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坂本礼「セックス・フレンド 〜発情〜」

シネロマン池袋で、坂本礼「セックス・フレンド 〜発情〜」(成人映画公開題「セックス・フレンド 濡れざかり」) 脚本は今岡信治、瀬々敬久との共同。

通い同棲の恋人(さとう樹菜子)と倦怠期中の大助の部屋を突然訪れた、小学生の同級生で野球仲間だったツトム。彼は樹菜子を襲って未遂の際に携帯を忘れ、実家に届けに行くと彼は8年前に死んでいたというびっくり仰天な事実。死者のツトムが仲間を集めた草野球試合で蘇るストライクが大助に生きる勇気を与える瑞々しさ、これは青春映画の佳作。

坂本礼のデビュー作で、瀬々敬久、いまおかしんじ、音楽の大木裕之始め、錚々たるメンバーのサポートを受けてるのは彼の人柄によるところが大きいのかもしれないけど、彼の色が出る前の「ここから」第一歩な感じがして何かとフレッシュ、気持ちを洗われるよう。

クライマックスはあの名作「フィールド・オブ・ドリームス」みたいな感じでほとんど野球映画、北野武監督の影響なのだろうか?草野球場にドラマを持って来たんだろうけど、なかなか難しいよ、これ。いまおか監督は「たまもの」でボウリング対決してない。しない方が無難。

でも、坂本監督って野球が大好きなのかな?恐らく自分も高校球児だったのかな?小学生のリトルリーグの思い出を、初心を忘れた大人たちの草野球にスライドさせて幻想的に描くクライマックスはマジ見ごたえある。んだけど、相当の野球愛がないと良く分からんなw

野球経験者じゃないとサヨナラ負けってどんな感覚か想像つかない。しかも押し出しフォアボールだなんて。相手はプロ野球に行くような強打者。真っ向勝負してみろよ!死んだ相棒のキャッチャーに小学生の頃に戻って励まされ主人公が前向きに生きる力をもらう。

さて、まずは登場人物について、普段は配役名じゃなくて俳優の芸名で感想を書くことをポリシーにしてる私ですが(読む人が登場人物の顔を思い浮かべやすいように)でも本作については樹菜子を除くメインキャストは配役名で呼ばざるを得ないしそれが狙いのようでもあるw

安定のいまおか脚本と思う。クレジットは三者連名になってるけどいまおか色が非常に強く、亡くなった人がこの世に現れて死者との交信で生きる者が勇気をもらうというテーマ、それに「たまもの」ではボウリングのストライク!が本作では草野球のストライク!だ。

先にダメな点を挙げておくと、66分は成人映画じゃちょっと長めなのに、濡れ場が4回しか無くて短めでエロくない。エロいピンク映画見せまっせという成人映画館では上映を躊躇することもあるかもしれない。でもね、映画として面白いことがありきだと思います。

国映の作品はシネロマン池袋、上野オークラに限らず全国の成人映画館であまり上映機会が無いと思う。ピンク四天王やピンク七福神を見たければ一般館のレイトショーや名画座でどうぞ、というスタンスと思われたが、やっぱりシネロマン池袋で観るから良いのだ。

ピンク四天王はそれぞれに強烈な個性を感じるけど、ピンク七福神の方はそうでもない。そもそも作品の本数が少なくてどんな作風を志向しているかも、いまおか監督を除くと良く分からない。そんな中、坂本監督にはディスイズ国映のようなオーソドックスを感じる。

90年代から21世紀初頭の国映のピンク映画って良くも悪くも「これが国映」という作風があって、それは一体どんなものなんだろう?と思うといつも坂本監督に辿り着くのよね。さりげない日常を映画に描き留めたような淡々とした作風が私が思う国映のピンク映画。

よく作家主義とか作家性とかいう言葉が使われるけど、私には何を意味するのか分からない。淡々と日常を描いた日記風の映画は一つの嗜好性であり、それが好きかどうかも観る人によって分かれるだけで、特に作家性とか作家主義とか、そういうものじゃないよな、と思う。

私がピンク七福神の中で圧倒的に面白いと思うのはいまおかしんじで、実際に多作できてるのもコンスタントにある水準以上の作品を供給し続けているからニーズがある訳で、何が言いたいかというと、本作は坂本監督の作品だけど、内容はとってもいまおか監督ですw

風が吹けば桶屋が儲かる式に、どんどん明後日の方向に展開するように見せかけて実は「死者との交信」が全てそれを引き寄せたのだ、という建付けの物語は、二度見しないと頭に入らないかな?という複雑性もあるけど、じゃあ二度見すればいいじゃん!ってだけw

この映画の良い所は、一見すると行き当たりばっかりのような話の進行で、観客としては劇画をパラパラとめくっていくような感じで「次はどうなるの?」という平板な感じに思わせておいて「実は彼、死んでたんですよ!」で一気に見せる。だから二度見した方がいいw

登場する主な配役は、さとう樹菜子を除けば「これ、誰?」って人ばかり。ひょっとして私がロマンポル脳なだけで、別の世界では有名人なのかも知れないけど、成人映画の一編として観ると、あたかも知らない人が送っている日常生活を垣間見るような作りなのです。

影の主役(←ホントは死んでるんだからねw)ツトムの両親を演じる伊藤清美と飯島大介はインパクトあり「彼はホントに死んでるんだ」という思いを強くさせる。と同時に、両親の亡き息子への熱い想いも感じさせるのだ。一方、伊藤猛は信じられない程、チョイ役w

主な登場人物、小学校時代に野球チームで投手だった大助と、捕手だったツトム。対戦相手の強打者で中日ドラゴンズに入団した村井憲太郎。この3人だけでもいいんじゃないかと思っちゃう。女性はどちらかと言えば付け足しで、男3人の草野球に纏わる物語なのだ。

主な女優部は、大介の恋人で一緒にツトムの実家へ旅するさとう樹菜子、元中日ドラゴンズのw村井が働くスナックで知り合ったと思しきホステスのジュンコ。この2名プラス飯島大介と久しぶりのw夫婦生活する伊藤清美でかろうじて三名、変則的な割り振りだ。

ピンク映画っぽくw樹菜子が彼氏の大助とワッセワッセ濃厚FUCKする場面から開巻し「国映だけど濡れ場濃い目?」と意外な感じの猫だましを喰らうが、その後は全然エロくありません。樹菜子が通い同棲する大助の部屋にいきなり謎の訪問者が来て実質的に起動する。

結婚を前に倦怠期に入っている大助と樹菜子。二人ともスーパーマーケットでバイトしてる。ここに現れたるツトムは大助に「俺はお前の小学校の時の友人だ」キャッチャーミットをバンバン叩く真似して「お前は投手、俺は捕手」ああ、ツトムかあ、思い出す大助w

ツトムは「買い物してくる」部屋を出てボールとグローブ買って来たw大助が出かけた後「何のバイトしてんの?」よもやま話をキャッチボールしながら会話するツトムと樹菜子「この作品、ただものではない」感が漂う。樹菜子の投球フォーム、様になってるなあ。

打ち解けたツトムと樹菜子。二人っきりの部屋で重苦しい雰囲気の間の取り方に坂本監督の個性が!強引にキスするまでの時間がまあ長いこと!その後、押し倒してヤッちゃおうとするが拒否られ慌てて部屋を逃げ出すツトム、携帯電話をベッドに忘れちゃったんですw

ここからいまおかワールド的な展開でw携帯に着信があってツトムが「埼玉の児玉の実家に携帯届けてよ!」なんて迷惑な奴なんでしょう!ぶち切れて携帯叩きつける大助に、樹菜子が「困ってるんでしょ、届けてあげなさいよ」倦怠期独特のこの感じ、なんとなく分かるw

大助は実家に車を借りに行き、埼玉の児玉まで樹菜子とドライブレッツゴー!でも、途中の畦道で三回も車をグルグル回した後に故障w呆れた樹菜子が「私、もう知らない!」激怒して野ションベンしてた所に元中日の村井がホステスのジュンコと青姦している仰天場面w

恐らく本作で一番のヌキ所であろう(←この作品でヌクのかよw)林の中で全裸のジュンコを村井が手マンし、フェラさせ、そのまま立ちFUCKする場面に関してはエロい!これを呆然と見ていた大助、村井に鬼の形相で追いかけられるが「中日の、む、村井さん?」

村井はリトルリーグ時代「SNAKES」という強豪チームの4番で、大助は「ビッグ4」という弱小チームのエースだった。村井は野球を続けプロの中日ドラゴンズに入団するが2打席2三振の実績しか残せず、今は錦糸町でスナックを経営しているホスト風のチャラ男。

村井のスナックに昨晩、ツトムが客として訪れ「俺のオヤジが村井ファンなんだ、会ってくれ!」と頼むから児玉まで遥々やって来た。村井も大助も行先はツトムの実家で同じ。こうして村井&ジュンコ、大助&樹菜子4人でのツトムの実家詣でが始まる訳です(笑)

両手に買い物帰りのスイカを抱えた伊藤清美が呆然「ツトムは8年前に死んだのよ?」奥からツトムの父親・飯島大介がキャッチャーミットを嵌めて出て来て「投げてみろ!」大助が何球投げても「ボール!」ブチ切れる大助、でも愛情溢れる飯島の贈り物はボール。

清美と飯島は倦怠期の中年夫婦だったが、8年前に死んだ息子の友達が訪問して、夜の夫婦生活は燃えた(´・ω・`)知らんがなw清美に教えられたお墓で「本当に死んでたんだ」呆然とする4人の目の前で携帯がプルルと着信。元気な声でツトムの「明日、空いてる?」

大助と村井は、ツトムに「お前、死んだんだろ!」ツッコむが「多摩川のグランドに来い」言い残して携帯は切れて、大助は久しぶりに「ビッグ4」のユニフォームを取り出し樹菜子と二人、グランドにやって来た。村井も「SNAKES」ユニフォーム着てジュンコと二人。

前夜、樹菜子はツトムとキスしたことを大助にカミングアウトし、大助は「ま、いっか」と笑って、久しぶりにいい雰囲気になった二人はベッドの上で燃えた。濃厚なFUCKする二人を机の上からじっと見つめるボール。そして舞台は河川敷のグランド。

シチュエーションは7回の裏、3対3の同点。SNAKESが攻撃中で1死満塁からスタートするここから、ここだけ野球映画w投手は大助、捕手はツトムで打者のジュンコが三球三振。2死満塁になって村井が登場。ここで小学生の頃の思い出がフラッシュバック、大助は村井にフォアボール押し出しサヨナラ負け。

ツトムは大助に「なあお前、なんで野球続けなかったんだ?」と食い下がっていた。今こそリベンジの瞬間。でもノースリーになってwww4球目、大助の投げた球を村井が打つとやっぱりホームラン?いや、高々と舞い上がった球は投手と捕手の中間に落ちて来る。

大助と村井は衝突し、球はコロコロと転がりサヨナラ負けの結末は変わらなかった(笑)そして樹菜子はバイトの面接に向かい、大助はユニフォームをプレゼントした。エンディングテロップが回った後に再びヒキで河川敷の野球場「ストライク!」審判の声が響いた。

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