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細山智明「お天気お姉さん」

細山智明「お天気お姉さん」 原作は安達哲の同タイトル漫画。

ニュース番組で日の当たらないお天気コーナーをパンチラで席巻し、一躍テレビ局を支配する存在となったお天気お姉さん(水谷ケイ)に挑む、会長の娘でパリ帰りのお天気お嬢様(白島靖代)恋愛、コメディ、アクション、ミュージカル、SFからSMまで、ありとあらゆる娯楽要素が混然一体、日本のお天気史上に残る怪作にして快作。

細山監督が80年代にピンク映画を8本撮った後、一般映画に進出というよりも、最初は人気漫画のVシネ化くらいの扱いだったのかもしれないが、劇場公開になって異例の大ヒットした、彼のフィルモグラフィ上で最も大事な作品と思う。ピンク映画という製作上のタガが色々と外れて、撮りたいように存分に撮ってるので、興味深い作品。

本作を観ていて「ああ、男女のFUCKシーンがないんだよなあ」と気づく。細山作品は女性を強くたくましく撮る傾向があって、レズやオナニーはあってもずばりセックスはあまり似合わない気がする。これは旦々舎の作品を観ても感じていたことで、女性の自立は男に抱かれるよりバイブや手マンで逝っちゃえばいい、そういう概念はあるw

出演者が豪華なのが本作で最大の特徴で、まずは何と言っても天本英世。お天気お姉さんが急遽起用されたテレビ局の会長という偉い立場にありながら、会長室の机には「お天気お姉さん」の漫画単行本が並び、特製の水谷ケイがポーズ取るパンチラジグソーパズルに熱中。ケイのパンチラが大好きで仕方がない彼が、テレビ局のラスボスとして構えるので、ケイは何をしても基本、大丈夫w

ヒロインの水谷ケイは本作が初めて名前をメジャーに売ったくらいの女優だと思うが、とにかくドハマりのハマり役で、これ出ちゃったら次が難しいんじゃないの?という程にお天気お姉さんしてる。ドスの効いた声でバンバン言いたいことマシンガントークして、オナニー、レズ、パンチラなんでもござれ、淫乱の血が騒げば気の向くままに発散して世界を支配する、そんな存在(笑)

お笑いコンビビシバシステムの住田隆が演じる僕は、水谷ケイがセクシーに好演かつ怪演するお天気お姉さんばかり目立ってるけど、本作の真の主役。DOMDOMバーガーでバイトする彼は過去を回想する。僕が高校3年生の時、屋上で愛の告白したら「あたしゃ、先にいくよ!」パンチラを見せながら空を舞ったセーラー服の少女は、気が付けばフェロモンムンムンのお天気キャスターになっていた。

ベースにあるのは、住田とケイの恋愛譚。ケイは片想いするだけでウジウジしている住田に檄を飛ばす「あたしゃ、誰にも負けたくないんだよ!生きてうちにやりたいこと全部やるんだよ!死んだら終わりなんだよ」高校3年生の時、屋上からフッと飛び降りた憧れの少女のその後。彼女はお天気お姉さんとしてお天気お嬢様の戦いに勝った後も「あたしゃ、もっともっと先をいくよ」「あんた、ついて来れるのかい」

お天気お姉さんとして宇宙空間までを支配しようと前のめりになるケイの前に立ちはだかる、ヒールの白島靖代が素晴らしい。作戦会議室の背景に輝くエッフェル塔の電飾。ケイへの恨みは小学生の時に弁当に牛乳かけられた、中学生の時に靴に画鋲入れられた屈辱。衣装合わせで「もっとパリよ、パリ!」とか「あの人が戻って来るお天気コーナーなどないわ」もうサイコー!

♬ わーたしーは おてんきー おねえーさん- はなのみやこ ぱりーからー やってきたー ♬ 

名作「櫻の園」倉田さんを演じた、あの白島靖代が演出するお天気ショーは、中村京子が大銀杏を結って化粧回しをキリリと締めて土俵入り、武富士CMぽいダンスや梅垣義明の火吹男など、見所たっぷりのサイコーのミュージカルに仕上がっているけど、もはやお天気は関係ないよなw

♬ わーたしーは おてんきー おねえーさん- じごくのそこからー かえってーきたー ♬

元祖お天気お姉さんのケイは、靖代女王様が気合を入れてプロデュースした本場パリ仕込みお天気ミュージカルに勝手に乱入、その背中には天使の羽根(笑)ケイは天空の鞭を片手に、靖代の天空の剣と相対して幻想的な森の中で最終決戦だ!

お天気お嬢様が白島靖代なら、お天気女王様1号は水谷ケイで、マゾ気質の先輩キャスター平沙織をかしづかせ奴隷にする。新番組「変態さんこんにちは」で浣腸人生20年の山本竜二登場に笑った。同時に沙織の彼氏の先輩で広告代理店で一番大きな所の大杉漣までマゾに目覚めたw

沙織は、マゾの血が沸き立つままにケイの奴隷として、風呂場で濃厚な百合の花を咲かせ、それが全国放映されてしまい見事に沈没w大杉の方は、その後もマゾの血が収まらず、女王様2号の内田春菊に激しい鞭責めに遭うのであった。でもSMのキモはここじゃない。僕のお天気お姉さんに対するSMがお天気史上最大の奇跡を起こす。

濡れ場に関しては、エロは平沙織が背負います。気が弱い沙織ちゃんは、気が強くて突っ張り合うケイと靖代の二強に挟まれてどうにも分が悪いまま、いい様に利用され、粗相しては「お仕置きだよ!」レズプレイで存分に奉仕させられる時のメイドカチューシャと裸エプロンがエロい!

水谷ケイはオナニーが大好きで、いつもオナっている(笑)トイレで、風呂場で、彼女のオナニーは気合を入れるための戦闘準備のようなもので「あたしにゃ、男はいらないよ」と宣言しているようなもので、片想いする住田君の思いは、どうにも最後までホントに届くのかどうか。ケイ自身「こんな私に好きと言ってくれたのはお前しかいない」感謝の気持ちこそあれ、男との恋愛など不要という潔さがある。

白島靖代ちゃんは脱ぎません。セクシーショットすらありません。水谷ケイと平沙織がバンバン脱いでくれるので、何となく「靖代ちゃん、こんなエロい映画に出ちゃったなんだ」感が走るが、別に彼女自身が脱いでる訳じゃなく、でもエロく感じるのはお嬢様らしく高慢にお高く止まった言葉責めの数々がSM女王様を感じさせてくれる、まあ、そういうことです(笑)

強烈な印象を残すカメオ出演者に佐川一政と伊藤清美。二人はテレビ番組のコメンテーターとしてお天気お姉さんブームを「世間がこういうヒロインを待ち望んでたんですよ」と思いっきり持ち上げておいて、いざケイが失踪すると「完全無敵と思っていたのに残念です」とか思いっきり手のひら返ししちゃう。ある意味、テレビ番組に対する最も強烈な皮肉w

物語は、学生服の住田が、屋上でパンティに指を突っ込んで強烈な手マンかましてオナニーする憧れのケイちゃんに「お願いです、僕と付き合ってください」と土下座。でもケイちゃんは「あたしゃ、先にいくよ」フッと空を飛び、消えて行った。そんな高校3年の思い出を回想しながら、僕、住田はDOMDOMバーガーでハンバーガーを作っている。

住田が店のテレビを見ると、ニュース番組のお天気コーナーにケイが出演していた「ケイ?ちゃん??」彼女はスーツを着こなし、無難に天気予報を読んでいたが、最後に「札幌は40cmの大雪です」と言った後、「私のミニスカは膝上10cmよん♡」と言いながら純白のパンティをモロ見せwwwこれは視聴者の間で話題となり、ケイは一躍、時の人に!

社長が御前会議を開いて対策を練っている時、女子トイレで激しくオナニーして気合を充填、ボディコン姿でヒールをポイッと投げ捨てカッコよく会議室に乱入「てめえら、視聴率が欲しいだけなんだろ」これをパチパチと手を叩いて「気に入った」テレビ局内に特別室まで設えて厚待遇する会長は単なるスケベ爺の天本英世。

ケイの特別室は徹底していて、カウンターバーに日本酒を取り揃え、運び込んだ大小色とりどりのバイブ、和室で桝で日本酒をグイグイ飲みながらエネルギーを充填するのが日課のケイは、レースクイーンやバニーガールなどのコスプレを駆使、世の男どもを虜にしてテレビ局内でお天気コーナーを一番人気に仕立て上げ、誰も文句を言えない存在にのし上がった。

住田はそんなケイに片想いをし続け、テレビ局のバイトに紛れ込み、日本酒を取り揃えたカウンター内に忍び込み「ケイちゃん、今でも好きなんだ!」でもケイは「あたしゃ、忙しいんだよ」「目ざわりだ、今すぐ消えな」「次にここに来たら、お前の命はないからな」強烈なキックをかまし、住田は血まみれに!

お天気コーナーでは、ラストでスカートを捲り上げ「今日はピンクです♡」とか男心をそそりながら、週録が終わると、黒のビキニブリーフの男たちを整列され、その花道をバク転をキメて帰っていくケイ。そんなケイの存在を苦々しく思っている一人の女がパリにいた。天本会長の一人娘でパリに留学中のお嬢様、白島靖代である。

靖代は急遽帰国すると、淫らなケイに支配されるテレビ局の刷新を宣言。天本会長には「ケイと仲良く一緒に」と諭されるが、小学校の時に私の可愛いお弁当に牛乳かけられた屈辱、中学生の時に私の可愛い靴に画鋲を入れられた屈辱(←要はケイは虐めっ子で靖代は虐められっ子だったってことw)この恨み晴らさじにおけるか!ホントはテレビ局の将来やマスコミの在り方なんてどうでもいい、私怨が最大のエネルギーw

ケイは、沙織に頼まれて自分を追い落そうとした広告代理店の一番大きな所の大杉漣をマゾ奴隷として抱き込み、沙織はお天気お姉さんの先輩でありあがら、おしおきとして「変態さん、こんにちは」という番組のレポーターをさせる。取材対象は浣腸人生20年の山本竜二で、汚物を身体じゅうに浴びた沙織は臭い服のまま局内を動き回り、靖代に「先輩、何この匂い?」鼻をつままれた。

でも、靖代は沙織と出会い「そうだ!」(←そうだ、じゃねーよw)思いついた姦計、それは先輩アナウンサーでケイにお天気キャスターの座を奪われたくせに、いつもオドオドの沙織を情けないと思いながら「あなたはケイの奴隷になるのよ。こうして、彼女のスキャンダルを暴くの」元々がマゾ気質の沙織がケイと二人きりの特別室、女王様と奴隷の関係は、それはそれはキビシイものになります。

全裸で入浴しながら一升瓶から桝に日本酒入れてかっ喰らってるケイ(←これ、脳溢血で死ぬんじゃね?)沙織はスポンジで泡立てながら「用意が出来ました」でもケイは厳しく言い放つ「あたしの大事な体が傷つくだろ。舌で全身を舐めるんだよ!」ペロペロとケイの足から舐め始め、アソコを舐め始めると「そこはもっと強く!」この痴態の一部始終は録画されていたw

靖代が次に思いついた姦計、意外にせこくてw小学生の女の子がアイスクリームを高校生に盗られて「お天気コーナーの時間にお姉さんを困らせてやろうと思った」ケイのお色気パンチラお天気コーナーは警視庁で問題視され青少年課の清水大敬課長が「困るんですよ、青少年に悪影響なんですよ、クレームが来てるんです。自粛してください」

ケイは大人しいスーツ姿で天気予報を読むことしかできなくなった。そこに、靖代のいやがらせ第二弾、今度は凄くて、沙織とケイが風呂場でレズってる濡れ場を全国に録画放送!大問題となり、大激怒したケイは沙織に「誰に命令されたの?」黒幕が靖代と知り、そのまま失踪。沙織は靖代に「騙したのね」と叫ぶが、取り付く島もなく、そのまま奴隷にされた(←女王様とマゾで性癖ドンピシャだったりしてw)

住田がボーと屋上から空を眺めていると、背後からケイがやって来る「お前、そんなんじゃ飛べないぞ」背中を押しにやって来た。住田は学ランからDOMDOMの制服に代わり「僕はケイちゃんが好きなんだ、どうしても役に立ちたいんだ」「お前、あたしに付いて来れるのかい?」「今度こそ、絶対について行く」

それは過酷な修行であった。天に通じると昔、村人が教えを賜った天空の鞭。空の天気を自由に支配できれば、農作物が育ち繁栄が訪れる。レオタード姿でヒコーキ縛り、逆さ吊り縛り、あらゆる角度で緊縛されたケイをビシバシと鞭打つ住田。でも最初からそれが出来た訳じゃない。激しい檄を飛ばされ、本気で打つことが出来た。そして二人にピカっと雷鳴が落ちた。

テレビ局の権力を掌握した靖代派の目印はフランスパン。靖代の会議室にはエッフェル塔「もっと、もっとパリを!」希求する靖代は欧米かぶれの底の浅い大馬鹿もので、記者会見で「お天気ニュース改革宣言!」これからのお天気コーナーは情報番組じゃなくてショーよ、ショー。こうして莫大な予算をかけた、ミュージカル仕様のお天気ショーが開幕した。

ステージに設えた、お天気ニュースで必須の日本列島地図の上で、まずは中村京子が大銀杏姿で、おっぱい丸出しの化粧まわしをきりりと締めて土俵入りドスコイ!和のテイストの後は武富士のCMのように黒ずくめの男女が妖しいダンスを踊り、靖代がスカウトしたお天気ガールズたちがエスニックなセクシー衣装で踊る。そして梅垣義明を先頭に土人に扮した男たちが松明を掲げてドンドコドン。

さあ(←さあ、じゃねーよw)大トリは靖代お嬢様が暗黒のドレスに身を包♬私はお天気お姉さん♬と歌いながら登場すると、ピンクのドレスに天使の羽根を付けたケイも♬私はお天気お姉さん♬といやらしく被せながら、全面対決!「何よ、これは私の番組なのよ」「そんなこと分かってるわよ」どこまで行っても、ケイは虐めっ子キャラで、靖代は虐められっ子キャラw

ケイと靖代の最終対決は森の中へと移された。ケイは天空の鞭を持ち、靖代は天空の剣を持つ。ケイは雨を降らせ、止ませ、風を吹かせた。靖代は風を止め、水を飛ばした。ケイだけでなく、靖代も天を、いや、天気を支配する一歩手前まで来ていた。観客が(;゚д゚)ゴクリ…と固唾を飲み、相撃ちでケイは靖代を倒した。日本地図の四国と九州の辺りにうずくまる靖代と、東北の辺りで背中を向けて仁王立ちのケイ。このカット、素晴らしすぎ!

ケイの闘う姿を夢中で応援していた住田は、再び屋上に来ていた。ケイが上の方から叫んでいる「あたしゃ、もっと先を行くよ!あんた、付いて来れるのかい?」住田は「どこまでもついて行く」と叫び返した。そして、パンチラさせながら空中を飛んだケイ。それを見て、住田も無我夢中で、屋上から飛び降りた。

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