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城定秀夫「ネオン蝶 第三幕」

城定秀夫「ネオン蝶 第三幕」 原作は倉科遼の人気漫画。

サトウトシキ監督が第一&二幕、即ち起承転結の起承部まで制作したところで城定監督が引き継いだ第三&四幕。どういう制作経緯でこうなったか分からないがサトウ監督の第一&二幕を観た上で「ああ、これは問題が山積すぎる(-_-)」覚悟の上で撮ったと思われ、ある意味プロ!

最大の問題点は、はっきり言ってしまうがヒロインの演技力である。小松彩夏ちゃんはお人形さんみたいに可愛いのだが、どうひいき目に見ても演技が棒過ぎる。いや、下手なだけならまだいいのだが、ヘンな癖が付いていて台詞の一言が口をついただけで映画を破壊してしまう。

しかも、共演者にスキャンダラスな冬季五輪戦士今井メロ、平成ノブシコブシのボケ(吉村)や2丁拳銃のツッコミ(修士)まで漏れなく付いてきて「ああ、こんな映画、どうやって第四幕まで撮り終えればいいんだよ(-_-)」売れっ子の今では考えられない試練だったと思うw

城定さんが取った、映画として何とか完成させるための手段、それは小松彩夏の出番を減らすこと、城定さんお得意の楽曲モチーフとして米国民謡「峠の我が家」を使うこと、ノブシコブシ吉村が彩夏を「ガンバレ、とにかくガンバレ!」励ますセンチメンタルなシーンを挿入すること。

物語も、原作漫画は恐らくかなり面白かったと想定するのだが、ヒロインの桜子を小松彩夏が演じている限り、映画ごと倒れてしまう。母親の佳代役の大島葉子、ライバル店ママ節子役のあいはら友子、二人とも演技は盤石だが華が無い、今井メロは何とかスルーしてしまいたいw

ここで小沢和義(小沢仁志の実兄)と吉沢健(非業の死を遂げるビルオーナー)ですよ!もうネオン蝶なんかどうでもいい、男くさいヤクザ同士の血で血を洗うような戦闘映画に変えてやるぜ!ということで(ということで、じゃねーよw)彩夏ちゃんは隅っこに置かれます。

城定さんは撮影開始の時、優しく彩夏ちゃんに言い聞かせたのだと思う「いいかい、君はもう無理しなくていいんだ。笑顔はとっても可愛いよ。演技は吉沢健さんや小沢和義さんがいるから大丈夫、君はソファの奥でニコッて笑ってればいいんだよ」じゃあ、何で主役なんだよw

城定さんは、生真面目なサトウトシキ監督が硬質に、シャープに作り上げた原作漫画そのものの世界観は、起承転結の「転」に当たる本作で、まさにこれこそ「転」wwwあっさり放棄、銀座の二つのクラブが喧嘩上等の仁義なき戦いに挑んでいく、全く別の映画にスピンアウトw

銀座に構える名門クラブ「手毬」のママ節子があいはら友子、この店で働き始め念願の「銀座のネオン蝶」になった桜子が彩夏。もう頂点に上り詰め、後は堕ちていくだけか?銀座に「トレゾール」という格安クラブ(←それを人はキャバクラと言うw)を開店する佳代が葉子。

顔が想像できるように、敢えて友子、葉子、彩夏と呼ぶ。友子と葉子は熟女。要は昔銀座のホステスでライバルだった友子と葉子それぞれ「手毬」「トレゾール」を出店。方や昔ながらの高級クラブ、方や廉売型の大衆型クラブ。トレゾールは手毬を廉売攻撃で駆逐にかかるw

「手毬」軍と「トレゾール」軍。彩夏はトレゾールのママが実の母親だが、手毬のママ友子の下で手毬軍の一員として働く(←もう内容が全然ネオン蝶じゃねえw)トレゾールは豊富な資金力を背景にテナントとして入るビルの乗っ取りを企む(トレゾールビルでも作るのかよw)

ああ、忘れていた今井メロ(笑)飛び道具の彼女をどう使うのか、少しでも物語に関わらせたく無い城定さんは(←ここ、想像ですw)冒頭、メロがシャワーを浴びながら「第二幕までの振り返りでーす♡」とお色気ポーズ、お前はイレブンPMのうさぎちゃん秘湯の旅かよ(笑)

今井メロはその後、映画から消えます、っていうかもう登場する必要もないんだけど、後半にいきなり菊池健一郎とのFUCKシーンから再登場(←ここ、突然すぎてびっくりw)まあ、小松彩夏は全然脱がないし(←そもそもNGじゃねーのw)熟女たちのハダカは特に見たくはない。

今井メロが全裸で微乳のおっぱい丸出しで正常位でよがる場面は、まあエロVシネだし、今回は彼女が脱いだんだな、程度の有難みはあった、と思ったら、彼氏の菊池健一郎が落ちぶれてDVヤクザに変身、浴室でリスカして自殺しているメロのシーンはリアルすぎてぶっ飛んだ。

城定さんはヒロインなのに演技がロボットみたいに硬く、台詞がふやけて上手く発声できない彩夏ちゃんに手を焼く(←もう映画の話じゃねえw)ここで平成ノブシコブシの吉村崇が信じられないイイ仕事をする。彼は第一幕、第二幕ともにカメオ出演で彩夏とすれ違った。

サトウ監督は今思えば結構ドライでw小松彩夏じゃダメだ、と見切ると、第一幕では紗倉まな、第二幕では太田千晶という、リアルに銀座のクラブにいそうな、良い意味で男あしらいが上手そうな女の子に主演を擦り代えてた。でも城定さんは違う「何とか彩夏を鍛えなくては!」

原作漫画「ネオン蝶」の桜子の設定年齢は19歳。本作が製作された2013年に26歳だった今井メロはもう諦めるとしてw27歳の小松彩夏には「君もそろそろ女優として一皮むけないとダメだ」と城定監督が愛の鞭にして最大のエールを送るのが、ノブシコブシ吉村との場面である。

銀座で一流の男として酒を飲みたい吉村は、商社マンとしてウラジオストクで石油王と商談し、帰国した。東京タワーが目の前、手に目一杯抱えている缶ビール「銀麦」は会社の冷蔵庫からかっぱらってきた。吉村はひどく落ち込んでいる彩夏に、精一杯のエールを送る。

吉村は彩夏に言った「俺はカジノで石油王に説教したんだ。こんなところで油を売ってるな、ってね」寒いアメリカンジョークに思わず駆け抜けた沈黙。これを城定さんは「天使が通り過ぎた」と表現した(笑)吉村は東京タワーを眺めながら、何度も彩夏を励ます「もっと、頑張れって」

涙を流しながら頷く彩夏。吉村は彩夏に「頑張る!って言ってみろ」彩夏は夜の東京タワーに向かって叫んだ「私、頑張る!」「声が小さい、もう一回!」「私、頑張る!」「まだまだ、もう一回!」「私、頑張る!」この吉村と彩夏の精一杯に必死なやり取りが青春の可能性を感じさせ、凄くイイ!

でも、やっぱり彩夏ちゃんはダメなのだ。銀座の一流クラブ手毬の店内で一人だけ浮いてしまっていて、とてもじゃないが「伝説のネオン蝶」どころか、ホステスにすらなっていない。ロボットみたいな歩き方も、クセのある喋り方も、結局は桜子を演じたのがミスキャスト(-_-;)

手毬店内の照明が消える。一人のホステスが貫禄たっぷりの喋り方で「今日の主役です!」スポットライトが当たった彩夏は、なんとフルートを吹いているwww演奏するのは「峠の我が家」アメリカンジョークにこんなのあったっけ?「ここが君の、ホントの峠の我が家だぜ」

城定さんは、棒演技が直らない彩夏ちゃんを見切ってからの急旋回ぶりは凄くて、小沢和義をトリゾールの手先として手毬に潜入しスパイ。トリゾールの入居ビルのオーナー吉沢健はテナント離れに悩む。小沢は吉沢にビルの買取りを提案、半ば脅迫。吉沢は追い詰められる、まさにヤクザの世界。

手毬の常連客だった吉沢は、陰でトリゾールオーナーの小沢を操る黒幕の指示で、今井メロの愛人(笑)菊池の手によってトイレで刺殺された。この一連の流れが手早くド迫力で、最初からヤクザもので良かったんとちゃう?と大きな疑問を抱かせながら、第三幕は閉じた(笑)

第一~三幕まで観た感想として、小松彩夏ちゃんの演技がもう破壊力抜群で、映画を完膚なきままに叩き壊しちゃってる。でもこれ、彩夏ちゃんのせいじゃないんだよね。工藤静香と安達祐実を足して2で割ったような美形でキュートな女の子。配役のミスとしか言いようがない。

第二幕で、葉子が実は彩夏の母親でした!第三幕で、小沢が実は彩夏の父親でした!とんでもない正体暴露があるのだが全然心に響かない。むしろ、彩夏が小沢&葉子のトレゾール軍と敵対する手毬軍の配下にいることが大事、そう、この映画は既に「仁義なき戦い」へと変わっている(笑)

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