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佐藤寿保「波動~WAVE~」

新宿ケイズシネマで、佐藤寿保「波動~WAVE~」(成人映画公開題「馬小舎の令嬢」) 脚本は夢野史郎。

実家が牧場で愛馬リュウセイの世話する少女(雪之丞)が海辺で出会う静寂音を録りたい音響技師(杉浦峰夫)、助手を引き連れ砂浜でマネキンアートを試みる芸術家(浅井理恵)そして競馬サークルに熱中する女子大生(水鳥川彩&仲原美樹)心無き部外者の闖入で粉々となった馬の魂込めた鏡の破片が少女を殺人鬼に変えた。馬モチーフの幻想映像美が狂気の問題作。

なんだかねえ、また凄い映画を観ちゃいましたよw寿保監督と言えばピンク映画史上で空前の大ヒット、あの「寅さん」をも動員数で凌駕したという伝説の「馬と女と犬」があって、これは第二弾ということなんだけど、意外に話は纏まっていてそれほどシュールな感じもしない。

ただね、「馬と女と犬」では寿保監督が九十九里で自主映画「明日なき欲望」撮った時に白日夢に登場した海辺をポッカポッカ歩く馬という吉兆なのか不幸なのか何かの前触れとしか思えないお告げみたいなものが本作でも引き続きモチーフにはなっていて、少女と一体なんだよね。

寂しい者は夢に馬を見る、ということなんだろう、馬の世話する少女の雪之丞を中心に、音響研究家の杉浦峰夫もマネキンアーティストの浅井理恵も彼女に共鳴していく。雪之丞の特技は馬の声が分かること。でも彼女自身で種明かしするんだけどα波とβ波を聞き分けることなんだ。

馬のいななきは、雪之丞の脳内でα波とβ波に変換されそれはバイオリズムの曲線で観客にも提示される。音響研究家の杉浦は音を拾うことに関してはプロだから機器を使って音を分析して馬の声をどう拾って来たのか?雪之丞は分析することでそれを意のままに操ろうとするのよね。

馬をテーマにした映画って、フツーは牧場とか草原とかアルプスのハイジみたいな空間を想像するじゃないですか。でも寿保ワールドは海や砂浜とのセットなんだよね。少女が海辺で愛馬の手綱を引いているの図、これをビシッとキメることで、幻想的な中にもブレない軸を持たせる。

まあストーリーははっきり言って訳ワカメです(笑)というか、解釈のしようによって自分なりのストーリーを脳内で構築できるという意味においては「馬と女と犬」より具体性があるし、その分、登場人物のキャラがはっきりと色付けされてる分、そこの解釈が分かれると思うの。

ということで、登場人物を一人ずつ紹介。まずヒロインの雪之丞は池島ゆたか「ハードレズ 本番(生)奴隷」でも自宅で純粋培養されて人身売買されるというかなりエキセントリックな役どころだったけど、なんか狂気が孕んでるような娘なんだよね。見開いた大きな眼が怖いのw

浅井理恵はマネキンアーティストというぶっ飛んだ役柄で、助手に小林節彦と今泉浩一を携えている。マネキンアートとは砂浜にマネキンを埋めてそれを遠方からオブジェのように眺める。実際にありそうな現代芸術なんだけど、いちいちホントの海辺でやってのけるのが狂気(笑)

水鳥川彩と仲原未樹は女子大生で競馬サークルに入っていて伝説のヒーロー「ホクトスター」の種馬である「リュウセイ」を追いかけて海辺にやって来た。ミーハーな女達で寿保ワールドでは大体この手の女性は残虐レイプされてゴミのように捨てられるけど、まあ予想は当たりですw

そして男優部の主演で音響研究家の杉浦峰夫。彼が演技力のおぼつかない雪之丞に替わって映画をリードする。彼が録りたい音って究極中の究極で、死ぬ間際にしか聴かれないような静寂音が欲しい、ある意味、死を嗜好してるんだよね。で、馬を愛する少女の雪之丞に親近感持つ。

小林節彦と今泉浩一についてはあまり深く考えなくても良い、単なる濡れ場要員です(笑)マネキンアーティスト理恵の助手にしてはアートもへったくれも無くて、キャピキャピ女子大生とヤリたい。それには「リュウセイ」の居場所が知りたい。で、雪之丞と杉浦に近づくんだから。

隠しテーマとしては、競走馬になれない心優しすぎる馬だったのね、リュウセイってこと。理恵は小林とキャンピングカーでヤリながら夜空を見上げて「星がキレイすぎて怖い」というけど、それってまさに「リュウセイ」が流星としてピュアな心を持つ人だけを惹きつける力があるの。

寿保ワールドの成り行きとして少女の魂は決して救われることなく、馬の魂を破壊された怒りはその破片を持って夜の大都会に飛び出して殺戮行為に及んじゃうの。美しいものを破壊する人間の愚行のようなものを糾弾してると思うのよね。俗物みんな死んでしまえ!というラジカル。

冒頭、セーラー服姿の雪之丞が遮眼帯付けた男にガンガンレイプされ、それを愛馬リュウセイがフル勃起しながら哀し気な瞳で見つめてる。その残虐映像はやがて砂の嵐に替わってタイトルイン。時は移ろい、実家を出てリュウセイと二人きりで暮らす雪之丞に音響研究家の杉浦が偶然の出会い。

杉浦は究極の静寂音を求めて旅するちょっとアレな人で(笑)馬の声が分かるという雪之丞は杉浦が使ってる機器で馬の鳴き声をα波、β波でバイオリズムで分析する。そんな二人の眼の前にやって来た最初の闖入者がマネキンアーティストの理恵とその助手の小林&今泉のトリオ。

雪之丞には二つの宝物がある。一つは馬の各部位、眼やしっぽやチンコなどをホルマリン漬け。もう一つは馬の勃起し切った巨大チンコのディルドでオナニー専用。雪之丞は部屋で一人、遮眼帯して馬の巨大チンコをアソコに突っ込み裸身を血まみれになって悶える。根っからの馬娘なのだw

キャンピングカーにマネキンをごっそり積んで海辺にやって来た理恵は夜になると小林にワッセワッセ抱かれる。そして翌朝に砂浜をキャンバスに見立ててマネキンを埋めていく。その作業中に「あのー」尻軽そうなギャル二人が種馬のリュウセイを追ってこの浜に来たのだという。

小林と今泉は「そうか!」(そうか、じゃねーよw)あの少女が連れてた馬がリュウセイだ、そうに違いない!居場所を探るが行動を共にしている杉浦は冷淡なこと、この上なし(笑)勝手に小林と今泉はリュウセイ探しに没頭、雪之丞が留守中の小屋でついにリュウセイを発見!

リュウセイの種、即ち精液は高く売れるでー!打算交じりの小林&今泉と彩&美樹は馬のフグリをシゴいたり小林がマッサージ器まで投入してこれからというところで雪之丞が「何してんの!」追い散らし、理恵は「あの娘、ホントにリュウセイのこと愛してるのね」すっかり感心。

リュウセイを挟んですっかり心身一体となった雪之丞と理恵と杉浦のトリオ。リュウセイに乗りかかるように裸身を投げだし杉浦のクン二を受ける理恵と、馬の巨大チンコをアソコに当てて渾身オナニーする雪之丞を一枚のフレームに収めた狂乱の変則馬姦図はなかなかアートだねw

雪之丞は馬の鳴き声をα波とβ波でバイオリズム化し恨み骨髄の小林と今泉をレイパーへと洗脳、海辺に彩と美樹を呼び出すと着衣のままバックから獣のように犯し、そのまま棒で頭を殴って撲殺。マネキンオブジェと化した彩と美樹の死体はそのまま砂浜に埋められアートに一体化。

小林と今泉は雪之丞が手に持つ箱の存在を知り必死で追い始める。でも理恵は雪之丞に招待され馬込み4Pを体験したことで在りかが分かった。中でも大事なのは馬の魂がそのまま封じ込められている、雪之丞が馬と一緒に出掛ける度にその姿を映したという大事な鏡なのであった。

理恵の先導を得て雪之丞の大事な大事なアジトに乱入する小林と今泉は、雪之丞を押し倒すとレイプを開始。ここで止めに入った杉浦が見たもの。馬の怒りがフル勃起で爆発して入魂の鏡が粉々に割れ、瞬時に目の前に広がったのは荒れ狂う夜の海であり、それは静寂とは程遠いものであった。

フル勃起した馬のチンコが突き抜けて、入魂の鏡が割れてしまい動転した雪之丞は破片を手に取ると、理恵、小林、今泉の順番にグサリグサリと一人ずつ殺した。夜のマネキンオブジェを背景に、全裸の雪之丞がフラリとスクリーンを舞い、宵闇に消えた。

理恵が東京から知り合いを招いてお披露目するはずのマネキンアートは思わぬ形で完成する。ブルーシートを外すと、硬直した小林の、今泉の、彩の、美樹の、そして理恵のマネキンがずらりと並んでいる。このマネキンアートを完成させた張本人、それは殺人鬼となった雪之丞。

都会の喧騒の中、雪之丞は杉浦と再会「静寂の音なんて無かった・・・」こと切れる杉浦を目の前に、雪之丞は馬の入魂の鏡の破片を手に、通りがかった通行人を一人ずつ、切り裂いて死体の山を築いていく。光と怒りの交錯する雪之丞主観映像の特撮が、馬を失った少女の寂しさを体現していて、哀しい。

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