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城定秀夫「静かなるドン 新章」

城定秀夫「静かなるドン 新章」 脚本は横幕智裕との共同。 原作は週刊漫画サンデーに連載された新田たつおの同名人気漫画。

関東最大の暴力団「新鮮組」の三代目に就任したばかりの近藤静也(袴田吉彦)は、喧嘩が大嫌い。彼は下着メーカー「プリティ」でリーマンをしていたが、父親の急死により嫌々、夜だけ総長として組を仕切る。下着メーカー社内で恋した憧れのマドンナ(小林恵美)は、ふとしたきっかけで、総長バージョンの彼に恋してしまう、ヤクザ映画とは思えないまったりした娯楽作品。

普段はR-18シネマ専門で、ヤクザ映画なんてあんまり観ない私が、ヤクザ映画を騙って恋愛ドラマなのかコメディ映画なのか分からない、別ジャンルの映画に生成してしまったw城定作品の感想書くなんて、この高いハードルはどうしたものだろうw

この漫画は新田たつおの代表作なのだが、私は原作を読んでいないばかりか、この漫画を原作とした他の監督による映画、テレビドラマ、アニメなど一切観ていない環境で、「城定さんが監督だから」という理由で、この作品だけを観た上で、無謀にも感想を書いてみたい(笑)

まず、この映画は城定監督版だけでも前後半80分強ずつ、合計170分近くの長尺で、その後もシリーズ化された栄えある一作目、らしいのだが「この作品だけ観れば、後はまあいいやw」と思わせる。城定さんにヤクザ映画はムリだ。ホンモノ感がなく、ホンワカとし過ぎ(笑)

物語は起承転結の様でそうでもなく、主人公は前半部では母親の言いつけで無理やり跡目争いの席に呼ばれ、組のナンバー2に相撲で負けて(笑)三代目を嫌々継ぎ、生来の喧嘩嫌いが原因で争いごとに巻き込まれる理由が無いはずの女性たちを地獄に落とす、悪魔の様な存在w

主演の袴田吉彦が演じる主人公・近藤静也は、原作とはかけ離れているようで、かなりのイケメン。下着メーカーでちんたら仕事していても、そのイケメンぶりが目立つ。白いスーツに白いネクタイ、黒いシャツでジャジャーンと登場しても変身感に乏しいのが最大のネック。

ヒロインの秋野明美を演じる小林恵美。脱ぎそうで脱がなかった(笑)のはさておき、表情に乏しくて、何を考えてるのかよく分からない。下着メーカー「プリティ」で静也の姉貴分的な存在なのに、城定さんっぽいホンワカ演出で、観ていて気持ちいいのだが、緊張感に欠ける。

話の本筋は、関東最大の盲力団「新鮮組」vs関西最大の暴力団「鬼州会」が冷戦から、「静かなるドン」と呼ばれるほど動かない三代目・静也に業を煮やした新鮮組の跳ね返りが動き出し、鬼州会もこの機に乗じて関東上陸を狙う、まんま「仁義なき戦い」のパロディの
世界。

映画の舞台は、暴力団「新鮮組」本部と、下着メーカー「プリティ」が大半だが、ヤクザ同士の戦闘シーン、夜の銀座のクラブ、高級シティホテルの一室、それに新作下着発表会の会場など、城定さんの作品にしてはw予算もロケもかなり余裕があるというか、余裕があればいいもんじゃない、ということもしみじみ思うw

なお、エンディングで流れる主題歌の「BACARRAT~バカラ~」は鼠先輩が歌っている。昭和歌謡っぽくて味がある、なかなかいい曲なのだが、映画本編が脱力系なこともあり、最後までどうも締まらない雰囲気に、合っていると言えば合っている(笑)

<主な登場人物>

近藤静也(袴田吉彦)
下着メーカー「プリティ」の若手でドジで仕事ができないダメ社員。でも実家は関東最大、1万人の構成員を持つ「新鮮組」父親がヒットマンに狙撃され急死、彼は母親に強引に組に呼ばれ、幼い頃に良く遊んでくれたナンバー2の鳴戸に相撲で負けて、約束通り三代目に就任。リーマンと総長の二足の草鞋を履く。

秋野明美(小林恵美)
下着メーカー「プリティ」で近藤の先輩。ダメ社員の静也と違い、デザイナーとして熱心に働く彼女は、静也を弟のように可愛がっている。彼女は会社の飲み会、ぼったくりバーでぼられそうになった時に救世主となって現れた総長ルックの静也に一目惚れ、切ない片想いに落ちる。

鳴戸竜次(永倉大輔)
戦闘能力が高く、三代目の筆頭候補に目されていたが、ギャンブルに目が無く人望も無い。でも、熱い心を持ったいい奴で、三代目となった静也を陰に日なたにナンバー2として支え続ける、純情を絵に描いたような男。

猪首硬四郎(勝矢)
新鮮組の突撃隊長。喧嘩っ早そうな顔をして、ニコニコ笑顔がキュートな同性愛者にモテそうなルックス。鳴戸と二人で静也を支え続ける、縁の下の力持ち。

生倉新八(田之頭保弘)
新鮮組傘下の生倉組組長。一応、ナンバー3だが、常に跡目争いで肘方と小競り合いを続けた挙句、最後は手柄を立てようと芹澤&草加の挑発に乗って撃沈。

肘方年坊(森羅万象)
新鮮組傘下の肘方会会長。生倉と同じく、ナンバー3だが、生倉と張り合うことに生きがいを感じているような男で、最後は手柄を立てようと芹澤&草加の挑発に乗って撃沈。

川西部長(諏訪太朗)
下着メーカー「プリティ」の商品開発部長。静也と明美の上司。仕事をしてるのかしてないのか分からない怠け者。彼が主催した飲み会は、明美と総長ルックの静也との出会いのきっかけとなる。

逃野(千葉誠樹)
下着メーカー「プリティ」で静也&明美の先輩。既婚者なのに明美を誘う嫌な奴。

坂本健(石川伸一郎)
関西最大の暴力団「鬼州会」四代目会長。大阪城に本拠を構えるw実力者だが、関東進出には慎重。

胡麻田
鬼州会のナンバー2だったが、単独で関東の長州会と組んで関東進出しようと目論み、総長である静也のスケと睨んだ明美を拉致、でも鬼神と化した静也にやっつけられて撃沈。

芹澤鴨次
同じく鬼州会のナンバー2。関東進出を目論み、シャブ取引で成果を上げる草加組と組んで静也のタマを取るべく、銀座クラブの理江をシャブ漬けにして拉致。金と女に汚く、最後までしぶとく静也のタマを狙い続ける、悪い意味で漢の中の漢。

草加千兵衛(吉岡睦雄)
シノギにシャブはご法度の新鮮組の隙をついて、新選組のシマでシャブを売る悪魔のような男。悪知恵が働く知的ヤクザ。理江の脚にシャブを打つ瞬間のワンカットは、酷すぎて逆に秀逸w静也はヘビのような彼への対処に戸惑い、関係者全員に迷惑をかけた。

近藤妙(真理アンヌ)
静也の母親。サングラスをかけ黒い着物でじっと座っているだけの、妖怪のような姐さん(笑)

理江(長澤奈央)
新鮮組が仕切る銀座の高級クラブのナンバーワンホステス。ところが、草加の罠にハマりシャブ漬けにされ、芹澤&草加による「近藤静也の首取ったる!」作戦に利用される。

近藤勇足(仙波和之)
静也の父親。床屋で髭を剃ってもらっている隙に、ヒットマンに射殺されるお間抜けさんw

物語は、まあ時間があるときにゆっくり書き足そうと思うのだが、ハイライトシーンの良い部分、悪い部分だけ、忘れないうちに書いておこうと思う(笑)

まず、良い部分。これは、スランプに陥ってデザイナーとして行き詰ってしまった明美を、憧れの君である総長ルックの静也が高級レストランに呼び出し優しくエスコート。そして、ルビーのペンダントをプレゼントからのキメ台詞「ルビーって言うのは、周りが暗くても、自分が光って周りを明るくするんだ」

静也は明美に「さあ、外で踊ろう」暗闇の中で二人、華麗に優雅にワルツを踊る。そして、夜空に輝く満点の星空・・・いや?打ち上げ花火だよ、これwwwレストランの裏で、鳴戸と猪首の二人は、静也のためにせっせと筒に詰めて花火を打ち上げていた(笑)ここはシチュエーションごと、泣けるシーン。

悪い部分、それは芹澤と草加に追い詰められた静也の逆襲。隙をついて草加の頭に銃を突きつけ「動くな!動くとこいつを殺すぞ!」ここで芹澤が「お前にこいつを殺せるかな?お前は銃を撃つとき、肩や脚ばかりで急所を外していた」と言いつつ、草加の心臓に向けて拳銃ドーン!草加はそのまま、まさかの犬死に(←まあ、自業自得なんだけどw)

明美は静也をおびき出すため、倉庫に捕えられていた。静也は無事に明美を救出、彼女を連れて逃げようとすると、芹澤が拳銃で明美の胸をドーン!Σ(゚Д゚)えっ!明美も即死なん?とびっくりするが、胸には静也がプレゼントしたルビーがあり、弾丸はルビーに突き刺さっていて、明美は無事だった(←お前、いい加減にせえよw)

そして、もうほとんど不死身の芹澤が、静也と明美の乗った車との壮絶なカーチェイス!箱乗りで狙撃を繰り返す芹澤は、まるでデコトラギャルに出て来るホリケン(←分かる人だけ分かるw)静也は負傷した左手でサイドブレーキが引けず、明美に頼んで引かせる。勢い余った芹澤の車はフェンスに激突し大炎上。静也は助手席の明美にニッコリ笑いかけ、キメ台詞「愛のドリフトだよ」(←お前、いい加減にせえよ)

明美が渾身のデザインをした下着の発表会は午後3時から。間に合うように車を急いで走らせる静也&明美はトラック野郎テイスト。そして発表会は大成功。ライバルのワコール(←本作で協賛してますw)に勝って上機嫌の川西部長が約束通り奢ったのは、何と回転寿司、しかも色皿は禁止のせこさw

ダメリーマンの静也は発表会に欠席したのにちゃっかり寿司は食っていて白い目で見られるが、ここで初めて明美は静也が左腕を負傷していることから「まさか、彼が静也さん?」と疑問を持つ(←いくらなんでも鈍感すぎだろ、ここまでw)

病気で死期が近い鬼州会の坂本会長は、どうしても静也のタマが取りたくなった。静也はその不穏な気配に気づき「明美さんは先に会社に戻ってて」と言うと、隠し持った拳銃で、ヒットマンたちに向けて銃口を向けた。ところで、「静かなるドン 新章」初めて静也が人を殺すのかな?の前に映画は終了してしまう(笑)

ところで、ダメ社員の近藤が社内コンペで発表した新作下着のダメすぎるデザイン作品は以下の3つ。

1.イエスノーパンティ
お尻に新婚さんいらっしゃいのイエスノー枕のように、イエス、ノーがプリントされている。女性から「今日はいいよ♡」と言い出すのは恥ずかしいでしょ!というコンセプトだが、社内で「そもそも下着になってる時点でイエスだろw」と罵倒された。

2.オセロパンティ
前から見ると純白のブラとパンティ。黒いブラとパンティ。でも、後ろ姿になると、黒と白が逆になる。そのギャップを愉しむのです!これは、あまりの酷さに社内一同、呆れかえる。

3.貞操帯ブラ&パンティ
女性の下半身がユルくなったことを嘆く男性諸氏のために、ブラとパンティを貞操帯に見立て、脱がせるには南京錠のような鍵が無いと脱がせられない。これは近藤にとって渾身の自信作だったが、社内で「お前は全ての女性を敵に回した」社内コンペ出入り禁止となるw

まあ、後は、漫画の方を読めばいいと思う、多分w

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