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佐藤寿保「陶酔遊戯」

光音座で、佐藤寿保「陶酔遊戯」 脚本は夢野史郎。

僕は目が覚めると虫になっていた。高校時代にフェンシング仲間だった白川君にも職場のパワハラ部長にも変身!でもフェンシングに女は要らねえ、白川君との仲に割って入りトライアングルの三角関係を要求する橋本杏子は、フェンシングで串刺しだ!カフカ「変身」を大胆にデフォルメした、夢と現を行きつ戻りつするSFゲイポルノの佳品。

狂気の脚本家・夢野史郎がカフカ「変身」を大胆にゲイポルノに翻案し、それを狂気の演出家・佐藤寿保監督が演出したら「こんなんできちゃいました!」常人には理解なんてされなくてもイイ、俺は寿保ワールド、夢野ワールドが大好きです!

私にとって佐藤寿保監督は、ピンク映画への扉を開いてくれた偉大な監督の一人であり、ピンク映画だろうとゲイポルノだろうと一般作品だろうとVシネだろうと全く関係ない。早くから映画に付き物の「ジャンルの壁」を粉々に壊して回りつつ、自身の独自の作家性を確立した偉大な方。

カフカの、今や古典的ともいえる短編小説「変身」を読んだことの無い人は、完全に置き去りにされる作品だと思う。逆に言えば「変身」を前提にすると「ほほう、映像化すればこんな風になるのか!」という実験的な作風で、全くゲイポルノでは無く、ENKが場を提供してあげた感じだw

ただし(←ただしって何だよw)男同士のSMは「縄と男たち」シリーズのように精神面での苦痛や快楽などはあまり考慮せず、ハードに鞭やロウソクで肉体をガンガン責めるのが面白い!という性癖の方も多くいらっしゃるようで偶々、寿保作品のハード傾向と一致してるのかもしれないw

寿保作品はピンク映画やVシネだと撮影がハードすぎて、男優だけ出演すれば良いゲイポルノでしか世界観を表現できなくなった、そのため消去法でのゲイポルノ進出だったのではないか?と思うと、光音座のメイン観客層の人に申し訳ない(笑)折檻、拷問シーンのハードさを楽しんで下さい!

ただし(←また、ただしかよw)この作品の難点は、ハードSMで鞭やロウソクでガンガン責められるのが小林節彦と山本竜二、即ち二人のおっさんだけで、イケメンの若い子は鞭を振るう方の役割で、こりゃどうもジャンル的にキビシイ(笑)ボンデージ女王様の橋本杏子も、ゲイポルノ的にはむしろ邪魔だろう(笑)

冴えないリーマンの主人公(沢田詳太郎)が、恋人(福田理)上司のパワハラ部長(小林節彦)学生の頃に恐喝されたチンピラ(山本竜二)恋人の彼女(橋本杏子)に、夢の中で次々と寄生虫として憑依していく、カフカの小説「変身」をモチーフにしたであろう、主人公のに生活に次々と起きる不条理の世界を映像化した、幻想的な実験作品。

夢野史郎にしては珍しく、脚本が論理破綻してる部分もあるし、エピソードをパッチワーク的に繋げたような気もしてヘンな作品だが、テーマをカフカの変身で虫になった男の地獄めぐりという一点突破に定置し、男と男、男と女の間の肉体的精神的愛情表現を全て乗り越えようと試みる。

主人公は沢田詳太郎という役者さんが演じているのだが、カフカ「変身」と同じく第一人称の「僕」でいいと思う。「僕」の周囲にいる、職場のパワハラ上司、嫌味な先輩、高校時代に三角関係だったフェンシング部の仲間たち、そして謎のクラブ「審判」のSM王様、女王様を巡る話。

地獄めぐりを順番に並べていくと、まず「僕」は虫になり、白川君に缶ジュースと一緒に飲み込まれ白川君になり、気が付けばパワハラ部長になり、更にクラブ「審判」のサディスト男から、最悪の女王様にまでなってしまう。これは夢か幻か?一人称の視点で語り続ける独特の物語。

寿保監督らしいグロさは、「僕」が会社でパワハラを受ける時の、部長に殺虫剤と間違えてカラースプレーを吹き付け(←どっちにしろヤバいだろw)殴る蹴るの暴行を加えられる時点で「これって既に夢の中なんじゃない?」と思い始め、「僕」が寝る前に読む本もカフカの「変身」だw

殺虫スプレーと塗装スプレーから始まり、ダーツ、ボンデージ、鞭責め、ロウソク責め、そしてフェンシング対決。ありとあらゆる小道具が幻想的にスクリーンを舞い続ける良くも悪くも夢野史郎風の脚本が、主人公が「夢の中で変身して虫になる」ことで綺麗に物語として繋がっていく。

主人公(沢田詳太郎)には恋人(福田理)がいる。彼は一見爽やかな好青年だが、裏では怪しげな悪徳商法に手を染めている。彼はバイで橋本杏子という彼女もいる。杏子は「私は福田君が好きで、福田君は沢田君が好きで、沢田君が私を好きになればいいのに」と三角関係を望んでいる。

沢田は職場で強烈な苛めにあっている「バルサン教育」だw上司の小林節彦部長と爆発村とおる(←何ちゅう芸名やw)先輩から「虫が出た」と殺虫スプレーで虫退治させようとするが、沢田は小林部長の顔に間違えて塗装スプレーを噴射。ボコられた上、顔をにスプレーを吹き付けられる。

沢田は福田と付き合っているが、福田は杏子とも付き合っている。いきなり、沢田と福田の10分間に及ぶ激しいFUCKの後、部屋に杏子が登場、二人の仲に嫉妬してダーツの矢を放ち帰っていく。帰宅した沢田は眠っていたが、悪徳商法会社からの電話をきっかけに虫になった夢を見る。

恋人の福田は「あなたはハワイ旅行に当選しました。でも、一つやって頂くことがあります。このカタログの商品を二つ、知人に売ってください」いわゆるマルチ商法だw福田が会話している相手の顔を、虫になった沢田が確認すると、何と部長の小林であった。その場で犯される小林。

いきなりエキセントリックな暴君に変貌した福田が小林のアナルをレイプする。そのままスゴスゴと退散する小林。ここでΣ(゚Д゚)と目が覚めた沢田。彼は職場に行っても虫退治をさせられるだけで嫌なので、会社を休むことにした。歩道橋で黄昏ていると、杏子が彼を見つけ声をかける。

ここに小林部長と爆発村先輩が通りかかる。「バルサン教育」の話題で盛り上がっているw二人がラブホに入っていくのを確認した沢田は、杏子を連れてホテルの隣室にチェックインすると盗聴開始w放っておかれて呆然とする杏子を尻目に小林と爆発村の様子を伺うと驚くべき事態が!

爆発村は全裸にネクタイを首に結び、小林はボンデージルックで、激しくSMプレイを愉しんでいる。杏子を置いてきぼりに自宅に帰って眠る沢田の夢の中に、SMクラブに行く小林部長の姿が。どうやら彼は小林に寄生してしまったのだ。フェンシング面を被った女王様の杏子が登場。

小林部長は杏子女王様に激しい鞭責めを受ける。プレイが終わりラーメンを食べて帰宅しようとすると、店のテレビで悪徳商法摘発のニュースが流れていた。ここでΣ(゚Д゚)と目が覚める沢田。職場に向かおうとするが、爽やかに歩く福田とバッタリ会い、声をかけられるが慌てて逃走。

帰宅して眠りについた沢田は、再びSMクラブにいる。ボンデージ姿の杏子の股間を凝視し「これはちょっときついなあ」と言いながら、杏子に寄生する沢田。すると外見は小林部長のSM女王が、全裸緊縛した客の山本竜二を激しく責める。沢田は高校時代、山本に対する苦い思い出が。

沢田は高校時代、チンピラの山本に絡まれ続け勉強の成績が急降下した。ここで会ったが百年目と小林部長になった沢田が山本をロウソク責め。赤い極太ローソクに火をつけ山本のアナルにねじ込む。悲鳴を上げる山本。このどうしようもなく汚い画面でΣ(゚Д゚)と目が覚める沢田(笑)

駅を歩いている沢田に福田が声をかける。思わず全速力で逃げ出す沢田。福田が追いつき、呆れて「何で逃げるんだよ」沢田は「急に追いかけて来るから」沢田は福田が自分の勤め先より小さいノルマのきつい会社と聞いていたが、本当に福田がマルチ商法をしてたか、それは分からない。

杏子は仲が良い沢田と福田が妬ましかった。ダーツの矢を放ち、いら立ちを隠せない。何とかトライアングルを完成させたいが蚊帳の外である。そして福田は沢田に向かって囁く「俺たちが高校の時にやっていたフェンシング、決着をつけようぜ。ちょうどいい場所があるんだ」

本格的にフェンシングの面と防着を着け、フェンシング棒で対決する沢田と福田。ここに杏子が現れる。杏子は、沢田と福田がフェンシング棒を突き合う、緊迫する場面に、二人の間に立つ。一瞬、戦いを止める沢田と福田。しかし次の瞬間、二人は杏子の前から後ろから、フェンシングで刺し殺した。

もう二人を邪魔する女はいない。二人は胴着姿のままヒシと抱き合い、ここから濃厚なFUCKシーンに代わる。その長さ、再び10分。つまり、本作は60分の中で3分の1が二人の濡れ場で構成されていますwコトが済み、床の上でクロスするフェンシング棒のイメージ。

ここで再び夢の中に落ちる沢田。彼は完全に虫になってしまっていた。都会の雑踏を歩きながら、職場に行けば殺虫剤で殺されると逡巡、マルチ商法をやっている福田に怯える。ここで三度Σ(゚Д゚)と目が覚める福田。二人はベッドの中にいた。沢田は福田に「夢から覚める夢を見たんだ」

福田は「いつまでも夢から醒めないのなら、起きていても、ずっと眠っていても、一緒っていうことじゃない」次の瞬間、ベッドの上で気を失いバッタリ倒れる沢田。彼は本当に虫になってしまった。窓にへばりついて歩く虫。誰かが投げたダーツがその虫を直撃、虫は死んでしまった。

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