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武田一成「ひと夏の秘密」

シネロマン池袋で、武田一成「ひと夏の秘密」 脚本は田中陽造。

屠殺場のある海沿いの村で愛娘を殺された警官(江角英明)の養女(原悦子)が犯されて家出。でも悦子は養父の江角が危篤で帰郷して幼馴染みたちの語る過去から判明する、事故の真相は牛の角一本で人生を狂わされた呪われた因縁を、牛の血を流した赤く染まる海に想う。純文学エロスの秀作。

当時、人気絶頂だった悦子大明神を崇めるアイドル映画のような印象を持たせておいて実は凄く暗い。いや、山口百恵だって三浦友和との純愛を文芸調で描いた暗い映画に出てたじゃないですか。どこか影があるのよね悦子って。目の周りにあるクマが翳りを感じさせるのかもね。

本作が公開されたのは1979年だからもう、バブルに向かって一直線の80年代の入り口に差し掛かっているのだけど、原悦子には70年代のまだ全共闘世代やシラケ世代の頃のような影があり、その後に活躍する二代目ロマンポルノアイドルの寺島まゆみの天真爛漫さとは対照的だ。

ともかく、田中陽造のホンと森勝の撮影が素晴らしい。舞台は牛の屠殺で生計を立てていた田舎の村に設定してるから恐らく被差別部落なのだろう。これを取り締まる鬼のような警官は、被差別部落の弱い民を虐める権力者であり、彼の娘が殺されてしまうのも必然だったのかもしれない。

本作のために書き下ろされたオリジナル脚本として世界観の構築は寸分のスキも無く、神話めいたストーリーにはキモとなる牛の角。これは屠殺された牛の怒りであり、屠殺場で働く差別される人々の怒りでもある。それがラストで海を真っ赤に染めていく怨念のように広がるのだ。

ヒロインの原悦子は江角英明演じる鬼畜警官に11歳で亡き愛娘の身代わりとして養子縁組に入り、高校2年の時にレイプされ家出してそれから6年、料亭の女中をしたり辛酸を舐めながら生きて来て、それが江角の危篤の報を受け悲惨な思い出しかない被差別部落の村に帰るのだ。

ところが現在時制では屠殺場は既に閉鎖され、牛の骨やら角やらは地下に埋設され今では観光客が訪れる海水浴場。二束三文で買い叩いた業者がリゾートマンション建て、曰く因縁の土地だから基本は迷惑施設にしか利用できない不浄の土地として病院が建設されたのは非常にリアル。

不幸を一身に背負ったような業に満ちた半生を送る悦子と好対照なのが、自殺した夫の死体を保険金目当てで元暴走族のチンピラと海をモーターボートで探し続ける鬼嫁の渡辺とく子。悦子の浮世離れした可憐さと強いギャップを感じる金の亡者ぶりに一筋縄じゃいかない人間模様。

映画のキーマンになるのは鬼警官の江角英明が辞職した後に開業した射的屋を手伝っている田山涼成。彼もまた業を背負っていてそれは淫行。教師時代に教え子に熱帯魚をあげる代わりにキス、おっぱい揉み、そして一線を超え教師をクビになった後も教え子と同棲してたのね。

登場人物はヒロインの悦子と寝た切り養父の江角。射的屋を手伝う田山と、保険金目当てで夫の遺体を探すとく子にモーターボートを貸して一緒に捜索する錆堂連。それに田山の淫行相手でこれがデビュー作の萩原友絵まで、壮大なドラマの割に最低限のほぼ6人で展開する物語。

ロマンポルノ的に悦子でヌキ所はちゃんと2つある(爆)後半は物語がシリアスにサスペンスタッチで加速していくので、オナネタになりそうなのは前半でサクッと消化してしまうのがバランスの良さを感じるwつまり前半で射精して仙人になって後半のドラマに酔いしれましょうよ。

悦子の忌まわしい回想は同時にエロ目的で観ると堪んねえ場面で、セーラー服姿の女子高生悦子が暑い夏にスカートを捲ってパタパタしてると亡き娘の命日で気が立っている江角が「大人になりやがって」無理やり悦子に乗っかりこめかみに拳銃を向けて脅して鬼畜レイプの瞬間!

もう一つは悦子が田山に料亭で女中自体の芸「美女が逆立ち」を披露。スカートが捲れてパンティが丸見えになって欲情した田山が悦子のプリケツにむしゃぶりつき、全裸になって正常位でガンガン根元までチンコをねじ込んで杭打ちピストンがエロい。ここでヌケなきゃウソだよ。

主題歌は、劇中の音楽を担当する淡海悟郎が作曲した萩原恵「海・アゲイン」開巻すぐ悦子が帰郷する汽車に1回、ラストで悦子が牛の血に染まる海を見つめて1回、重たいシチュエーションに不似合いなほどにアイドル歌謡していて本作がシリアスなドラマだけどアイドル映画と実感w

物語の進行はサスペンスタッチで、江角警官の当時11歳だった娘が牛の角で胸を刺されて死んでいた。その悔恨を江角は背負って生きるが、同時に彼は屠殺場で働く人々を軽蔑し鬼のような取り締まり、冤罪まででっち上げて相当な恨みを買っていた。その事件の真相が暴かれる。

物語の途中で悦子は「帰って来なけりゃ良かった」後悔するのよね。呪われた村で呪われた自らの出自。そして身体を重ね合った田山も教え子に呪いをかけられ出戻って来た。幾重もの呪いに身動きが取れない程の怨念が渦巻く終盤は眩暈がするほど観客に刺すような痛みを与える。

でもね、被差別部落だった土地が開発されてよそ者がどんどん入って来て同時に村の人も都会に出て血が交わり、それと機を一にするように被差別部落の象徴だった屠殺場は閉鎖され何事も無かったように海水浴場や病院やリゾートマンション。でもね、忌まわしい記憶は残るの。

その怨念とは屠殺場の床に蓄えられて来た屠殺された牛の流した血であり、配管を通して海に排出された血は真っ青な海を赤く染め、小学校6年生の時に悦子はその血に染まった海を見て初めての生理を迎えた。悦子と田山はじっと海を見つめ過去を忘れてはならじと目に焼き付ける。

冒頭、悦子が汽車で家出した勿来の実家に向かっている。手には「父危篤」の電報。養父の江角が経営する射的場はバイトの田山が仕切っていて、悦子は勝手にオモチャの銃で景品を手際よく倒して田山びっくり!二人の楽しい出会いは、悦子の江角に対する忌まわしい記憶が蘇ってしまう。

高校2年生の時、私セーラー服だった。暑い夏の日、江角は私に襲い掛かり銃で脅して無理やり処女を奪ったの。江角の実の娘は11歳で亡くなり、11歳で養女に入った私は江角の身代わりで、成熟した私の体に欲情をこらえきれなくなった江角の鬼畜ぶりが許せなくて、私は家出した。

悦子は江角の見舞いに訪れるがそっけない態度で口喧嘩になってしまう。帰って来なきゃよかったと愚痴る悦子は田山に「美女の逆立ち」芸を見せて欲情した田山はプリケツ抱えてクン二してそのまま一発。激しい杭打ちピストンFUCKを最後に自己嫌悪に陥った田山は帰京した。

悦子の幼馴染の錆堂が射的屋に顔を出し「お前、田山とヤっただろ」そして田山は教え子に手を出して教師をクビになった淫行野郎だと正体を明かす。錆堂はチンピラで元暴走族。以前は屠殺場で働いていて江角に濡れ衣で勾留された過去。で、今はとく子という金づるを掴んでる。

モーターボートの上で真昼間から青空の下で錆堂と全裸で激しくFUCKするとく子は超淫乱。彼女の夫は入水自殺したのだが保険金を1億円も入っていて死体を探し出さないと保険金が下りない。錆堂に謝礼として10%の1千万円を餌にモーターボートでせっせと死体探ししているのだ。

田山が帰京してしまったと知り、一人寝の悦子を急襲する錆堂。浴衣姿の悦子の胸チラ太ももチラがエロすぎて、思わず押し倒してレイプしようとする錆堂に激しく抵抗する悦子。ここに田山が戻って来て錆堂は「お前がいるから俺は三枚目なんだよ」マジでぶん殴ってノックアウト。

そんな田山、帰京して何をしていたかと言えば自宅アパートに残して来た同棲中の教え子の友絵と金魚水槽越しにFUCK。でもね、好きな人が出来たと正直にカミングアウトして悦子の元へ戻る田山に激しい嫉妬した友絵。田山に電話して「呪ってやる!」とんでも作戦に出たの。

友絵のターゲットは寝たきりの江角。友絵は単身、江角の入院する病院に乗り込む。ところが白いブラウスにスカートに帽子でお嬢様ファッションをキメた友絵の姿を窓から見た江角は亡き愛娘と誤認。友絵が病室に入って来るなり愛娘の名前を叫ぶが別人と分かりガッカリ。

でも友絵の言葉には妙な説得力があった。田山から聞いていた、江角の娘を牛の角で刺し殺したのは田山です。告げ口し、同時に江角にガンで余命三ヶ月とホントのこと教えちゃってw江角は田山憎し!空気銃で田山を仕留めるべく、現役時代の警察制服まで引っ張り出して重装備。

その頃、錆堂はようやく死体を探し出してとく子に報告して「よっしゃー!」これで俺は大金持ち。ベッドで仲良く眠る悦子と田山の姿を「貧乏人が!」一瞥。でもね、ショッキングなことに死体は全くの別人で振り出しに戻り、失踪届受理から3年待たないといけないかも。

錆堂はとく子が滞在するリゾートマンションの庭を掘り始める「この辺りは昔、屠殺場だったんだ。土の中には牛の骨や角がたくさん埋まってる」それを証拠としてとく子に突きつけた。そしてとく子のアソコにも突きつけるとw「中に入れて良いのよ♡」セックスの道具になった。

悦子は戻って来た田山を連れて再び江角を病院に見舞うが、田山を仕留めるべく空気銃を構える江角、「ホントにお前がやったのか?」田山、真相はお使いで屠殺場に行った少年時代に牛の角を立ててお墓に見立てて祀ったつもりが翌日、少女の胸に刺さって死んでいたという真実。

でも田山、否定せず首を縦に振った瞬間、江角の撃った空気銃の弾が左目を直撃し大量の血を流した田山はもんどり打って倒れるが江角は「娘の苦しみをお前も味わえ!」でもね、悦子は江角に本当のことを言うの。それは以前、錆堂が話してくれた江角の娘が殺された日のこと。

錆堂はバイクで江角の娘を追いかけ回し、走って逃げた娘は転んで牛の角に胸が刺さって死んだアクシデント。江角は錆堂から電話で真実を聞かされ、自分の心にも牛の角が刺さった苦しみに身悶え、亡き娘の復讐を誓ったつもりが罪のない若者たちを傷つけてしまった悔恨。

左目を失い入院中の田山に、悦子は胸をはだけておっぱいを吸わせた。母性愛溢れる菩薩のような悦子の乳首に吸い付き縋りつく田山は、退院した後も悦子と行動を共にすることに決めた。田山はもう一度海が見たいと悦子と一緒に屠殺場の前に広がる大海原を眺める高台にいる。

悦子は田山に始めて屠殺場の秘密を教えた。牛が流した大量の血を床に貯めて、それを配管で海の底に排出したの。その血が海を真っ赤に染めたのを初めて見た日。私は生理の血を流した。殺された牛の角の呪いは血と共に洗い流され、田山は片目だからこそ、初めて真実が見えた。

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