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サトウトシキ「団地の奥さん、同窓会に行く」

上野オークラで、サトウトシキ「団地の奥さん、同窓会に行く」 脚本は小林政広。

ピンク男優の川瀬陽太は、主演が決まり張り切りすぎて、同窓会に出かける前の妻(佐々木ユメカ)と朝から一発wその結果、アレが役に立たずw現場で小林(節彦)監督から何度もダメ出し。こっそり女優(風間今日子)と生本番した小林監督に、ついに川瀬はブチ切れる。でも川瀬は思うのだ。華沢レモンちゃんを犯しながら「小さなことからコツコツと」まるで平成版「ロケーション」のような良作。

さて、監督の西田敏行も女優の美保純も出てこない、本来なら映画として一番画にならないwピンク男優目線から演出した「ロケーション」この冒険だけでも本作は「絶対に買い!」西田敏行や美保純から見ればカッコよく抒情的なピンク撮影現場って男優はこんなに大変なんです!続けていればきっといいことある!人生応援歌のような勇気の出る作品。

問題はジャンル要請で「団地の奥さん」もこなさないといけない。「ロケーション」と「団地の奥さん」前者はピンク映画的で、後者はロマンポルノ的と言える。水と油のようなテーマだよなwと思って観始めたら、あらあらびっくり!ホントに最後まで水と油だよ。でもそれが、ピンク男優川瀬陽太と愛妻佐々木ユメカとが、それぞれ住んでいる別世界。

小林政広のホンの意図通りか良く分からないが、ピンク男優川瀬陽太の男優版「ロケーション」のようなピンク映画撮影現場ドキュメントと、団地妻の佐々木ユメカが同窓会でジャイアンみたいなガキ大将の元ボーイフレンド向井新悟と一発ヤル物語は、基本的に平行線だ。

川瀬陽太の物語、佐々木ユメカの物語、どっちが面白いか?と言えば圧倒的に川瀬パートの方で、女池充渾身のジャンピング落下シーンを含め(笑)小林節彦監督と古館寛治助監督の葛藤、川瀬陽太とスタッフの葛藤、マイペースな風間今日子、全員が面白いw

川瀬が団地住まいのくせにw仕事が無くて家賃が払えず食い詰めたところにようやくピンク映画の主演男優の仕事、張り切って奥さんのユメカと一発やってしまう「お前、バカかよw」という出だしは、かなりワクワクさせる。川瀬パートで全部で良かったのかもw

本作を観て感じたのは、制作が2004年、ピンク映画が大幅に撤退模様をちらつかせる前で、サトウ監督もホン書いた小林さんも、監督役の節彦さんも「もう、ピンク映画はいいかなあ」と食傷気味だった時期なのかなあと推測、でも続けた方が良かったのでは。

印象的なのは、意気が上がらないピンク映画撮影現場で、主役を務める川瀬だけが、撮影前に一発抜いちゃったのはバカ丸出しとしてwでも「俺はピンク映画をステップに、有名な俳優になってテレビにどんどん出てやる」ギラギラしたものを強く感じる作品だ。

16年前の川瀬陽太は、当然ながら今より痩せてて童顔で、頼りなさそうで、でも将来への意気込みは強く「俺はビッグになりたい!」夢を持ち、奥さんのユメカも後を押す、かとえば、そうではない、ユメカは化粧して同窓会で昔の男に抱かれているのだ(笑)

川瀬が撮影現場で、疑似本番とはいえFUCKシーンにエロが無く、小林監督(あ、悟でも政広でもありません、節彦ですw)に「もう一回!」と冷たく言われ、古舘助監督が「続けますか?どうしますか?」と機械的に川瀬を詰問する、シニカルな笑いがこみ上げるw

川瀬が4回も失敗し、痺れを切らした小林監督は古舘助監督に「お前、どうする?」(←監督が決めろよw)ここで古舘、渾身の珍案「本番しましょう!」www「聞いてないよ!」と呆然とする今日子と、猛然とチンコをしごき始める川瀬のギャップが可笑しいw

ここで今日子が「監督!」と直談判、役立たずの女池はさっさとビルの窓からフッとばし、監督にナマ本番させてギャラを8万から80万まであげたつもりが、鬼畜の小林監督は「さあ、本番いくぞ!」とギャラ据え置きで撮影続行。更に呆然としてしまう今日子(笑)

川瀬がすっかりやる気をなくしてテキトーに濡れ場をこなすと、小林監督は「OK」連発(笑)元々は川瀬、お前が悪いんだろwと思いつつ、さすがの小林監督のテキトーすぎる撮影に、ついに川瀬が激怒する瞬間は、ピンク映画の最期みたいで過激に面白い(笑)

川瀬は「映画って監督だけのものじゃないだろ!出演者とスタッフがみんなで知恵を出し合っていいものを作り上げていく、それが映画っていうもんだろ!」どの口で言ってんだよwと思いつつ、川瀬の熱弁は、ピンクのみならず映画を取り巻く真実かもしれない。

川瀬は「やめた、やめた」と現場を去り、古館監督もスタッフたちも去り、小林監督は一人取り残され、心不全で死ぬ(←これ、まさかモデルはいないだろうなw)川瀬は小林監督にピンク映画界を追放され、土木作業現場で汗を流し、団地で生活を続けた(笑)

一方、団地の奥さんパートは、エレベーターでリストラ親父の下元史朗、同窓会で230人中たった5人しか集まらない惨事、コーヒーが一杯だけ目の前に置かれた通夜の様な会場で、幹事役の伊藤猛、元応援団で筋肉バカ清水大敬、間宮結、本多菊次朗、遅れて来てジャイアン向井新悟も勢揃い、もう一つの「ロケーション」

この映画でどエロい場面は二つともユメカ。一つ目は、お通夜のような同窓会(笑)で、遅れてやって来たジャイアン向井が、隣に座ってる清水大敬に「おい、お前応援団長だろ、何かやれ!」って、コラー!清水はお前らの恩師だろ!失礼だろ!と思ったら、違ったw

清水は向井と同窓、伊藤とも、本多とも、結とも、もちろんユメカとも(←もちろん、じゃねーぞ!)清水は向井に「ハッ!これからユメカを犯します!」宣言。テーブルの上にユメカを押し倒し、同窓生たちの目の前でガンガンやっちゃう、ここはエロい!

ユメカはお腹の辺りに刺青があると思うのだが、本作では隠し切り、昔の恋人ジャイアンの背中にヤクザもびっくりのスゲエ刺青が入っていて、その印象しかない。ジャイアンがユメカに雨の駅前で「濡れてかない?」「スケベ」この場面も刺青を前に霞む(笑)

ユメカは幼馴染で初恋の人だったジャイアン向井(←この呼び方でいいのかよw)とホテルに入り一発。向井が服を脱ぐと、背中一杯に「これ、反社な人ですよね?」としか思えない、ド迫力の刺青が紋々!これでユメカと全裸FUCK。エロくないはずがない!

川瀬がピンク映画現場から「業界追放!」を言い渡され、傷心で公衆電話ボックスから家に電話をかけていると、外からコンコンと窓を叩くユメカ。彼女はジャイアン向井に「携帯の番号教えて」と言われたが「これっきり終わりにしましょ」何事もなかったように同窓会を過ごして、帰宅した。

川瀬はユメカのことが好き。やっぱり大好き。ユメカも川瀬のことが好き。やっぱり大好き。ここだけは画面を暗く落とし、幻想的な恋人同士のラブラブ濃厚FUCK。川瀬は生活のため、男優生活に一度はきっぱりと見切りをつけ、土木工事の作業現場で働き始めた。

そんな川瀬の携帯が鳴る。古舘助監督からだ、いや、彼は監督に昇進していた。やはり小林監督はイイ人だった。心不全で亡くなってしまったが、川瀬とのトラブルは封印していた。古舘の元、川瀬は再びピンク映画の主役に抜擢され返り咲き、まだデビューしたてのピチピチの華沢レモンちゃんを正常位で突きながら呟く「小さいことからコツコツと」こうして、川瀬陽太の今がある。


(川瀬陽太さんからコメントいただきました。ありがとうございます(^^)/)

ユメカに迫る男は向井新梧と言います。早死にしちまいましたが。トシキさんの『青空』の主役です。憶えてあげてくださいな。
向井新梧、伊藤猛、監督の上野俊哉さん、堀禎一、櫻井拓也、林由美香、もっと沢山。待ってろよ。もう少し行くのは先だろうがあんたらが居なくなった世界でどれくらい足掻けたか聞いて貰うぞ。まったく、仲間はあっつー間に居なくなってしまう。まったくよ。自分が死んだらあっちで思っクソ文句聞いて貰うつもりだ

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