見出し画像

池田敏春「魔性の、香り」

池袋新文芸坐で、池田敏春「魔性の、香り」 原作は結城昌治。 脚本は石井隆。

川に飛び込み自殺を図った人妻(天地真理)を救けて、そのまま同棲し始めた男(ジョニー大倉)を悩ませる「嫉妬深い彼女は夫に隠れて浮気して証拠隠滅のため相手を殴り殺す」強迫観念。ザンザン降り雨の夜、男女の絶望的すれ違いは、人妻の飛び降り自殺で終わる悲恋。池田敏春の破滅美学を画に描いた秀作。

真理がジョニーに語った、彼女が嫉妬深い夫に虐待された話には、裏側があった。真理は愛するジョニーだけには信じて欲しかった、そんな思いを裏切られたまま、絶望に母親と同じ飛び降り自殺という回答を選び、自ら命を絶った。全編通して不吉な予感を静寂と雨で表現する珠玉の恋愛譚である。

過剰過ぎる雨、過剰過ぎる水。刺激的に過ぎる川に飛び込み自殺する瞬間とビルの屋上から飛び降り自殺する瞬間。真理はジョニーに呟いた「飛び降りる瞬間って一体、何がどんな風に見えるんだろう?」山崎善弘カメラで到達しうるギリギリまで誰も見たことない再現映像にズームイン!

精気を吸い取られるようなオカルト映画で、もはやポルノではない!一見すると反娯楽映画とも言うべきひたすら暗いだけの作品に思えつつ、死に直面した男女のエロスにスクリーンに吸い込まれそうになる。こういう作品撮り続けると魂をすり減らしてしまうかも知れないけど、命かけて映画撮ってる本気度が伝わって来る。

これってエロティックホラー?それともサイコホラー?などと形容しようと思えばできるのだが、それよりも作者自身の持つどろどろとした怨念のようなものが渦巻くまさに妄執・異形の怪作ではあるんだけど、どうもなじまないんだよなあ。意図的にそうしてると言うより「地」なんだものw

ディレクターズカンパニーの制作で、最初からロマンポルノとして公開するつもりだったのか?天地真理とジョニー大倉の濡れ場はねちっこくエロく撮れていてしかも序盤、中盤、終盤の勝負どころに三回も!なのに真理の夫(高橋長英)の浮気相手役の風祭ゆきはびっくりする程脱がないw

池田敏春と石井隆は2人揃って濃厚な死の香りが漂うホントは組ませちゃダメな組み合わせだと思うんですけどw石井隆には恋破れても生へのエネルギーは失っていない気がするのに対し池田敏春の方はガチ(←何のガチだよw)スクリーンの中から死なせて欲しい!希死念慮が伝わってくる(^^;)

池田敏春&石井隆コンビの傑作と言えば「天使のはらわた 赤い淫画」成功の秘訣はエロ劇画チックな石井隆ワールドに池田監督が相当忠実に撮ったと思われ。対し本作は池田監督の色が全面に出て最初から最後まで死の匂いが強烈、破滅型恋愛美学というより破滅型人間の死を描いてる。

成人映画の常はヒロインの心情に寄り添って演出すること、なのだが石井隆がロマンポルノの世界観をひっくり返したのは他ならないポルノ映画を観ているような冴えない非モテ男の歪んだ願望、ムッツリスケベでマジメな顔して脳内では女のハダカやセックスしか考えてない男の妄想。

ということで(←ということで、じゃねーよw)物語を振り返りながら活弁風に脚色して感想書いてくのが私の趣味なんですけど(笑)どうにも勝手が悪いこの作品。天地真理に感情移入できないのはホンと演出の意図で、主役のジョニー大倉にのめり込むとヤバイ!死にたくなるw

なお、ジョニー大倉がジョニー的世界観に浸る場面で印象的流れる劇伴の数々がカッコ良くて、これ、大野克夫?それとも本多堯之?とか思ってたらにっかつ録音部の林大輔氏の選曲とのこと。秋山豊さんのお話では林氏の選曲のセンスは良かったとのこと。

70年代のロマンポルノって独自音源が結構あった。神代辰巳が過去の音源を使うのが嫌で役者に歌わせたりとか、民謡から音源取ったりしただけでなく、白井伸明のシコシコ節とかペコペコ節でも音源凝ってますからねえ。80年代は余裕が無くなって来た中で、池田敏春&石井隆コンビの画と音作りは賞賛に値する。

テレビマン・ユニオンがこんな作品にも携わってるのか!と思われた方もいらっしゃる。切なく流れるピアノの旋律や青味を強調した画面がやるせない。ジョニーがまさか本番?と思わせる天池真理のアフレコ下手も見所のひとつ、っていうかわざと下手なまま放置してリアルに素人の人妻感出してたりしてw

なお(←なお、じゃねーよw)ロマンポルノ18年の歴史の中で脱いだ女優の大物度ナンバーワンが天地真理だと思う(結構マジ)私の青春時代における真理ちゃんとは体調を崩して芸能界を一度引退した後、俺たちひょうきん族に出たりセミヌードになったり堕ちていく女感が凄かった。なまじ人気絶頂アイドル時代を知らないのが、私には幸いだったかもw

天地真理が、ジョニー大倉の目の前で股間大開脚してヘアヌード晒してオナニーとかびっくりするほどセンセーショナル!ではあるんだけどね、本職じゃないからどうしても扇情性は低い。ましてや天地真理以外に誰も濡れ場がないばかりか、唯一の風祭ゆき全裸は金属バットで撲殺現場だw

本来のモチーフは天地真理が漂わせる魔性の香りの元である線香花火だと思うんだけど、それよりも金属バットが強烈過ぎ(笑)斎藤洋介が人妻と浮気する時に護身用に金属バット持ってく場面で既にキテるんだけど(笑)ジョニー大倉の部屋にはちゃんと金属バット常備しておりますw

圧倒的に水に関する描写が美しいし、ネオンサインも石井隆っぽい世界観なんだけど、金属バットが全てぶっ壊す!池田敏春にとって「死」というのは「生」のすぐ隣にあって手が届きそうなもので、こういう世界観好きなんだよね。生と死のギリギリで格闘してるような主人公の描写。

ザックリ言えばミイラ取りがミイラになる話である。人に監視されたり尾行されている恐怖におののくジョニーは物書きだが廃人寸前の危ない人。そんな彼が川に身投げしようとしている真理を発見、川に飛び込んで助け人生で最高の興奮で真理に恋してしまう。でも2人の性癖の間に埋められない溝。

見せ場は真理が浮気相手(斎藤洋介)を撲殺したと確信したジョニーが仕事部屋で居眠りしてるとビルのはずなのに床上浸水でびっくりして目が覚めると天井から思いっきり水が滝のように流れててバットを振りかざした真理がジョニーを撲殺にかかる、悪夢というよりそうなりたい念慮。

ジョニー大倉以外に感情移入できる登場人物がいないんですけどw天地真理も高橋長英も斎藤洋介も風祭ゆきも情痴事件に直接絡んでは来るんだけど彼らは全員モンスターのように何を考えてるのか分からない奴らで、それは狂気のジョニー大倉のフィルターを一旦通しているからこそw

結局ね、この映画のキモはぜーんぶジョニーなんですよ。ジョニー。永ちゃんになんか負けないぜ!キャロルっぽいツッパリ風味は完全に封印して、俺たち非モテダメ男たちの代表!ウジウジと悩んで目の前の妖艶な人妻にエロい妄想膨らませる、断然イケてないジョニーがここにある!

冒頭からね、魁三太郎たちと「三人舎」を組んでるライターのジョニーは、いつも誰かの幻影に怯えてる脅迫神経病患者で、彼は過去に一体どんな過ちを犯した?それは一切描かず、彼の犯したはずの罪深い業は偶然出会った自殺しような天地真理に投影し、彼女と恋に落ちていく。

生きる屍のように生きてるジョニーの目の前をフラフラ歩いてる天地真理が、大きな川の橋の上から決死のダイブ!(←いや、自殺ですからw)ジョニーは溺れてる真理をめがけて決死の水泳、彼女を助け起こして自室に連れ帰るまでの怒涛の展開、いきなりスクリーンに引き込まれた。

ジョニーが生きる屍とすれば真理の方は目が完全に死んでる人で(←これ、演技なのか?)ジョニーは真理が人妻と知るが彼女から夫が嫉妬深くて私は家出した。帰ったら金属バットで殴られると泣くので「ここにいてもいいよ」でもホントはジョニーの方こそ、真理に惚れてしまった。

ジョニーがビリヤードするいでたちがいきなりカッコ良くて、ここだけがキャロル感wwwその後はどうにもイケてないのでギャップがスゲエ!ジョニーは三ヶ月に及ぶ真理との同棲生活の泥沼に飲み込まれてしまうが、それは朝目が覚めた時の天地真理のエロ下着姿が原因だったw

ジョニーの部屋で布団にくるまって寝ていた真理はシュミーズから乳首がはみ出てるし、パンティはセクシーで陰毛スケスケだし、もうジョニー辛抱堪りません!そのまま犯し始めちゃうけど、真理もアンアン、最初から誘ってたんだよね、淫乱な天使、真理がジョニーに降って来た!

ジョニーは喫茶店で原稿書きしてると、鰐淵晴子ママが客の斎藤洋介に「電話よ!」聞けば下の名前が真理と同じじゃねーか、おい!斎藤は人妻と浮気してると言う。ジョニーの脳内に「真理、旦那に隠れてこいつと浮気してんじゃね?斎藤は第二のジョニーじゃね?」って思い始めたw

あごが特徴の斎藤、「何かあったらこいつで夫をぶん殴ってやる」宣言して金属バット持ってた。俺も持ってるもん、金属バットwジョニーは真理が人妻なのに俺と同棲して、家庭環境はどうなってんの?新聞記者の義兄の協力を仰ぎ、夫が赤羽に住んでるX線技師(高橋長英)と知る。

ジョニーは真理と同棲し初めて三ヶ月経ち「俺たち、結婚しないか?」プロポーズするが返答しない真理。ジョニーは思い切って夫の高橋の家を訪ねる。ところが高橋は金属バットを振り回すような凶暴な男ではなく見るからに温厚。でも壁に金属バットで作ったボコボコの穴があったw

高橋は家出した真理とは見合い結婚で、今は後悔してると言うw看護婦の風祭ゆきと浮気中だけど優男でとても暴力を振るうような男に見えない。帰宅したジョニーは真理のミステリアスな魅力に参ってしまい、「脱いでくれ!」パンティ一枚になった真理のだらしないおっぱいがエロいw

ジョニーは思わず真理を押し倒すと、器用にセクシーパンティはスルッと脱がせて正常位で挿入。正常位でガンガン責め立ててベッドからズリ落ち、ダイニングにバックからガンガン突きながら移動してまた正常位、スゲエ長回しで真理はジョニーの背中に爪立ててるし、なんか凄いですw

ジョニーが真理にプロポーズしてから一週間。斎藤洋介、金属バットで撲殺される!大事件にテレビや新聞報道も動く中、ジョニーは真理を疑った。あ、あやしい。こいつ、斎藤のように俺も浮気した挙句にバットで殴り殺すんじゃ?そもそも、こんな美女とめぐり会い方が不自然だ。

ジョニーは、「俺と同じ死の匂いがする」妖艶な人妻真理と別れられなくなってるし、かといってこのまま付き合っていたら、俺も撲殺?そもそも俺が取材で忙しく飛び回ってる間、真理の奴は何をしてるんだ?問いただすと掃除、洗濯、料理、家庭的な答えしか返って来ないのが怪しいぜ!

斎藤洋介撲殺現場に、X線技師高橋長英の名刺が落ちていた!ジョニーの疑念はますます深くなる。真理の奴、斎藤と浮気してバレると思ったら撲殺、それを憎き夫の犯罪に見せかけるために名刺を置いた。完璧、完璧じゃねーか、俺の推理!でもこれジョニーの病的な心が作り出した幻かもw

ジョニー、真理とセックスしたいけどいつ金属バットで殴り殺されるかも知れない恐怖感もあって、いや、真理に殴り殺されてこのまま死ねるなら俺、本望っす!てな感じで、仕事場の三人舎事務所で自棄酒かっ喰らいながら眠り込んでしまったジョニーにとんでもない悪夢が!

ジョニーが、飲み干したビールの缶を床に落とすと、なぜか「チャプン」慌てて起き上がり床を踏みしめると、今度はスニーカーが「チャプン」これ、床上浸水起こしてますよ!しかもプールみたい!ジョニーが天井を見上げると、穴が開いていてそこから水がゴーゴーと滝のように流れ落ちてる!

うわあ、雨だ!水だ!うろたえるジョニーの真上に、金属バットを振りかざす天地真理wwwこれではっきりしたよ、真理が犯人だ!そう思った瞬間( ゚Д゚)と目が覚めた。高橋長英宅で壁を壊して回った~♬真理の狂気の姿が脳裏に焼き付いて離れないジョニー、あなたは重病ですw

夢から( ゚Д゚)と目が覚めたジョニーの目の前に、ホンモノの天地真理www「お前、どうしてここに?」「探しに来たの」ほらほら、こいつは嫉妬深くて独占欲が強い、淫乱女なんだぜい、と勘違いジョニーは確信してしまうのだが実は写し鏡、ジョニーこそ独占欲と嫉妬にまみれてる。

ジョニーに問いただされ、初めて身の上話を始めた真理。「母親は結婚して半年で父親に浮気され、受験勉強中の私はワーキャー騒いでる女が誰かに襲われてるって思った。でも大人になって分かるけどアレしてたのよね」ジョニーは不安になって「お母さん、それからどうなった?」

真理は何か呟いた後、スッポンポンになると股を大きく広げてボカシ越しにヘアヌードとはっきり分かる格好で指を突き立てて激しくオナニー、仁王立ちのジョニーのズボンのファスナー下ろしてフェラし始めた。真理さんエロすぎっすwここまでやるとはスタッフも意外だったんじゃw

ジョニーは真理と二人きりなので、部屋にある金属バットとかナイフでいつ襲われるかもしれない恐怖に酔いしれながら、机の上の物をバーンと全て払い落とした真理に対面立位で激しく腰を振る抱っこちゃんFUCK。真理の顔が陶酔してなんだかトローンとしちゃってるのがスゲエ!

コトが済むと、真理は先ほどの「それからお母さん、どうなったの?」ジョニーの質問に「と・び・お・り・た」口元のアップに線香花火が消えてく意匠の後、真理は2回戦の前に「ちょっと、おしっこ」ドアを閉める瞬間、ニコッと微笑んで手を振る真理にジョニーは「大げさだなあ」

ジョニーは真理を待つ間、留守番電話を聞いてみた。真理の声で「もしもし」の後、義兄が「斎藤洋介撲殺の真犯人が捕まったぞ!高橋長英の後妻の風祭ゆきだ!」ああ、何と言うこと、ずっと真理が犯人だと思っていた。それがよりによって天使のように微笑んでたナースのゆきだったとは!

再現されるゆきの斎藤撲殺シーン。情事の後、浴槽に使っている斎藤の頭をめがけて金属バットを振りかざし、斎藤の額から血がピュー。ゆきは天地真理仕様の爆発パーマカツラまで被って変装していた。これで高橋長英が参考人招致されれば前妻の真理がタイーホされてラッキー!

ジョニーは( ゚Д゚)あれ?ヤバくないか?さっき真理の奴、母親は飛び降りたって言ってたよな。慌てて階段を駆け上がると、まさに屋上から身を投げ出そうとしている真理。ジョニーの目の前で墜落すると、ビルの上から落下、そのまま路上に倒れた。ただ呆然として屋上に立ちすくむのみのジョニーのストップモーション。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?