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瀬々敬久「現代群盗伝」

新宿ケイズシネマで、瀬々敬久「現代群盗伝」 (成人映画題「未亡人 喪服の悶え」)

明治の世に実際にあった秩父困民党事件を題材に、当時の農民一揆の英雄の三蔵、平成に入りダム建設汚職を暴くひ孫の六蔵、そして新借金党と共に秩父の村に乗り込んだ生臭坊主の永俊、一人三役で八面六臂に躍動する佐野和宏から目が離せない、「貧富格差是正!汚職撲滅!環境破壊阻止!」を声高に叫ぶ、社会派ピンクというよりも、世直し寓話として優れた傑作。

この世において、正義とはいったい何なのか?秩父の美しい山村を舞台に、権力の不正と横暴に抵抗する市井の人々と、胡散臭い生臭坊主、インチキ神主、ひたすらエロい喪服妻、女に目覚める前の可憐な思春期少女を舞台劇チックに描いた、一見すると分かりやすそうに見えて、実はテーマは奥深い、観れば観る程に味わい深い作品。

あまりにピンク映画的じゃないので(笑)先にロマンポルノ的に注釈を入れると、これは葉月蛍のピンク映画デビュー作で、まるで少年のような少女を瑞々しく好演。エロい喪服妻を演じる石原ゆりと、女優は二人しか登場しないが、ギャップが明快で、濡れ場も十分に楽しめる。

葉月蛍の配役は「おら、男になりてえ!」と叫ぶ勝ち気な女の子。菊とギロチンのヒロインのような、ハダカになってなお、少年的な面影を残す、あどけない顔立ちに発育途上の肢体。本人は「こんなハダカを見せていいのかしら?」と思ったそうだが、むしろ私はドストライクw

時代が90年代なのに、葉月蛍は貧しそうな着物を着てるし、アイパッチした大和屋竺みたいな伊藤猛は出てくるし「これ、いつの時代の設定だよ!」と思ってしまいますが、思いっきり平成です(笑)ファンタジックに過去と現在が交錯する、目くるめくようなゲリラ大活劇です。

テーマは、秩父の農民たちが困窮して金がない、借金が払えないので棒引きして欲しい、じゃないと、もう農民一揆を起こすしかない!という切羽詰まった状況と、知事が建設大臣に裏金を作って献金、それを六蔵が盗み出し逃走、不正リークに走る、二つの物語が並走する。

明治時代に秩父借金党を組織し、権力と戦った郷土の英雄・三蔵。そして、英雄の血はやはり受け継がれるのであろう、ダム建設の闇献金を盗み出し不正を暴こうとする六蔵は、三蔵の子孫。でもここに、六蔵にも三蔵にもそっくりな、性欲と金銭欲にまみれた生臭坊主が登場するのだw

本筋は、秩父民に神と崇められてしまったエロ坊主の永俊が、ダム利権ヤクザのアイパッチ伊藤猛と対決するまでの緊張感溢れる、善と悪の対立を描いているように見えて、どうにも秩父の地元の人は坊主もヤクザも農民も、結局は同じように権力に抑圧された犠牲者のような、リアリティに溢れた描き出し方をしている。

先に、葉月蛍の濡れ場について解説すると(←いきなりかよw)銀幕デビューはレズシーンからです!男勝りな蛍ちゃんは、貞淑な喪服妻のゆりを「ゆりネエ」と慕っていて、自ら積極的にゆりの喪服を脱がせ、おっぱいを舐めさせ、オラオラと積極的にゆりの熟した身体を貪る。

でも、蛍ちゃんの最大の見せ場、それは山中の美しい湖畔の前で、伊藤に宮沢賢治「雨ニモマケズ」の一節を口ずさまれながら、おっぱいをむんずとワシ掴みで揉まれ、バックからガンガン犯される。まだ女子高生みたいに可憐な蛍ちゃん可哀そうだよ、オレは伊藤猛に激しい殺意が湧きました!

ピンク映画の要請とは言え、蛍ちゃんが伊藤にレイプされたことをきっかけに、湖に全裸で入水「おらあ、強くなりてええ!男になりてええ!」この展開は、ちょっと強引すぎ(笑)蛍ちゃんここで物語からいったんフェードアウト。清楚な少女が濃厚な濡れ場を2回堪能させ、ラストまではお役御免w

映画を観進めて行くうちに、段々分かって来るんだけど「ゆりって言う喪服妻、ただもんじゃねえw」夫の六蔵は死んだはず。でも夫に瓜二つの永俊とともに、現代の困民党である新借金党蜂起のドラマチックな展開の中、永俊に抱かれw上京を決意した、ゆりの本当の目的はそこではなくw六蔵の世直し工作を後方支援する、スパイ妻だったのだ!

ということで(←ということで、じゃねーよw)この作品、個性溢れる登場人物が秩父から上京するロードムービーの様相を呈する中で、物語は個々の思惑が複雑に絡み合い、観客としてはスイスイと観られるのに、観終わってみれば「何だっけ?」実は狐につままれる、凄く摩訶不思議なテイスト。

笑っちゃったのは、エロ坊主の佐野和宏が、喪服妻のゆりとガンガン対面座位でFUCKする生臭坊主感を出した後、まるで過激派指名手配犯のような佐野和宏が粗末な身なりで出て来て「あんた!」と抱き着くゆりとガンガン対面座位でFUCK。体位が見事に全く同じじゃねーか(笑)

秩父の農民が神様のようにお慕い申し上げる凛々しい佐野和宏は、もう遺影の中の人で、秩父の農民が救世主と崇める佐野和宏はどこからどうみても胡散臭い色欲まみれの坊主で、ダム建設利権の汚職を追う佐野和宏は質素倹約な貧しき逃亡者。佐野の三役三変化を見るだけでも、見ごたえ十分w

佐野に輪をかけてド迫力なのが、外波山文明建設大臣の命を受け、六蔵の奪った裏金と六蔵の命を狙うアイパッチヤクザの伊藤猛。ステッキを手に「雨二モマケズ」を暗唱しながら、インチキ神主(小林節彦)を容赦なくボコボコに蹴り上げ、可憐な葉月蛍をレイプする、卑劣漢。

前半から中盤にかけては、田舎の山道やら湖畔やら小川やら滝やら、長閑な風景を数人で東京に向かって行軍するだけの、ちょっと単調に陥りがちな所、終盤に入って一気にスパークする物語の主役は、やはり佐野和宏、そして伊藤猛。ここからはもはやピンクではない、ヤクザ任侠映画張りのド迫力。

ゆりは、六蔵が奪った建設大臣へのダム建設誘致用秘密献金を山中に隠し、その金を軍資金として東京で待つ六蔵に渡しに行く。永俊は上京し、初めて自分に瓜二つの六蔵に出会う。二人は姿形こそ全く同じなれど、中身は全く違う、清廉潔癖で崇高な人間と、欲にまみれた生臭坊主との対比。

六蔵はゆりと再会し、金を受け取るが、海に捨ててしまう「こんな金は要らねえ!」慌てて海に飛び込んでその金を拾おうとする新借金党のエセ活動家小林神主は単なる金の亡者で、最初から農民一揆など考えていなかった。泳げず溺れ死にそうな小林を、永俊は呆れて見捨てたw

ラブラブの六蔵とゆりは、潜伏先のアパートで愛を交わし、夜空に花火が上がる。翌日、北海道へ高飛びした二人の姿は既に無く、永俊を六蔵と勘違いしたまま追い詰めたアイパッチ伊藤は、外波山大臣の目の前でニセ六蔵に止めを刺そうとするが永俊は思った以上に強かった。

本作で最も緊張感が走るのは、佐野和宏が伊藤猛を刺殺する場面、即ち、アイパッチヤクザが生臭坊主に殺される瞬間の、とんでもないど迫力映像で、外波山大臣は恐怖のあまり小便ちびりそうになって、車を降りて逃げ出す。生臭坊主だったはずの永俊は鬼神となり、外波山を全速力で追い詰めた。

ここで登場するのが、六蔵とゆりがロマンチックに二人でボロアパートから花火大会で見た、幻のようにステキな夜の続きであろう、花火用の木砲(竹輪と縄で固定されたもの)に車輪(荷車)をつけた大八車。先頭で引いているのは、なんと瀬々監督ご本人じゃないですか(笑)佐野和宏演じる永俊と、瀬々監督との、狂気で逝っちゃってるような表情のオーバーラップ!

結局、秩父の山から新借金党として蜂起したはずの、神主の小林も、喪服妻のゆりも、少年のような葉月蛍も、幼馴染の吉田武美も、建設ヤクザの伊藤猛も配下のいぐち武士も、ムシロ旗で「世直しじゃー」テロには辿り着けなかった。一番ヤル気の無かったはずの生臭坊主永俊が、最後は皆の思いを背負って戦うのみ、であった・・・

冒頭、秩父の山村で明治時代に発生した「秩父事件伝説」農民一揆の英雄と称えられる三蔵(佐野和宏、遺影のみw)そのひ孫にあたる六蔵(佐野和宏)が死に、妻(石原ゆり)が喪服姿で仏壇の前で六蔵の喪に服している。そして、環境破壊するダム建設のゼネコンが村に押し寄せて来る。

ダム建設はゼネコンの仕事。ヤクザの伊藤猛が、欲求不満の喪服妻ゆりを仏壇の前で犯している。伊藤の目的はただ一つ、死んだ六蔵がかっぱらった、知事から建設大臣に渡す予定だった秘密の政治献金を取り戻すこと。そのため、ダンディな伊藤はゆりのことを誘惑し、抱いたのだ。それにしても喪服妻、エロいなあ(*'▽')

ここに、「新借金党」を名乗る、神主姿の怪しげな男(小林節彦)が村にやって来て、村人相手にアジる「貧しい村には、もう米も無い。借金も返せない。政府に棒引きを要求する!」明治時代に借金党が起こした農民一揆を平成の世でもう一度再現しようとするインチキ神主にくっついて、胡散臭い友人の物臭坊主・永俊(佐野和宏)も村にやって来た。

ところが村人は、永俊が死んだ六蔵と瓜二つだったことから大騒ぎ「こりゃあ、世直しの救世主が村にやって来たにちげえねえ!」永俊は全くやる気がないのにw反ゼネコンの旗頭に祭り上げられた。神社に集まる村人たち。その中に「世直し」と書かれたムシロ旗を掲げる少女(葉月蛍)と、恐る恐る影からその様子を見つめるヘルメットにゼネコンの制服を着た青年(吉田武美)

蛍と吉田は幼馴染だったが、生活のため、吉田はゼネコンの手先となってスパイ活動し、蛍はそんな吉田を軽蔑していた。吉田の親玉が、眼にアイパッチをした粗暴な男(伊藤猛)で、部下にスキンヘッドのプロレスラーのような部下(いぐち武士)を連れていた。

三蔵は明治時代、農民一揆の活動資金として大金を山に隠した、という伝説があった。金に目がくらんだ小林は、渡りに船とばかり永俊をリーダーに祭り上げ、小林、蛍、ゆりから成る「新借金党・東京に抗議活動に行き隊」を結成。永俊は永俊なりに、下心があった。

農民たちを神社に集め、激しい反政府、農民一揆扇動アジ演説を繰り返す小林神主。ここにゼネコンヤクザの伊藤が乗り込み、小林を足蹴にすると「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪にも 夏の暑さにも負けぬ 丈夫な体を持ち 欲は無く 決しておごらず」 とお経のように唱えながら、暴行を続けた。

永俊は金も欲しいが、それよりもエロい喪服妻のゆりの身体が欲しい(笑)ゆりは性欲を持て余しているのを見透かされるように、蛍に強引に身体を愛撫され、永俊も「東京に連れてってやる」「信じていいのね」メロドラマのような展開を挟み、対面座位で坊主と喪服妻が強烈に腰をピストンする罰当たりな(笑)FUCKで結ばれた。

永俊リーダーを先頭に、秩父から山を下り、抗議活動拠点である国会議事堂前に行軍を開始する「新借金党」でも、メンバー4人しかいないんだけど(笑)伊藤は永俊を六蔵と勘違いし、ここから「新借金党」vs「ゼネコンヤクザ」の仁義なき戦いが始まる!でも、永俊はホントは全然関係ないんだよなあw

まず、いぐちが新借金党と揉み合いになり、頭を打って即死(笑)遺体の前に観音様の仏像があり「ヤクザだって犠牲者」そして、新借金党の隊列をこっそり付け回す一人の男の影。吉田だ!彼は伊藤に命令されたわけでもなく、かといって新借金党に合流するでもなく、フラフラと後を付け回す。

ゆりが山中で夢中に穴を掘っている。そこには大金が入ったカバンが隠されていた。三蔵が残したお宝だったのか?いや、これは六蔵が奪った政治献金の札束で、アイパッチ伊藤は外波山建設大臣の命で、なんとか秘密裏にこの大金を回収しなければならない。伊藤は、隊列の中にいる、ムシロ旗を掲げる蛍を襲う。

美しい山中の湖畔、でも大木に押さえつけられた可憐な蛍は上半身を脱がされ、伊藤にムギュっとおっぱいを揉みしだかれ、そしてバックから激しく犯された。伊藤は腰をピストンしながら、お経のように唱え続けた「北に喧嘩や訴訟があれば つまらないから止めろと言い 日取りの時は涙を流し 寒さの夏はおろおろ歩き みんなにでくの坊と呼ばれ 褒められもせず 苦にもされず そういう者に 私はなりたい」

コトが済み、アイパッチ伊藤が立ち去ると、蛍は涙目になって、美しい湖畔に、全裸のまま入水した「おら、強くなりてええ!男になりてええ!」魂の叫びだった。蛍は弱い自分自身が情けなくなるとともに、もっと強くなりたかった。どんどん湖の中に入った蛍の姿は、やがて画面から見切れた。

さて、これで隊列は永俊、小林、ゆりの三人だけになった。途中、急流の川があった。小林は「ここがチャンス!」とばかり「金とゆりは俺がしっかり守ってやるからよ!」と永俊を置き去りにする(笑)そのまま、舞台は現代の東京へ移り、というかこれまでも現代だったんだが、あまりにも山中深い行軍が続き「今、明治時代?」いや、違います、物語は初めから、ずっと平成なのです!

ゆりは小林をまくと、さっさと六蔵の待つ隠れ家のアパートへと向かった。そこには、ダム建設にまつわる知事から大臣への政治献金の存在を知り、その金を奪って逃走した六蔵の姿。まるで指名手配犯のような貧しい身なり。喪服姿のゆりは「あんた!」と泣きながら六蔵に縋り付き、愛する夫婦が感動の再会。

六蔵とゆりはその晩、夜空にキレイな花火が上がるのを見た。そして翌日、公園で服を乾かしている浮浪者のような小林に、ようやく遅れて東京に着いた永俊が「この野郎!」とマジ切れ(←当たり前だw)ここに、六蔵とゆりが現れ、そして六蔵を追う伊藤も、ついにホンモノの六蔵を見つけ出した。

見つめ合う六蔵と永俊「お前、ホントに俺にそっくりだなw」六蔵は「こんな金なんか要らねえんだよ」大金が入ったバッグを海に放り込んだ。六蔵の目的は汚職のリークと環境破壊の防止だった。金なんか関係ない。でも、インチキ神主の小林には大問題、泳げないくせに大金を追いかけて海に飛び込み、溺れた(笑)

気が付くと、六蔵とゆりはもういなかった。外波山大臣の公用車が横付けされている。依頼主の目の前でお前を仕留めてやる。アイパッチ伊藤は、ニセ六蔵(笑)の永俊を仕留めようとしたが、瞬間、永俊の顔が鬼神に変わる「お前は菩薩か?悪魔か?」短刀を抜いて伊藤の胸をグサリ。絶命する伊藤の姿を見て、一目散に逃げだす外波山。

六蔵とゆりが夜空に観た花火、それはムシロ旗に「世直しじゃー!」と書かれた兵隊たちを先導し、花火用の木砲(竹輪と縄で固定されたもの)に車輪(荷車)をつけた大八車を引いて全速力で書ける、瀬々敬久監督の姿に変わった。もう誰も俺たちを止められないぜ!世直しじゃー!汚職大臣、環境を破壊する卑劣な外道は叩き斬ってやる!

秩父ののどかで平和な風景。蛍は吉田と結婚し、農業を営んで幸せに暮らしている。ゆりから手紙が届いた「私たちは北海道でなんとか暮らしています。夏になったら秩父に帰りたい」手紙を読む蛍のお腹は大きくなっていた。「悪い奴の種でも、私の腹ん中で、きっと強い子になる!」

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