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川島雄三「接吻泥棒」

ラピュタ阿佐ヶ谷で、川島雄三「接吻泥棒」 原作は石原慎太郎 脚本は松山善三。

色男のボクサー(宝田明)が女子高生(団令子)の唇を奪ったことから巻き起こる、バーのマダム(新珠三千代)、ファッションデザイナー(草笛光子)、ショーダンサー(北あけみ)による宝田争奪戦も、彼の本命は令子。太宰治を手本に上手くいくのか?手切れ金大作戦。泣いて笑って上質の通俗ドラマ活劇。

原作者の石原慎太郎が映画の冒頭とラストにカメオ出演、というより筋を勝手に書き換えられる天井人として、最初は俺の原作小説アピールし宝田が令子と結ばれるハッピーエンドの後に「もっといい女出してやる」色男の宝田にカマかけ、慎太郎が美味しい所を持ってっちゃったじゃんw

サヨナラだけが人生だ。宝田が四角関係のもつれに悩み令子以外の3人の女性と別れたいのにどうしたらよいのか?テンパってると馴染みの蛇屋の客から太宰治の女との別れ方を伝授される。まあ太宰は別れる前に死んでしまったけども、ここは一つ、ご祝儀袋に手切れ金ということでw

この映画のクライマックスは後楽園ホール?を舞台に本格的に外国人ボクサーのぺロスと闘う宝田の拳闘シーンなのかもしれないが、肝心のボクシングがショボいwそれよりも、北あけみが踊るショークラブに新珠美千代、草笛光子、団令子が集結するキャットファイトシーンがオモロイw

速射砲のように早口の台詞とまるで太陽族映画のようなテンポの良いリズムに黛敏郎の劇伴。スタイリッシュでそつなく、でも深みは感じられないままに、ボクサー宝田の美女ばかり4股の「おい、宝田!羨ましいぞ、この野郎!」な展開が淡々と進む前半は一体どうなるんかと思ったぜw

冒頭、ボクシングの練習を終えてタクシーの後部座席に乗り込んだ宝田。衝突事故を起こして、相手の車の中で気を失っている令子を蘇生させようと、こぼれたラーメンの汁を口に含んで令子に飲ませる宝田。色男ボクサーとお嬢様学校の令嬢のキスシーンをトップ屋(中谷一郎)がスクープ。でも、石原慎太郎が近づいて来て「接吻泥棒か、こりゃいいや」だってさw

お嬢様学校で令子のキスは不慮の事故とは言え職員会議にかけられる大問題。でも、宝田が学校に乗り込んで「キスした相手はおしめをしている赤ん坊のようなもんだ」啖呵を切り、その姿に惚れた令子の父親(河津清三郎)は、ポンと世界タイトルマッチの資金をはずんでしまったw

光子をモノにしようと宝田に嫉妬して激写に走るトップ屋の中谷一郎、バーを経営する三千代のスポンサーをする大阪の爺さん上田吉二郎、宝田を気に入りファイトマネーをポンと出す実業家の令子の父親の河津清三郎、宝田以外の男はあくまでも添え物なんですよ、添え物。女4人の意地の張り合いが素晴らしい!

本作でアッと驚く意匠が蛇料理を喰わせる蛇屋の屋台で、ネオンサイン輝く川岸の繁華街路地のセットは映画黄金時代の賜物だよなあ。ここで宝田は令子に愛の告白をしてロマンチックな劇伴ごと、うっとりするような場面なんだけど、不器用な二人、口喧嘩別れしてしまうんだよね。

でもね、令子の宝田を慕う純情はホンモノで、北あけみがセクシー衣装で踊っていたら負けじとセクシー衣装でクネクネ踊ったし、精力着けようと宝田が食ってる蛇料理を無理して喰ってゲロゲロ吐いて、そんな健気な令子の気持ちに段々と宝田は惹かれていくんだよね。

宝田は大事なボクシングの世界タイトルマッチもそっちのけで、俺は令子と一緒になりたい。そのために三千代、光子、あけみの3人とどうやって別れたら良いのか?を思い悩むようになる。でもね、手切れ金の祝儀袋を渡すと三者三様、リアクションが違っていてそれが面白いのよね。

まず、あけみが一番ダイレクトで「あなた、私の身体を弄んだのね!」女性用下着を着けたw宝田をタコ殴り。光子の場合、彼女にベタ惚れする中谷の熱意にほだされ心変わり。三千代はスポンサーだった上田爺さんが亡くなって、飛行機に宝田を乗せて大阪まで操縦レッツゴーは笑った。

で、グルングルン機体が回転してゲロゲロ吐いてる宝田を見て、三千代は別れようと吹っ切れたwボクサーのくせに女性には殴られてばかりかよ、宝田(笑)まあ、令子のために3人の女性にグッドバイした後は、後楽園ホール?でペロスとの世界タイトルを賭けたビッグマッチ!

まさかボクシングのシーンにこんな長尺取るなんて!と思ったけど、やっぱり腰砕けw試合中に令子が会場に乗り込んできてセコンドに上がり込み(フツーならつまみ出されるだろw)ノックアウト寸前だった宝田が急に蘇生してぺロスはリング外まで吹っ飛ばされますからね、こりゃw

世界チャンピオンになった宝田を令子が祝福して、蛇料理屋で今度は宝田の方が泥酔。そのまま抱擁からキスみたいな流れの中で、光子にベタ惚れしてる中谷が「ここがチャンス!」とばかりに卑怯にも宝田をぶちのめして光子と颯爽と去っていく、まあ宝田にはこれでイイんだけどね。

気を失った宝田に今度は令子が口移しで水を飲ませて接吻泥棒。ここでまた、ヌッと石原慎太郎先生がやって来て、令子と抱き合ってる宝田に「俺さあ、お前のためにもっとイイ女用意するからよう」とか言って宝田も鼻の下伸ばしてんじゃねーぞ、チャンチャン!粋な終わり方。

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