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山城新伍「双子座の女」

ラピュタ阿佐ヶ谷で、山城新伍「双子座の女」 脚本は那須真知子。

双子座の女は風、獅子座の男は火。風は火を求めて彷徨い、火は風に出会って初めて燃え上がるの。なんて特に関係なく、サイコパスのストーカー女(五十嵐夕紀)に付きまとわれるイケメンの金持ち青年実業家(南条弘二)が理不尽で救いようの無い仕打ちに遭う可笑しみに震える怪作。

山城新伍が映画監督としてどこまでマジメに撮ったのか首を傾げざるを得ない珍作で、劇場で観た後にモヤモヤを感じ自宅で観直してみたけどやっぱりヘンテコなこと、この上ない。本筋よりも散発的なエピソードの方に気を取られて気が付けば作品が終わってました、みたいな消化不良感。

山城はこれが監督3作品目でデビュー作は東映の「ミスターどん兵衛」これはCMとのタイアップ企画と言うことで実質的なデビュー作は2作目に当たる「女猫」ロマンポルノとして公開されたけど史上3番目の大入りだったんですって。でもね、これを受けた次作で急にトーンダウン。

思えば「女猫」は山城自身が大ファンだったという早乙女愛をヒロインにキャスティングして作風も東映活劇そのもので山城ワールドが炸裂してたと思うのよね。ノリにノッて撮ったと思うの。翻ってこの作品。ヒロインの五十嵐夕紀は元アイドル歌手だけど容赦なく酷い目に遭ってるw

タイトルからすれば、夕紀が双子座のスゲエイイ女に描かれると確信するじゃないですか!でもね、サイコパスのヒールなんですよ。一面識も無かった青年実業家に星座の相性を口にして迫り続ける恐怖のストーカー、終いには彼の恋人を放火殺人して成り代わるとんでもない悪女なの。

そもそも(そもそも、じゃねーよw)青年実業家の南条はカフェバーのチェーン展開で財を成したバブルの象徴で、交際中の恋人である有明祥子も実家がよほど裕福なのか海外留学してステンドグラスの制作作家を目指すアーティストの卵なのに葉山の邸宅に住んでるお嬢様なのよw

対してヒロインの夕紀は大学教授だった中尾彬と不倫して奥さんと痴話喧嘩の末に殺人を犯してしまい中尾が牢屋に入ってる間もヌードモデルして稼いだ苦労人。そんな双子座の女が世間知らずのカフェバー経営ボンボンを一夜限りハニートラップにハメるホラー映画として楽しみたいw

一応ね、夕紀には南条を口説く理屈はあるの。私の星座は双子座で風、あなたの星座は獅子座で火、でもあなたの恋人は乙女座で土なのよ、やめときなさい、という細木数子もびっくりのとんでも占いで人の運命を強引に決めようとして煙たがられたら恋人殺害を決行に鳥肌立ったw

ロマンポルノ的には、夕紀のハダカのシーンが一番の見物で、しかも南条と出会った夜に即ハメして全裸でアンアン悶える様はこれからこってり官能の極致を期待するんだけど、合鍵作って南条のベッドに潜んで誘っても空振り、全裸ピアノで彼女との電話を妨害はちょっと勃起したw

夕紀のハダカが直截的にエロいのは元不倫相手で奥さん殺して牢屋に入っていた中尾と再会して抱かれる場面は、南条の前で魅せる妖艶なお嬢様とは正反対の妖し気な娼婦の風情で、中尾もねちっこく抱くのよ。で、騎乗位でおっぱい震わせる場面がエロ的にはクライマックスかもね。

夕紀以外では実質的にダブルヒロインになっている有明祥子がセクシービキニで泳いだり、シャワーヌード晒したり、庭でアーティスティックに南条に抱かれたり、なんかゲージュツしてるんですよ、ハダカが(笑)それよりも登場は一瞬だけどピンサロ女の伊藤幸子の方がゲスい。

南条の友人で不動産屋の山田辰夫と奥さんの朝比奈順子がイイ味だしてる。役割はガヤでしかないんだけど、順子が山田とFUCKしてる場面がロマンポルノとして煽情度が一番あるし、山田のトボけた会話は南条と絶妙に嚙み合ってなくて、この二人をもっと活用すれば良かったのに。

本作を後世に残すとすればその第一の意義は個性豊かなゲスト出演者にあると思う。ジャズシンガーの石黒ケイに始まってコメディアンのせんだみつお、名前分からないけど体格のいいオカマ、監督の山城新伍自身から最後はカントク作品でお馴染みのたこ八郎まで、観てて飽きないw

南条が経営するカフェバーでイイ女感を全開にした夕紀と出会ったその時にピアノで弾き語りする石黒ケイ「モナ・リザ」南条には夕紀がモナ・リザに見えたに違いない。本命の恋人がいるのにカフェバー店員の女性に手を出し、夕紀ともワンナイトラブに走る南条に天誅を下せ(笑)

せんだみつおは南条が経営するカフェバーのリアル迷惑客で、女子のグループを見つけては「わーお、わーお」と近づきフラれ、男連れの女を間違えて口説いて「銀座ナウ!」昼の番組で観てると声をかけられ「タモリじゃねえし!」でも「タモリもたけしも俺の弟子」ギャグは忘れずw

たこ八郎はずっと登場せず、あれ?と思ってらラスト2分で登場するの。しかも南条が火災で大火傷を負った彼女に見舞いに訪れる時に擦れ違う。一番大事な場面なんだから勘弁してくれよ!と思うも山城自身の登場も祥子のパーティーに夕紀が現れるクライマックスシーンだからねw

映画のケレンミ・ポイントは4つ。1つ目は、南条がカフェバーを出て雨宿りする夕紀と出会うシーン。「あなた、何座?」は唐突過ぎ(笑)2つ目は中尾の首吊り自殺でトラウマになりそう。3つ目は祥子の家がゴーゴー燃えるロマンポルノでは定番の炎に包まれるスクリーンに圧倒される。

で、4つ目が最後の最後に大火傷して包帯グルグル巻きで入院した患者の名前を医師が南条に教えてくれない訳ワカメな展開の後に、身体だけ包帯を取ったら祥子の証である左のおっぱい乳首の脇に黒いホクロがあって南条は「祥子、無事だったのか!」ホントに安どするんだけどね。

ここでネタ割れしちゃってるのよ。入院患者が祥子の方で夕紀が死んでたら全く映画にならないですもん。で、事故現場に花を手向けて、ようやく顔の包帯も取る日が来て南条は感極まって「愛してる」って言ってくれ!で、包帯が取れて「愛してる」呟いた人を皆さん想像できますよねw

音楽を担当するのはクロード・チアリ。祥子がステンドグラスを納品するカトリック幼稚園の園長役としてもちょこっと出演。濡れ場の度に流れるメランコリックなクラシックギターの調べはロマンポルノで使い回されてる劇伴じゃなくて本作のためオリジナルだと思うの。力入ってる!

冒頭、海水浴場で犬を連れた老女が急に倒れて救急車が来て息を引き取る謎シーンを開巻に、カフェバーで石黒ケイがジャズを歌って、聞惚れるオーナーの南条と客の夕紀。雨の中でタクシーを拾う瞬間、夕紀は「あと腐れのない関係ならOK」南条にお持ち帰りされ一発なんだけど。

南条は金持ちでハンサムのモテ男で女にだらしない。店員の香野麻里とセフレ関係を楽しみつつ本命の恋人はスペイン留学中の祥子。彼女が帰国したことで始まる三角関係は南条は一貫して祥子ラブは変わりなく、サイコパスストーカー女の夕紀が身勝手に南条に迫り来るホラー。

南条が帰宅すると勝手に部屋に上がり込んだ夕紀が布団に包まって隠れていて、全裸でヘアヌード晒しながら迫り来るんだけど南条は一度キリって言ったはずと取り合わない。で、祥子からの電話に出れば全裸ピアノ弾いて妨害する夕紀に南条は「やめてくれ」激怒して追い出した。

ここから尺調整なのか、いきなり夕紀と中尾のエピソードにジャンプ!出所した中尾は元エリート大学教授で夕紀と不倫していた妻子持ち。痴情のもつれで最初は夕紀が中尾の奥さん気絶させるんだけど蘇生して慌てた中尾が絞殺。で、出所したらそっけない態度取る夕紀の気が知れんよw

中尾が夕紀と一緒に地下鉄に乗っていて声をかけて来た白人をきっかけにコールガールしてたの発覚して電車内で大胆FUCKとか、絶望した中尾が自棄ピンクサロンで大暴れして嬢の伊藤幸子の服を脱がせておっぱいボヨーン。この辺りはポルノ映画の要請でサービスカットだと思いますw

夕紀はヌードモデルや売春婦して金稼いで中尾に貢いでたんだよね。でもね、今は南条ラブ!の夕紀はもう中尾と別れたいと思う。で、嫉妬に狂う中尾が夕紀の身体をねぶるようにFUCKするのスゲエエロいんだけど、中尾は夕紀に相思相愛の人がいるとウソの告白されて絶望して首を括った。

で、話は本筋に戻って邸宅デートする南条と祥子。南条がブラウス着た祥子にシャワーを浴びせて乳首がくっきり見えるエロカットは、実は祥子の左のおっぱいにホクロがあるというトリックを強調してる(笑)で、祥子はステンドグラスの初納品に成功して記念パーティーするのよ。

夕紀は南条とセフレ関係にあった麻里にはエレベーターの中で小鳥に襲撃させ、本丸の祥子にはステンドグラス教室の熱心な教え子を装って近づき、パーティーに招待され、鉢合わせした南条は「お、お前!」びっくり。しかも部屋も車も合鍵作って立体駐車場で南条にキメポーズ!

祥子はシャワーを浴びてる最中に、ステンドグラスの破片持った女が近づいて来て死の恐怖に怯えるが、正体は夕紀でしかも粗相してガラスで脚切っちゃった、とか言いながら祥子の全裸をしげしげと眺め「キレイな身体ね」お世辞を言いながら左のおっぱいのホクロをガン見して姦計の準備。

夕紀はパーティーでわざと泥酔したフリして、車で祥子に自宅に送らせて灯油を足元に巻いた。そして冷淡に「なんであなたばかりが幸せな目に遭うの。私にも少し分けて頂戴」祥子には本音もポロリ「南条はハンサムで金持ちだから好き」これ、祥子じゃなくても口をあんぐりだよw

夕紀は用意していた灯油の缶を蹴って床にこぼすと、ライターで火をつけた。轟音と共にゴーゴーと燃え始める家は瞬く間に炎に包まれ、揉み合いになる夕紀と祥子。思わず「祥子、頑張れ!」叫びたくなるけどw身体ごと炎上しながら這って現場から出て来た一人だけが助かった。

入院中の包帯グルグル巻き女を見舞いに訪れた南条は、これって祥子なの?それとも夕紀?身体の包帯が取れる日がやって来ておっぱいにちゃんとホクロがあって南条は一安心「なんだ、やっぱり祥子じゃないか」火災現場に亡くなった夕紀に弔いの花束を捧げる南条、イイ奴だ。

そして待望の顔の包帯も取れる日。南条は愛する祥子と確信して「愛してる」って言ってくれ!そしてグルグル巻きの包帯を取ったその顔は、はい、皆さんご想像の通りですね。夕紀なのでした!「愛してる♡」夕紀が呟くその顔はホワイトアウトし、観る者の心に静寂感だけが残った。

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