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瀬々敬久「End of The World」


新宿ケイズシネマで、瀬々敬久「End of The World」 (成人映画題「すけべてんこもり」)

前科者のチンピラ(川瀬陽太)とその情婦(河名麻衣)が、彼女の実家がある三宅島の警官(伊藤猛)夫婦に里子に出した息子を奪いに来て、どんどん話が斜めに急展開、川瀬&麻衣&伊藤&ニワトリの文字通りチキンレース(笑)は、三宅島の溶岩台地で、川瀬が「世界の終わりの始まり」を見る、ファンタジックな異形の怪作にして快作。

私は今だかって、タイトル(成人映画公開題「すけべてんこもり」)と内容に、これほど大きなギャップのある映画を他に知らない(笑)その内容自体も、一見すると異空間を彷徨うSFもののように見えて、実は世界の終わりを映像化したファンタジーだったりする。観客が、勝手に予想した次の展開を、あれよあれよと斜め斜めに裏切られ続ける快感!

本作はチンピラ男とあばずれ女が三宅島で織りなす、神秘的な現代の寓話。入り口は里子に出した息子の奪還という現実世界から入り、随所に三宅島の宇宙的な異空間を挿入し、やがて登場人物は本当にその異空間に辿り着き、いったん世界が終わって寓話は初めて完結する。

原題は「END OF THE WORLD」だが、成人映画の方のタイトルは酷すぎwww当時のキャッチコピーは「悶えろ、果てるな、泣き叫べ!南海の孤島で新妻を襲う官能の嵐!」「真夏の性宴!乱交夫婦、悦楽の逃避行」これは嘘じゃないwタイトルに違わず、濃厚な濡れ場が多くてびっくり!

FUCKシーンは5回あって、そのうち3回が青姦(笑)三宅島ロケだったからこそできたw衆人を目を気にすることなく、青い空、広い海を背景にFUCKする気持ち良さげな光景は、「エロ」というより「宇宙」のような長閑とした牧歌的な異次元の世界へと観客を導いてくれるw

瀬々監督は、当時三宅島には米軍基地の緊急着陸用ヘリポートがあり、その拡張計画が発覚したことで住民が反対運動を起こしていたにも関わらず、住民たちは暑い夏でバテている機動隊に飲み物を差し入れた、というエピソードに着想を得たらしく、これに三宅島は30年に一度大爆発を起こす、これを人間に対する怒った神の天罰と捉える。

猿の惑星は猿が人間と戦い駆逐した。でもEND OF THE WORLDにおいてニワトリは無力で簡単に死ぬ。人間界はどこまでも人間界であり終わりはないはず。三宅島の惑星のような異空間に豆粒大にしか映らない川瀬陽太は、瀬々監督の脳内をそのまま抽象的に映像化したのだろう。

川瀬が当時の印象を「濡れ場を褒められた」「何を演技してるのかさっぱり分からない」のは川瀬のせいではなくwこの映画の世界観が極めて特殊で、三宅島はこの世ではない。神の怒りが爆発して化外の土地、人間が住んではならない土地となったことを表しているのだと思う。

90年代の前半、瀬々監督はテーマを持って描き出したい世界を時に文学的に、時に思想的に、時に哲学的に、でも抽象化することでピンク映画の要請する濡れ場を一定量確保することで均衡を保ってきたと思う。でも1995年、この辺りがターニングポイントだったのだと思う。

瀬々監督は無理して均衡を取ることを辞め、世界観を重視し始めた。三宅島に異空間を作り、登場人物を放り込んで神の怒りに触れさせた。裸の煽情性は、ヤリマンあばずれ女の河名麻衣と、エロい巨乳主婦の泉由紀子に前半の現代世界でたっぷり堪能させ、後半はエロを捨てた。

後半で我々が観るのはエロとは何の関係もない、近未来ファンタジーである。中村幻児が撮ったような人間関係が織りなすSFコメディではない。ファンタジーのみの空間。人間が神を怒らせたことでどんな荒涼とした異世界が出来てしまうのか、を映像で具体的に提示したのだ。

後半、ファンタジーな異世界に観客を強引に連れて行ってしまうにも関わらず、ここにどこか青春のきらめきとエロチシズムが感じられるのは、フレッシュな川瀬陽太と河名麻衣。チンピラとあばずれはセックスに貪欲で、生にも性にも前向きさを失わず、本能のまま生きる。

伊藤猛だけが、警官という職業柄、どうしても生にも性にも根源的に素直になれない。三人+ニワトリの三宅島脱出活劇の中で、一人だけ浮いていた伊藤は麻衣をレイプし、麻衣は衰弱死、川瀬は伊藤を殺した。そして、ニワトリも死んだ。荒涼で殺伐とした異世界の異空間に、川瀬は一人ぼっちなのだ。

この作品の面白いところは、三宅島の荒涼とした大地、例えば溶岩が固まってできた岩場、雑草が生い茂るススキノ原、誰もいないクレーターのような砂漠など、三宅島の中で「ここ、シーニックビューティじゃね?」という場所を選んで、日常を異世界と繋いでるように感じるw

クレーターのような砂漠でバンはエンスト。まるで雪中行軍のような徒歩苦行の末、疲れ果てた麻衣は体調を崩し倒れ込む。そんな麻衣をレイプしようとした伊藤を川瀬は銃で射殺し、同時に麻衣も息絶えた。地獄の様な静寂に包まれたクレーター砂漠地獄、それが世界の終わり。

本当は麻衣と彼女の息子と三人で三宅島を脱出するはずだった川瀬。でも、彼は荒涼と殺伐とした三宅島で、たった一人取り残された、まさに「END OF THE WORLD」川瀬はそれでも諦めず、天罰の下った三宅島を泳いで脱出しようと服を脱いで泳ぎ始めた。それが「START FROM」

川瀬陽太の商業映画デビュー作で、絶対主役は彼(笑)ピンク映画では非常に珍しい「男が主役」の作品で、女性ファンには堪えられないお茶目でセクシーな男前ぶりは、どこかチョウユンファのような魅力。三宅島を縦横無尽に駆け、泳ぎ、咆哮を繰り返す川瀬を堪能したいw

いや、やっぱり主役は川瀬陽太じゃないな、ニワトリ!鳥かごに入ったニワトリだよ!主役が人間じゃないってスゲエな!しかも身を挺して映画を盛り上げるし(←ヤバいからブログで後述w)あのニワトリ、ちゃんと演出つけたんかな、いやあ、いい演技だった。惜しい鳥を亡くしたw

ニワトリはメインキャストですが、獣姦はありませんので、あしからず(笑)川瀬陽太と河名麻衣はラブラブのヤンキーカップルだから、FUCKはガンガンいきまっせ!警官の伊藤猛は川瀬から「インポ」麻衣から「トイレ」と言われる究極のヘタレと思ったら、最後にキマスよ!

川瀬は、これがピンク初出演とは思えないw素晴らしいセックステクで麻衣をイカせる。青姦の時の手マンとか、立ちFUCKのピストンとか、3Pの時も伊藤の乳首舐める麻衣をバックから愛撫する時のポジショニングが絶妙で「この人、ピンク映画ベテランでしょ」と思わせるほどw

最初は、川瀬&麻衣が伊藤警官夫婦に里子に出した、幼い息子を奪いに三宅島にやって来る、かなり既視感のある邦画のロードムービー仕様か?と思わせておいて、息子が警官宅で仲良く遊んでいたニワトリの方をさらっていく辺りで、なんか「END OF THE WORLD 」感が出てくるw

この作品、よくよく振り返ってみるまでもなく(笑)ストーリーらしきストーリーは、前半までしか存在しない。川瀬&麻衣が伊藤の妻(泉由紀子)のやってる食堂に来て、夫の伊藤と上司の小林節彦も来る。この5人が登場した時点で、田舎の食堂を舞台にしたほのぼのドラマ想像するんだけどw

チンピラの川瀬が息子を返してくれないと知って逆上して伊藤から拳銃奪い取り、伊藤を廃屋に拉致して籠城する辺りで、物語が急変、しかも川瀬は由紀子と良い仲になり「あしたば」の葉を食べながら愛を語っちゃってセックス、バックから犯される由紀子の巨乳がどエロい!

川瀬はちゃっかり由紀子と浮気したくせに、麻衣が伊藤と全裸で寝ているのを浮気と勘違い。伊藤は「トイレに行かせてくれ」と麻衣に頼んだだけだったのだ。で、あだ名はトイレさん。伊藤が「島の裏手に誰も知らない船出し場あるよ!」で島内ロードムービーへと急展開!

伊藤は廃屋で川瀬&麻衣に繋がれている時は、まるでニワトリのように大人しかったがwいざ、ニワトリと一緒にバンに乗って三宅島の中心街から裏手の人気のない場所へと走り始めると態度が一変、というか本来の伊藤に戻り、もう「トイレさん」でも「インポさん」でもないw

圧巻は、廃屋に入った三人が3Pする濡れ場で、どすけべな麻衣が伊藤の全身を舌でペロペロ舐め上げ、川瀬は負けじと麻衣を背後からFUCKする。こうして三人の気持ちは通じ合ったかに見えたが、三宅島の裏手にあるという船出し場、ここまで行くのは想像した以上に困難な行軍だった。

車で行けるような場所ではなく、砂漠の前で車は乗り棄て徒歩に切り替える。あちらこちらに溶岩の化石で出来たクレーターが点在し、猿の惑星のような宇宙空間。でも、3人と一緒にいる動物はか弱いニワトリw麻衣は女性だから体力でどうして劣ってしまう。彼女は息も絶え絶えになりフラフラ、ついに体調不良で倒れ込んだ。

すると、これまで聖人君主と気取り、常識人だったはずの伊藤警官が、無理やり麻衣をレイプしようとするではないか!怒った川瀬は拳銃を手に取ると、伊藤を射殺、ほぼそれと同時に麻衣も息を引き取った。でも、そんなことよりも、やっぱりニワトリだよね。可愛いニワトリは無事なの?そればかり気になっちゃうw

劇的なのはニワトリの炎上(←あ、書いちゃったw)川瀬が鳥かごに火を着けて、あ、いやw三宅島は火山土壌だから、これは仕方が無い自然発火で、演出じゃないよね、多分(笑)ニワトリは、豪火の余りの熱さに耐え切れず鳥かごを飛び出し、初めて飛び立った。ニワトリ、飛んでるんですよ!しかもゴウゴウ炎上しながらです!

ああ、本作で圧巻なのは3Pよりも、やっぱりニワトリの炎上(笑)炎に包まれたニワトリが三宅島の溶岩台地で出来た岩場を落下していく様は、「ズームイン暴行団地」の火だるまになる妊婦よりも、画的にスゲエ(←ホントに燃えてるからじゃねえのかw)川瀬はニワトリを追って駆ける!

結局、三宅島の30年に一度の、神が怒りまくったような大炎上を、ニワトリの大炎上に見立て、ついでに伊藤警官は射殺され麻衣も衰弱死するけど、メインはやっぱりニワトリだろ(笑)川瀬は、伊藤も麻衣もニワトリもwいなくなって、一人寂しく「END OF THE WORLD」広大な海をひたすら泳ぎ続けるのみ。

そしてラスト、川瀬陽太が麻衣と伊藤が死亡して一人きりの海で泳ぎながら、ついに画面の下に見切れて、その後に出る「END OF THE WORLD」この題字だけでも十分にカッコイイんだけど、更に「START FROM」を遅れて左側に出すの、シャレてるなあ。もはや、ピンク映画じゃない、何か別のスゴイもんになってるなあ(笑)

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