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『7人の聖勇士の物語』 第18章スペインの勇士、聖ジェームズの死

明けましておめでとうございます。
昨年はお読みくださりどうもありがとうございました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

あわただしく年末年始が過ぎ、やっと日常を取り戻した感があります。
昨年は自分でも気付かないうちに少し無理をしてしまっていたのか、思いがけず帯状疱疹を発症してしまいましたが、今年はもっと自分の体調の変化を自覚しながら、無理のないように過ごしていきたいと思っています。

住吉大社に初詣に行かれた知人が、お土産に猫ちゃんの置物を買ってきてくださいました。「招福猫」といって、4年間欠かさず月参りを続け、奇数月には左手、偶数月には右手を挙げた可愛い小猫を48体集めると中猫と交換、さらに中猫2体と小猫48体で大猫と換えてもらえるそうです。「初辰猫(はったつねこ)」ともいうのだそう。「初辰」は語呂合わせで「発達」に通じるので、縁起がよいということで、集める人が多いとのことです。


水玉模様の裃を着てお行儀良く正座している猫ちゃんを見ていると本当に可愛らしくて、私も集めてみたくなりました。残念ながら住吉さんは私の家からは少々遠いのですが、月一回なら何とか通えない訳ではありませんし。「継続は力なり」と言いますが、継続は決して生やさしいことではありませんよね。でも、この猫ちゃんの可愛らしさが継続を助けてくれるのでしょう。

『7人の聖勇士の物語』の続きです。
勇敢な聖勇士たちも年老い、最期の時を迎えます。今回はスペインの聖ジェームズの死の物語です。

『7人の聖勇士の物語』
第18章 聖ジェームズの死

スペインの勇士、聖ジェームズは、腕が槍を振るうことができた間は様々な異教徒や不信心者、魔法使いや魔術師、巨人、怪物、野獣、悪霊との雄々しい闘いを続けました。しかし、遂に、自分の力が去りゆくのを感じ、髪が白くなってきたのがわかると、彼も故郷へと帰ることを決心しました。ある日のこと、彼がいつものように馬に乗って出かけるため武具を身に着けようとすると、武具を持ち上げることさえできないことに気付きました。

「時が来た、忠実なるペドリロよ、もはや鋼をまとった騎士ではなく、慎ましい巡礼として世を歩かねばならない時が。」と彼は、先程立ち上がったばかりの椅子に座り直しながら言いました。「忠実なる従者よ、巡礼の衣服と灰色の帽子、それに大きなホタテ貝の貝殻を買ってきてほしい。私はもう二度とそこにある鋼の武具を身に着けないだろう。キリスト教国最高の勇士の一人としてかくも長きにわたり帯びていた名声を辱めるだけだろうから。」
世の将軍や提督の皆様も聖ジェームズの言葉からお悟りになられて彼のお手本にならい、力が出なくなったら公的生活から引退なさるとよろしいでしょうに。
(※ホタテ貝の貝殻は巡礼のしるしです。今日でも、スペインの聖地サンティアゴデコンポステーラにお詣りする巡礼の方々はホタテ貝の貝殻を身につけておられますね。最後の2行は語り手の言葉です。どうやら皮肉を言っているようですね。)

忠実なペドリロはため息をつきながら出かけて行き、命じられた通りに巡礼の衣服を主人と自分のために手に入れました。武具を軍馬に乗せて運ばせながら、彼らは今や巡礼として故郷への途につきました。しかし、出会う人は皆、彼らが成し遂げてきたことを十分よく知っており、深夜に仕事をする強盗や無法者さえ彼らを尊敬し、彼らが安全に通過することを許しました。

このようにして旅を続け、彼らはついに陽光晴れやかなスペインの広大な平野に到着しました。聖ジェームズはその地に礼拝堂を建ててそこでのお勤めに専念しようと心に決めました。また、すぐ近くに庵を建て、彼と、主人の元を辞そうとしなかった忠実なペドリロはそこを住まいとし、隠者として暮らしました。すると遠近至る所から農民が彼らを訪ねてきました。聖ジェームズは彼らに多くの良いアドバイスを与え、たくさんのことを教えました。また、異国の地で見たり行ったりした驚くべき事について数え切れないほどの不思議な話を語りました。

そのうち、彼の礼拝堂は、奉納される献呈の品々によって、国中でも屈指の裕福な礼拝堂となりました。このため、嫉妬と怒りをひどくかき立てられた近隣修道院の修道僧らは、聖ジェームズとペドリロを魔術や恐ろしい犯罪のかどで告発しようと共謀しました。

聖ジェームズは恐れずに告発に反論し、彼らのなかに武具をつけて彼と一騎打ちするだけの胆力ある者がいるなら、今一度、誰とでも槍を交えるぞ、と申し出ました。しかし、皆この名誉を辞退しました。だからといって彼らは聖ジェームズに浴びせる悪口を減らしはせず、彼を破滅させる機会を伺っておりました。

ついにある日、聖ジェームズは、数人の敬虔な礼拝者仲間とともに、礼拝堂の中に捕えられました。扉は閉ざされ、邪悪な修道僧たちは異教徒の雇われ兵の一団を金で雇い、毒矢で全員を射殺させました。ひどい苦痛にもかかわらず、聖ジェームズと仲間たちは最期の時まで聖歌を歌い続けました。すると、銀色に輝く光が礼拝堂に射し込み―(昔の年代記者はそのように申しております)―その光はずっと燦然と輝き続けました。そして、ついに礼拝堂は開けられ、聖ジェームズと仲間たちの遺骸は腐敗することなく完全にそのまま保存されて見つかりました。その後、遺骸は銀の蓋のついた大理石のお墓に安置されました。真のスペイン人なら誰もが、聖ジェームズに最高の敬意と尊崇を抱いており、それは今日に至っても揺らぐことがありません。

今回はここまでです。
お読みくださり、ありがとうございました。

次回をどうぞお楽しみに!


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