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[西洋の古い物語]「聖カスバートの鷲」

こんにちは。
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
今日は、キリスト教の聖人、聖カスバートにまつわるお話です。
ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。

※ 自宅から少し行ったところに、毎年ハスがたくさん咲く小さな沼地があるのですが、近くまで行くことができません。昨日も、朝、通りかかるとまだ数輪咲いていました。一度ゆっくりと眺めてみたいものです。画像は、フォトギャラリーからお借りした美しい大賀ハスです。ありがとうございます。

 
「聖カスバートの鷲」
 
昔、リンディスファーンの善良なる聖カスバートは、貧しい人々にお説教をなさるためにご自分の修道院から出かけていきました。お供には年若い少年一人だけを連れていきました。二人は一緒に埃っぽい道を歩いて行きました。真昼の太陽が彼らの頭上を照りつけ、疲労が彼らを襲いました。
 
「息子よ」と聖カスバートは言いました。「道中、食べ物と休む場所をくださるようお願いできる人を、お前は誰か知っておるか。」
「私もちょうど同じことを考えていたところでした」と少年は答えました。
「でも、道中私たちをもてなしてくれる人を私は存じません。ああ!なぜ食べ物を持ってこなかったのでしょう。食べ物なしにどうやって長い旅路を進んでいけるでしょう。」
 
「我が子よ」と聖人は答えました。「神様を信頼することを学びなさい。神様は、ご自身を信じる者を餓え死にするほど苦しめたりは決してなさらないのだから。」
そして目を上げ、空を一羽の鷲が飛んでいるのを見ると、聖人は言葉を継ぎました。
「あそこの鷲が見えるかな。神様には、あの鳥を用いて私たちに食べ物をくださることもおできになるのだ。」
 
彼らはこのように話しながら、とある川へとやってきました。すると、ほら!あの鷲が土手にとまっていたのです。
「息子よ」と聖カスバートは言いました。「走って行って、神様がご自身の侍女であるあの鳥によって、どんな食べ物を私たちにお与えくださったかを見てごらん。」
 
少年は走って行き、1匹のかなり大きな魚を見つけました。それは鷲がたった今捕えたものでした。少年はその魚を聖人のところへ持っていきました。
 
「何ということをお前はしたのだ」と聖人は叫びました。「なぜお前は神様の侍女に分け与えなかったのだ。魚を二つに切り分けて、一つを彼女に与えなさい。彼女の奉仕は十分それに価するのだから。」
少年は命じられた通りにしました。すると鷲は、嘴に魚の半分をくわえると、飛び去りました。
 
その後、近くの村に入ると、聖カスバートは魚のもう半分を料理してくれるよう、一人の農夫に渡しました。そして、少年と村人達がご馳走を食べている間、善良なる聖人は彼らに神様の御言葉を説きました。
 
 
「聖カスバートの鷲」はこれでお終いです。

聖カスバートは7世紀、スコットランドのリンディスファーンの司教として活躍し、熱心に伝道しました。死後、聖人に列せられました。祝日は3月20日です。

1匹の魚を鷲と村人たちと分け合い、神の御言葉を説いたという聖人のお話を読むと、食べ物でも何でも、感謝して皆で分け合うことの大切さを思います。そうやって皆で助け合って生きていくことが神様の御心にかなうことなのですね。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。

このお話の原文は以下の物語集に収録されています。

次回をどうぞお楽しみに。

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