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佐藤寿保「硝子のサイレンサー」

シネロマン池袋で、佐藤寿保「硝子のサイレンサー」 (成人映画公開題「レズビアンレイプ 甘い蜜汁」) 脚本は夢野史郎。

試験管に魅せられた医大研究者のヒロイン(高樹麗)が、テレコに住む自分の中の男に独白しながら、自分と同じトカゲの様な美人後輩(杉本笑)に接近、試験管納品業者(今泉浩一)を色気でたぶらかして、後輩を襲い狂言レイプを実行、これをきっかけにレズ関係に持ち込み、試験管ベビーを孕ませた。夢と現が交錯する狂気の傑作。

エリート美人女性が、自分の心に棲み着いた、内なる男性と女性の存在の恐怖に打ち震える、壮絶なアイディンティ崩壊の前夜。彼女のレズビアン妄想による甘い誘惑は、やがてマヌケな試験管空気銃のズドンの音で中和され、映画のENDマークとともに、私は夢から覚めた。

麗が見る夢が現実と交差する、いや、全てが幻なのかもしれない。冒頭、白衣姿で「A液とB液をブレンドしてもAB液にはならない」と呟く麗。ラスト、試験管に仕込んだ精子で孕ませた憧れの笑と仲よく肩を並べて歩く麗。実は時制は進んでいない、全て夢なのだから。

深層心理学と精神分析をブレンドしたような、観る人によっては恐らく訳が分からないだろう作品で(笑)実際の所、「考えるな、感じろ!」の究極にある。少なくとも、自宅のPCであれこれ考えながら観るのが最悪の鑑賞方法で、劇場の椅子に腰を静めるしかないw

なぜ、本作を劇場鑑賞オンリーと限定するかと言えば、答えは簡単「全て夢」だからである。何となく現実っぽい光景が夢と重なり合うけど、それも多分、夢。現実であればありえないような荒唐無稽な物事は全て夢の中で私たちが睡眠中に体験する「ヘンなもの」なのだ。

だから、この作品を観ながら、「何となく見たことあるなあ」といい意味でうつらうつらしてくるのは、まさに夢から目が覚めた直後「ああ、寝てる時、俺はこんな夢観てた」と一瞬は記憶があるが瞬時にはじけ飛んでしまうような幻想を60分間、劇場で観続ける。

映画館の暗闇とはよく出来たもので、胎内で観た生前の夢、死んだ後に観るであろう夢、そして自分がもう一人の自分に置き換わったかのように別人となって観る夢、死の臨界点にいるような夢の世界は劇場で無いと没入は無理で、ここに現実感が入ると邪魔になる。

寿保監督がピンク四天王と呼ばれたのは、伊達じゃなくてwこういう作品が一部(←ひょっとしたら大多数?)の観客に「訳わかんねえ」と敬遠され小屋主激怒、みたいな流れだったのかも知れないけど、ちょっと待って下さいよ、本作には10回近くに及ぶ濡れ場があり、ちゃんとエロいと思うんです。

物語も、特に深い意味まで探ろうとしなければ、タイトルにあるレズビアンとレイプが折り重なった話で、このジャンルの映画が観たければ要請を満たしてる。いわゆる国映テイストの作家主義作品とは全く異なるものであることを、最初に申し上げておきたい。

ただし、ホンが夢野史郎によるもので、かつ滝田洋二郎が監督していないからwストーリーは全くなく、ヒロインの脳内を駆け巡る夢と現が行きつ戻りつするだけで終わる。80年代のアダルトビデオにはこういう作品がよくあった。FUCKシーンがあればいいのだから。

佐藤寿保監督自身、ピンク映画と並行してAVもかなり撮っていて、FUCKシーンの煽情性を邪魔しちゃいけないと思いつつ、AVの時と違って「これは映画だし」とちょっと欲が出ちゃったような気がして、そこが受け入れられないんだろうけど、私はチャーミングで好きw

理屈なんか要らない、夢を見てるだけだから、夢を体現するモチーフがあれば十分。それは「トカゲ」「テレコ」「ボルト」「試験管」「空気銃」これらの一つ一つは全く用途が異なる物体が、夢の中で無理やり関連付けられて意味不明なシュールな世界を作り上げる。

とはいえ(←とはいえ、じゃねーよw)ベースに置かれるのはヒロイン高樹麗のトランスジェンダーかな?と思う性癖と、その中でセクシュアルクライシスに直面して乗り越えていく、性的な自己発見と自己実現の物語で、脳内で夢のように自分に都合よく完結していく。

麗が自宅の水槽に入れて飼っている二匹のトカゲ、これは自分自身である。彼女は男でも女でもない。一匹のトカゲを今泉浩一という人間に夢想し、もう一匹のトカゲを杉本笑という女性に夢想する。トカゲは一対をなしていない。男か女かは選択肢、決めなければ。

ボルトは女性である私のアソコを無理やり犯すレイパーの象徴である。一方、テレコで会話するのは脳内にいる男性の私で、常に彼女は男女比をテレコへの独白により危うく保つ。そして彼女のライフワークは試験管を利用して男女どちらでもない生態を研究すること。

麗は医大の研究室にいるが、夢の中で必死で研究するのは、二種類の液体をブレンドしたら一体何ができるのか?紫色だったり、白色だったり、彼女にとって試験管は新たな可能性を生み出す魔法のガラスで今泉トカゲは彼女にピカピカの試験管をプレゼントする王子。

でも、もう一人の笑ちゃんトカゲは意地悪して試験管を渡してくれない。今日は私の誕生日だったのに。彼女は今泉トカゲにレイプされボルトをアソコにねじ込まれる悪夢を見た。そしてテレコに「誕生日なのに何も無し」と愚痴る。麗には二匹のトカゲが思う通りならない。

麗は今泉トカゲに愛されているが、自分は笑ちゃんトカゲが好きだ。つまり私はレズなんだ、と思うけど何となく自信が無い。笑ちゃんトカゲが試験管隠した罰にシャーペンで手のひらぶっ差したり、お詫びにマーラー演奏のコンサート誘って断られ、笑ちゃんトカゲの前で破り捨てる。

麗はテレコに「マーラーの夢を見られなかった」と愚痴る。今泉トカゲは空気銃と試験管を組み合わせる発明、笑ちゃんトカゲはうるさい電話は冷蔵庫にしまう発明。今泉トカゲと笑ちゃんトカゲが急接近し、麗は今泉にレイプされている自分を夢想し、笑と自分を自己同一化した。

この辺りまで読んで「おいおいwこれ、ピンク映画でしょ!」と思ったあなた、別に問題ないです。ストーリーは訳分からんかもしれないけど、高樹麗も杉本笑も爬虫類系の美人でロングヘアがなびく、二人が屋上や森の中で立つ、歩くツーショットは抜群の美しさ。

特に杉本笑は、銀幕映えする私的にドンピシャの超絶美人で「この娘、ホントに脱いでくれるのかなあ」と心配になりますが(←脱がない訳、ないだろw)演出の効果で、麗がシュールな夢想で笑を好きで好きで好きすぎて、それで杉本笑が超絶美しく感じる映像マジック!

後半に入ると、さすがの寿保監督も「このままダラダラ夢の続き見せて終わりじゃマズいな」とストーリー展開に舵を切るが、なかなか難しいよ、これ(笑)今泉トカゲが発明した、サイレンサーのように試験管を空気銃の先端に装着した新製品で一点突破あるのみ!

笑ちゃんトカゲに「あなた、レズでしょ」と風呂場の全裸洗いっこで感づかせて、笑ちゃんトカゲの夢「子供が欲しい、胎内で見た屋上からの風景を再現したい」を実現すべく、ジャジャーン!麗が武器として用意するのは自分のアソコから流した生理の血、これをぶち込みたい。

今泉トカゲは、試験管空気銃の性能検査のため、悪徳看護婦の石川恵美をレイプしてまず口に暴発!更に、夜道を歩いていた水鳥川彩を人気の無い路地に連れ込んで犯し、止めにアソコに暴発させ試験管空気銃の性能は保証された。その一部始終を見て満足そうな麗(笑)

でも、麗自身も常に何かに怯えている。彼女は窃視されているのだ。テレコで語り掛けている自分の中の男は常に自分を見張っている。だから彼女は、何かに突き動かされるように衝動的に行動する。彼女の衝動、今泉トカゲを女装させ、もう一人の女を作り出すこと。

笑ちゃんトカゲが、自分の恋愛対象になってしまった今、自分自身を投影するもう一人の女トカゲが必要、麗の計画通り、女装した今泉トカゲは残業中の笑ちゃんトカゲを深夜の病院の屋上に呼び出しレイプ。そして今泉トカゲと自己同一化した麗は試験管空気銃で生理の血をズドン!

生理の血をズドンしてしまえば、後は笑ちゃんトカゲを助け出したフリして、風呂場でレズプレイして愛を確かめ合うのみ。ここまでは完璧だった麗の計画。ボルト責めの心配は無いし、二匹のトカゲ今泉も笑も自分の思い通りになった、かといえば簡単に事は収まらない。

ところが麗は思わぬ事実を発見する。今泉にも笑にも、自分と同じように自殺願望があったのだ。屋上でフラフラと手すりに寄りかかる笑は投身自殺を、今泉は本物の銃を片手に世界と一緒に自分も破滅したい、二人揃って破滅願望者だった。これは困ったぞ!麗はテレコに語り掛ける「今泉を殺して!」殺るか、殺られるか、勝負は最終コーナーへと入った。

笑ちゃんトカゲと並んで屋上でミルクアイスキャンディ舐める麗。「私にも、アイス権利がある」(←出ました!夢野史郎のベタなダジャレw)笑ちゃんトカゲは「じゃあ、私の言うこと、何でも聞くわね」笑ちゃんトカゲはにわか女王様に変身。麗に「裸でベッドに寝ろ!」と命令した。

笑ちゃん女王様は、麗に「ワンワンスタイルで、ケツをもっと落とすんだよ!」いきなりお嬢様キャラから女王様キャラに急変(笑)舐めてたアイスキャンディにコンドーム被せて麗のアソコをグリグリ責めまくり、麗は笑に精液をアソコで受け止めさせる、夢想の現実化を決意!

笑ちゃんトカゲが研究室の地下倉庫に入った瞬間、マスクをして今泉トカゲと一緒に笑ちゃんトカゲを襲う!今泉トカゲが笑ちゃんトカゲをレイプする瞬間、試験管空気銃を持ちタイミングを伺う麗。試験官の中には、麗が今泉をフェラし溜めた精液が注入されていた。

笑ちゃんトカゲは、今泉トカゲにガンガン犯されながら「え、まさか!」と驚いた瞬間、麗は試験管空気銃の精液を笑トカゲのアソコに思い切りズドン!とぶち込んだ。そして今泉トカゲは全ての役割を終えて用無しになった。麗は愛する女トカゲが妊娠した、最上の幸せを味わった。

しかし、今泉トカゲは凶暴な強盗殺人犯に変貌した。麗が歩道橋の上を、妊娠してお腹が大きくなった笑と仲良く歩いていると目の前に立ちふさがる今泉「俺の子供だ!」本物の銃で麗をぶち抜いた瞬間、麗の生命線であった試験管が割れて血が流れ、トカゲがじっと見つめた。

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