沢田幸弘「暴行！」

沢田幸弘「暴行！」　脚本は佐治乾と斉藤信幸との共同。

ヤクザと駆け落ち失踪した美人妻（梢ひとみ）を３年待ち続けた別荘管理事務所兼スナックの主人（益富信孝）。ところが久しぶりに帰って来た妻は敵対する組長を狙撃したヤクザの隠れ場として戻ったのであった。密室で繰り広げられる緊張感溢れるバイオレンス男女７人物語ダークカラーの佳品。

愛と憎しみは紙一重。益富が妻のひとみを愛すれば愛する程に裏切られた時の憎しみは大きくなるもの。何を考えてるのか訳ワカメな美人妻のひとみはオブジェのようにただ存在し、振り回される益富の心情にシンクロしてみれば観終わった後の虚しさに心に一陣の風が吹き抜けていく。

男女７人が密室でするセックスは死と隣り合わせのようなスリルに満ちていて、ヒロインの梢ひとみは和姦が大半だが最後だけ愛してくれていたはずの益富に犯される。別荘の宿泊客だった宮井えりなは完全なる暴行要員で、ヤクザ庄司三郎の連れだった牧れいかは強い高橋明に寝返るｗ

別荘に立てこもるヤクザ３人の造形が秀逸で、ここにヤクザ賛美みたいなものは一切無く、暴力とエロにのみ脳内が支配される人間のクズオブクズを凝縮したような完全ヒールで罪のない益富を虐め続ける。エライ順から高橋明＞椎谷健治＞庄司三郎のヒエラルキーは完璧な縦社会だ。

ひとみがヤクザ椎谷の情婦から抜け出したくても抜け出せない女をミステリアスに演じる魅力はあるものの演技力にちと厳しい所もあって、やっぱり妻のひとみが好き過ぎてヤクザの言いなりになってしまう益富の哀しい男の性みたいなのが、悪玉筆頭の高橋との対峙で見応えがある。

男臭い映画なんだよね。ヤクザの論理で別荘をアジトに絶対君主として君臨する高橋と、愛する妻を守るために絶対服従を強いられる中で、何度も妻の裏切りに遭いながらも必死で耐えて来た益富の心の中でピキーンと何かが弾けてからのどんでん返しに強烈なカタルシスを感じる映画だ。

ロマンポルノ的にはですね、タイトルにあるような暴行シーンが見たい訳ですよ。ポルノの客としては。でもね、ひとみは精神的に結びついてる益富と、肉体的に結びついてる椎谷と和姦で、れいかも強い高橋に憧れて和姦で、暴行ないじゃん！と思ってたところで意外な所からスキが！

別荘に宿泊していて先に家族だけ帰って一人になっていたえりながノコノコと不穏な雰囲気を漂わせる別荘に益富を訪ねて来ちゃう訳よ。で、椎谷が乗って来た血まみれのチャリを見つけて別荘に引きづり込まれて、れいかにフラれてヤケを起こした庄司にズタボロにレイプされるのが目玉。

えりなは暴行要員にしか思えないんだけど（笑）これで暴行は終いかなと思ったら、妻の裏切りに堪忍袋の緒が切れた益富の大暴走が始まって庄司、椎谷、高橋の順に殺していくのが既にカタルシスなんだけど、ひとみはレイプするんだよね。すぐに殺さない。ヤッて復讐するのだ。

えりなのレイプシーンは庄司が強引に服を脱がせて羽交い絞めして手マン。正常位に組み敷いてビンタを何発も食らわせ大人しくさせたら腰を落として泣き叫ぶえりなを犯し続ける、なんかダークカラーのレイプAVものみたいな迫力なんだけど、益富がひとみをレイプする時は違う。

愛あるレイプなんだよね（そんなレイプがあるかよｗ）益富はひとみが自分を射殺しようと拳銃を構えた時点で、完全に獣と化していて、ひとみを押し倒すと無言でガンガン犯し始めるんだけど、精神的に結びついていたはずが切れて、逆に肉体的な性欲にシフトする男の恐ろしさだよね。

挿入歌はまず、冒頭でいきなり別荘でキャピキャピとはしゃぐえりなと対比するように、寂しそうに管理事務所でマッチを組み立てる益富の心情を表すかのように流れる因幡晃「わかって下さい」♪貴方の愛した人の名前はあの夏の日と共に忘れたでしょう♪

ずっとその後は異様な静けさと時折バイオレンスの嵐で音楽らしき音楽もかからぬまま高橋が益富を殴り倒した時にラジオのスイッチが入ってマラソンディスクジョッキー25時間放送してる番組で流れる３曲からまず益富の心情に寄りそう都はるみ「北の宿から」

益富がひとみの裏切りに狂気のスイッチが入り凶器で庄司、椎谷、高橋を殺戮する場面に益富の愛と憎しみはギリギリの紙一重で山崎ハコ「綱渡り」♪綱渡り 私の毎日は綱渡り 昨日と今日の間落ちそうで綱を渡る 宙ぶらりん 綱にぶら下がり 下を見る雲の上に♪

そして別荘の男女7人が2人きりになり益富がひとみをレイプし始める時にマラソンディスクジョッキー最後のリクエストが松田優作「ある子供の話」♪揃いの着物が見え隠れ 汚れた服の男の子 仲間外れで遠くから見つめてた 寂しそうな顔はしていたけれど 泣いたりなんかはしなかった♪

ザックリ言えば魔性の女房ひとみが情夫のヤクザを丸ごと連れて家に戻って来て旦那の益富が散々な目に遭う。でも耐える益富はひとみに対する愛あればこそ暴力的なヤクザに耐えられたのに肝心のひとみが裏切ってついに怒りが爆発して皆殺し、ここに愛はない、暴力の後の静寂のみ。

徹底的にダークな色合いとブルーなテイストで観てる方が鬱になりそうな中で、ヤクザの中でもマヌケな庄司と、彼が選んできたのだから間違いないれいかの凸凹コンビが色々と粗相を繰り返し、緊張を緩和してくれるのよね。こういう脇役の使い方が澤田監督はとても上手と思うのね。

椎谷は別荘に逃げ込んで切る時点で敵の組から腹に銃弾を喰らっていて、ずっと呻きっぱなしなんだけど、ゾンビのように情婦のひとみとヤリてえ、ヤリてえ、叫ぶもんだから益富は「俺の妻だよ！」ジェラシーが燃え盛り、椎谷と益富のひとみを巡る心理戦もなかなかオモロイｗ

問題はね、ひとみがヤクザ情夫の椎谷に抱かれてアンアン喘ぐ貞操観念のないような女でも夫の益富が許して奪い返したいと思う程にイイ女か？にかかってるのよね。残念ながら私はひとみのような表情に乏しい女が好みでないこともあって今いちノレないんだよね。そこが心残りだった。

冒頭、家族で別荘に来ている女子大生のえりなが快活にチャリ転がして洋もののエロ本読んでる益富に挨拶。益富は部屋に籠ってマッチ箱でタワー組み立ててる孤独な男で訳あり。ここに「暴行！」って書きなぐりのタイトルインで不穏な空気が流れ出して、待ち続けた妻のひとみ帰る！

もうね、死にそうな表情でザンザン降りの雨の中をヌッと現れたひとみに死に神感（笑）益富は３年前はスナック「黒い湖」の住み込みのバーテンだったけど貯金してスナックのオーナーにあと一息でなれる。別荘の管理人も兼務していて、ずっと３年間、ひとみのことを待ち続けたのだ。

でもね、ひとみは「私と一緒に逃げて！」とか突然言い出すんですよ、取り敢えず益富はひとみと久しぶりの夫婦で全裸で正常位一発キメるんだけど、どうもひとみの様子がヘンで、アンアン喘いで腰をくねらせて脚を巻きつけて来て淫らな女になっちゃった。ここに不審な物音がした。

庄司がれいか連れてナイフ持って、高橋がライフル銃構えて益富をお出迎え、そのまま隠れ家にすべく適当な別荘に案内させてそのまま籠城。益富は脅されて監禁されるんだけど、ひとみの申し出で謝礼金は受け取り、これで「黒い湖」の借金が全額返せる！ってことはひとみもグルなの？

ここに一日遅れで椎谷が飛び込んで来て、腹に銃弾受けて重傷なのに医者に見せずに高橋がナイフで引っこ抜こうとしてる。買い物に出るように言われた益富は新聞で高橋と椎谷と庄司の３人は敵対する組長を撃った銃撃犯として警察に指名手配されてることを知り、本人たちに知らせた。

益富にとって自分が人質に取られて別荘に籠城されることは仕方がないと思いつつ、妻のひとみが椎谷の情婦でヤル気マンマンなのが気になって仕方ない。高橋は気を回して椎谷に「ひとみとヤルの禁止」令を出すんだけど、獣のように盛りのついた椎谷はスキあればひとみを抱こうとする。

高橋が重傷の椎谷を庄司に命じて看病させつつ籠城し続ける緊張感漂う別荘内で、自由人なのがれいかでｗ庄司なんかよりずっと強い高橋に憧れて自ら服脱いで迫るとさすがに溜まってた高橋も据え膳喰わぬは男の恥と抱いてしまい、これを知った庄司は女を取られて身悶えるばかりなりｗ

そんな所に狼の群れに羊が迷い込んだようにえりなが無邪気に「おじさん！」益富を訪ねて来たからさあ大変、最初はスルーしようと思ったのに椎谷が乗って来たチャリを発見したからには庄司に「ヤレ！」命令に盛りがついて狂犬のような庄司がえりなを無慈悲にガンガンレイプする修羅。

その頃、椎谷はあばら骨に刺さっていて抜けなかった腹の銃弾を自分でえぐり出したのは全てひとみと一発ヤリてえ！魂の叫び。益富が「約束が違う！」揉み合いになると椎谷は益富を突き飛ばしひとみの服を挟みで切り刻み全裸で立たせ濃厚ガチFUCKを眼前で見せられた益富ワナワナ。

ヤクザをも上回る狂犬と化した益富はモリで庄司を一突きで絶命させるとベッドの中で全裸の椎谷をひとみが庇うのを強引に突き飛ばし、ライフルを構える高橋の目の前で椎谷を盾にして射殺させ、高橋のスキを突いて刺し殺し、まるでポルノとは思えない壮絶な殺戮合戦に益富は勝利！

ひとみは銃を益富に向けて脅すが、愛する妻に裏切られた哀しみに復讐の牙を剥いた益富は全裸のひとみを押し倒し無言のまま腰を振りレイプ、そしてコトが済むと花瓶をひとみの頭上から落として粉々に砕け散る破片は益富の壊された純情。ひとみは頭から血を流して絶命した。

益富は妻を奪い取ったヤクザには勝ったが最愛の妻を失った悲しみ。ヨロヨロと別荘を出て歩き始めると、眩しい光にかざした手の薬指にひとみとの婚約指輪が嵌っていることに気づいた。いくら抜こうとしても抜けない。路上に落ちていた石で指輪を叩き割ると、思い切り放り投げた。