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佐藤寿保「明日なき欲望」

ネオ書房@ワンダー神保町で、佐藤寿保「明日なき欲望」

鬱屈した受験勉強を強いられる高校生トシオ(鎌倉文也)がやるせない怒りをぶつける先に見た、仲違いしていたクラスメートのユミ(浅田尚美)と訪れた夢のような海辺での熱い抱擁、キスからの初体験はまさに性春の弾ける衝動のカタルシス。寿保ワールドの原点となるほとばしる性のエネルギーを実感する自主映画時代の快作。

8mm原版を40年以上の時を超えて観ることが出来た。スクリーンに大写しすると粗めの画像だから解像度が若干落ちるのがむしろデジタル撮影のようなくっきりはっきり感とは対極で瑞々しい青春恋愛映画にふさわしい幻想的で良かった。80年代制作の自主製作映画をもっと観たい!

上映前に寿保監督が「40年ぶりに上映される幻の作品」ずっと若気の至りを覆い隠すように周囲から「観たいなあ、寿保監督の自主映画時代の作品」リクエストされても「恥ずかしいから」と応じて来なかったそうだが、観ると確かに恥ずかしい、思いきり恥ずかしがるの良く分かるw

恐らく恥ずかしさの元は、少年少女の純愛をひたすらピュアに一直線に描いてるから今となっては「こんなもんじゃないよ、大人の恋愛って」な感じもあるだろうし、そもそも純愛をテーマに俺撮ってたのかよ!とすると、これが原点だから貴重だと思うよね。寿保ワールドは普遍的な愛に満ちてるから。

最初は海辺で椅子を放り投げる少年の姿に若松孝二のような雰囲気が出てる訳ですよ。性欲悶々とした何するか分かんねえ男子高校生が女子にフラれて、でもそこから藤田敏八ワールドに急旋回。海を舞台に濃厚なFUCKシーンで結ばれる高校生カップルをせつなげに描いた、結局は「十八才、海へ」の影響なのかなあ。

寿保監督が25歳での商業映画デビューから遡ること5年、東京工芸大学在学中に20歳で撮った自主製作映画はその後のピンク映画にフィールドを構えてからのエログロエキセントリックは一切無い、受験勉強が手につかず悶々とする高校生のトシオとガールフレンドのユミとの恋バナ。

とにかく私が知ってる寿保ワールドとは百八十度違ってびっくりの連続!若さゆえのロマンチックな恋愛譚に仕上がっていてホントはこういうの撮りたかったのかな?ロマンチストなところありそうだからな、など色々と詮索してしまうが自主映画だから純度は100%な訳よね。

ストーリー自体は元々好き合っていた男女が海で結ばれる「だけ」という犬も喰わないシンプルな恋愛譚なんだけど、才能の片りんを見せられるのは濡れ場だと思うのよね。水中で抱き合う場面の迫力とか小屋でヤル時の色っぽさはやっぱり寿保監督ってピンク映画向きなんだと思う。

トシオは長髪でちょっとチャラ男な高校生。決して寿保監督のキャラじゃない(笑)一方のユミは真面目だけど頭が悪い可哀想な女の子でw冒頭からトシオは海で同級生4人に拉致され椅子に縛り付けられているユミを見つけ「返せー!」殴りかかり男たちを倒すんだけど。

その後、砂浜にセーラー服姿のまま胸にナイフを刺されグッタリ倒れてるユミ。でもこれはトシオの白日夢で、彼は部屋に「合格」とヌードピンナップを貼り詰めたミニ尾崎君仕様で、受験勉強しようにも性欲で全く手が付かない。で、ユミを呼び出して乳揉もうとしたんだけど。

ユミ怒って帰っちゃった。こりゃいかん、と改めてユミを呼び出して謝るトシオ。この辺りでなんかスゲエ既視感があると思ったら藤田敏八監督の「八月の濡れた砂」を始めとする日活性春映画の香りがプンプンするのよね。さすがロマンポルノに影響されて育った年代と言える。

トシオはユミと一緒に海に行って砂浜デート。とにかく勝手に劇伴が10cc「アイム・ノット・イン・ラブ」から入って山下達郎のサウンドとか異様にオサレで、展開も最初は水を掛け合ったりしてキャッキャはしゃいでいたトシオとユミが夢中で抱き合って水中で転がるとユミのTシャツ透けてんじゃん!ひょっとして彼女脱ぐんか?

あ、ユミを演じてるのは浅田尚美でこれ別にピンク映画じゃないから全然期待して無かったんだけど、興奮したトシオとユミは海辺のあばら家に入って抱き合う。ユミのシャツを捲っておっぱいモロ出し、FUCKシーンあったのスゲエ!それを4人の同級生が覗き見もっとスゲエ!

トシオとユミが心も身体も結ばれた翌朝の海からの帰り道、ユミは「明日は晴れかな?曇りかな?雨だったら憂鬱だな・・・」ポジティブトシオは「憂鬱だって?今が良けりゃ、それでいいじゃないか」道端に落ちていたチャリを拾ったトシオ、後部座席にユミを乗せて走り出した。

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