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林功「大奥秘話 晴姿姫ごと絵巻」

シネロマン池袋で、林功「大奥秘話 晴姿姫ごと絵巻」 脚本は中沢昭二。

激動の江戸安政、病弱な将軍家定(浜口竜哉)の世継問題を巡り、井伊直弼(雪丘恵介)と大奥お年寄り(二條朱実)が結託し、男殺しの名器を持つ吉原花魁(小川節子)を夜伽チームに加えれば、対抗勢力阿部伊勢守(三川裕之)は大奥ナンバー2(宮下順子)抱き込み将軍のお身代わり(谷本一)を投入、そして地震の業火の中で出会う私だけの上様。時代考証ばっちり、豪華絢爛時代劇絵巻の秀作。

江戸時代の世界観を120%レベルで現出した見事なロケセットは大日活を彷彿とさせる。これに安藤庄平の美しい撮影、月見里太一の美しい音楽も相まって「ああ、俺は今、成人館の大スクリーンで本格的な時代劇を見てるんだなあ」至福の瞬間に浸れる。これって凄いことよ。

林功の演出は時代劇限定ならば非常に素晴らしいものがある。昭和の時代に一人だけ江戸時代の人がタイムスリップしてしまったのだろうか(笑)本作は私がこれまでに観た林功作品の最高傑作と言って良いが、それでも秀作扱いなのは詰めが甘い。惜しい、余りにも惜しい。

ホンがロマンポルノにしてしまうのは勿体ないほどの出来栄えで、脚本家は中沢昭二。テレビドラマ「青い山脈」など代表作がある、映画作家というより放送作家の方面の人らしいが、時代考証が真に秀逸で、日本史好きの人も唸らせる史実に虚構を入り組ませた構成。

ザックリ言えば江戸末期、黒船が来航して尊王攘夷運動の萌芽など世相が騒がしくなった安政の時期、そうです!日本史上ではサイテーのヒールとして記憶される井伊直弼、勝てば官軍負ければ匪賊、桜田門外の変で討たれたことで評価が一気に落ちた激動の歴史渦中の人物。

時代背景として第13代将軍家定の世継ぎ問題というのはダイレクトに尊王攘夷や鎖国開国問題ともリンクした、政治上の大イベントであり、家定が病弱で子供を作ることが出来なかったことが全ての発端。じゃあ、評判の名器を持つ女性を大奥に送りこめばいいじゃんって話w

ヒロインの小川節子は、水呑百姓の娘から吉原の売れっ子ナンバーワン花魁を経て、大奥にスカウトされ将軍様の夜伽役に抜擢される、まさに裏シンデレラガール。セックステクの方が超一流という設定ではあれど、男を奮い立たせるのはやっぱり節子の美貌があっての説得力だと思うね。

二條朱実は大奥で一番偉いお年寄りの役なんだけど、お目目がぱっちり丸顔で可愛らしくて、あれ?二條朱実ってこんなアイドルキャラだったっけ?ちょっとびっくりしたよ。あんみつ姫みたいなんだもん。それがヒール同士の井伊直弼とのFUCKシーンではあまり魅力的に感じさせないのよね。

宮下順子はきっつい二條朱実を上司に持つ、大奥のナンバー2役なんだけど、裏ではちゃっかり寝返っていて、朱実が手を組んでる井伊直弼の仇役の阿部伊勢守と手を組んでるタヌキの役。こりゃさすがに演技が難しかったのか投げやりな感じするんだけど(笑)伝四郎にレイプされる場面はエロかった。

メインキャスト4人の中で権力闘争とか全く無関係に図書助を一途に愛する女郎の中島葵が一番美味しい役かも(笑)やっと足抜けできるからと図書助を故郷の遠州で所帯持って一緒に暮らそうと愛の告白するけど「江戸を離れてどうして食ってきゃいいんだ」あっさりフラれたw

小川節子が演じる評判の名器を持つ女性、大奥においては名前は「千嶺」なんだけど、中﨟に迎えるに当たって吉原の花魁じゃ都合が悪くて後から付けた名前でしかない。本人は武蔵の国川越の名も無い水吞百姓の出身で吉原の花魁になれただけでも大出世なのに名器が見込まれて大奥で将軍様の夜伽役に大抜擢!

一方、勘定奉行だった父親・青山兵庫が不正経理のカドで左遷され旗本に没落した旧家出身の図書助が、将軍家定の影武者として幼少の頃から同じものを食べ、同じ行動をする。心休まらない家定にとって図書助は唯一と言ってもいい信頼できる男。でも図書助はそれを利用される。

1855年(安政2年)10月2日、江戸を襲った安政の大地震の最中、夜伽のため将軍様と布団を共にする千嶺。でも将軍様はお身代わりの図書助であった。彼女は将軍様の偽物を殺めるよう指示を貰っていたが、図書助の真実告白で翻意「あたしだけの上様見つけた♡」ありきの話。

大地震の影響で業火に包まれる将軍家のお屋敷の中で、正常位でアンアン悶えながら図書助と愛を交わし合い炎に包まれる千嶺。なんて劇的なクライマックスでしょう!と言いたいところなんだけど、林監督は歴史の史実と虚構を描くの面白すぎてそっちに気持ちが入りすぎw

ポルノ映画なのに日本史の話になっちゃったよwと言うことで(と言うことで、じゃねーよ)本作の予備知識として最低限、南紀派と一橋派だけ理解しておけばOK!南紀派のドンは井伊直弼、そして一橋派のドンは阿部伊勢守。この二人は実際、メインキャラで登場します。

南紀派は後に第14代将軍になる紀州藩主の徳川慶福を世継ぎに立て、一橋派は後に第15代将軍になる水戸藩の徳川慶喜を世継ぎに立てる、ヤクザもびっくりの跡目争いの裏側をセックスを通して描こうとするエロ時代劇なんだけど話が壮大すぎてセックスの部分が霞んじゃうw

南紀派は大奥と結託ということで、井伊直弼(雪丘恵介)が大奥お年寄りの高梨(二條朱実)と密通して家定(浜口竜哉)暗殺を計画、一方、一橋派は高梨配下ナンバー2の松尾(宮下順子)を抱き込み阿部伊勢守(三川裕之)と二人して家定の替玉を用意して家定の身を守ることを考えてる。二大勢力の騙し合いだ。

ってことでね、非常に見応えがある訳です。純粋に時代劇として。もう濡れ場要らないんじゃねーのwと思う位に物語の部分が分厚くて、見せ場のオンパレードなんだけど、これポルノ映画ですからね。取って付けたように節子も朱美も順子も脱ぎます。不自然な位の流れでw

冒頭、吉原の遊郭で近江商人を相手にセックスしてるナンバーワン花魁の節子。その類まれなるセックステクを襖の影から覗く井伊直弼と素浪人の立花伝四郎(榎木兵衛)あ、書くの忘れてたけど、この伝四郎ってのがまた曲者で、千嶺と図書助のラブストーリーに華を添えるんだよw

大奥お年寄りの高梨が、花魁の節子の評判を聞きつけ大奥にスカウト。当然ながら水呑百姓の娘じゃマズいんで「千嶺」という名前を与え高貴な家柄の出身ということにした。で、千嶺の名器を武器に家定のお命頂戴します!作戦に対し、阿部伊勢守も黙っちゃいない、お身代わりを続々と投入するw

最初に投入するのがバカ殿みたいな小見山玉樹でw千嶺の名器であっさり死亡(笑)一方、本物の将軍様は夜伽役おせい(南昌子)の器量が悪すぎて、湯沸かしの茶瓶を見て蒸気機関車を連想し「これが走るのかあ」で上の空。でも仕方ない、おせいって志村けんの女装みたいw

バカ殿小見山死亡で、次に送り込まれたのが谷本一演じる色男の図書助なんだけど、モテ男だから君香(中島葵)という遊女に惚れられてる。ここで中島葵が濃厚FUCKで魅せます。他の女優が演技メインで時代劇にどっぷり浸かってる中で、濡れ場に精出す葵の存在は貴重w

図書助は身代わりの夜伽で大暴れ。夜伽相手のおせいだけでなく、添い寝役のおませ(叶今日子)、中年寄りの山浦(吉井亜樹子)、更には御伽坊主の円喜(しまさより)まで次々と犯す絶倫ぶりで見事に四冠王達成!で将軍様ってひょっとして気がふれたんじゃない?噂も立ったw

図書助が伝令から「高梨が豪徳寺に出かける」情報を得て向かってる最中、一人残された松尾が井伊直弼の命を受け暗躍する伝四郎に犯された後、十手でズブリと胸を刺され絶命。伝四郎は「女ってスゲエなあ、死んでも気持ちよさそうな顔してるんだから」とうそぶいた。

その頃、豪徳寺で乳繰り合う高梨と井伊直弼。このシーンの唐突さに、やっぱ題材がポルノに合わねーよw駆け付けた図書助は絶命した松尾の姿に呆然。ここに伝四郎が登場し、一対一の真剣勝負。スゲエなあ、本気でチャンバラしてるもん!で、勝つのは当然、図書助です!

高梨は千嶺に「将軍様はニセモノじゃ。夜伽で殺しておしまい!」命じ、千嶺は図書助と床を共にする。千嶺は「あなた、本物の将軍様じゃないでしょ。お命もらいます!」図書助は正常位で腰を動かしながら「誰から吹き込まれた?」真実を知り、( ゚Д゚)と驚いた千嶺。

図書助と千嶺が騙し合った末の和合官能セックスに溺れる中、急に地震がやって来てグラグラと揺れ始め、ロウソクの炎が床に燃え移り大炎上。この隙にどさくさ紛れに飛び出し図書助を刺そうとした高梨は、天井から落ちて来た木材で頭を打って因果応報の即死(笑)

千嶺とのセックスを止めない図書助に千嶺は「なぜ逃げないの?」「将軍様は良いお方だ。ここで逃げたら将軍様が二人ってバレるじゃねーか」この言葉に「まあ、ステキ!」舞い上がった千嶺は「ああ、あなたは私だけの上様なの♡」大喜びで図書助のモノをアソコに咥え込み、業火に包まれながらもFUCKを止めず愛し合う二人であった。

その頃、将軍家定は屋敷を家来たちと抜け出し逃走の最中。「ああ、図書助は今頃、無事なんだろうか?」空を見つめる家定に、阿部伊勢守は諭す「臣たるもの、気にしてはなりませぬ」大地震は多くの江戸市民の命を奪った。ニセモノ同士、夜伽の場で劇的に最愛の人を見つけた、図書助と千嶺の二人もまた。

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