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[西洋の古い物語]「妖精がくれた新年の贈り物」

今年最後の物語は、新年の贈り物のお話です。
一年の初めには妖精がやってきて、贈り物をくれるそうです。
一体、どのような贈り物なのでしょうか。
ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。

「妖精がくれた新年の贈り物」

 ある日のこと、二人の少年が遊んでおりますと、突然、妖精が目の前に現れて言いました。
「私はあなたたちに新年の贈り物を渡すためにつかわされました。」
そして銘々に一つずつ包みを手渡すと、一瞬のうちにいなくなってしまいました。

 カールとフィリップが包みをあけますと中には2冊の美しい本が入っていました。そのページは降りたての新雪のようにしみひとつなく、真っ白でした。

 何ヶ月も過ぎた頃、あの妖精が少年たちのところへまたやってきました。
「あなたたちにまた一冊ずつ本を持ってきたのですよ。」と彼女は言いました。「そして最初の本を時の翁の本棚へ持って行きます。本はその方がくださったのですよ。」
「本をもう少しだけ持ってちゃダメですか」とフィリップは尋ねました。「撲、近頃は本のことをあまり考えていなかったんです。今開いている最後のページに何か絵を描きたいんです。」
「なりません。」と妖精は言いました。「そのままで持って行かなくてはならないのです。」

「もう一度だけ本に目を通せたらいいんだけどな」とカールが言いました。「これまで一度に1ページしか見れなかったから。だってページをめくるとしっかりくっついてしまうし、毎日一箇所しかあけられないんだもの。」

「あなたの本を見てごらん」と妖精は言いました。「フィリップも見てごらん。」
そして彼女は二人のために小さな銀のランプを二つ灯してくれました。その灯りで彼らは妖精がめくるページを見たのです。

 少年たちは驚きました。一体これが妖精が一年前にくれたあの美しい本と同じものだなんて、そんなことありえるでしょうか。降りたての雪のようにしみ一つなく美しいまっさらの白いページはどこにいってしまったのでしょう。汚らしい黒いしみやなぐり書きのあるページがあるかと思えば、その次のページには可愛らしい小さな絵があります。金銀や華やかな色彩で彩られたページもあれば、美しい花々やかすかで繊細な輝きを放つ虹に飾られたページもありました。しかし、一番美しいページにも醜い汚れやなぐり書きがありました。

 とうとうカールとフィリップは妖精を見上げました。
「こんなこと誰がしたの?」と二人は尋ねました。「僕たちが開けたときにはどのページも白くてきれいだった。それなのに、今はもう、本のどこにも何も書いていないところはひとつもないよ。」
「いくつかの絵について説明してあげましょうか」と妖精は二人の少年に微笑みかけながら言いました。
「ほら、フィリップ、この薔薇はね、あなたが赤ちゃんに自分のおもちゃをあげた時にこのページで花開いたのですよ。それにこの可愛らしい小鳥は、力いっぱい歌っているように見えるでしょう。でも、もしあなたがこの前、口げんかするかわりに親切で朗らかであろうとしなかったなら、この小鳥はこのページにはいなかったのですよ。」

「でも、この汚れはどうしてできたの」とフィリップは尋ねました。
「それはね」と妖精は悲しそうに言いました。「それはある日、あなたが真実ではないことを言ったときについたのです。そしてこちらの汚れはあなたがママのことをなおざりにした時のものですよ。あなたの本でもカールの本でも、とても汚らしく見えるこれらのしみやなぐり書きは、全部あなた方が悪い子だったときにできたのです。本の中のきれいなものはみな、あなた方が良い子だったときにページにやってきたのですよ。」

「ああ、もう一度その本をもらえたらなあ!」とカールとフィリップは言いました。
「それはできません」と妖精は言いました。「ご覧!その本には今年の日付が入っているでしょう。それはもう時の翁の本棚に戻さなくてはならないのです。でもね、二人にはそれぞれ新しい本を持ってきました。きっとあなた方は今度の本を前の本より美しくできるわね。」
そう言いながら彼女は姿を消し、あとには二人の少年だけが残りました。各々、手に最初のページが開かれた新しい本を持っていました。

そして、その本の裏表紙には黄金の文字で「新年用」と書かれてありました。

「妖精がくれた新年の贈り物」の物語はこれでおしまいです。


皆様にとって、今年はどんな1年でしたでしょうか。
きっと今年の私の本にも、カールとフィリップ同様、美しいページもあれば醜く汚れたページもあると思います。
うまくいかないことがあると、自分のことは棚に上げて他人のせいにしたり、疲れていたりして誰かのために尽くすことを面倒だと思ったり・・・そんな日のページは真っ黒なしみに覆われていることでしょう。

反対に、誰かに優しくしてもらって涙が出るほど嬉しかった日や、なんでもないプレゼントを相手が喜んでくれた日のページは、美しい花々や優雅な金の飾り枠で飾られていることでしょう。

来年はどんな1年になるのでしょうか。
来年の本は美しいページが1ページでも多いといいな、と祈っています。

来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
どなた様もどうぞ良いお年をお迎えくださいませ。


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