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小原宏裕「学生情婦 処女の味」

シネロマン池袋で、小原宏裕「学生情婦 処女の味」 脚本はいどあきお。

男と心中していた所をヤクザ(遠藤征慈)に助けられたセーラー服の少女(八城夏子)。死に損ない気ままに生きる不思議ちゃん夏子と敵対ヤクザのタマ取り元情婦(宮下順子)と離れ離れに逃亡する遠藤のほのかな恋と別れを描いた、70年代ネオ任侠映画の怪作。

ホント、いい時代になったと思う。1976年にロマンポルノの一作品として公開された後、いったいどれだけの人が本作に気を止めただろう。プログラムピクチャーとして量産されたネオ任侠ポルノの一形態を令和の時代になって堪能できる。凄い世の中になったもんじゃないか!

山崎敏郎の撮影と真鍋理一郎の音楽は安定の素晴らしさで当時のロマンポルノではむしろ珍しい方なのかな?流行歌やクラシックなど使わずオリジナルで全て攻めてる。物語自体はグダグダだけど画と音に圧倒的な迫力と見応えは大日活の底力を感じる完璧な出来映えと言って良い。

テンポ良く、エピソードごとにカットがポンポンと飛んでいくのは爽快なんだけど、その割にはメリハリに欠ける部分も多くて、何か漫画アクション辺りで良く観た、台詞主体でその割に主人公の遠藤は凄く無口だし観る者を惑わせるような、結局は考えるな、感じろ!五感の感性で楽しむ映画。

タイトルの「学生情婦」って何て読むか分かります?正解は「せいがくまぶ」です(笑)こんなの読める訳ねーよ!言うなかれ、渡辺護の過去作品とか観ると学生のことを「せいがく」と俗称するのは当時の文化として確かにあったみたい。でも情婦を「まぶ」どうなのかなあ?

確かに八城夏子は、冒頭で心中未遂起こす時は紺の冬服セーラー服着てるし、ホントに処女か疑わしいけど私は処女よ、強調する。ヤクザ遠藤の情婦、それって「まぶ」って言うのよね、になりたいし、タイトルに偽りは無いんだけど、これタイトルありきの設定だよね。無理ありすぎ(笑)

ヤクザを演じる遠藤は濃い目のドーランに睫毛もパッチリ。寡黙でなに考えてるのか良く分からん・・・そうか!(そうか、じゃねーよw)不思議ちゃんって夏子じゃなくて遠藤の方だったんだ。夏子の行動には意思表示も喜怒哀楽もはっきりあって分かりやすい。男女を倒置してるっぽい。

私はロマンポルノを主戦場にした数ある脚本家の中でも、いどあきおが一番好きなのだが、この作品は「(秘)色情めす市場」「絶頂姉妹 堕ちる」「黒い下着の女」に見られるような人間の業の深さとか逆らえない運命に向かって堕ちていく男と女とか、全然感じることできないw

作品の情報自体が絶望的に少ない、当時は誰も気に留めることなく右から左へ流れていくような存在だったんだろうが、数少ない情報源で作品紹介のあらすじを読む限り、本編と全然違うんだよね。私がここに書き始める作品内容が初めてのホントのあらすじ情報かな、と思うw

想像するにいどあきおのホンは小原監督にズタズタにされたね。観ていて前後の繋がりがおかしかったり論理の飛躍とかがしょっちゅう感じられて頭がおかしくなりそう(笑)なんだけど、恐らくいどあきおのホンの持つ暗さに小原監督が耐えきれずにファンキーな味付けしたw

70年代にしてなぜネオ任侠映画と表現したかと言えば、小原ファンキー宏裕監督って20年は時代を先取りしてたと思うんですよ。90年代の邦画で圧倒的な主流になる空虚や虚無がスクリーンに一杯詰まったような世紀末の作風を、任侠なら高倉健や菅原文太の時代に撮っていたw

だから令和の今観ても、特段の古さを感じない、代わりに同時代を生きた感覚なんてのも全然ない、良くも悪くも平板で空虚な時間が流れ続けるのは、いどあきおのホンの解釈が違うんだろうな、遠藤も夏子も人生を前向きに熱っぽく生きるんじゃなくてシニカルな目をしてる。

無垢な少女と明日を知れぬ無頼なヤクザ中年男の恋、なんてのはこれまでどんだけ多くの映画で世に出されたんだろう。手あかがついてるようなストーリーだから、小原監督流に解釈して独自の味付けしたら結果的にいどあきおのホンの良さが全部消し飛んだ、みたいな皮肉w

テーマとして扱われるのは若いカップルが心中し女だけが死に損なって残った、ヤクザが親分に情婦を横取りされ手打ちで敵対ヤクザのタマ取るよう命令された、少女とヤクザの運命が交錯して恋になる、田中陽造辺りが書きそうなホンだけど、不得手な人が書いてはいけないw

主役が不思議ちゃん少女役の八城夏子よりも圧倒的に無頼漢のヤクザを演じる遠藤征慈の方なんだよね。弟分の清水国雄もいい味出してる。遠藤の情婦だった宮下順子と清水の情婦の牧れいかはリアルに極道の妻に見えるド迫力で、ベースがヤクザ映画なんだよね、ポルノよりも。

遠藤の醸し出す無言の圧がスクリーンから観客席に向かってドーンと覆いかぶさってくるようなど迫力で、それ以外の男たちのチンピラ感が逆に半端ない(笑)これはもう、遠藤という哀しきヤクザをどんだけ美化してカッコよく描くかに全力が注がれていて夏子の影が薄いw

夏子に凄く印象的な台詞があって「命を助けても人生を助けたことにならない」遠藤は心中で死に損なった自分を助けてくれたけど自分はホントは死にたかったんだ。だから死んだはずの人生、好き勝手に生きてやる、そんな投げやりな態度がヤクザ社会とヘンなシンクロ。

夏子は冒頭でテキトーに若い奴と「ねえ、心中してよ」「ホントに俺でいいの?」って軽い気持ちで睡眠薬を飲んでエンジンかけたまま排気口をゴムホースで社内に引き込んで心中しようとしていた。ぐったりしていた所を遠藤が発見して慌てて馴染みのホテルに運び込んだ。

セーラー服の夏子を、遠藤がマノンレスコーみたいに抱え上げて運ぶシーンにワロタwそして、股間から血と小便を流しているのを発見、慌ててシャワーで身体を洗ってやり、ずぶ濡れの白いソックスがエロい!で、遠藤は夏子を置いてチェックアウト、管理人に言付けをした。

翌朝、目が覚めたら全裸でホテルに泊まっていた夏子は管理人に「あんた、あの有名なヤクザの情婦なんだろ、一年前に撃たれた弾が身体の中に残ってるんだよ」情報をいただきw早速、私を助けてくれた恩人のヤクザさんは誰?探し始めるんだけど、まずは小遣い稼ぎからw

ハゲでゲスい中年男(八代康二)が夏子に声かけた「お嬢ちゃん、服買ってやろう」そのままホテルに入り、「こうするとアソコが締まるんだ」裸身にねちねち氷責めさせてアンアン悶える夏子はエロいなあ(*'▽')でも、コトが済むと遠藤の名前を出し八城を脅迫、大金を分捕った。更に夏子は買春した八代のおっさんに「私、処女なのよ」付加価値の要求だw

遠藤には忠実な弟分の清水がいる。彼は敵のタマ取って追われる遠藤のために地下ボイラー室を隠れ家として手配、万全を期したはずなのに、夏子は弟分の清水と顔見知りになったことをきっかけに、彼が出入りするボイラー室、遠藤の居場所を嗅ぎつけて押しかけて来ちゃうんだよね。

ヤクザ遠藤と再会した夏子「私の処女を奪ったでしょ」謝罪と責任取ること要求するが遠藤に取っちゃ知ったことねえ。心中して倒れてた所を助けただけでそもそも何もしちゃいねえ。そんなストイックな彼に夏子は心惹かれた。清水は困った挙げ句、情婦のれいかと同居するマンションに夏子を住まわせることにした。

ここで小原監督っぽい意匠が炸裂するのは、れいかがガウンをはだけてガバッと全裸になると太ももに「国雄命」みたいな彫り物がしてあって、清水のことが大好きなんだよね。れいかは夏子に言わんでもいい情報を与える。それは遠藤には順子という情婦がいたが別れたこと。

れいかは夏子の目の前でフェラ顔して「順子は遠藤にフェラしたのよ」だってwで、順子は遠藤の情婦だったのを親分が横取りして、それでも密会してフェラしてもらってたら親分にバレて、許してやる代わりに敵対する黒潮会のタマ取れと言われて取って、逃走中なのだ。

この辺りから俄かにダッチロールし始める。順子の居場所を嗅ぎつけた夏子は店におしかけ「大人が来るところじゃないわよ」と言われたらジュースを飲んで居座り「なんで遠藤と別れたのよ」憎まれ口を聞きまくり、激怒した順子が夏子の頬をパーンと平手打ちのカタルシス。

夏子はホントは遠藤の情婦(まぶ)になりたいのだ。で、順子と遠藤の別れた理由を色々と探った訳だが(訳だが、じゃねーよw)遠藤は「子供には分からんだろ」とそっけない態度で、夏子は堪忍袋の緒が切れて(勝手に怒るなよw)黒潮会の名を勝手に名乗り脅迫状書きましたw

「可愛い娘を預かった。返して欲しければホテル渚に来い」素直にw頭を抱える清水と、「これホントに黒潮会が書いたのか?」疑う遠藤。清水が偵察に去り、遠藤はホテル渚(連れ込み旅館でしたw)でコンドームに空気を吹き込んで膨らませて遊ぶお茶目な夏子を発見しましたw

夏子の恋心、ここでは遠藤に通じず。清水の家に帰ろうと思えば、風呂場で抱き合ってキャッキャはしゃぐ清水国雄命のれいかが風呂上がりに濃厚な騎乗位から対面座位一発キメ、行き場を失った夏子、帰る場所はやはり、遠藤が隠れ家にしているあの地下ボイラー室しかない。

夏子は遠藤と再会し「どうして私を助けたの?一人殺して、その分私を助けたんじゃないの?」ベッドインし、遠藤のタマが埋まっているという体内を覆う皮膚を噛みそのまま遠藤に挑んだ夏子、遠藤は正常位に体位を変えると夏子を犯し始め、夏子はついに念願の遠藤の情婦となった。

ところが、親分から遠藤に緊急呼び出しが入った。順子との件は不問にするから黒潮会の奴を殺れ」指令だ。考え込んだ遠藤、久しぶりに自宅アパートに戻ると、清水の手引きで順子が待っていた。和服姿きりりと極道の妻そのものの順子がここから本領発揮の濡れ場で魅せる!

遠藤が「俺は自首する。出所したらこのアパートで一緒に暮らさないか」感極まった順子は遠藤のズボンを下ろし白ブリーフ越しにフェラ、そして着物を着たまま裾をはだけ騎乗位になると激しく腰を振り、遠藤の上でイッた。順子はアパートを出て、入れ替わりに夏子が来た。

アパートの周辺では黒潮会の鉄砲玉の谷文太が遠藤のタマ取ろうとスキを伺っている。夏子は仁義に生きる遠藤に「仁義ってそんなに大切なの?」疑問をぶつける。遠藤は終戦時に孤児だった自分を養ってくれた親分に恩義を感じてずっと仁義を切って来たが、疑問が湧いた。

そこに夏子から「死んだ人のことを考えたこと、あるの?」きつい一言。思わず「お前と心中して死んだ男のことはどうなんだよ」返した遠藤に夏子は愛おしさを感じキスすると騎乗位で跨り、バックから突かれ、そして対面座位、濃厚に愛し合う夏子の痴態がクライマックス!

意を決してアパートの螺旋階段を駆け下り自首に向かう遠藤を、物影から谷文太がナイフを持って遅いグサリと一突き。そのまま路上に倒れ込む遠藤。アパートの窓から路上を眺めて涙を流す夏子の目の前に広がる無常な光景。自首という贖罪さえ許されず殺された愛するヤクザ。

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