堀禎一「草叢」

上野オークラで、堀禎一「草叢」（成人映画公開題「不倫団地 かなしいイロやねん」）　脚本は尾上史高。

子供が出来ない団地妻（速水今日子）がゴミ回収の若者（吉岡睦雄）と不倫。彼女の夫（伊藤猛）は不倫相手（佐々木ユメカ）と別れて帰って来て、あろうことか不倫現場で鉢合わせ。でも、ヒロインは現実逃避から一歩進んで自分の意志で未来を切り開く、ベランダに光が射し込む人間喜劇の良作。

堀監督の商業映画デビュー２作目イコールピンク映画２作目は前作とはうって代わって青春風味を封印した大人の不倫譚に舵を切っているが根っこは同じで決断する者だけが強いのか？決断せずにうじうじ悩んで現実逃避するのもまた戦いではないか？というテーゼ。

読後感としては観客にも凄くモヤモヤが残ってしまうのよね。80年代のバブル期を経て90年代の虚無の時代を通過し。21世紀になって虚無だけじゃダメ、ポストバブルの何がしかの解決を求められる時代になったと思うの。さて、あなたはどんな決断しますか？という問いかけ。

堀監督の観念的で記号論的な演出は好き嫌いあると思う。具体的にはシネフィルにとっては古今東西の名画を引き合いに出して演出の巧みさに唸るし、映画はエンタメと思っている向きには濡れ場がエロくなくて話も重くて暗い観ててしんどい作品と感じるよなあ。

ズシリと見応えあるんだよね。しかも濡れ場は国映テイストの数合わせでは無くてきちんとシリアスなドラマに対応したカッチリと意味ある濡れ場で、エロいとかもう感じないのよ（笑）セックスしたら子供ができるとか根源的な部分に戻ってしまっているからねｗ

舞台は大阪に設定されているがロケに特に大阪らしさは皆無で（笑）それよりも登場人物のこなれた関西弁が男女のラブゲームの機微を盛り上げる。速水今日子と伊藤猛は完全にネイティブなので台詞の一言一言に味わいあるし、そもそもホン書いた尾上史高も大阪人。

いつもはテキトーに付けてるだろ、と流してしまうピンク映画のタイトルだが、本作は団地で不倫が進行し、団地妻の今日子は子供が出来なくてかなしいイロやねん、ほんまに！ってな感じ。ロマンポルノの団地妻を源流とする団地ポルノの流れを汲んでいると言える。

絶対ヒロインが速水今日子で、これは彼女の映画と言って差し支えない。なにせ５回しかない濡れ場のうち４回が彼女で相手は最初の２回が浮気相手の吉岡でその後の２回が出戻って来た夫の伊藤。それ以外は吉岡の故郷高松の幼馴染の森田りこのスゲエ短い一発のみ。

大阪が舞台の21世紀の団地妻はロマンポルノで「団地妻昼下りの情事」が公開されてから実に34年もの月日が流れ団地事情も大幅に変わった。ヒロインの今日子は工場のパート勤めの設定だが更に時が進んで令和の今なら正社員だろう。世の中の変化のスピードは速い。

ザックリ言えば伊藤猛と速水今日子の子宝に恵まれない夫婦。その浮気相手である佐々木ユメカと吉岡睦雄と４人が織りなす団地が舞台の不倫ドラマなんだけど、ストーリーは重層的で深みがある。表面的な言動からはうかがい知れない本音や苦悩がうっすら見える。

４人の中でユメカだけ面倒くさくなって不倫相手の伊藤を妊娠までしてるのに中絶してポイッと捨てるんだけど、彼女の竹を割ったような決断が一見すると優れているように見えて実は現実逃避してるんじゃない？現実にとことん向き合ってるのは他の３人なんだよね。

今日子の悩みはズバリ子供が出来ないこと。だから私はセフレの男を作ってセックスマシーンになるの・・・と割り切れる訳も無くて周囲の子供連れの奥さんとかにモヤモヤした感情を抱きながらもギリギリの所で踏みとどまって吉岡も伊藤も受け入れようとするけど。

今日子が吉岡と不倫FUCKしてる現場に伊藤が居合わせて、自分が一番偉くて一番可哀想と言いながら吉岡に今日子とのFUCKを見せつける場面で今日子は激しい違和感を持つのよね。あなただって逃げてるんじゃない！人のせいにすればいいと思う勝手な旦那に愛想尽きる。

吉岡はゴミ回収をしてる自分をゴミのような人間で周囲からいつ消えても気づかれないようなつまらない存在と自己嫌悪してるんだけど、それも今日子からしてみれば逃げてるじゃない！いい歳して拗ねてる姿がとてもカッコ悪い。今日子は吉岡にも幻滅した。

でもね、今日子は妊娠したユメカが堕ろすと言うのに「産めば」と返す、その場しのぎでしか生きて来なかったのよね。伊藤と吉岡を人のせいにして逃げて生きてると断罪するくせに自分のことは取り敢えず棚に上げる。でもね、それで別にいいじゃないの、という話。

演出面では団地に響き渡る子供の声を目一杯拾っていて、それを聞くのが今日子は苦痛だったし伊藤も吉岡もイヤなの。だからシャットアウトして聞かないようにして来たけど最後の最後、ラストにサッシを開けてベランダから子供の声を聞く今日子は一歩、成長した。

端から濡れ場を目当てに観る映画じゃないことは分かり切っているんだけど、最初の今日子がテレクラで知り合った吉岡と行きずりの一発を中出しでキメるシーンはヤクでもやってんじゃない？思う位にハイで楽しそうにセックスしててこのトーン続くのかと思うけど。

団地にゴミ回収に来た吉岡と再会した今日子が刹那的に一発どころか３発（フェラ含む）シーンがエロ的にはクライマックスで、出戻った伊藤とのFUCKには重苦しさが漂う。二人とも背負ってる業のようなものが辛すぎて、若者の吉岡の持つ軽さはむしろ救いだよねｗ

冒頭、テレクラで知り合いチャリでラブホに乗りつけた今日子にびっくりの吉岡。二人は手を繋ぎ「お兄さん、サラリーマンじゃないね」二人は冗談を言いながらセックスして絶好調、中出しをねだる今日子に吉岡は一瞬ビビるが「私、子供が出来ない身体だから」

コトが済んだ後も飲み屋で二次会盛り上がる二人だったが今日子はチャリを盗まれていて一瞬で酔いが醒めると同時に現実逃避から引き戻されて吉岡に別れを告げ、もう会わないと思っていたの。彼女は不倫相手のユメカと出て行ってしまった夫の伊藤を待つ独り身。

今日子は工場でパート勤務しているが近々人員整理があって年齢で切られるらしい。主任の下元史朗は今日子に「君には頑張って欲しい」選ばれた存在と言い含めるが、職場にはギスギスした雰囲気が漂うよね。家にいても職場にいても今日子の心は晴れないのだ。

そんな今日子が古新聞古雑誌を団地に来た業者に引き渡すと、その業者って言うのが吉岡で「まあ！」スゲエ偶然なんだけど、今日子はいても立ってもいられず吉岡を自宅に引きずり込むとフェラして抜いて、続けざまにFUCKして更に出勤までの10分でもう一発だよｗ

今日子のご近所さんで明らかに水商売風のケバい冴島奈緒がいてエラソーに子供を連れて歩いてる。会合で今日子が顔を出せば子供の面倒をみてと頼み、目を離せば激怒で、吉岡は今日子とFUCKしながら言うの「子供を産んだだけでそんなに偉そうにしてんじゃねーよ」

吉岡はピロートークしながら今日子に「俺はゴミ回収するしがないゴミみたいな奴だ」自嘲するけど、今日子は気に入らない。イイ歳して何を拗ねてんのよ、子供みたい！でもね、今日子のモヤモヤは吉岡とセフレ関係になったことで、むしろ肥大したような気がする。

そんな折、吉岡は自宅アパートに転がり込んで来た故郷の高松で幼馴染だった森田りこが「子供が死んじゃったの」居場所が無くなって大阪に出て来て、それで泊る所がなくて吉岡を頼って来て、結局は一発ヤッちゃうんだけどね。吉岡には今日子の方が大事な人。

事件が起きたのは今日子が夫の伊藤の浮気相手のユメカに呼び出され、でもユメカの方が高飛車で「伊藤に頼り切って生きてるのね」煮え切らない態度で思わず「ごめんなさい」謝る今日子に「伊藤と別れる、子供は堕ろす」宣言するユメカ。今日子は煙草を(-。-)y-゜゜゜「産めば」にユメカ「サイテー」

人員整理が済んだ工場、マメ山田社長が演説を一席ぶって、参列した下元史朗、川瀬陽太、飯島大介、本多菊次朗ら錚々たる中堅社員たちがやんやの拍手喝さいする中、今日子だけはどうにも浮かない顔で生き残った自分より今ある現状にモヤモヤを感じるのよね。

昼間に今日子がパートに出ている時だけ帰って来ていた伊藤。ある日、晩にボロボロの姿で寝ていて今日子は「あなた、どうしたの」微笑み母性に満ちた愛情で、伊藤の朽ち果てた靴下を脚で脱がせる彼女は観音菩薩、手を繋いでイイ雰囲気になって久しぶりのセックス。

伊藤は今日子と亡き父の墓参りに出かけ、母親から頭金を出してもらいマイホームを建てようと言う。でもね、急に冷たくされた吉岡は黙っちゃいない。強引に今日子を探し出して「家に上げてくれ」「夫がいるけどそれでもいいの」「３人で話し合おうじゃねーか」

吉岡は今日子の自宅前で一瞬、逡巡するも強引に上がり込んでズボンを脱いで「しゃぶれ！」フェラしてもらい押し倒して挿入しようとした所でまさかの伊藤が帰宅（笑）( ﾟДﾟ)呆然とした伊藤であったが冷静さを取り戻すと吉岡に「見てろ」今日子に襲い掛かった。

伊藤が吉岡にオーダー「お前は今日子を見るな、俺だけ見ろ」正常位で今日子に挿入し「俺が一番偉くて、一番可哀想だろ」見てられなくなった吉岡はその場を逃げ出すが気を取り直し戻って来てコトが済んだ今日子の手を引っ張り「一緒に逃げよう」に今日子キレた。

伊藤は「俺の子を勝手に殺しやがって」ユメカを恨み今日子の方がイイ女だと言うけど、そんなことどうだっていいの！私はどうせ欲求不満で頭が悪くて子供を産めない出来損ないの女。みんなでバカにしてるんでしょ。全部、人のせいにして逃げてズルいじゃないの！

伊藤が残した旅行鞄を開けると喪服が入っていた。そして気だるそうに煙草を(-。-)y-゜゜゜一服する今日子に下元主任の留守電は「出勤してないけど何かあった？」ベランダを開けると陽の光が差し込むと団地の子供の騒ぐ声が耳に入って来たけど、今日子は前向き！