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若松孝二「歪んだ関係」

横浜シネマリンで、若松孝二「歪んだ関係」 脚本は大谷義明。

朝帰りした産婦人科医の目の前に妻(城山路子)の他殺死体。看護婦(新高恵子)は先生はその晩、私といたとウソの証言。刑事の取り調べの中で徐々に解き明かされる先生の秘密と正直に証言できぬ訳、そして真犯人の緻密な完全犯罪が見破られるカタルシスに浸る、推理サスペンス映画の良作。

女優三本柱が揃ってクオリティ高し。中でもヒールとして本作をグイグイ引っ張る新高恵子の美貌は特筆もので、彼女のチャーミングな容姿を堪能しただけで入場料の元取れたんじゃない?と思う位に衝撃的な美人だよね。寺山修司「天井桟敷」の看板女優に上り詰めたの伊達じゃない。

新高恵子の向こうを張っていきなり他殺体で登場してから回想シーンで圧倒的な存在感を見せる城山路子(=光岡早苗)も妖艶で、産婦人科医がアリバイに出来ない浮気相手の医師会重鎮の娘を演じる月ひろみもほぼ濡れ場要員(おっぱい見えないけどw)小悪魔的でなかなかそそる。

女優が魅力的だとそれだけで映画は5割増し、2倍増しで面白くなるもんだが、人間関係の歪みをテーマにしてるから証言のズレみたいなのを話の軸にしているから集中して観ていないと途中で置き去りにされそうな怖さがあって(笑)でも謎解きを観客と一緒にやりましょう感で進む。

先に乳首が見えているか問題ですけどw新高恵子と月ひろみは見せませんが(爆)城山路子が若いツバメとのFUCKは上半身ズームで切り抜けたと思ったら、夫婦仲が冷却してるはずの産婦人科医と夜のベッドに入る時にバッと服を脱いでおっぱいモロ見え、これならOKだったのかなw

吉沢京夫と寺島幹夫の取り調べ刑事コンビにより安定のサスペンス映画をグイグイと見せる展開で、そこに証言者である看護婦の新高恵子、産婦人科医の林孝一、詐欺師と若者などの自白がどんどん話を急転回させ、最初は全く関係ないと思っていた恵子が実はとんでもねえワルだった。

キモなのは城山路子殺人事件当日に各人のアリバイはどうだったか?そして強姦された後に絞殺された路子に中出しされた精液がO型だった。その2つの謎を解いていくんだけど、最初は観客は殺人が発生した当日の深夜1時のアリバイのことばっかり気になって精液のこと忘れてるw

科学的に正しいのか分からんけど映画の設定として血液じゃなくて精液でも血液型が特定できる、という前提で話しが進んでいき、中出しされた精液の持ち主は誰だ?みたいな所から真犯人を暴くトリックの核に入り込んで行くんだけど、まさかの相互血液銀行の登場にびっくりだw

林が妻の路子の浮気現場を探偵を装った詐欺師に案内されマジックミラー越しに覗いて(;゚д゚)ゴクリ…の場面はその後のポルノ映画、例えばロマンポルノ第一号の西村昭五郎「団地妻 昼下りの情事」より6年早いんだぜ。現代のマジックミラー号に繋がるエロ文化の原点なのかもw

誰でも気になる新高恵子のエロについてなんだけど、露出は路子に比べると明らかに低めな中で奥さん殺害され自分が疑われてる失意の林に風呂上がりバスローブ纏って話しかける時の胸の谷間やちらりと覗く太ももの奥の股間が艶めかしくて、そういう場面がもっと観たかったなあ。

恵子が完全犯罪のトリック完成のために使う物、O型の精液とエロテープ。前者は血液銀行で血を売る冴えないおっさんスカウトして搾り取り、後者は部屋にタイマーで流してアリバイ作りに使用するんだけど、どっちもさりげなくエロなんだよね。この辺のいかがわしさは素晴らしい。

円の中に縦字で国映のロゴ。企画が矢元照雄で若松プロ以前の若松映画って六邦映画とか国映とか当然ながらエロダクションのどこかが制作してた訳で、内容も往時のクラシカルなピンク映画の味わいがある。まだ思想とか革命とかそういうこと声を大にしない時代のことだ。

冒頭、産婦人科のベッドでいきなり城山路子の全裸死体。暴行されアソコにはO型の精液が付着しており、朝帰りした夫で産婦人科医の林は気が動転して刑事の吉沢と寺島に襲い掛かって「公務執行妨害で逮捕する」スゲエ出だしに、足を引きずって歩くびっこの恵子が超怪しい。

刑事に向かって「林先生は昨晩、私と一緒にいた!」叫ぶ恵子の真意や如何に?林は嫌疑をかけられ連行され取り調べを受けるが彼の血液型はAB型で無罪を証明。で、彼が供述したのはそもそも私が浮気する前に妻の路子の方が浮気していた。探偵に浮気現場を案内されたのだ、と。

電話で「青山墓地で待ってます」林を呼び出した胡散臭い探偵はジープに林を乗せて連れ込み宿で待機。隣室に路子が先に入って来て、遅れて20歳そこそこの青年が登場し、全裸で抱き合ってアンアン悶える痴態に「おのれえ!」プルプル怒りつつもマジックミラーをガン見の林(笑)

林は路子殺人事件の当日、泊りがけの出張と偽って浮気相手の医師会重鎮の娘ひろみと密会していた。現代っ子のひろみはラジカセでゴーゴーミュージックをガンガン鳴らしながら1枚づつ服を脱いでいくストリップの後に林を抱きしめて、いいなあ、なんで林ばかりモテるんだよw

林にとって医師会の重鎮の娘と密通してたことがバレたら医学界の一大スキャンダルは必須。だからホントのアリバイなんて言えない。恵子はそれを分かっていてわざとウソをついたのだ。恵子は恩を売る代わりに「先生のお世話を私がさせていただきます」おい林、俺と代われ(爆)

吉沢と寺島は林の証言をもとに青年が怪しいと睨み路子殺害現場に付着していた指紋が彼のものと一致したことから取り調べ、青年の精液鑑定の結果、O型で血液も一致したことで犯人はお前に決定!と行きたいが猛然と俺じゃないと否定する青年に吉沢と寺島は更に裏があると確信。

吉沢と寺島は恵子が犯人の線を捨てていなかった。彼女の住む寮の管理人に当日のアリバイを訪ねるが、当日の深夜1時頃に恵子宛てに電話がかかって来て、部屋に呼びに行ったら男とFUCK中でアンアン悶えていて、女は見かけによらんものだとびっくり鼻の下伸ばしてアリバイあるの。

青年を取り調べの過程で判明する、林を浮気現場に案内した探偵は詐欺師で青年とグルで妻の路子を誘惑して浮気させ、現場に林を連れて行って詐欺師が「俺が何とかしてあげましょう」調査費やらなにやら名目で金を巻き上げるワルい奴らで、林は( ゚Д゚)そうだったのか!呆然w

さて(さて、じゃねーよw)林も詐欺師も青年も犯人じゃないことまで吉沢と寺島は突き止めたんだが、恵子はどうなんだ?夜の行動を探ると、浮浪者が住んでるあばら家を訪ねる不審な恵子は「抱いて♡」浮浪者に抱かれながらスキを見てカミソリで首筋をグサリ、口止めするためだ。

恵子の考えたトリックその1。相互血液銀行に出入りする腕にO型マークの付いた浮浪者をスカウトし、金を出して誘ってコンドームを手渡すと「ここに射精して」「出ねえ」ボヤく浮浪者に「仕方ないわねえ」一発ヤラせてあげる恵子は神!浮浪者にとって宝くじ当たったようなもんw

恵子は当日の深夜1時に路子が産婦人科の診察室で青年と逢引きする約束を取り次いでいた。で、先回りして路子の首を絞めて殺害。その後、コンドームに入ったO型の精液をクスコで路子のアソコに注入して、青年がこっそり訪ねて来るのを確認すると青年に罪なすりつける作戦完了。

恵子の考えたトリックその2。オープンリールのデッキにエロテープを仕込んで押し入れにセッティングし、深夜1時に再生されるようにタイマーセットして、その時間に管理人に偽名で電話。管理人に部屋を見に行かせて男とFUCKしてる現場をアリバイにする作戦まで完了したのだが。

吉沢と寺島はトリックを調べあげ恵子に突きつけると、動揺した恵子は大声で泣きわめき始め、これにてジエンド。恵子の仕組んだ完全犯罪のトリックは暴かれ、同時に医師の林を巡る妻と看護婦と浮気相手の歪んだ関係も全て暴露された。嗚呼、諸行無常の男女愛の因縁の恐ろしさよ。

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