてたらファイヤー!黒焦げになった(笑)それでも「美味しいよ」食べる優しい松原は当然ながら下痢してw翌朝には黒焦げのトーストで拷問だw

でもね、まゆみにとってもっと衝撃的な事件が起きる。警察から連絡が入って「これ、あなたの旦那さんじゃないですか?」見せられた死体はガス中毒男の方のクリソツ松原。帰宅して松原の元気な姿を見て「あなた!」抱き着いたまゆみはもう松原にメロメロ、ずっと一緒にいて欲しい。

夜のベッドで松原の上に乗っかって感触を確かめるように熱いガチFUCKキメたまゆみ、でも翌朝になると、松原は( ゚Д゚)何か思い出したように急に家を飛び出して全速力で走る!それを全速力で追いかけるまゆみには死の予感しか無かった。何とか追い越してセーフ!

まゆみはますます松原のことが愛おしくなり、チングリ返しして股間に顔を埋めバキュームフェラから対面座位でガンガン腰振り騎乗位で咆哮、もう松原のことを離すもんか!少し前まで別居中だったのが信じられないほど、まゆみは松原のことが大好きで堪らない。

まゆみは洗濯物を取り込んで折り畳んでいる時、松原が着ていたスーツに目を留め、ポケットの中を探ると中からクシャクシャになった手紙が出て来た。開いてみると「さよなら」の文字がギッシリと書かれていて感情が制御できなくなったまゆみはワンワン泣き出した。

松原がガス中毒男の現場に行ってみると車はもう無かった。と思ったら、振り返るとその男が微笑み、微笑み返すとスッと消えた。松原は帰宅すると「俺は偽物だ」まゆみはきつく松原を抱きしめ「あなた生まれ変わったんだもん、優しいもん、私を一人にしないもん」

松原は再び歌舞伎町を訪れソープ嬢の優と会う。「俺、君の元カレじゃないよね?」「俺って生きてる?」当たり前じゃない!優に背中を押され、公園で青空に向かって手のひらをかざす松原は眩しそうに空を見上げた。ああ、俺って今生きてるってこと実感!

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