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根岸吉太郎「女生徒」

根岸吉太郎「女生徒」 脚本は鹿水晶子との共同。

同じ高校に通う16歳の洋子(栗田洋子)と由紀(大谷麻知子)。喫茶店で偶然出会ったテレビドラマの脚本家と同棲し始める洋子、カメラ小僧の同級生をフッた後、劇団を主宰する女の部屋に転がり込んで犯されそうになる由紀。女同士の友情と大人への階段を上る姿を描いた青春群像劇の秀作。

当時のロマンポルノの有りようとして、高校生や大学生の目から見た大人たちのだらしない、情けない世界を容赦なくハダカを込みで描いた作品って凄く多かったと思う。っていうか、ロマンポルノを観ている観客の層がまだまだ若かった。私のようにまだ高校生も観ていたのだからw

16歳の二人の少女、洋子と由紀の扱いは大分、違うw洋子の方はイケメンのカワサキバイク乗り不良をフッて、亜麻色の髪のおとめを彼女に見出す脚本家の小池と同棲、一方の由紀はカメラ小僧のオタクに犯されそうになりフッて、また劇団員の高橋明に犯されそうになるイケてなさw

洋子と由紀の仲の良い女子高生二人のそれぞれの目線で描かれているかと言えばそうでもなく、絶対的なヒロインは栗田洋子(彼女はこれがデビュー作)である。自らの意志で一歩一歩階段を上って行く洋子の力強さと、思い通りに行かずにレイプされそうになるばかりの由紀との違い。

女生徒の濡れ場がライトエロな分、大人の女性のFUCKがどエロい!常にFUCKが本気印の吉川遊土の織田との夫婦生活シーンはAV顔負けのド迫力。相川圭子も小池との夫婦生活シーンでガラス越しにドカンドカン音を立てながらFUCK開始、バックから突かれて段々ハダカが見えて来るw

本作で一番の見所は音楽である。全編に亘って南佳孝が担当しており、洒落たジャジーな音楽が画面を包み込み、主な舞台の一つである堀礼文がマスターを務める音楽と珈琲「牛乳屋」では南佳孝の曲が惜しげもなくBGMとして使われる。が、最大の見所は栗田洋子と脚本家小池のラブシーンかなあ。

そんな男優部の主役は小池雄介。中原俊「犯され志願」を始め、意外と多くのロマンポルノでイケメン役を演じているのだが風采は赤塚不二夫に似ていてオタクが入ってる(笑)本作でもテレビのシナリオライターという設定で部屋にはピアノが置いてあり「亜麻色の髪のおとめ」を華麗に弾く。

この脚本家・小池の設定には謎めいた所があってw奥さん(相川圭子)も子供もいるのに日野に建てた戸建てに妻子を残して執筆のためとは言え都内のボロアパートに一人暮らし。当然、圭子は様子を見にアパートを訪ねて来るし、ここに女子高生の洋子がいた時点でクロwまだ肉体関係はなかったのだが。

亜麻色の髪のおとめと言うのはヴィレッジシンガーズとか島谷ひとみの方ではなくドビュッシーのクラシック音楽。脚本家の小池は16歳の美少女・栗田洋子に亜麻色の髪のおとめを見て、彼女を主役にホンを書きたいと思う。でも映画のラストは意外にも洋子の弾く「亜麻色の髪のおとめ」で終わる。

本作のクライマックスと言える、妻子持ちの小池が押しかけ女房してきた洋子に本能を抗い切れず、「ヤっちゃうとこれまでの関係が変わっちゃうぞ」警告を発してw不良に処女を破られたばかりの傷心の洋子を抱く場面に南佳孝の名曲「静かな昼下り」がロマンチックなムードを醸し出す。

恐らく鹿水晶子の書いたホンだけでは物足りず書き足した、演出に工夫を付けたための共同脚本に根岸監督の名前もあるのだと思う。2階に小池が住んで1階に木瓜みらいと高橋明が同棲している地上げにあってる都心のオンボロアパートを舞台に洋子&由紀を中心に紡がれていく物語。

空間的にも人間関係的にも非常に奥行きがある。恐らく元のホンは絶望的につまらなかったと想像、優遇される感があった根岸監督も本作に関してはストーリーテリングはある程度捨てて、その分群像劇として多くの登場人物が織りなすユーモアとペーソスに力を注いだように感じた。

空間的な奥行きについては、ボロアパートの2階に住む小池を訪ねて洋子が居つくようにそのまま同棲するのと並行して、1階の劇団主催者木瓜みらいの部屋に団員でヒモの高橋明が同棲中で、母(絵沢萠子)と喧嘩して家出した由紀が転がり込む。最短距離なのに互いに気が付かないw

根岸監督の意匠を( ゚Д゚)と感じるのは、中盤とラスト、一番盛り上げたいところで画的に素晴らしいカットがある。中盤では由紀にフラれたカメラ小僧の渡辺君がバイクに乗ってガードレールにぶつかり自爆する場面が無駄に印象に残って(笑)看病した由紀は最終的に仲直りだw

その直後、洋子は渡辺君の見舞いに行こうかどうか逡巡しながら不良のバイクでタンデムし海に出た。真っ暗な砂浜でいきなり襲い掛かる不良に「大人しくするから」と物陰に行き、不良に抱かれて処女を喪う洋子。圧倒的なリアルさに戦慄した後、小池の部屋に泣きながら駆け込む洋子。

洋子は不良との一件を小池に話し、小池は風邪ひくからと上半身ハダカになった洋子の身体にマジックでシナリオを書き始めた(笑)亜麻色の髪のおとめと脚本家との恋愛譚。洋子は後日、部屋でハダカになって由紀にそのシナリオを読ませながら、由紀のおっぱいに落書きした(笑)

本作の飛び道具は木瓜みらいと高橋明のコンビ。喫茶店で由紀に「演劇で使うから制服貸して」頼み、家出した由紀を部屋に居候させてあげる。でも同棲中の高橋明はゴリラ顔の怪人でみらいにストリップを要求、暗がりにロウソク立てて♬こんにちわ~こんにちわ~世界の~国から~♬

高橋はケダモノのようにwみらいを犯したどさくさに紛れて由紀も犯そうとしてギャー!彼女が大声を上げた瞬間、2階にいた洋子が「あれ?由紀の声じゃない?」駆け付ければ由紀がレイプされそうで、棍棒を振り回す洋子が高橋の頭を血まみれにした後も部屋をどんどん破壊するw

洋子が夢中で棍棒を振り回しているのは由紀が原因か?恐らく違うだろう。何かモヤモヤとしたものは、父親(織田俊彦)と母親(吉川遊土)の堕落した浮気症の夫婦関係に元を辿る。粉々になる家具、そしてカーテンにロウソクの火が燃え移ってボヤになる、体よく地上げしてしまったw

すったもんだの末、空き地でバイクを乗り回す渡辺君の後部座席に由紀。二人きりで教会でクリスマス。洋子も小池の部屋で二人きりのクリスマス。ピアノでジングルベルを弾いた小池が「酒買ってくる」外出した途端、例の不良が襲い掛かり彼は救急車で運ばれ、また一人きりの洋子。

しんしんと降りしきる雪。ロマンチックな劇伴が流れ、救急車で血まみれで運ばれていく小池。彼の戻りをじっと待つ洋子はアパートの窓から外の雪を眺めた。小池は奥さんと離れ、私と同棲してくれる。このアパートを引き払ったら新しい部屋に移らなきゃ。彼女は小池と違い、若い。

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