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上野俊哉「竜神と朱蓮華」

2019年4月上野オークラで、上野俊哉「竜神と朱蓮華」 脚本は迦楼羅(=瀬々敬久) 成人映画公開題「連続ONANIE 乱れっぱなし」

近親相姦という禁忌を犯してしまった兄と妹。妹を追って湯田中温泉を訪ねた兄が、偶然出会ったストリッパーから聞く「竜神と朱蓮華」伝説。ピンク映画の枠を超え日本映画史上に残る大傑作。

本作はいくつかのモチーフが重なり合い並走するスタイル。軸となるのは、伊藤猛が演じる兄と、葉月蛍が演じる妹の間に起きてしまう、美しくも悲しい近親相姦。蛍が黙々と内職で作り続ける蓮の花、これは「禁忌を犯した者は死ぬ」ことを自らに課した業なのである。

作品中、伊藤と蛍の近親相姦のシーンは、現実世界で伊藤が狂気に陥るギリギリの中で格闘する忌まわしい、そして甘美な思い出である。初めて過ちを犯した日、蛍は「私たち畜生になっちゃうよ」と叫び、再び伊藤が身体を求めると「また畜生になってしまう」と泣く。

現実世界の伊藤、それは指名手配殺人犯である。そのポスターを俳優と勘違いしたテキヤ(下元史朗)に付きまとわれ、「関西ヌード」の看板を掲げる温泉ストリップ小屋で、儚しくも美しい家出少女(相川瞳)と出会う。しかし、その少女には病的な妄想癖があった。

伊藤は別れた蛍(実は殺していた)に会うため、生家を探す。虚言癖もある瞳は、山中に伊藤を連れ、廃村の干からびた池の前で「竜神と朱蓮華伝説」を語りだす。この廃村もかつては人が住んでおり、その歴史は山頂の池から水を引く工事の完成によって始まったのだ。

山頂の池から水を引こうとしても工事が上手くいかない。竜神が怒っているのだ。村長が竜神に許しを乞おうとすると、竜神は「では、お前の娘を差し出せ」と言う。娘を生贄にはできない村長は、蓮の花を娘の代わりに池に入れる、すると即座に吸い込まれてしまう。

村長が家に戻ってみると、娘は死んでいた。この話を、まるで目の前にある寒村の伝承のように話す瞳。でも大阪は千林出身で関西弁を喋る瞳(笑)ヒモの下元は千林から湯田中まで彼女と流れ流れていくうち、彼女がこの「竜神と朱蓮華」が大好きな話だと気が付いた。

冒頭、「1994冬 国映株式会社 製作」からのタイトルイン。

深い雪山の中を伊藤が歩く。峠の茶屋の女将が声をかける。リンゴを売っているのだ。気前よく金を払う伊藤。リンゴをかじりながら「お宅に仏壇はありませんか。先祖を供養しないと良くないことが起こります。私は仏壇用の蓮の花を売って歩いているんです」

女将は「見せて」と言うが、実物を見て「眩しすぎて仏様がびっくりしちゃうわ」と断る。突然凶暴な顔になった伊藤が「本当はヤッて欲しかったんだろ」と女将に襲いかかる。そしてレイプし終わった後、財布から金を抜き取ると、女将の頭を何度も石のようなもので殴り続け、女将は絶命する。

その瞬間、伊藤の脳裏に、可愛い妹(葉月蛍)の思い出が蘇る。それは、兄妹がすでに禁忌を犯した後だった。蛍は内職工場で黙々と紙を加工した金色の蓮の花を作り続けていた。蛍は「私は蓮の花を作り続けて仏様に仕えた気持ちになっているの」伊藤は何も言えない。

伊藤が長野電鉄の湯田中駅を降りると、同じ車両に乗っていた、片足が不自由ないかにも怪しげな関西弁のおっさん(下元史朗)が声をかけてくる。「あんた、どっかで観た顔や。有名な俳優さんやろ」頭が弱い下元は、指名手配写真と俳優とをごっちゃにしていたのだ。

ヤリたい気分で満々の伊藤を、下元は温泉ストリップ小屋に連れて来る。中から愛想のよい女装子(佐野和宏)が出て来る。化粧が上手く乗り、結構な美形だ。伊藤がいったん温泉街を歩いていると、「面白屋」という射的場で何か揉め事が起こっている。店主は下元だ。

チンピラの温泉客に店を壊され、どらり散らす下元。でも身体が悪く、喧嘩に勝てない。伊藤の「イイとこ紹介しろ」で下元はストリップ小屋に案内。待ち受ける佐野は「やっぱり、来たわね」そして怪しげな劇伴が流れる小屋の中に入った伊藤は、ストリップを踊る相川瞳と運命の出会い。

ステージで踊る瞳。全裸でオナニーショーをしている。佐野が「今晩、この娘でどう?」OKする伊藤。売春旅館に場所を移し、FUCKする二人。コトが済んでも「もう一回」とせがむ瞳に、伊藤は荒々しい体位で犯す。そして眠りについた伊藤の夢に蛍が現れる。蛍が蓮の花を作る内職工場。

伊藤が訪ねると、二人のただならぬ関係を悟った工場長が「ごゆっくり」伊藤は唇を重ね、「ダメよ、私たち、畜生になってしまうわ」拒む蛍を優しく抱き寄せ、服を脱がせてFUCKする。兄と妹は禁断の木の実を食べた。でもそれは夢だった。

部屋に瞳がいない。カバンも無くなっている。慌てて瞳を探し回る伊藤は、神社でお参りしている瞳を見つけ出すと、瞳は下元の射的屋へ彼を案内する。果たして、カバンも金も下元が持っていた。ぶん殴ってカバンを取り戻した伊藤に「言うほど入っとらんかったわ」

瞳は伊藤に「私、山奥からこの街に出てきたの」と言うが伊藤は「俺はそこの出身だ、お前なんか知らん」二人で廃村を訪れるが、その家は伊藤が住んでいた家ではなかった。関西弁の瞳はともかく(笑)ここで初めて、実は伊藤の故郷も全然別の場所ではないのでは?と思わせる。

瞳が「竜神と朱蓮華」の伝説を話し始める。そして話し終わると瞳は伊藤のカバンを盗んだ時、一緒に盗んだ蓮の花を、池の前で酒の空き瓶に挿し「私も死んで竜神様の生贄になるの」と運命的なことを言う。呆れて湯田中の街に戻る伊藤。下元が佐野に殺されるほどの勢いでボコられている。瞳を連れて逃げたと勘違いしたのだ。ここに駆け付ける瞳「やめて、死んじゃう」下元は「ほら、ちゃんといるでしょ」

でも佐野の怒りは収まらない「てめえ、別の温泉の香盤予定表に瞳が乗ってたじゃねえか」佐野は瞳をストリップ小屋に連れ戻す。瞳は再び温泉ストリップでオナニーショーを披露する。ギンギンのエレキギターの悩ましい音色に合わせ、蓮の花を口に咥え、ワンワンスタイルや仰向けの姿勢で自分の秘所をいじくる姿を客に見せつける相川瞳の裸身がどうしようもなくエロい。

一方、まだ腹の虫が収まらない下元は、殺人鬼・伊藤の手を借りようと「隙を見て襲えばええんや」と自分では手を下さずw伊藤に復讐の役目をさせる。下元はストリップショーが終わり、瞳が客と出てきた隙に、伊藤を手招く。、そして伊藤は、売上金を数えていた佐野を劇場外まで追いかけまわし、ナイフで刺し殺す。

金が目当ての伊藤が、佐野の財布から金を抜き取って数えていると、震えている下元が「何も殺さなくっても」と言い出す。再び殺人鬼の顔になった伊藤は、下元も刺し殺す。そして意識が遠くなり薄れゆく中で、再び伊藤の脳裏に、愛する妹・蛍の思い出が浮かび上がって来る。

蓮の花を作る工場で、伊藤が蛍を口説く「お兄ちゃんと一緒に九州へ行こう。住み込みでパチンコ屋とかで働いて、身を隠して生きようよ」蛍は「もう逃げるのなんか、いや!」伊藤が蛍の唇にキスをしようとすると「また、私たち畜生になってしまう」と拒絶する。

伊藤は「じゃあオナニーしてみろ。パンティに指を突っ込むんだ」兄の伊藤が見ている前で股間を弄りまわし興奮して絶頂を迎える蛍。伊藤は「極楽にいったような気分だったか?お兄ちゃんとこれから極楽に行こう」伊藤は蛍の首に手をかけると強く強く締め始める。

やがてぐったりとなる蛍。そして回想から目が醒めた伊藤。瞳が伊藤と下元に駆け寄って来る。そこはお墓の前だった。下元は絶命寸前。「病院に連れて行かなきゃ」という瞳に「お前、死にたいって言ってたな」と首に手をかけ、強く強く締め始める伊藤。瞳も絶命する。

雪山を必死の表情で逃げる伊藤。雪に埋もれた線路が果てしなく続く、その先に向けて鬼のような形相で走り続ける伊藤。修羅のようになってしまった彼は、これから一体どこに行ってしまうのか。

殺人鬼の伊藤が店でラーメンを食べている。客がおばちゃんに1万円札を渡し、釣銭をもらって帰るのを見届けると、伊藤はおばちゃんに話しかける「この家に仏壇はありますか」あります、と答えたおばさんに「最近、何か良くないことが起きてませんか」不気味に終わる物語。

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