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坂本礼「ふ・た・ま・た」

シネロマン池袋で、坂本礼「ふ・た・ま・た」(成人映画公開題「悶絶ふたまた 流れ出る愛液」) 脚本は尾上史高。

大学時代の恩師(佐野和宏)と不倫を続けるOL(夏目今日子)のフリーター彼氏(石川裕一)もヤリマン後輩(藍山みなみ)と寝ていた。出来ちゃった婚で授かる新しい命と引き替えに喪われる、戦中派世代の親愛なる叔母。理屈ではない、情緒に流されながら観るが吉!しみじみ性春映画の佳作。

ブサイクなんだけど同時に凄くチャーミングな作品で、映画ってキレイに纏まっていて、起承転結が丁寧に出来ていなくとも、継ぎ接ぎだらけの中に、映画の要所要所に( ゚Д゚)とするようなステキな場面が目の前にドドーンと提示される、そんな佳作があってもいい。

正直言うと、5年前(2018年)ラピュタ阿佐ヶ谷で本作を初見した時と劇的に評価が激変した。当時はあまりにもつまらない、ダサい作品だと頭を抱えたけど、再見してみて、やっぱり何が言いたいのか良く分からない、散漫で千鳥足な悪品であることには変わりないんだけど、ラストに向かってスパークする終盤は心に刺さるものがあるんだよなあ。

ラピュタで観た当時に書いたんだけど、製作・配給が国映で、監督に若手の坂本礼を起用した、散文的な日常が淡々と過ぎていく中に、全員がふたまたをかけてる2組のカップルの愛情とその終わりを描き出す。画が美しく決して嫌いではないが、3本立てなら箸休め作品にしかならない、映画をきちんと観た満足感はあるんだけど。

主人公の石川は夏目今日子と藍山みなみをふたまた(くしゃみの勢いで2人とも中出し)今日子も大学教師の佐野和宏とふたまた。みなみたんも石川を彼氏の吉岡睦雄とふたまた。今日子は結局は石川の子を妊娠、めでたく結婚して病院で新生児が取り上げられ生命誕生の悦びに湧くけど、親愛なる叔母残がほぼ同時に臨終を迎えてしまうんだよね。

こういう、国映が制作する作品を観るたびに、私は困ってしまうのです。これは一体、ピンク映画と呼んでもいいものなのか?でもね、本作は脚本の不出来はいったんスルーすれば(←こらこらw)夏目今日子のスレンダー美女と藍山みなみのピチピチアイドルのW主演は濡れ場が魅力的で、3本立ての中でまったり観る枠としては十分に合格点を付けられると思うんだよね。

とにかくね、出て来るキャラがいちいち、こんな奴ホントにいるかよ!ツッコミ所満載のヘンな奴ばかりで、途中から映画の主役を乗っ取りがちなオバサントリオの中でも入院中の叔母さんが、主人公の兄弟がどうして肉親以上に感情移入できるか?観客にとって全く意味不明でもどかしい。

これが夢オチだったら分かりやすいんだけど、坂本監督のタッチはセミドキュメント風だから本気で撮ってるように錯覚しちゃう。じゃあ、クシャミしたら中出ししちゃった!みたいな奇想天外な発想ってなんなの?十分にファンタジックじゃない。絶対にありえないw

こういう作品って、ピンク大賞で年間ベストテンに選ばれてしまうようなクオリティでは決して無いと思う。当時から一般の映画ファンとも、成人館の常連客とも乖離しちゃっていて、マニアックに過ぎる視点からしか映画を観られない狭度な近視眼の成人映画ファンに改めてつくづく嫌気はさすんだけど、この作品の真意は決してそこには無い、はみだしだと思う。

ホンも演出も撮影も、何もかもが支離滅裂で、恐らくきちんと感想なんて書かなくていいんじゃないの?これ!という思いは再見しても変わらないのだが、映画の中に度々、心に突き刺さるような感動を呼び込むシーンが登場するのよね、これ意図的なのかどうか?が実は重要なポイントだと思うんだけど。

否定的なことから書き始めるのは私にとって非常に珍しいことなんだけど、仕方がない。ある意味、ホントに酷い作品だから(笑)でもね、わざとそういう風に撮って編集してるようなあざとさを裏に感じるんだよなあ。正面からマトモに受けちゃいけないような。

結局、この作品を光り輝かせているのは登場人物一人一人の個性だと思うんだよね。主人公の石川裕一が無色透明で全く存在感が無い分、佐野和宏、夏目今日子、伊藤猛、藍山みなみ、吉岡睦雄、飯島大介、そしてオバサントリオまで、キャラが立ってる、見入ってしまう。

前半は国映作品には珍しく、濃厚なFUCKシーンを存分に楽しませてくれて眼福。夏目今日子も藍山みなみもエロく撮れてる。一転して後半部分になるとエロはかなぐり捨てて死と生の問題へとシフトチェンジ、セックスが新しい命を授かる者、というテーゼを全面的に強調。

夏目今日子は夏目漱石「それから」を愛読するOLで、でもそれって大学時代の恩師の佐野から借りた本。読みながら彼氏の石川と退屈なセックス中に眠り込んでしまい、石川のクシュン!くしゃみで中出しされてしまったが気づかない。これが始まりであり、全てだ。

今日子の性欲が全開するのは恩師の佐野と会った時。佐野は奥さんがガンで別れようとするが、公衆便所に手を引っ張って自ら佐野にщ(゚Д゚щ)カモーン、バックから犯されアンアン喘ぐ今日子は艶めかしい。石川は今日子が浮気してるなんて全然、気づいて無かったのだ。

後輩でオヤジと援助交際してるみなみたんに誘惑され、キスからそのままセックスに雪崩れ込んだ石川、対面座位で抱き合ってる最中にみなみたんに鼻毛を抜かれ思わずクシュン!(←おいおいw)一度ならず、二度までも中出し。避妊はちゃんとせえよ!後が怖いぞ。

石川は今日子に「どこか連れてって!」ねだられゴムボートで海に漕ぎ出し無人島に向かう、暗い場面ばかりだった映画がいきなり開放感に包まれるカタルシス!でも、ゴムボートは転覆しびしょ濡れになった二人。空き地で愛国の花を合唱するオバサントリオに遭遇!

石川の叔母は入院中でもうろくしているが少女時代を思い出して爆撃機の空襲を怖がったり、病院を抜けて戦時中に従軍看護婦さんを見送った時に歌った「愛国の花」を口ずさんだりする。今日子はそれを見て「私も70歳になった頃、ああなっていたらいいな」と呟いた。

今日子は佐野を好き過ぎて自宅まで押しかけてしまう。妊娠したけど多分、石川の子じゃない、あなたの子よ!佐野に抱き着き、理性を失った佐野は今日子のプリケツを執拗に愛撫してからの濃厚な一発キメ、その頃石川、今日子の蔵書に全て佐野の印があることに激高!

蔵書の件で今日子と喧嘩した石川、兄の伊藤に今日子とは別れた報告。みなみたんは妊娠し、遊び相手の吉岡に「責任取ってよ」詰め寄るがかわされ、次の詰問相手が石川だ(笑)妊娠中に煙草を吸うなと注意する石川に「それって産んでもいいってこと?」返すみなみ。

今日子が石川と別れ、病院で奥さん(伊藤清美、残念ながら非脱ぎ)の介護してる佐野に会いに行くと、ちょうど夫婦中睦まじく介護の最中であった。これを観た瞬間の、全てがストップモーションになってこの世の終わりのような今日子の佇む姿が私の頭から離れない。

みなみたんの部屋に転がり込んだ石川、フェラして貰いながら「やっぱ上手いな、お前」と心無い一言でブチ切れられ、初めて石川は本棚にあった夏目漱石「それから」を読んでみるんだよね。まさにその瞬間、今日子の方は佐野に別れを告げられ、失意のどん底だった。

みなみは今日子から石川を奪い取ろうと職場を訪れ「この世で一番、嫌いな女と会いに来た」徹底的に戦う宣言!「私、妊娠しちゃったの」と切り出す。でも、親は石川なのかどうか分からない。今日子も自分が妊娠したことを告げ、二人して「私たち、バカよね~」

みなみたんは今日子に負けた。勝ち誇った顔で「あなたの一番嫌いな女通りだったでしょ」石川もケジメをつけに大学を訪れ佐野に「今日子と別れてくれ」と迫る。でも、佐野はそんな石川がまるで子供に見えた「若いね」「嫌味かよ」「本音だよ」答えは決まっていた。

みなみたんが帰宅すると部屋に石川がいた。「あっちがダメだからってこっちには戻れないよ」石川が部屋を出ようとすると「子供、あんたのじゃ無かった」強がりを言ってみても石川の後ろ姿を呆然と見送りながら佇むみなみたんの寂しい後ろ姿が私の頭から離れない。

職場で今日子が黄昏ていると、ゴンドラに乗って清掃中の石川が窓に降りて来た。窓越しに石川を見つけドンドン叩きながら抱き着こうとする今日子の純情に私は思わず号泣。そして、石川と今日子はベッドインし再び対面座位で結合するとクシュン!またも中出ししてしまったw

身重な今日子は純白のウェディングドレス。今日は石川との結婚式の晴れ舞台。なのに意識を失って昏倒した叔母さんはそのまま帰らぬ人となった。遺体を安置したベッドを囲んでいた二人のオバサンの元に駆け寄る今日子と石川。ここで今日子「うう!」うずくまった。

産気づいた今日子をベッドに乗せるため、慌てて叔母さんの遺体をベッドから下ろした(←罰当たるぞw)そして無事に元気な赤ちゃん、出産しました!叔母さんの遺言通り、散骨する石川と赤ちゃんを抱いた今日子、兄の伊藤、二人のオバサン、生き残っている者は死んだ人の分もこれからも生きていく。

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